俺達と神達と空想神話物語   作:赤色の魔法陳

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 こんにちは。
赤色の魔法陳です。
 今回から本格的にストーリーを進めていきます。
楽しんでいただけると幸いです。


第1章 俺と呪文とまだ始まらない物語
プロローグ


 空気中に飛び交う埃が日を反射して煌めいている。それを掻き分けるように階段を昇る。咳き込んでしまわないように制服の袖で口元を塞ぎながら一段一段と踏み締めた。

 

 踊り場を越えて二十段程上れば目の前に見えたのは屋上へと続く古びたドア。

 

 手を掛けただけで軋むような取っ手に手を置きゆっくりとドアを開けて屋上へ出る。

 

 急に目に入ってくる光を遮るように腕で顔を覆い、しばらくして目が慣れると腕をどけて空を見上げる。頭上に広がるのはこんな日にふさわしくない青空。

 

「爽やかに来い、ってことかよ」

 

 2321年4月5日

 

 自分が通う私立神聖学園の入学式の日。

 

 今年もこの学校に沢山の後輩が入って来た。まぁ全員と関わることはないだろうが。生徒会長が満足した様子で彼らに挨拶をしていたのを思い出す。

 

 今は午後、既に入学式は終わっている。

 

 何故今、屋上に居るのか。それはただ単に独りになりたかったからだ。忘れもしない毎年入学式の季節にやってくる、

 

 

 姉貴の命日。

 

 姉とは言っても実姉ではない。姉貴分、いや師匠と言うべきだろうか。結局自分と何歳離れていたのかは定かではないし実力も計り知れなかった。俺よりも遥かに強かったのは理解していたがその正体は結局わからずじまい。だが見た目の割に歳はとっていたような気がした。

 

 姉貴と会ったのは何年前だったか、多数のヤンキー相手に汗一つかかずに制圧した所を見た俺はその技を教えて欲しいと頼み込むと難なく弟子として承諾された。最初の方はお遊び感覚でもう一人誰かを連れていたが、もう一人の方はすぐに顔を見せなくなった。姉貴は俺にとって優しいという訳ではなく厳しかった。俺はよくもう一人の方に慰めてもらった。そっちも確か歳上の女の子だったっけ、結局来なくなってからはどれだけ悔しくても誰も慰めてくれる事はないのが普通なんだと実感した。

 

 その姉貴とやらの本名はもう一人の子が言っていたような気がしたがもう忘れてしまった。向こうも俺を名前ではなくガキと言っていたので俺らの間に名前など必要なかったのかもしれない。

 

 姉貴からは戦闘の基本を叩き込まれた。それは俺から志願した事だったが。彼女は古今東西の武術を極めたかのような口振りで時に無口に、時に軽口を交えて俺に技術を教えた。その甲斐もあって今では当初の姉貴のように例え刃物を持っていたとしてもチンピラ程度ならば何人だろうが難なく制圧出来る程の力は付いていた。

 

「おい、その顔は何だよ?俺をからかっているのか?それとも...俺を恨んでいるのか?」

 

 誰もいない屋上でただ一人、青空に向かって話しかける。もはや毎年の俺の恒例行事となっていた。

 

……俺、周りから見れば大分イカれた奴だろうな

 

 誰がどう見てもそうである。だから雰囲気だけでも感傷に浸りたいから独りになりたかったんだが。しかも場所が場所なので自殺さえ疑われてもおかしくはない。

 

「心配すんなよ、あんたの弟分(ガキ)、神木 零矢(かみき れいや)はこうして生きてる。あんたの仇を討つのでもなく普通にな。……大丈夫、仇はいつか必ず討つ。だからそっちで休んでな、そっちならラファエルとか、もしくはルシファーとか居たりして?」

 

 仇...姉貴が死んだのは俺の責任でもある。悪い夢のように最期の時を思い出しながら俺は今の自分なら必ず救う事が出来ると考えるようになった。姉貴は殺されたのだ。俺が駆けつけた時にはもう間に合わなかった。そこには息絶え絶えで血だらけの彼女が横たわっていた。

 

 駆け寄って少しやり取りをした後、後ろにいた誰かに投げ飛ばされて気絶した。それがきっと仇である。起きた時には既にそいつはいなかった、姉貴の遺体もなかった。

 

 夢でも見てたのか、たまたま夢遊病でこの場所まで来ただけで帰ればいつも通り厳しい姉貴と会えるのではないかと思った、自分の腕を見るまでは。

 

 まるで自分が出血しているかのようにベットリと乾いた血が付いていた。姉貴が横たわっていた所にも。それで俺はこれが悪夢よりも残酷な現実だと気付いた。こうして簡単に運命とは理不尽にも俺の目の前から大切な人を奪っていく...何度も。

 

 だから仇を取るために、それ以前にもう誰かを失いたくないという思いでこの五年間がむしゃらに己を鍛え続けていた。たが、果たして本当に成長出来ているのだろうか。後悔と自責に押し潰されそうになる度に軽口で心を軽くしようとする癖も治らないまま、強くなれたと言えるのか。

 

 そんな事を思いながら淡々と独り言を喋っていると背後でドアが開く音がした。

 

……ヤバッ、変な奴に思われる‼

 

 咄嗟に何もなかったように、まるで景色が綺麗だと言わんばかりにおでこに手をかざし、山の方を見る。血生臭い事を考えていた数秒前の感覚とは正反対であり、その転換と緊張から変な汗をかいた。

 

……それにしても俺以外に屋上に来る人なんて珍しいな、新入生か?

 

 そう思って恐る恐る振り向いた__

 

()()()()()

 

……え、何で?

 

 俺が見たのは相手の顔だったはず、なのに何故だ?何故俺の目には青空が映っている?

 

 思考をめぐらせる。たどり着いた答えは一つだった。

 

「もしかして、落ちてる⁉」

 

……ヤバい屋上って五階だったよな。そんな高さから落ちたら...

 

 スプラッシュ、確実に死ぬ。

 

「クソッ、嘘だろ⁉ 嫌だ、まだ俺は死ねない、死ぬわけにはいかない‼ 姉貴の仇を取るまで、俺はッ」

 

 そんな思いもむなしく、地面は近づき青空は遠のく。

自由落下をしているはずなのに、ゆっくり落ちている気がする。これが走馬灯というやつか。思い出が流れるんじゃないのかよ。

 

……もう無理だ

 

 そう思いながら俺は心の中の最後の希望にすがりつく。

 

「神様ッ、俺をッ‼」

 

 言い終わる前に、全身に衝撃が走った。

 

「おい‼今誰か落ちたぞ‼」

 

「なんだと‼どこだ⁉」

 

 薄れ行く意識の中これが死と言うもので何の前降りもなく理不尽に襲って来るものなのだと自分に言い聞かせる。心の中の神を怨みながら俺は目を閉じた。最後に映っていたのはやはりこんな日に相応しくない綺麗な青空だった。

 

 

※ ※ ※ ※ ※

 

 

……あれ、ここどこだ?

 

 目覚めたのは薄暗い空間。まるで宇宙のようにどこまでも広がる暗闇。手を伸ばしても距離感が全くわからず何か置いてあるのか壁があるのかすら判別不可能だった。はっきりしているのは今自分が立っている地面があるということと自分の姿だけだ。

 

……何だここ?どこまで続いて...

 

 何か掴めるものでもないかと恐る恐る右手を前に伸ばしていると

 

「お?やっとお目覚めか?」

 

 と不意に後ろから声をかけられ驚き、振り向く。

 

「うわっ、誰だあんた⁉」

 

 そこにいたのは、暗闇の中でもはっきりわかる腰近くまである長い銀髪を細長い指先でいじりながら立っていた妖艶な女性だった。美人なのだろうがどこか近寄りがたい雰囲気を感じる。

 

「あんた、はないだろ。命の恩人に」

 

「え?命の恩人...?」

 

……どういうことだ?というかこの場所は何なんだ?

 

「お前さっき死んだろ?それを私が助けてやったの。ほら、最近流行りの転生の時に出てくる女神的な...」

 

「え、ちょっと待て、俺やっぱり死んだの?じゃあ何で俺は今...ってかここどこなんだよ」

 

「当たり前だろ、あの高所から落ちて無事なわけあるか。まったく一度に何個も質問をするんじゃない、質問の多い奴はモテないぞ。いいか?お前は一度死んだ、それは間違いない。だが私の力で生き返ることができたということだ。つまり私は命の恩人ってワケ、はい拍手~」

 

……いや、モテないは余計だしノリが意味わからない

 

「本当か?」

 

「ああ、って言っても信じられないだろうし、まぁ信じてる体で続き話すけど今のお前は仮の体だ。いつまで持つかわからない。だからお前は...」

 

 言っている意味がわからない。こいつ適当に言ってるんじゃないだろうな。

 

「じゃあ結局俺は死ぬのか?」

 

「話の途中だ、静かに聞いてろ。クソッ、萎えてどこまで話したか忘れたわ。とにかくいいか?お前目覚めたら十六時過ぎに学校の近くの占い館に行け、そこで一番の占い師がいいですって受付に言え。後は、その占い師に聞け」

 

 話を遮るのが琴線に触れたらしく煩わしそうに頭を掻いた銀髪の女は説明を省略し、あっち行けと言うように手を振った。話忘れるの早すぎだろ。ってか話の展開が唐突すぎる。

 

……占い館?そういえば家の近くにあってよく広告が家にあったような...あんな明らかに怪しい所興味あっても行かなかったな、って

 

「おい、結局あんたは何者なんだ⁉」

 

「あん?だ、か、ら、あんたはないだろ。私はそうだな...

 

 “神”

 

とでも言っておこうか」

 

“神”と名乗った女性は不敵な笑みを浮かべる。

 

「“神”、だと?」

 

 こいつは本当に神仏の類いなのか俺が怪訝な顔をしていると、話終えて満足したのか

 

「ああ、そういうこと。人が呼ぶには大層な名だろ、じゃあ以後お見知りおきを。チャオ~」

 

 と言って気だるそうに右手を振るとその手を俺に向ける。“神”が右手をかざすとそこから衝撃波のような物が出てそれに触れた俺の身体に衝撃が伝わった。

 

 俺の意識は再び途絶えそうになる瞬間、“神”は倒れた俺の近くにやってくるとこう呟いた。

 

「せいぜい頑張ってくれよ、〇〇〇が選んだんだからな」




 ※ ※ ※ ※ ※ は、時間の経過や、視点の変更の際に使います。
ご了承ください。
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