大冠彩る七の一   作:つぎはぎ

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色々とお騒がせしてしまい、申し訳ありません。
『団欒のカルデア』の最後を変えましたので、是非確認してください。

もう一つの作品も是非ともよろしくお願いします。




第一特異点

 

 さぁ、と風が吹き髪が揺れた。

 眼前に広がる大草原、遥か先まで見える緑の絨毯は2010年代では滅多に目にすることのできない、自然のありのままの姿。

 そこにこの年代、1431年に似つかわしくない集団が音もなく現れた。

 

「…レイシフト、無事完了です」

 

「…はぁー、今回は大丈夫だったかぁ」

 

 立香もマシュ、その二人は周りの様子からいきなり戦場に降り立っていないことに安堵した。

 

『やあ、みんな。無事にレイシフトできてよかったよ。バイタル異常なし、極めて良好だ』

 

「はい、ドクター。マスター藤丸立香とデミサーヴァント・マシュ・キリエライト及びその他サー「ハイ! 無事到着だねー!!」ヴァント…問題ありません」

 

 大声をあげ、くるくると回りながら楽しく笑うライダー、アストルフォはマシュの報告を無意識に妨げた。

 

「おぉー、なんか懐かしいなァ!」

 

「ああ、ここって君の地元だっけ?」

 

「うん、そうだよー。いやぁ、まさかボクの故郷にこれるなんてねー。そだそだ、いっちょボクの実家まで飛んでく?」

 

「…アストルフォ。私達は特異点解決の為にやって来たのです。無駄な時間を費やしている暇はありませんよ」

 

「同感だな。君のその陽気さは嫌いではないが、あまり悠長にしている暇は…」

 

「あ、でもボクの実家ってイングランドだった。じゃあ、行くとしても海渡るのか〜。あ! そういえばアルトリアはブリテンの王だからボクと同じだね!」

 

「いや、確かにそうですが話を…」

 

「ヒッポメネスはギリシャ、エミヤは日本? マスターも日本で、マシュは…何処だっけ?」

 

「え? えっと、私は…何処になるんでしょうか?」

 

「あ、分からないんだ? 分からないんだったら仕方ないや! じゃあ、イングランドにレッツゴー!!」

 

「だから! 話を聞きなさいアストルフォ!!」

 

「は、ははは…」

 

 なんだか初っ端から力が抜けた。立香は苦笑いを浮かべながらも、やはり頼もしいなーっと思っていたりする。

 

 ここはフランス。七つの特異点の内、最初の関門。藤丸立香率いるサーヴァント達が解決しなければならない、始まりの戦役だ。

 

 

 

 

 

『フランスは歴史上初めて人間の平等と自由を謳った国なんだ。フランス革命といえば、君も分かるよね? この国が行なったことは人類史に大きな影響を与えたんだ』

 

 管制室、遥か未来からレイシフトで時間と空間を超えた立香達に説明を行うロマニ・アーキマン。彼の説明を黙って皆が聞いているが、皆が皆、空中に浮かんでいるロマンの姿を捉えていない。

 

『君達のいる年は1431年、百年戦争の真っ最中であり、世界で最も有名な聖女であるかのジャンヌ…ってみんな!? 僕の話を聞いてるのかい!?』

 

「…ロマン、カメラを空に向けて見たまえ」

 

 皆が見ているもの、それを見るようにとエミヤに指示されてロマンもカメラを空へと向けると。

 

『うわっ! なんだあれ?』

 

 

 

 空には、巨大な光輪が浮かんでいた。

 幾万、いや、幾億という光線が弧を描いて空を埋めつくさんばかりの円が形成されている。その光景は空に突然光のブラックホールが出来たようにも見える。

 

 

 

「ドクター、念の為に確認しますが…」

 

『あんなもの、この年代、いや人類史で確認したことはない』

 

「じゃあ、やっぱり人類焼却の影響なのか…?」

 

 あんな存在、無視せよと言われて無視できるものではない。生まれる前からあったものならいざ知らず、あったなら世界中が注目するだろう。

 

「…どちらにせよ、あれは我等に益があるものとは思えません」

 

 アルトリアの直感が、最大級の警鐘を鳴らしている。あれは駄目だ。あれは存在してはならない。あれはもっと、恐ろしいものだと。

 

『…うん、地表から確認してもあの光輪は北米大陸と同サイズはあるぞ。計測はしているけど、何らかの行動はない。ただ空に浮いているだけだ』

 

「…とにかく安全ってことなのかなぁ?」

 

 まあ、安全ならば問題ないが怪しさは満点だ。あの光輪の正体が何にしろ人理焼却に関わっているならばいずれ分かる事だ。その結末にみんなが至ったのか、光輪から目を外した。

 

「それじゃあ、どうしようか立香君?」

 

「…うーん、ドクターの事前説明からすると霊脈の確保と情報収集を優先すべきなんだよな」

 

 霊脈を確保することによりカルデアからの物資を受け取ることができるようになる。現地の活動で重要な目標だ。

 

『霊脈の位置を特定してみたんだが、そこから少し離れた先みたいだ』

 

「…じゃあ、霊脈に向かいながら人を捜そうか?」

 

「はい、賛成です」

 

「私も異論はありません」

 

「右に同じくだ」

 

「ボクもいいよ!」

 

「…それじゃあ、早速人に会えそうだよ?」

 

 ヒッポメネスが指差す先、そこには誰も見えないがヒッポメネスはまるで分かっているように言葉を続ける。

 

「えっと、数は十人ぐらいかな? 詳細は分からないけど、うん、多分兵士かな? 血と鉄の匂いが風に乗ってくる」

 

「ほう、早速アサシンとしての面目躍如というところかな」

 

 アーチャーであるエミヤも目を細め、ヒッポメネスが指差す先を確認すると「正解だ。恐らくは小隊で動いている兵士だ」と頷いた。

 アサシンとして現界したヒッポメネスの五感はかなり鋭くなっていた。以前、バーサーカーとして召喚された時は、人並み(サーヴァント基準)であったが今は違う。アサシンとしての能力が引き出されているのか、獣並みの嗅覚と危機察知が備わっている。離れた位置にあっても、気配遮断を持たぬサーヴァントや集団の察知はエミヤの視覚を除き、現カルデアのトップであろう。

 

「マスター。確認が取れた集団なのだが、些か様子がおかしい。皆が皆、疲労しているように見える」

 

 エミヤの目には、戦闘に疲れ逃げ帰ろうとしているようにも見える兵士達が映っている。衰弱と言うほどではないが、疲弊していることは確かだ。

 

「仮にあちらが襲いかかったとしても我々であれば対処は可能だ」

 

 こちらには盾の少女、騎士王、無銘の弓兵、天真爛漫な勇士、狩人の番いがおり、皆が皆英雄だ。戦闘面に問題はない。

 

「一応、何があるか分からないしな…ヒッポメネス」

 

「うん」

 

「悪いけど、その人達の後ろについて尾行してくれないかな?」

 

「分かった、行ってくる」

 

 様子見という判断に従い、ヒッポメネスは気配遮断を用いて姿を希薄にし、兵士達の後ろへと接近した。

 

 

 

 兵士達の後ろを尾行し、辿りついたのは街だった。

 

『マスター、聞こえるかな?』

 

『ああ、しっかり聞こえてる』

 

 事前に渡されていた、連絡用の無線を使って連絡をとる。

 

『結論から言うと、彼等はただの兵士だったよ。接触しても問題はないと思う。ただ…』

 

 街を守る外壁は、崩れかけでボロボロだった。岩のような硬さが突撃したように陥没し、火炙りでもされたように焼けていた。街の中も外壁と変わらず、崩壊寸前といったところか。人はいるが活気がない。天幕があちこち張られており、呻き声や嗚咽が聞いてとれた。

 

『やっぱり、何かあったみたいだ。今は確か戦時中じゃないんだろう?』

 

『はい。今はシャルル七世とフィリップ三世が休戦条約を結んでいた筈です。小競り合いは生じたかもしれませんが、大きな戦闘は記録に残っていません』

 

 街一つを巻き込んだ戦闘が記録に残らないはずがない。此処で、無辜の民が血を流す何かが起こったのは明確だ。

 

『ヒッポメネス、俺達は今街から少し離れた場所にいるんだ。すぐに合流するから、先に情報収集してくれ』

 

 分かったと一言告げると、気配遮断を解く。外壁の上から地面へと飛び降り、事前に街の通りへと出た。

 

(さて、まずは…)

 

 近くにいた、比較的に落ち着いてそうな兵士を見つけ、声をかける。

 

「ちょっといいかな?」

 

「ん? ああ、なん……」

 

 こちらへ振り向いた兵士は固まり、絶句したように口を開けた。

 

「化け物!?」

 

「なに!?」

 

咄嗟に振り向き、後ろを確認するがなにもない。綺麗な空と崩れた街だけだ。

 

「あれ? 何もないけど…」

 

「みんな来てくれ!!」

 

 ぞろぞろと兵士が集まって来た。集まってきた兵士は何かを察したらしく、迅速に隊列を組んだ。

 

 ヒッポメネスを囲む形で。

 

「あれ?」

 

「じ、獣人だ!! 獣人がいるぞ!!」

 

 改めてヒッポメネスの容姿を説明しよう。

 簡易な白い衣に身を包み、穏やかな青年だ。とても好戦的には見えない、緩そうな人だ。

 だが、頭に獅子の耳がついているのだ。

 

「化け物だ!! 化け物がいるぞ!?」

 

「きっと奴らの仲間だ! 殺せ!」

 

「ちょ、ちょっと待った! 誤解だ! 偏見だ!」

 

 いきなり敵認定されるのは困る。無駄な戦闘を避けるために隠密行動を取ったというのに、こうなってしまっては色々と台無しだ。

 

「頭に獣の耳があったっていいじゃないか! 世の中には下半身が馬っていう人もいるんだし、問題ないよ!!」

 

「「そんな奴いるかぁ!!」」

 

 神話にはいました。

 

「それにほら! 獣の耳がある人ってチャーミングじゃないかな!? 可愛いと思うよ! …すっごく可愛いよね!!」

 

「誰がお前を可愛いと思うか!!」

 

「可愛いとしても女の子だ! 誰が男を可愛いなんていうと思うんだ! 俺達は男色じゃないんだぞ!」

 

「え?」

 

「…あいつは敵だ! 殺せ!」

 

 一瞬、空気が死んだ気がしたが皆が殺意を滾らせ一斉にヒッポメネスを襲い始めた。

 

「なんで! こうなるんだよぉ!?」

 

 

 

 

 

「なんか、騒がしくありませんか?」

 

 マシュ共に立香の前を歩くアルトリアが街の中から聞こえる喧騒を聴き拾っていた。

 立香達は既に街の門の前にやってきていたが、門の見張り番もいなければ衛兵もいないことに立ち止まっていた。

 

「あ、本当だ? なになに、喧嘩?」

 

 アストルフォがアルトリアの横をすり抜け、大きな門を簡単に開いてしまった。サーヴァントの筋力ならば、開くのに数人がかりの重量もなんのその。

 

「アストルフォ! 無断で足を踏み入れると侵入として…!」

 

「あ! ヒッポメネスが襲われている!」

 

「なに!?」

 

 開いた門から街の様子を覗くと、兵士の集団に囲まれているヒッポメネスがいた。

 

『ふっ! はっ!』

 

『くそっ!! 武器が、ぐはぁっ!?』

 

『隊長ぉ!! くわばぁ!?』

 

『ええい! 無力化! 無力化!』

 

『ただ殴っているだけじゃ…!』

 

『ぐっ! …いい!!』

 

『ギリシャァ!!』

 

『ぐわあああ!!』

 

 一人だけ殺意を込めて殴っているようにも見えるが、どうやら大丈夫のようだ。

 

「何をやっているのかね、彼は?」

 

「えー、どうやら敵と間違えられているのでは…」

 

「そうですね、でなければ彼も無力化しようとしていませんし」

 

「よーし! 僕も混ざるぞー!」

 

「やめなさいアストルフォ! 貴方が行けば混沌となります!」

 

 戦闘に混ざろうとするアストルフォをアルトリアが止める。ギャアギャアと騒ぐ二人を横目に、立香は頭を悩ませていた。

 

「どうしようか?」

 

「え、えっと…」

 

「早々に騒ぎを収めたほうがいいだろう。私が止めてくる」

 

「お願いエミヤ」

 

 情報収集だけでも忙しいな、と立香は嘆息した。だが、これだけでは終わってくれなかった。

 

『みんな大変だ! 謎の飛行隊がそちらに急接近しているぞ!?』

 

 

 

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