Player's Story   作:キンチャン

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プレイヤー

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 ナザリック地下大墳墓第9階層アインズの執務室。

 アインズとデミウルゴスは、中に浮くモニターを見ていた。 モニターに映し出されているのは、大霊廟の奥、第一階層入口付近。そこには、人間種と思われる人が倒れ、真紅の鎧を身体に纏ったシャルティアが立っていた。 今日は誰かが訪れる予定は当然なく、侵入者であれば、監視や警護のモンスターが気付き、ナザリック内の警備全般も統括しているアルベドが対処するはず……だが、二人を除いて誰もいない。

 

「こ、これは、いったい……」

 

 デミウルゴスが呟く。アインズも状況の把握ができず、ただ呆然とモニターを見つめるだけだった。

 しばらくすると、倒れていた人間がゆっくりと動き出した。

 

(シャルティアが仕留めそこなった?)

 

 ナザリックにおいて、最高位の戦闘力を誇るシャルティアが人間ごときを葬り損なうはずはない。しかも、ナザリック地下大墳墓内で、フル装備をしている。遊び半分ということもない。

 そして、人間がゆっくりと立ち上がろうとしているが、シャルティアはまったく動く気配が無い。

 反応のないシャルティアを見たアインズの脳裏に過去の忌まわしい記憶が蘇り、激しい怒りが全身を包んだ。

 

「アインズ様、もしや!!」

 

 デミウルゴスも思い出す。『ぷれいやー』と思われる存在によって、精神支配されたシャルティアを……

 

(攻めてきたのか?このナザリック地下大墳墓に直接……)

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 ナザリック地下大墳墓前の草原に男は立っていた。装備はほぼ何も持たず、左肩にそれほど大きくない袋、ナップサックのようなものを掛け、左手にはタブレットと思われるものを持っている。草原にいくつもある盛り上がりのひとつを眺めて呟く。

 

「あそこがナザリック地下大墳墓かぁ」

 

 タブレットを操作し、何やら画面が中空に表示される。

 

「さすが、ナザリック地下大墳墓!!!

 オブジェクトの数が半端じゃない……

 お目当ての人は居るようだけど、どこにおんねやろぉ……」

 

(なぜ、この探査結果は、上空俯瞰でしか表示できないんだろ……

 階層があるところじゃ、どこにお目当てがあるかわからん!!)

 

 再度、タブレットを操作し、中空の画面を削除、さらに操作を続ける。

 

(まずは、オブジェクトのクイックピック機能をONにして、

 オブジェクトのプロパティ画面は常時表示。

 自分の存在比率は70%くらいにしておく。

 ナザリック地下大墳墓と周辺100mくらいを範囲指定して、

 自動POP機能をOFF。

 Lv50くらいのオブジェクトもDISABLEしておくっと……)

 

 タブレット上にマップを表示し、ナザリック地下大墳墓の大霊廟奥を指示する。

 

「それじゃぁ、行きますかぁ」

 

 さらに、[移動]ボタンをワンクリック。草原からナザリック大墳墓の大霊廟奥まで転移する。そこは、窓からの光が僅かに入る程度で、かなり暗く、動くものもないため、静寂に包まれていた。

 大きく息を吸い、第一階層入口のゲートに向かって、大声を発する。

 

「すみませ~ん!!

 どなたか、いらっしゃいますか?」

 

 周りが静かだったためか、いっそう大きな声が大霊廟に響きわたる。しばらく、待つが反応がない……

 

(Lv50以下は消し過ぎたかな?)

 

 周りを確認後、再度、大声を発する。

 

「すみませ~ん!!

 どなたか、いらっしゃいませんか?」

 

 ちょうど、第一階層の居たシャルティアが気づく。

 

(上に誰か居る?)

 

 誰かが来るという予定は聞いていない。予定があれば、メイド達が出迎えため、準備しているはずだ。言葉からしてもナザリック内のものではない。

 さらに、声が聞こえる。

 シャルティアは警戒しながら、ゲートから大霊廟に上がる。ゲート前にはひとりの男が立っていた。

 

(人間?

 なぜ、こんなところに……?)

 

 不審に思いながら、周りを見渡す。監視や警備のモンスターは居ない……

 

「おんしは誰?」

 

 警戒レベルを上げ、男に問いかける。

 男はタブレットをチラッと見る。プロパティには、NCBと表示されている。

 

(シャルティア・ブラッドフォールン

 Lv100のトゥルーヴァンパイアかぁ……)

 

 見た目、少女だが、カルマ値が大きくマイナス値になっている高レベルNPCに少し警戒しする。

 

「すみません……

 こちらにモモンガさんがいらっしゃると思うんですが、取り次いでもらえますか?」

 

 シャルティアは少し考えて気づく。この世界に転移されて間もなく改名されたがアインズ様の本当の名前。

 

(な、なぜ?

 アインズ様の本当の名を人間ごときが知っている……

 ま、まさか『ぷれいやー』か!!!)

 

 シャルティアは瞬時に真紅の鎧を纏い、右手にはスポイトランスを持ち、フル装備の戦闘モードに変わる。スポイトランスを突き出し、叫ぶ。

 

「おまえは、誰だ!!!」

 

 荒れ狂う殺気とスポイトランスからの風圧で男は吹き飛ばされる。吹き飛ばされる中、すかさずタブレットを[フリーズ]をクリックする。と同時にスポイトランスを突き出し状態のまま、シャルティアは動かなくなった。吹き飛ばされた男も背中を強打し、しばらく動けなかったが、ゆっくりと起き上がる。

 

「痛、た、た、たぁ……

 びっくりしたぁ……」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 アインズは、執務室でデミウルゴスからの報告を受けていた。前回の謁見の際、アインズから新たな案件を頼まれたため、今後の予定や人員の調整の報告だった。 新規案件(というよりも既存案件の大幅な仕様追加?)の内容では、アウラやマーレが適任者と言えるのが、外部へ行く際の同行者には、双子のどちらか、もしくは両方としたいとアインズから言われたための人員選定だった。また、『優先度も高めで』とお願い的に言われたため、全体の予定の調整も必要になった。絶対者からの要望は、ほぼコミットと同意である。要望への対応は、デミウルゴスとしては至上の喜びでもあった。デミウルゴスからの報告が一通り終わったとき、二人はナザリック内の異変に気づく。

 

「これは、どういうことだ!!

 ナザリック内のシモベの反応が無くなった!!」

 

 自ら召喚したモンスターとは、1本の糸でつながったがのようにな感覚があり、生存確認はもちろん、遠隔からの指令を出すこともできる。アインズが召喚し、ナザリック内に配置したシモベは1体2体ではなく、デミウルゴスにしても同様である。そのシモベとつながりが糸が切れたかのように無くなってしまった。それも中位以下のモンスターの反応が大量にかつ一瞬にしてなくなったのだから、気づかないはずがない。

 大量の悪魔やアンデットを浄化できるような魔法なら、強大な魔法力を感じるはず、だが、そんなものは感じられない。シモベとのつながりではその位置までは把握できないため、問題の発生源は特定できない。特定できたとしても、これだけ大量につながりが一瞬で切れたのだから、問題の発生源を特定などできない。

 監視役のモンスターの反応も消えてしまったため、各所監視状況も伝達されない。アインズはクリアボヤンスで各所を探索。クリスタルモニターも発動し、デミウルゴスにも探索状況を見せる。第九階層ではツアレ以外のメイドがすべて消え、ツアレがパニックを起こしている。プレアデスでは、シズが消えたしまった。各階層では、比較的高位のモンスターが多く、変化がないようにも見えるが通路警護の低位のモンスターは消えている。第一から第三階層では、シャルティアの姿が見えない……。探索エリアを地上まで上げたとき、大霊廟にて、シャルティアを発見する。

 

「こ、これは、いったい……」

 

「アインズ様、もしや!!」

 

 怒りに打ち震えたアインスは、転移のリングに触れ、移動しようとするところをデミウルゴスが止める。

 

「お待ちください。アインズ様!!

 すぐにシモベ共を向かわせます!!」

 

 めくるめく怒りの噴出に精神の鎮静化が追い付かないアインズが再びモニターに目をやる。立ち上がった人間の姿がはっきりと映ったとき、アインズの怒りが困惑へと変わった。

 

 頭髪は黒。眼の色も黒。顔立ちもほりは深くなく、このあたりの人間とは明らかに違う。

 (もともと『ぷれいやー』と思っているため、そこにはあまり気にしていなかったのが)

 肌は黄色人種のものを少し濃くした感じ。体形は中肉中背というより少し太っている。身長もシャルティアがそばにいるのにそれほど大きくは感じない。

 ユグドラシルでは、ゲーム開始時、種族の選択をする。外形については、種族ごとに定型パターンがいくつもあり、細かな設定を行なうこともできる。有料ではあるが外部データによる細かいカスタマイズもできる。ただ、種族に関係なく、人間形のスタイルは概ね均整のとれたものになる。

 服装については、最初に選ぶ職業ごとの選択肢から選ぶこともできるが、これについても細かい設定やカスタマイズができる。基本的、RPGでよくある冒険者や騎士などの服装になるが、ドロップ品や課金アイテムなどによって、無限に近い装いができる。

 モニターの男は、下はビジネススーツのスラックスに革靴、上はカッターシャツにネクタイ、ジャケットではなく、ブルゾンを羽織っている。そう、これは、日本で比較的よく見ることのできる技術系サラリーマンの姿だった。

 

(あ、あれは、日本人……か?)

 

 冷静さを取り戻したアインズは、ゲートを開き、シャルティアの元に転移する。デミウルゴスもそれに続く。

 立ち上がった男はしげしげとシャルティアを覗き込んでいた。

 

(やっぱり、ここのシステムでは、完全停止はしないか……意識あるなぁ)

 

 そのとき、シャルティアの後方にゲートが開かれた。そこから出てきたのはアインズとデミウルゴス。男はタブレットをチラッと見る。プロパティ表示は2つ。1つ『NCB』もう1つには『PLAYER』と表示されている。

 

「あぁ!

 あなたが、モモンガさんですね?

 良かったぁ、早くに見つかって」

 

 アインズが訝し気に問いかける。

 

「お前は誰だ?」

 

「あっ、すいません。

 わたし、ユグドラシルでエンジニアしてました

 ワタナベ

 と言います。」

 

 一瞬、理解できず、アインズは間の抜けた声を出す。

 

「ぇ?」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 ワタナベ は、応接室に通されていた。対面には、アインズが座る。その後ろにデミウルゴスとアルベド、フリーズを解除され、通常のドレス姿のシャルティアが立っていた。テーブルの横には、一般メイドが消えてしまったため、ユリ・アルファが飲み物の準備をしていた。

 

「あっ、すみません。」

 

 と、ワタナベは紅茶を一口飲むと

 

「それでは、改めて。

 私は、ワタナベ と言います。

 ユグドラシルのエンジニアしてました。」

 

「どういうことです?

 なぜ、運営の方がここに居るんです?」

 

 それは、絶対者であるアインズではなく、『鈴木悟』としての言葉だった。

 

「はい。

 私は、この世界に転生されたユグドラシルのプレイヤーを迎えにきました。」

 

「なぜ……」

「なぜ、今頃になって!!!」

 

 怒りとも困惑とも取れる感情で、アインズは叫ぶ。

 

 

 ワタナベは1つ1つこれまでの経緯を説明していく。

 

 プレイヤーのこの世界への転生は神為的ミスだった。

 この世界は、もともとあった世界であり、この世界の創造主が別の世界でたまたま目についたユグドラシルの世界観やシステムをこの世界に移植していた。別次元でつないでいたため、サービス終了時に、ログインしていたユグドラシルのプレイヤーがそのまま転生されてしまった。全員というわけではないが、衰退していたとは言っても多くのプレイヤーがいたため、結構の人数が転生された。

 転生自体は、創造主サイドではよくあることで問題ではないが、ユグドラシルの性質上、肉体は、もとの世界に残ったままで、精神のみ転生され、かつ、プライヤーとして見合った身体が生成された。そのことで、同一人物が肉体と精神が別とはいえ、異なる世界に同時に存在することが問題となった。

 こちらの世界の創造主は責任を取らせれ、粛清され、創造主としてはもう存在しないらしく、現実世界側に創造主が役目を兼任する形を取っているとのこと。

 創造主により、問題解決を行なおうとしたが、俗っぽいシステムの理解できない部分が多かったため、ユグドラシルのエンジニアに特別の能力とアイテムを与え、問題解決を行なうことにし、自分が白羽の矢がたった。

 救出が遅くなったのは、転生させられたプレイヤーがいろいろの時代に飛ばさたことが原因だった。与えられた能力には、異なる世界に同時に存在できるものと、こちらの世界での時間と空間を超える能力はあるが、現実世界側の理のため、過去から未来にしか移動できないため、順番しか救出できなかった。そして、モモンガの居るこの時代が転生されたプレイヤーが居る最後の時代で、かつ、モモンガが最後の対象者であったためである。

 

 アインズは想像もしない事実を告げられた呆然とし、話を聴いているかどうかも分からない状態だった。まだ、話が終わらない状況でフラッと立ち上がり、そのまま、応接室を出て行ってしまった。

 デミウルゴス、ユリ・アルファは、目でアインズを追うだけで言葉は発することもできず、アルベドは、俯いていた。扉が閉じると同時に応接室は時が止まったような静寂に包まれた。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 応接室を出たアインズは、玉座に座っていた。考えることを放棄し、ただただ、この世界に来てからの記憶を振り返っていた。

 

(この世界は『ここ』から始まったんだ……)

(今まで現実世界に帰ることは考えていなかったなぁ……)

 

「あぁ、最初に戻ることを否定したっけ……」

 

 現実世界では、家族も友人もなく、ただただ仕事をして、家に帰って寝るだけの生活。ユグドラシルの仮想世界のみが楽しみだった世界……。

 異世界転生後は、他のプレイヤーや以前の仲間たちがどこかに居るかもしれないと思って、ただただ夢中に行動していた。アインズ・ウール・ゴウンと鈴木悟の間での戸惑いや葛藤なんかもあったが、充実していた。仲間は居なくとも、仲間が残していった子供(NPC)たちとの生活は楽しかった。夢のような時間が終わり、刺激も何もない現実世界の戻ることが辛く、悔しかった。

 頭を抱え、うずくまるアインズは、ふっと思う。

 

(なぜ、運営が来た?)

 

 システムが分からなくとも、世界を創造できるほどの力があるのだから、強制送還でもなんでもできるのではないのか?

 それこそ、時間も超えるのだから、すべてなかったこともできるはず……なぜだ?

 

「確かめなくては・・・」

 

 アインズを立ち上がり、応接室に向かった。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 アインズの出て行った後の応接室では沈黙が続いていた。

 

 2分・3分・・・5分・・・

 

 誰も言葉を発しなかった

 

 10分・・・15分

 

 沈黙を破ったのはワタナベだった。

 

「すみません。

 紅茶のお替り、いただけますか?」

 

 ユリ・アルファに話しかける。

 

「は、はい。畏まりました。」

 

 この会話を糸口にデミウルゴスも口を開く。

 デミウルゴスからすれば、ワタナベの所属する『運営』とは、前の世界(ユグドラシル)を創造した者達。至高の御方々も「糞運営」と罵っていても、運営が決めたことには従わなければいけないルールを決める絶対者。そのため、おいそれと口を開くことができなかった。

 

「ワタナベ様

 アインズ様をお迎えに来たとおっしゃいましたね?」

 

「アインズ様?」

 

「はい。

 至高の御方々41人のまとめ役、モモンガ様です。

 お迎えに来たとは、他の至高の御方々と同じ場所に連れて行かれるということでしょうか?」

 

 ワタナベは、タブレットを操作する。ギルド「アインズ・ウール・ゴウン」でデータベースを検索。過去の「アインズ・ウール・ゴウン」に所属したことがあるプレイヤー一覧が表示される。

 

(全盛期の頃は41名。後は減る一方かぁ……)

 

 一覧には、名前やチーム加入日や脱退日、何か記号のようなものなどが表示されていた。

 記号部分は多くが横棒(―)が並んでいるが、ところどころ 丸(〇)やバツ(×)があり、丸とバツは明度の暗いものと明るいものがある。そして、モモンガの行に記号は空だった。

 

「なんとなく言っている意味は分かりました。

 だいたいはそのとおりです。

 まぁ、みんなという…」

 

 そのとき、『ドン』 激しく応接室の扉が開かれ、アインズが戻って来たのだ。

 

「ワタナベさん!!」

 

 アインズが大きな声で問い掛ける。そのとき、今まで俯いていたアルベドが顔を上げた。その顔は鬼気迫る形相で、手には巨大なバルディッシュを出現させている。

 

「モモンガ様は行かせない!!!」

 

 アルベドにとってアインズではなく『モモンガ』という名前が絶対的なもの。その『モモンガ』様が居なくなってしまうことを考えると我慢などできる訳がない。怒号とともにワタナベの肩口にバルディッシュが振り下ろされる。

 バルディッシュの刃先がワタナベに触れた瞬間、煙のようにバルディッシュが霧散する。刃先から柄の部分、持ち手と消えていき、持っていたアルベドの手、腕、肩、胴体、アルベド自身も霧散し、消えていった。

 

「貴様!!

 何をした!!」

 

 アインズの怒りが一気に噴出し、ワタナベはつかみかかろうとする。ワタナベは手を挙げて制止する。

 

「ちょ、ちょっと待った!!」

 

 一瞬、ワタナベに触れたアインズの指先が骸骨から人間に指先になったように見えた。

 

 アインズが思いとどまったことを確認し、ワタナベは現象の説明を始める。

 

「ふぅ……」

 

 ワタナベ曰くは、自分自身にセキュリティ対策を施しているとのこと。

 特殊能力により、現実世界と異世界に同時に存在できるが、その割合も調整できる。現実世界の割合が強いと異世界のものは触ることもできないし、さらに強いと見ることもできない。また、現実世界から異世界に飛ばされたものは、触ることもともとの現実世界の形に戻ってしまう。アインズなら、鈴木悟になるところだが、NPCの場合はだたの電子データのため、消えたしまう。

 

「普通は消えたりしないんですよ。すぐに離れれば、元に戻ります。たぶん、ウイルス扱いされたんでしょう。」

 

「駆除されたということなのか?」

 

「いえ、駆除処理は「隔離」にしてるので、隔離エリアに転送されているはずです。

 駆除処理の無効化は後にして……

 モモンガさん、まだ、お話は終わってなかったんですが……」

 

「そうだ、ワタナベさん!!

 あなたは、なぜ、ここに来た?」

 

「それは、先ほど説明したとおりです。」

 

「そうでは無く……」

 

 アインズは混乱していたため、言葉が正しく選択できない状態だった。端的な質問をする。

 

「ワタナベさん!!

 私は、帰りたくないんだ。こちらに残ることはできないのか?」

 

 その瞬間、緊張に固まっていたデミウルゴス、ユリ・アルファに表情が変わる。

 

「それが話のつづきだったんですが……

 できますよ。ただし、あちらのあなたには死んでもらうことのなりますが」

 

 今回の問題は、同時に2つの世界に『存在』することが問題で、どちらか一方であれば、問題ないとのこと。つまり、現実世界での肉体部分が死んでしまえば、通常の『転生』になり、戻る場合は、こちらでの存在が死になることらしい。両方の世界で刻まれてしまった歴史は、多めに見えるらしい。

 

「分かりました。では、ワタナベさん、正式に回答します。

 私は、こちらに残ります!!」

 

 デミウルゴスからは喜びに打ち震え、シャルティアとユリ・アルファはお互い抱き合い、泣き崩れていた。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 応接室には、アインズ他、隔離空間から解放されたアルベドをはじめ、各階層守護者(ガルガンチュアは除く)とプレアデスの面々も集まっていた(オブジェクトに対するDISABLE設定も解除したためスズも居る)。それぞれが事の経緯を聴き、アインズ様がナザリックを去らないことを喜んでいた。

 

「ワタナベさん。

 向こうでの、私の対応、よろしくお願いします。」

 

「わかりました。

 こちらでの元気でやっていてください。って、アンデッドのモモンガさんに言うのもなんですが……」

 

 ワタナベは笑って答える。

 

「ところで、ワタナベさん!!

 こちらの世界でのプレイヤーは私以外に誰か居るのでしょう?

 アインズ・ウール・ゴウンの他のメンバー達は……」

 

 トーンを落とし、アインズは思っていたことを聴いてみる。

 

「それはお答えできません。

 それは個人情報になるので、相手の許可があっても開示できませんよ。

 サービスが終了してもそれは変わらないです。」

 

 アインズは残念そうに俯く。そして、もうひとつ質問をする。

 

「そうですか……

 もうひとつお聞きしたいのですが、その持っている端末、NPCなんかのデータを見れているみたいですが、設定とかもみれるんですか?」

 

「はい。見れますよ。

 プレイヤーのデータは見せれませんが、ギルド所属のNPCなら問題ありません。」

 

「変更って、できます?」

 

「EDITER機能はありますが、変更しても今まで刻んだ歴史とかは変わらないようですよ。」

 

「じゃぁ、アルベドの設定を書き換えたいのですが、大丈夫ですか?」

 

 そのとき、アルベドがアインズを睨む。

 

「アインズ様!!

 それはどういう意味ですか!!」

 

「いや

 アルベドの感情は私がタブラさんの設定を変えたもの。

 今、できるなら、戻しておこうかと……」

 

 絶対者であるアインズだが、小さくなってアルベドに答える。

(戻すのではなく『愛している』の設定を消すだけだが)

 

「あの時、ご迷惑ではないと言ったじゃないですか!!」

 

「そうは言ってないと思うぞ……」

 

「アインズ様!!」

 

 アインズは、もう、反論する気は失せていた。

 アウラやシャルティアは笑って、そのやり取りを見ていた。

 

「それではもういいようですね?」

 

 なんとなく、いい雰囲気に微笑みながらワタナベが声をかける。

 

「それでは私はこれで失礼します。」

 

「ありがとうざいました。

 それでは、後のことよろしくお願いします。

 お気をつけて。」

 

 アインズは礼を言い、一同が頭を下げる。

 

「あ、そうだ!!」

 

 間際に、ワタナベが何か思い出したように呟く。

 

「モモンガさん、『翁』って方、ご存知ですか?」

 

 モモンガの様子を見ると、心当たりがあるようなので、言葉を続ける。

 

「これは本人が言っていたので、まぁいいと思んですが、

 アインズ・ウール・ゴウンのメンバーが自分を知っていたらっと伝言を頼まれてました。

 『会うことがあったら、酒でも飲みながら話をしましょう』

 とのことです。」

 

 今度こそと言って、タブレットを操作し、ワタナベはその場から消えてしまった。

 

 デミウルゴスがアインズのそばにより問いかける。

 

「アインズ様、『翁』とはどなたですか?

 至高の御方にはそのような名前に方はおりませんし……」

 

「『翁』は名前ではないし、メンバーでもない」

 

「では?」

 

「彼は『人間』だ」

 

 アインズは嬉しそうに答える。

 この世界にプレイヤーはいる。かつての『仲間』がいるかどうかは分からないが、確実に一人は居ることは分かった。

 その事実と希望を胸に、『アインズ・ウール・ゴウン』の名前をこの世界に広める決意を新たにするのだった。

 

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