提督と異様な艦娘達 作:ポン酢放置禁止区域
色々とおかしい所はありますがお願いします。
基本的にシリアスとコメディをやりたいと思っております。
「あの人で本当に大丈夫なんですか?」
人々の平和と海を脅かす深海棲艦に対抗するために日本の各地に海軍が作った鎮守府、その数多くある鎮守府の総本山である大本営のいくつかある執務室の一つで、長い黒髪を持ち、眼鏡をかけた少女、大淀が執務机でペンを走らせる老人にそう言った。
大淀は深海棲艦に対抗できる唯一の存在、艦娘の一人である。
老人はその艦娘を指揮する立場にある提督、司令官と呼ばれる人間の一人で名前を
「正直な事を言うと儂も予想外だった、実績で判断するのはやはり失敗だったのぉ」
大淀の質問に佐々木はしわの多い顔にさらにしわを寄せてそう答える。
大淀の言うあの人とは先程この執務室に佐々木が呼び出した人物の事を指していた。
ブラック鎮守府、海軍がそう呼ぶ鎮守府がある、いわゆる一般社会でいうブラック企業と同じか、それ以上にひどいモノで、主に艦娘に対して非道な行いをしている提督がいる鎮守府の事だ。非道な行いとは具体的に言うと休憩なしに連続で出動させる過酷な環境、提督という立場を利用したパワハラセクハラ、などがあげられる。
そんな行為をされた艦娘達は、たとえその状況から解放されても人間に憎しみや恨み、または大きなトラウマなどを負っている事が多く、最悪な場合はストライキを起こして鎮守府に立てこもり、人間に反旗を翻すというケースまである。
佐々木はそんなブラック鎮守府への対処と、解放された後の元ブラック鎮守府の艦娘達のケアを担当しており、先程呼び出した男に、鎮守府の異動通知を出したばかりだった。
他の仕事もある佐々木は、忙しく、いちいち提督一人一人の顔を見て判断を下している時間がないために、ある程度の実績を上げていて深海棲艦があまり来ない鎮守府の提督を選び、異動手続きをして呼び出したワケだが、しかし、呼び出した提督がとても心の傷ついた艦娘達と対話できそうな人間ではなかった。
背が高く、老いている佐々木程ではないが身体は細く、顔はとてもいかつい、口調は硬く、しかも佐々木が言った冗談に対しても全くの無表情で、こんな人間と元ブラック鎮守府の艦娘を会わせたら間違いなく何らかの問題が起こる、佐々木も、大淀もそう確信していた。
しかし、手続きは終わっていて、今更取り下げる事は出来ない、大本営は忙しいのだ、そんな暇さえない。
佐々木が艦娘を愛するがために相手が拒否できないようにして呼び出したのだが完全にそれが裏目に出てしまった結果だ。
「何も起こらない事を祈るしかないのぉ」
「そう……ですね」
二人は不安を心に抱えながらも仕事をするしかなかった。
だが、二人は知らない、その提督の事を、そして従える艦娘の事を、その二つの要素が合わさった力を―――
日差しが注ぐ大本営出入り口の門前、憲兵に敬礼をして一人の男が外に出てきた。
男の名は
本来は鎮守府で働いている青悟は大本営での用事を済ませたばかりだった。
「お! やーっと終わったんか、待ちくたびれたわ」
大本営から出てきた青悟は少女に声をかけられた。
サンバイザーをかぶり、髪型はツインテールの少女は青悟の鎮守府の艦娘の一人、龍驤である。
「んで、大本営のお偉いさんはなんて言った? バカンス? それとも泊地殴り込みか?」
「そのどちらでもない、異動だ」
「な~んや、やっぱり大本営はダメやな、おもろないわ」
青悟の横に並んで歩きながら龍驤はため息を一つついた。
「
「そうやなあ、もっと、こう、なんちゅうか酒池肉林! みたいなのちょっち期待してたんやけどなあ」
「成果を上げていないのにもらえるワケないだろう?」
やれやれと肩をすくめた龍驤は、スカートのポケットから煙草を取り出して口にくわえる。 そしてさらにポケットを探る、しかし、目当ての物は見つからなかったようでポケットから手を出した。
「あかんわ、ライター忘れた、提督、火ぃくれへん?」
「今は我慢しろ、こんな道端で吸っていたら大本営の奴に何か言われても文句が言えん」
「そこを何とか一本だけ! ……と言っても許してくれへん顔やな、よしわかった」
口から煙草を取り、ポケットに入れ直した龍驤はどこからか飴を取り出して口に放り込んだ。
青悟はそれを確認すると、渡された書類に目を落とす。
そこには異動通知と異動先の鎮守府の名前、それといくつかの連絡事項が記されていたが、青悟はその内の異動先の鎮守府の名前を見ていた。
「何や、なんかあるんか、その鎮守府」
「噂に聞く元ブラック鎮守府だ、上はよほど人手が足りないらしい、こういう事に適任な奴は他にごまんといるだろうに、困ったモノだ」
青悟自身、自分の容姿、話し方がとてもこの任務に向いていないだろうと自覚していた。しかし、青悟は中佐、相手は大将、自信がなくても逆らったらどんな事を言われるかわかったものではない。なのでしょうがなく反論もせずに受け取ったのだ。
「はあん、なるへそ、提督が嫌なら今からとっかえしてあのよぼよぼジジイにやき入れて取り下げよか?」
「いや、いい、これもいい経験になるだろう」
なので龍驤の物騒な提案を断った。ちなみによぼよぼジジイとは言わずもがな佐々木大将の事である。
「それに、久々に暴れられるぞ」
「……それはうちらが? それとも提督が?」
「もちろんどちらもだ」
二人はどちらともなく不敵に笑みを交わした。そして、しばらく歩き、大本営か離れた人目のつかない通りの方まで歩いていく。風が吹き、そこにはわずかながら血と火薬の匂いが含まれていた。どこからか砲撃音が聞こえるのは演習をしているからだろうか。
「せっかくこんな所まで来たんだ、何か食べてから帰るか、今日は私が奢ろう」
「おっ、ええやん、今月ちょっち使いこんでて手持ちがあまりなかったんや」
「なら、ここの近くに評判の良いレストランがある、そこに行こう」
「決まりやな」
今は平日の昼下がり、大本営までは車で来たので、そのまま置いて遅めの昼食としゃれこもうというワケだ。と、ふと何かを思い出したかのように提督は立ち止まる。
「貴様等も出てこい、私の奢りだと聞こえただろう? 何を食べるか考えておけ、ちなみに洋食だ、食事の後は帰って迅速に引っ越しの準備だ」
提督は辺りに龍驤以外誰もいない道でそう言った。
すると、上から、下から、どこからか、提督の元に少女達が現れる。もちろん彼女達も艦娘だ。
「たいちょ~、わたしはカレーが食べたいです~」
「吾輩はハンバーグとやらを望むぞ」
「姉さんと同じ物でお願いします」
「オムライスだ」
『そんな事より今週のジャンプ買い忘れてたから買いに行くクマ』
「うひひ、わたしはシチューでもいただいちゃいましょうかね」
「昼食より夜食、それより夜戦かな」
現れた艦娘達がそれぞれ思い思いの事を言いながらもしっかり自分の周りに集まって来たのを確認して提督は一度うなづいた後歩きだす。その後ろを騒がしく艦娘達は列を成してついて行った。
次回予告
青悟と付き従う八人の艦娘は、異動通知に従い元ブラック鎮守府へと向かう。
しかし、そこで待っていた歓迎はとても熱いモノだった。
鎮守府の中で爆風が巻き起こる時、青悟の命令が下され、八人の艦娘が動き出したり動き出さなかったりする。
第一話 元ブラック鎮守府、激震
期待しないで待っていてください。