「あの毎回思うんですけどあらすじだけテンション高くないですか?」
「本編に明るい描写が一切ないからバランスをとってるんです!さて、そのあと犯人探しの依頼を改めて受け、推理していくと、ある人物にたどりついたのでありました」
「そういえば現行ライダーでもまさかのジーニアス出ましたね」
「カラフルだよね♪じゃないし!もう後輩クン邪魔しないで!こうして『天才』の作戦が始まるのでした」
「そう言えば最後のGK銃って何だったんですか?名前がダサ...」
「『フリーズベント』。はい、では本編どうぞ♪」
四月二十五日火曜、七時。
「詰め込んだ?」
「一応God-tellに入れ終わりました」
私達は今ラボにいる。天界ノ書を取り返せるかもしれない今日の為に準備をしているのだ。とは言え、実行するのは二人の後輩であり、私は結果を待つだけとなっている。
「じゃあ家に戻ってご飯食べよう...気を付けてね」
「...はい」
このまま何もなく成功してくれれば何も問題はない。心配なのは戦闘だが、神の力もあるから大丈夫なはず...
※ ※ ※ ※ ※
「あの~、破神先輩いらっしゃいますか?」
……予想通り変な風に見られてる
「あいつなら購買じゃね?」
「そうですか、ありがとうごッ、ございましたッ」
ヤバい、緊張して噛んでしまった。というか何で僕が引き付け役なんですか、先輩方...
元々演技なんてやったことが無いので正直めちゃくちゃ怪しい奴に見られてる気しかしない。こんな事ではターゲットに嘘がバレてしまう。
気を引き締め、ターゲットを探す。
……えぇと、黒い長髪っと、っていっぱいいるじゃん!まずい、昼休みが終わる前に探さなきゃいけないのに!
するとそこにツインテールにした青色の瞳をした人が歩いて来てぶつかってしまった。その人の財布が落ち、生徒証が顔を出す。
「ごっ、ごめんなさい」
「……いえ」
「あの、落ちました。ええとはッ...破神さん?」
まさかのターゲットに遭遇。この人が...あのマント人間なのか?
「……どうも」
生徒証をスッと取って隠すようにしまいすぐ立ち上がって行ってしまう。あぁ、脚白くて綺麗だったな...じゃなくて‼
「あのッ‼お話があるんですけど!中庭にでも」
まずい、大声で叫び過ぎた。公開プロポーズみたいなものじゃないか。断じてそんなつもりじゃないですから!悪い事をしていないのに何か周りの目線が気になる。
「いいよ」
周りから黄色い歓声があがる。だからそういうのじゃないから!命掛けなんだから!
※ ※ ※ ※ ※
何とか中庭まで連れて来ることが出来た。人目もないし話を切り出すには丁度良い。
「あの、寮で聞いてるかも知れませんがチンピラに絡まれた時に助けてくれた人にお礼を言いたくて探してて、破神先輩が凄いその人に似てるんですが...」
もちろんこれは真っ赤な嘘だ。まずチンピラを見たことがまだない。
「十九日の二十時頃どこにいましたか?」
すると間髪置かず、
「……何か勘違いしてる。……それ私じゃない。違う人。……それに確認するだけでいいのに時間まで聞く理由がわからない」
と、答えられたまずい、痛い所を突かれている。零矢先輩はまだ来ない。このままでは逆に警戒されて、僕も狙われるかもしれない。
「……あなた何か理由があるの?」
どうする⁉どうする⁉この人の前で能力を使うわけにはいかない。あぁ、もう!ごめんなさい、零矢先輩。
「り、理由と、言うか、僕が何の策も無しにここに来たとでも、思いましたか?」
そう言って三階の先程行った彼女の教室の辺りを指差す。これは話が詰まったら使えと言われた言葉だ。負け惜しみみたい?皆まで言うな、黙っとけ。
どうやらその意図を理解したらしく、校舎に戻ろうとする彼女の前に...零矢先輩が窓から飛び降りてきた。
「欲しい物はこれか?ゴブリンごときじゃ俺みたいなのが来たら護衛できる訳ないっての」
先輩は手に博物館で見た天界ノ書と同じ物を抱え、地面に叩き付けたもう片方の手の下には石のような物が転がっていた。タイミングギリギリ過ぎやしませんかね。
「……あなた、それを盗った意味がわかってない。……ここにいる私達皆同じ。……人に嫌われる。……だからそれで人を滅ぼす。……だから返せ泥棒」
彼女はその青い瞳で先輩を見下す。その目はここからでもわかるほど殺意と...哀れみのようなものが伺えた。だけど皆同じってどういう事だ?
「泥棒はお前もだろ。博物館からこれ盗って、ウィッチさんから技術を盗って、そんなコソ泥集団に泥棒なんて言えるのかよ」
「……お前、最初から何かムカつく。……心がおかしくなる。……殺す」
彼女は前に一歩踏み出したかと思うとその綺麗な脚を先輩の顔面めがけて蹴りあげた。瞬間の出来事に思考が追い付かなくなる。
「あっぶねぇ」
先輩はその一撃を両腕をクロスして受け止めていた。彼女も彼女だが先輩も先輩だ。反応速度が桁違いである。
が、彼女は受け止められた右足を軸に軽く地面を蹴って左足で先輩の右肩を蹴る。ガード出来なかった先輩は左へ倒れた。今の動き重力に逆らってない?
「おいおい、重力無視してんのかよ。だったら...」
先輩は倒れながらもGod-tellのボタンを押す。話には聞いていたが神の力を宿して戦うのだろう。先輩の身体に踊り子のような服が出現して、頭髪が伸びていく。やがて前に見た女の人のような姿に変わった。衣装際どッ⁉
「『変身』...天宇受売命」
先輩はボクサーのように足でリズムを取る。
「……神力?」
彼女が怪訝そうな顔をする。ってか僕は何で意気揚々と実況してんだ。戦わないと。
「ほいよ、翔」
「うわっと」
先輩が投げて来た銃を受け止める。ってよりによって『電気銃』か...気絶した経験があるのであまりいい思いはしないが仕方ない。
銃を構え彼女の方へ向ける。タイミングを見計らって引き金を引いた。反動で尻餅をつく。
確実に命中した、はず...そう思ったのに。尚も彼女は普通に動き続けている。気絶する程の電撃を喰らって動けるはずなんてないのに。
……だったらもう一発‼
今度は壁に捕まり反動を軽減させて撃つ。寸分の狂いなく光弾は彼女へ向かっていく。彼女は戦いながら光弾に手をかざした。光弾が身体に当たる前に四散する。何で...
「お前、能力で見えない壁みたいなの作れるだろ」
そういう事か。なら
乱暴に銃を投げ捨て殴りかかる。が、そんなカッコ良くいくはずもなく、すぐにいなされ手をとられてしまった。
その体型に似合わず、僕は軽々と宙に浮かばせられ先輩に向かって投げられた。攻撃体勢だった先輩にぶつかり転んでしまう。
「何やってんだよ...」
「ごめんなさい」
「……そんな即席のタッグなんかで勝てる訳ないでしょ」
彼女はGod-tellを取りだし、何か操作をしたあと、僕たちに向けた。空中に映像が映し出される。どこかのビルの上からみえる映像の様だ。目の前に大きな学校のような建物が映っている。何故こんな映像を見せるのだろう?
「……これ。どういう意味かわかる?」
「神聖大学かッ⁉まさか?」
先輩が焦った様子でGod-tellを取り出した。流石の僕もこの意味がわかった。高所からの映像、聞き覚えのある大学。
映像が拡大されていく。映像の真ん中に大きく十字の線が見える。間違いない。これはスコープからの映像だ。そしてその十字の真ん中に映っていたのは...
「ウィッチさん?」
予想通り。狙撃手から狙われている。先輩は小声で何か言っていたが、
「……そこまで。それ以上何かいじればすぐに撃つよ」
警告され、先輩は諦めた様子でGod-tellを地面に置いた。僕も同じようにする。
裏を読まれていた。僕達ははめたつもりであったが、既に人質を取られていたのだ。まさかウィッチさんまで調査済みとは。
「……この女、知り合いでしょ。……ヒーローごっこの終幕がどうなるのか思い知らせてやる」
やはり、僕達にはGDと戦うなんて無謀過ぎるのか?こんな時に狙われている当の本人は子供からアタッシュケースを受け取って後ろを向いてしまった。......ん?アタッシュケース?
「……この女、馬鹿ね。……わざわざ背なんて向けて。……撃って」
「馬鹿じゃねぇよ」
先輩は場に合わない笑みを浮かべる。え、まさかアタッシュケースで狙撃を弾くとか無謀な事するの⁉
ダンッという音が映像越しからでもわかった。衝撃でウィッチさんの白衣が舞い上がる。それはまるで天使の羽のように、最期を示唆するかのようだった。しかし、その羽が赤く染まることはなく、
「方角は南から西へ36度、距離は約700mならここら辺かな」
冷静に狙撃手の位置を呟きこちらを真っ直ぐ見つめる。手にはかなり大きめの銃を持っていた。一瞬の出来事で思考が追い付かなくなる。
「
誇らしげに呟く先輩。それとほぼ同タイミングで映像から小さな銃声が聞こえた。コンマ数秒遅れてカメラが崩れ、倒れる。
「……うそ?……あの位置からスコープ無しで狙撃なんてあり得ない」
え、狙撃したの?相手も見えないはずなのに?映像が遮断される。先輩は元の姿に戻っていた。
「言ったろ、じゃ。天界ノ書はもらってくから」
先輩はそう言って箱のような物を召喚し、その中に天界ノ書を入れた。
「退くぞ、翔」
素直に従い、電気銃を拾って後ろを向く。刹那、風がささやくかのごとく小さな声が聞こえた。
「……アグ」
直後風の流れが明らかに変わり、形容しがたい感覚に襲われる。その感覚全てが正常に戻った時、予知など関係なく振り向いては行けないという警告が身体全体に駆け巡った。
先輩が僕を突き飛ばす。全ての動きがスローに感じる。そう言えば死ぬ直前には全てがスローモーションになると聞くがこの事なのか。なら死ぬのか、ここで。
思考だけが脳内をめぐっていく。それなのに血液は流れていないのか指一本も動かせない。先輩の方を見ると肩辺りに翡翠の矢が見えた。
それは先輩の肩を掠め赤い液体を飛び散らせる。そして、翡翠の矢は天界ノ書を入れた箱の真ん中に命中した。
箱は爆発四散しその勢いで僕達は壁に叩き付けられた。身体に痛みが走り、もはや動こうなどという気すらしない。
「おい⁉翔...しっかり...ろって、...い、かけ...」
先輩の声がどんどん遠のいて行き、僕は力尽きて目を閉じた。
※ ※ ※ ※ ※
覚醒した時、目の前に見えたのは見知らぬ天井だった。
「目、覚めたか」
声のした方へ首を向けると、零矢先輩がいた。頭や腕に包帯を巻き、実に痛々しい印象を受ける。
「ここは?」
「神聖大学附属病院。救急車で搬送されたのよ」
反対側を見るとウィッチさんがいた。急いで来たのか額には汗が浮かんでいた。
「まさか、こうなってしまうなんて...痛い思いさせちゃったね」
ウィッチさんが柵に手を置いて言った。とても思い詰めたように。
「いえっ、そんなことは。それより、天界ノ書は?」
これ以上思い詰めないように話題を変える。天界ノ書はどこへ行ったのか?まさか一緒に爆発四散したのか?
「箱の中の天界ノ書はあいつが持ってった」
「ま、偽者だけどね♪」
偽者⁉すり替える時間なんてあったっけ?
心中を察したのか、ウィッチさんが丁寧に説明してくれる。
「あのアイテムは
どこぞの悪魔の科学者みたいな台詞は聞かなかったことにして、そんな隠し玉を持っていたとは。もはや何でもありだな、でもそれなら天界ノ書は無事か。
「学校は一週間閉鎖だってよ。お前は明後日ぐらいに退院できるらしいがな」
警察が来て、捜査をするのだろう。授業などできる雰囲気じゃないからな。ちなみに仕事中の事故ということで、入院代は出してくれるらしい。
「と、言うことで。ゆっくり休んでね♪」
「後は俺達がやるから休んどけ」
そう言って二人は出ていってしまった。僕の身を気遣ってくれたのは重々承知だが、何だか仲間外れにされた気分だ。
僕は窓の外をぼんやりと眺めた。夕日が物悲しげにベットをオレンジ色に染めていた。
──再び神の世界へ──