提督と異様な艦娘達   作:ポン酢放置禁止区域

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 お久しぶりでございます、遅くなりましてすみません。
 今回もあまりうまくかけませんでしたが楽しんでくれたら幸いです。
 また、ブクマ及びポイントを入れてくださりありがとうございます。



第十一話 最初の試練

 月明かりだけが辺りを照らす薄暗いある寂れて廃れて崩れた建造物の中に異形の姿があった。

 大きいテーブルを囲い見合う四者はそれぞれ美しい容姿をしていたが、肌は一様に白く、そして眼は薄く光を発していた。

 

「コンドノニンゲンハ……ドンナヤツ…ナノ?」

 

 小柄な体躯に黒いゴシックでロリータな服を着た少女が退屈そうに爪を見ながら声を出す。

 

「ヘンシンガサキホドカエッテキテ……ホウコクヲクレマシタワ……ナマエハオガミセイゴ……ヤッカイナカンムスヲ…ツレテイルラシイデス」

 

 大きいベレー帽を被った女が優雅に微笑み、スカートから伸びるすらりとした足を組み替える。

 

「ドンナヤツダロウトサ……シズメルダケサア!」

 

 和服に膝丈の袴の少女が憎悪を瞳に宿し、笑みを浮かべ、声を上げる。

 その声にゴスロリはため息を吐き、ベレー帽は微笑み、残りの一人、ツインテールでビキニ姿の少女はうつむいていた。

 一言も声を発さないツインテビキニは下を向いたまま他の三人の言葉さえ聞いていないようである。

 その様子を見た和服が眉をひそめる。

 

「ドウシタンダイ? ナニカアッタノカイ?」

 

 その言葉にやっと気づいたのか、顔を上げたビキニの顔は元々白い顔がさらに青白くなったようで、いつも自身に満ちた微笑はなく、恐怖で歪んで震えている。

 

「ヒドイカオデスネ……オガミセイゴニツイテナニカシッテイルノデスネ?」

 

 ただならない様子にベレー帽も声をかける。

 一人、我関せずのゴスロリを除き、二人から視線を向けられ、ツインテビキニは胸に手を当てて呼吸を整え、やっと声を絞り出した。

 

「ヤツラニハ……テヲダサナイホウガ……イイ……シズムヨリモオソロシイ……」

「「ハ?」」

 

 深海棲艦が、沈む、というのは死ぬ時という事、それよりも恐ろしいというのはどういう事か、二人は問い詰めようとしたが、これ以上は話せない、と言わんばかりにツインテビキニは立ち上がり、ふらつきながら逃げるように出て行った。

 彼女に何があったのか、それを聞かずとも今度の人間が連れてきた艦娘はどれほどの力を持っているかが想像できる。

 怯えて追い立てられる羊のような背中を見ながらベレー帽と和服は呆然としたが、つまらなそうだったゴスロリだけは表情が変わっていた。

 

「シズムヨリトハ……ネ……」

 

 面白い事を聞いたとばかりに楽しそうに。

 

 

 

 

「ふぅ、基本的な所はこんなもんやろ」

 

 あの夜から数日経ち、鎮守府に隣接した海の上の演習場にて、開いた巻物に帰って来た艦載機を着陸させた後に巻物を撫でて龍驤は息を一つ吐いた。

 力を求める艦娘達を鍛える役として龍驤と若葉はまず砲雷撃、艦載機の統率等の基礎がどのくらい出来るのかを見ていた。

 ブラック鎮守府だったここにいる艦娘達は、疲労していても休まず出撃や遠征をしていた事もあってか、ほとんどの者がそこそこの練度があり、動きもよく、また、艦隊を組んでの連携もうまく、陣形変更もスムーズ、基本に関してはほとんど完璧と言ってもよかった。

 

「過酷な状況で過ごしてきただけあってなかなかやな」

「あら、そうかしら、最近は出撃してないし体が鈍ったと思っていたけれどよかったわ」

 

 龍驤からいい評価を貰えて陸奥はほっとした顔をする。

 

 前任が捕まってからは近海の哨戒のみで、艦娘達はそのほとんどが心に傷を負って鎮守府にこもっていたが、腕はあまり鈍っていないようである。 久々の運動に少し息を切らしている艦娘もちらほらいたが、それはこれからの訓練をこなすうちに慣れるだろう。

 

「よし、これくらいできるならちょっち休憩した後にあれをやっても大丈夫やな、若葉、ええか?」

「了解した」

 

 艦娘達の様子を見て何かを決め、龍驤はポケットから煙草を取り出しながら若葉に、若葉は首を小さく振って同意する。

 

「あれって何かしら、教えてくれない?」

「ははっ、きみぃ、それは休憩の後のお楽しみやで、まあそんなに驚く事やない、でも結構きつい事になるかもしれんからみんなにもゆうといてな、おーーーーーいっ!!! ちょっち休憩や! しっかり体休めときぃ!」

 

 龍驤はニヤっと笑みを浮かべた後、艦娘達に休憩を指示し、若葉と共に演習場から一度出て行く。

 その背中と意味深な笑みに陸奥は嫌な予感がしたが、追及は出来ず、陸に上がり始めた他の艦娘達の元へ合流しに行くのだった。

 

 

 

 太陽の光が降り注ぐ海の上、青い空を行く小さい影は何だ?

 砲弾か? 鳥か? 艦載機か? いいや、艦娘だ。

 

「ちくしょおっ! 当たれえっ!!」

 

 天龍の叫びと共に放たれた砲弾を拳を振るって弾き飛ばし、ブレザーをはためかせ、若葉は空からやってくる。

 無表情に海面に水しぶきを上げて着水をしたのは輪形陣を組んだ艦娘達のど真ん中、近くにいた長門と素早く距離を詰め、跳んで頭突きを食らわせ、よろめいたところを腕を引いて体勢を崩し、振り回す。

 かつてビックセブンと呼ばれた戦艦を軽々と近くの朝潮に向かって飛ばし、追撃の砲撃を二回。

 駆逐艦故にその威力は直撃でも戦艦である長門を大破にする事は出来なかったが、同じ駆逐艦である朝潮を戦闘続行不可能に追い込むには十分だった。

 それを見て立ち尽くす艦娘達、その中で突然響は肩を軽く叩かれて我に帰った。

 戦闘中に棒立ちをするとは何事か、と慌てて振り向くと頬を人差し指に軽く押された。

 

「よそ見しちゃあかんよ」

「……ハラショぶっ!」

 

 見ればそこには拳を振り上げた龍驤。

 振り下ろされた拳骨は響を言葉半ばで海面にたたきつけた。

 

「実戦の方はまだまだっちゅー事か」

 

 基礎を見たとなれば次は実戦、というワケで今は龍驤と若葉対艦娘達で実戦演習という事になった。

 三十数人程度いる艦娘達に対し二人で相手をするとなるとさすがに力の差があったとしても厳しいモノがある。

 しかし、実際にふたを開けてみれば若葉と龍驤の実力は圧倒的であった。

 若葉の豪快に見えて精密な技がさえわたり、目を惹かれた艦娘達を龍驤が容赦なく叩き潰す。

 それだけで艦娘達は混乱し、バラバラになった。

 

「近づかないでええええ!!」

「来るな! 来るなあ!」

 

 中には錯乱し、叫び散らす艦娘もいて、それがまた艦隊の和を乱す。

 それは実戦をやっていない事で鈍っている事もあるが、理不尽な暴力ともとれる龍驤と若葉の姿に艦娘達の前任の提督に受けた暴力その他のトラウマを呼び起こされている者がいた事もある。

 その証拠に何もしていないのに海面に膝をつき、怯えてうずくまる艦娘がちらほらと見られた。

 ブラック鎮守府の頃に出撃を繰り返し、戦闘経験を積んでいたのは確かだが、それと同時に精神をやられてしまっている艦娘がいる事も確かなようだった。

 倒した響を盾にしながら龍驤は頭をかいてため息を吐いた。

 

「あかんなあ、これじゃあ使い物にならへん」

 

 

 

 

 一方そのころ、静かな執務室に震える艦娘が数名、椅子に深く腰かけた青悟の前に整列して気をつけの姿勢をとっている。

 青悟の他にいるのはこの鎮守府の艦娘達のみで、あの八人の艦娘達の内、龍驤と若葉以外の艦娘は他の任務を受けたり受けていなかったりで執務室にはいない。

 

 そしてこの艦娘達は力を求めない選択をした艦娘達で、それぞれに、資材や備品の数を調べる班、鎮守府内の掃除をする班、艦娘達の制服を洗濯する班等の鎮守府内の事務仕事を担当する班の班長達である。

 戦いに出ないからと言ってこちらも大事な仕事だ。

 業者に頼めばよいかとも思われるが、鎮守府は広い、となると相応の人手が必要になるワケで、青悟に反抗しないとはいえ、艦娘達は人間に慣れたワケではない。

 また、鎮守府には妖精と呼ばれる二頭身程度の小人のような生物も存在し、そちらは主に艦娘の建造や出撃時の羅針盤等をするが、鎮守府全体の管理をするワケではないので、そちらも頼れない。

 なので残った艦娘達に仕事が回ってくる、今はその途中経過の報告を聞く為に班長を集めた。

 

「朝の職務ご苦労だった、それではそれぞれ報告を、そうだな……まずは資材班、潮からか」

 

 が、ここで問題があった。

 艦娘達の中でも力を求めない艦娘は、戦う事を求めない事もあり、おとなしく、また、心が弱っている者ばかりだ、それゆえに、初対面の艦娘を顔だけでビビらせる青悟と相性が悪い。

 執務室に入って来た時点で緊張して足が震え、青悟の前に横一列に整列すれば、青悟の視線にさらされて顔面蒼白な様子にだった。

 そして張りつめた空気の中、青悟から発言を促され、気弱な駆逐艦娘、潮は体を震わせる。

 脳裏によぎるのは前任の記憶、下手な報告をして殴られる、失敗は出来ない。思いが心の中で渦を巻く。

 

「あ、あの……その、あっ――」

 

 そして限界はあっさりと訪れた。

 思い込みによる心労によるストレスで、潮の体からフッと力が抜けて失神し、その場に崩れ落ちる。

 

「えっ? 潮……ちゃん?」

「潮ちゃああああああんっっ!!!」

 

 突然の事に他の艦娘達はパニックを起こし、泣き出し、うろたえ、又は潮と同じように失神をして、執務室は一気に騒がしくなる。

 その中で、青悟は表情を変えず、静かに立ち上がり、騒がしくなった執務室の艦娘達に向かって一つ、声を上げた。

 

「静かにしろ!! 失神した艦娘をベットに運ぶために救護室から担架を運ぶぞ、三人ついて来い、他の奴は失神した艦娘達を見ていろ」

 

 青悟は命令を出して素早く行動に移し、駆けだす。

 先程までうるさかった艦娘達の内何人かははっとして、執務室を出て走りだした――

 

 

 

 

 失神した艦娘達はベットに運ばれ、パニックを起こした艦娘達も落ち着いて仕事に戻る事ができた。

 報告に関しては後でまとめて書類で提出させる事に決まって、途中報告はお流れになった。

 

「かなり心の傷は深いようだな……」

 

 書類にペンを走らせながら青悟は先程の艦娘達の様子を思い出す。

 前任の植え付けた人間への恐怖や不信は艦娘達に思いのほか深く刻まれているようである。

 だが、力を求めない艦娘達でも、この世界で生きるには人間とある程度はコミュニケーションをとれなければならない。

 これからどうするべきか、思考しながらも青悟は書類を処理していくのだった。




次回予告 未定

 十二月中には投稿します。
 筆の遅い私ですが、読んでくださりありがとうございます。
 
 次回も期待しないでお待ちください。
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