提督と異様な艦娘達 作:ポン酢放置禁止区域
こんな作品がこんなに評価を貰えるとはさっぱり思っていなかったので嬉しい限りです。
それでは今回もおかしい所ばかりかもしれませんが読んでくださってありがとうございます。
「という事でこれが提督からの答えよ」
「ふん、口ではどうとでも言える、前任の時もそうだった」
陸奥から青悟の答えを聞いた長門は顔をしかめてそう返した。
青悟との執務室での質疑応答の後、寮に戻って来た陸奥は集まった艦娘達に青悟の答えを伝えていた。
だが艦娘達は大体が長門と同じで厳しい表情をしている。
直接会った陸奥は青悟の態度から全く嘘を感じず、信頼に値すると判断したが、他の艦娘は違う。
やはり人間を信じることが出来ず、青悟の言葉を額面通りに受け取る事が出来なかった。
「そうだ! 長門さんの言う通りだ! あの野郎も人間、きっと最初はいい顔をしておいて後で裏切って、つうっ!」
長門の言葉に同調して叫んだのは天龍、夜中に青悟に返り討ちにされた傷が痛むようで、胸の辺りをおさえた。
「もし提督がそんな人間だったら今頃あなた達もわたしも殺されているわよ、わたしはこの答えを、あの尾上提督を信用するわ」
「陸奥!? どういう事だ!? まさか、執務室で洗脳でも受けたのか?」
「受けてないわ、心配しないで、わたしは自分の眼で見て、自分で判断したの」
陸奥の言葉にざわめく艦娘達、陸奥はその輪に背を向けた。
「どこへ行くんだ陸奥!」
「部屋に戻るわ、伝える事は伝えたし、後は自分達で決めるの、どうするかを、ね」
動揺する艦娘達にちらり目をやった後、陸奥は静かにその場を去った。
後に残された艦娘達はいつもであれば自分達を率先して導いてくれる陸奥の態度の変化に驚くばかりだった。
「陸奥さんはあの野郎に洗脳されたんだ、畜生、あの卑怯者め!」
その中で怒りに顔をゆがめる天龍以下数名が艦娘達の中から抜けたのに気付く者はいなかった。
『ひま~クマ~、これはヤングジャンプにも手を出すべきか迷うクマ』
「ひまなら体でも動かしてみたらどうや? ずっとソファに寝そべって漫画読んどったら鈍ってまうし」
『嫌クマね、体なんて動かしたら筋肉痛で逆に動けなくなるクマ』
「そんなにひ弱なワケやないやろ!」
陸奥が来てから日をまたぎ、ついに今日、食堂にて艦娘達の意思を聞く日となる。
あの陸奥の後に部屋に来る艦娘はいなかったが、青悟は執務室にいて、書類にペンを走らせていた。
青悟以外に執務室にいるのは龍驤、球磨、まるゆ、明石、若葉、川内、利根、筑摩、青悟が連れてきた艦娘が全員そろい、思い思いの事をしている。
ヒトマルマルマルを少し過ぎたくらいの時間、食堂に艦娘達を集めるのはヒトヒトマルマルなのであと一時間ほどで艦娘達の決断を聞く事となる。
青悟は緊張とは無縁の顔をして、コーヒーを飲んでいた。
『ひ弱どころか最弱クマ、この前も建造したての駆逐艦に演習でやられちゃったクマ』
「あっ!! あの使いもんにならなくなった長月はあんたのせいやったんか!!」
ソファに寝そべる球磨とたばこを咥えた龍驤も普段と変わらない会話を続けている。
川内は青悟の上の天井に両足をついて立っている
「うひひひ、そういえば提督、聞き忘れてたんですけど聞いてもいいですかね?」
「何だ?」
青悟の執務机の前に椅子を置いて一緒にコーヒーを飲む明石が人差し指を立てた。
「求めるなら与える、求めないとしても事務をしてもらうっていうのはいいですけど、それ以外だったらどうしますか?」
「具体的には?」
「食堂で集まった時にまだ、うひひ、ドンパチしようとしたらって事ですよ、」
怪しい笑みを浮かべながら明石はコーヒーを一口飲んだ。
青悟はその質問に一度目を瞑り、一つ息を吐いた。
「まだそんなヤツいたら、それはそれで受け入れるだけだ……敵として」
青悟の言葉に、執務室の中にいつの間にか設置された座敷の上で藍色のひじ掛けに寄りかかった利根が視線を向けた。
「なら容赦はしないでいいという事じゃな」
「そうだ」
青悟はうなずきながら答える。
その答えに八人の艦娘達はそれぞれ笑う。
「そうか、礼儀を知らん奴には灸を据えてやらんとな」
「ふふ、姉さん、あんまりはしゃぎすぎないでくださいね」
「この瞬間を待っていた」
「そうやなあ、やられっぱなしっちゅうのはいい気がせえへんし」
「新しい薬の実験にちょうどよさそうですね」
「ふあぁ~、夜戦じゃないのが残念だけどね」
「まるゆもお役に立ちます!」
『やれやれ、みんな血の気が多いクマ、あれだけやられたのにまた挑んでくるおバカちゃんなんているわけないクマ』
食堂に艦娘達が集まる時間まであと少し、青悟はコーヒーを飲み干した。
艦娘達は整列し、青悟を待っていた。
ヒトヒトマルマルの五分前、艦娘達は緊張しながらも青悟の事を待っている。
着任式の時とは変わって、不安を抱える艦娘達が話しているので騒がしい。
だが、そのざわめきもドアが開くと共に静まりかえる。
青悟以下艦娘八名がゆっくりと入ってきて、艦娘達の前に出る。
今回も司会進行として立たされた大淀が緊張した面持ちでマイクを手にして口を開く。
「て、提督が来ましたので、総員、敬礼!」
大淀の号令に従い、艦娘達が青悟に向かって敬礼をする、しない者もいくらかはいるが。
青悟もそれに敬礼で返し、大淀からマイクを受け取った。
「貴様等、決断できたか? 二日も与えたのだから十分だと思うが一度選んだら後悔のないように、と言いたいが貴様等は未熟だ、選択を誤る場合もあるだろう、後から選択の変更をしたいならば一応聞いてやる、後は特に話はない、貴様等の答えを聞くだけだ、力を求めるか、否か、挙手で聞こう」
一度、口元からマイクを離して青悟は艦娘達の顔を見渡す。
その時だった。
「その必要はねえ!! てめえはオレ達がここで殺すんだからなあ!」
艦娘の列の中、天龍が叫んだ。
その手には何かのスイッチを持っていて、スイッチから伸びた黒いコードの先は床に埋まっている。
天龍がそのスイッチを振り上げて、勢いよく押す。
すると青悟とその後ろに並んだ八人の艦娘達の床に仕掛けられた爆弾が爆発した。
完全なる不意打ち、対応しようのない足元からの爆発。
天龍や龍田、他数名の艦娘は資材倉庫から弾薬や燃料を盗み出し、高威力の爆弾を作り、食堂の床、着任式の時に青悟や他の艦娘が立っていて辺りに仕込んだのだ。
これで青悟が細切れの肉片に、付き従う艦娘達も死にはしないだろうが重傷を負わせ、抵抗できなくできる。司会をやっていた大淀は全く関係ないのに巻き込まれているが、人間がいなくなった後に治療してやればいい。
「やったかしら~~?」
「ははっ! 龍田、それは禁句だぜ、と言ってもこれで死なないわけがねえけどな」
艦娘達の間を縫い、人間を信じず憎む艦娘達が集まって前に出てくる。
「あなた達、なんて事を!」
「陸奥さん、あなたは洗脳されているんです、落ち着いてください、あの野郎はオレ達がぶっ殺したんで」
「わたしは洗脳なんかされていないわ!」
「洗脳されているやつはみんなそう言う」
陸奥が叫ぶが天龍達には届かない。
爆発の煙に包まれる食堂、静かに艦娘達は煙が晴れるのを待った。
おそらくは生きていないだろうと誰もが思っている沈黙の中―――
「貴様等は第三の選択を選んだという事だな?」
マイクに乗った青悟の声が響いた。
煙が晴れる、その向こうには相も変わらず汚れ一つない白い軍服の青悟が立っていた。
いつもは表情があまりないその顔は厳しくしかめられている。
その目は冷たく、まるでゴミを見るかのような目で反逆する艦娘達を見つめていた
「私達の敵になるという選択、後悔しないといいな」
第六話 徹底的に骨まで残さず
青悟に向かって再び武器を向けた艦娘達、それは明確な敵対の証。
敵ならば容赦はしない、憎悪に燃える艦娘達がその砲を向ける時、青悟と艦娘達はその力を存分に振るう。
果たして青悟達の力はどれほどのものか。
敵対した艦娘達はどうなるのか。
次回も期待しないでお待ちください。