提督と異様な艦娘達 作:ポン酢放置禁止区域
書き溜めをする、といったのですが、さっぱり出来ずすいません。
これからも勢いで書いていきます。
それでは、またおかしい所ばかりかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。
食堂での一件から数時間後、爆発によって荒れた食堂の修理を妖精と今回反逆した艦娘達に任せ、青悟は執務室に帰って来て執務机についている。
八人の艦娘達も各々執務室の中に散り、それぞれの場所でくつろぎ始めた。
一人気絶した球磨はソファに運ばれて目を回している。
煙草の煙を執務室の中に放ちながら龍驤がため息を一つ吐き、首を回す。
「久々のドンパチやったけど歯ごたえなかったな」
「わたしは実験が出来て満足ですね、うひひ、お茶淹れますけど飲みます?」
「そういえば明石さんが薬打った人、みんな悶えてびしょぬれでしたけど何のお薬だったんですか~? あっ! まるゆにもお茶下さい」
「青悟よ、我輩をもっと目立たせぬか、今回のようでは若葉ばっかり目立っていかん」
「姉さん、提督をあまり困らせないでくださいね」
「夜まで寝るから起こしてね」
「コーヒーだ」
騒がしい執務室の中、青悟は黙って書類に目を落とし、何を考えているのか、眉間にしわを刻みながらペンを走らせる。とても先程の反逆者の制圧を喜んでいるようには見えない。
それを見てまるゆは首をかしげる。
「たいちょ~、何かあったんですか?」
「今は特に何もない、がまだまだ安心するのは早い」
青悟の言葉にまるゆは首を傾げ、龍驤や利根は眉をひそめた。
艦娘達は力を求め、青悟を提督として認めたのだから問題ないのではないか。また反逆される恐れがないように自分達が力を示し、憧れと畏怖を心に刻んだのだ。これ以上に何の問題があろうか。
「なんかあるんか?」
「まだ貴様等に話す事ではない、時が来たら話す」
視線を向ける龍驤を見ずにそう答え、青悟は書類を見ながら明石からもらったカップに口をつけた。
言葉通り話すつもりはないらしい事を感じ取った龍驤はそれ以上聞かず、肩をすくめてたばこを。
「そんな事より我輩が目立つ機会が欲しいのじゃ」
利根は立ち上がり、青悟を指さし、そう要求する。
先程言っていたように若葉ばかりが拍手喝采と歓声を貰い、自分が目立たなかったのが気に入らないのだ。
不機嫌な利根のツインテールが風も吹いていないのに浮き、さらに執務室全体がきしむ音を発する。彼女の怒りを表しているかのようである。
ついには鎮守府全体を揺らし始めた大地震となる中、執務室の艦娘達の特に動じておらず慣れている様子。
執務室の外、他の艦娘達は突然の地震に大騒ぎになっているがそれは別として、青悟が顔を上げて利根に視線を向けた。
「それなら貴様にぴったりの仕事がある、それだったら目立てるぞ」
「本当なんじゃろうな」
青悟の目をじっと見つめる利根に青悟は表情を変えることなく見つめ返す。
「私が貴様に嘘をついたことがあるか?」
「………よかろう、してその仕事とは?」
「ああ、それはな――」
鎮守府の揺れが収まり、艦娘達に平穏が帰って来た。
どうやらお気に召したようだった。
時間が経ち、夜、ちょうど日が落ちた時間、艦娘達は食堂に集められていた。
爆発や戦闘の後は少し残っているものの、食事を行う艦娘全員分のテーブルを並べる分には問題ない位の跡だ。
そして艦娘達はそんな戦いの跡など全く気にする場合ではなかった。
差はあれど皆高揚した様子でテーブルの上に並べられた豪勢な料理やスイーツ、酒に目を向けている。
この鎮守府に属する艦娘達はこんなにたくさんの食べ物が並ぶ光景を見たことがないのであれは何の料理か、とかあの酒はうまそう、だとかを口々に言っている。
そんな食堂のドアが開き、青悟と八人の艦娘達が入ってきた事で艦娘達は静かになる、人間を見ると緊張や恐怖を覚える艦娘はいるが着任当時に比べると敵意を向ける艦娘はほとんどいなくなっていた。反逆した艦娘を許したことによって艦娘達の中で青悟の評価が上がったのだろう。
そんな艦娘達の前に青悟と八人の艦娘は並ぶ、昼間は司会をしていた大淀は他の艦娘達と同様に集められた側なので今回のこの集会に司会はいない。
だが、事前に段取りは決まっていた。
青悟の横に立った利根の手にはマイク、一歩前に出て、堂々と胸を張り、利根は口を開く。
「皆、知っておろうが改めて名乗ろう、我輩が利根である! さて、今日はこの鎮守府にとってめでたい日じゃ! 皆が最初の選択をし、新たなる世界へと足を踏み出したとても素晴らしい日じゃ! 今日という日を祝い、明日からの日々の息災を願い、大いに飲み、大いに食べ、大いに騒ぐがよい! さあ、杯を持て!」
利根の号令に艦娘達はテーブルに置かれたガラスのコップに飲み物を注いで持った。
青悟と横に並ぶ八人も同様に注いだコップを持つ。
そうして全員が準備が出来たのを確認し、利根は一つうなずいてコップの中身がこぼれんばかりに勢いよく空中に突き出した。
「乾杯じゃあっっ!!!」
「「「「「乾杯!!!」」」」
食堂に集まった艦娘達は利根の号令と共にコップを上にあげて皆嬉しそうに言い、近くにいる仲間達とコップをぶつけて音を鳴らす。
「んぐんぐっ… ぷはあ~~! 青悟、我輩は満足じゃ!」
「そうか」
コップの中身を勢いよく飲み干した利根が大きく息を吐き、満面の笑みを浮かべる。ちなみに一息に飲み干したのはオレンジジュースだ。
「注いでやる、コップを出せ」
「おっ! 気が利くのう青悟、ありがとう」
「貴様も今日は働いたからな、存分にやれ」
「はんっ! あんなの造作でもない、そして言われるまでもなく楽しむわ! ちーくまあー! 我輩もふらいどちきんをいただくぞ!」
「はいはい、姉さん、急ぐと転びますよ」
執務室や先程の号令で見せた威厳はどこへやら、ごちそうを目の前にして子供のようにはしゃぐ利根を見送り、青悟は酒を飲み、コップを置いて、艦娘達の様子を眺めて一つうなずく。
『と~りあえずひと段落ついたって感じクマね、提督、もっと飲むクマ、鎮守府のトップなんだから他のみんなが躊躇しないように率先してお手本になって飲みまくって泥酔するクマ』
その背後からふらりと現れた球磨が青悟にしなだれかかり、腕にしがみついた。
龍驤にやられて受けた傷はどこへやら、普段のようにへらへらとしながらも見事に酔っぱらった赤ら顔、乾杯の時の一杯ですでに酔っぱらっている。
駆逐艦どころかアルコールにすら負けそうで、すでに目の焦点がちぐはぐだ。それなのに舌はよく回る。
「貴様で十分お手本になっているから私がやる必要はないな、しっかり立て、出来ないなら部屋に送るか?」
『泥酔した女の子を部屋に連れ込んでいかがわしい事をするつもりクマ? そういえば憲兵はこの鎮守府には配属されていないクマ、その利点を利用するとは、さっすが提督、用意周到クマ~、神の英知とはこのことクマ』
「床で寝たいなら特に咎めないぞ、この鎮守府には酒好きの艦娘もまあまあいたから酒臭い泥酔した奴らと一緒に仲良く寝ればいい、今日くらいは羽目を外しても構わん」
『さあ提督、泥酔の球磨を連れて行くクマ』
艦娘の中には四六時中酔っぱらっているような奴や、酒が絡むと別人になる奴がいる、そんな奴らに挟まれてまともに寝れる未来はない。
球磨はその点を知っているのでおとなしく青悟の背に乗り、介抱を要求する。
「最初からそう言え」
『あ~意識がもうろうとしててよくわからないクマ』
聞こえないふりに聞こえるかもしれないが、実際に球磨の意識は朦朧として、今にも途切れてしまいそうな危うさがあった。そんな中で軽口を叩ける精神力はある意味見上げたものだと言えよう。
「龍驤、少しの間頼む、私はこの酔っ払いを運ぶ」
「ん? ああ、飲むなって前にもゆうたのにまた飲んだんか、いってらっしゃい、まあ別に何も起こらんやろ」
「礼を言う、だが警戒はしておけ」
青悟はそう言い残し、球磨を背負って食堂から出ていく。
「あ~あ、せっかくの飲み放題食べ放題なのにまだなんかあるっちゅうんか」
龍驤は酒の入ったコップをテーブルに置く。
龍驤としては何もないと思っているが、青悟が警戒しろと言っているならそれに値する何かが起こるのかもしれない、とすると酒を飲んで酔うのはあまり望ましくない。
他の艦娘が大いに飲み騒ぎ、徐々に騒がしさが増していく食堂を警戒して見回しながら龍驤はため息を一つ。
青悟が出て十分くらい後、食堂の扉が開かれ、一人の艦娘が入ってきた。
ふらふらとふらつきながら気持ち悪い足取りで龍驤に近づき、話しかけてくる。
『いや~ぐっすり眠っちゃってたクマ、本当に龍驤ちゃんは馬鹿力なんだから困っちゃうクマ』
「は? あれ? 球磨? キミさっき青悟におぶられて一緒に出て行かへんかったっけ?」
『龍驤ちゃん何を言ってるクマ? 球磨はさっき目覚めたばっかりクマ、それとも龍驤ちゃんは球磨が心配で幻覚を見ちゃったクマ?』
「ちゃうわ! さっき確かに酔っぱらったキミを青悟が運んで行ったんや!」
『え? じゃあまさか今ここにいる球磨の方が幻覚だったクマ? 衝撃的な事実クマ!』
「ゆうてる場合か! ヤな予感がする、青悟を探しに行くで!」
へらへら茶化す球磨を置き、龍驤は食堂を飛び出す。
走りながら艤装を展開して巻物の封を解き、艦載機を呼び出すと、青悟を探すためにそれを鎮守府の中に大量に放つ。
その脳裏に執務室での青悟の表情を思い出し、最悪の未来を頭によぎらせながら鎮守府の中を全速力で駆けて行った。
次回予告
青悟と共に食堂を出た球磨と食堂に入って来た球磨。
二人いる球磨に嫌な予感がした龍驤は鎮守府を駆ける。
果たして青悟の身に何かが起こってしまうのか。
期待しないでお待ちください