俺達と神達と空想神話物語   作:赤色の魔法陳

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「「「「明けましておめでとうござい...」」」」

神「ちょっと早いな‼」

卯「良いじゃない一分ぐらい、誤差よ誤差。これ読んでれば新年よ♪」

翔「僕結局、今年中に出れなかったなぁ」

霊「……私は来年も出るよ」

零「俺来年出番少なそうな予感」

神「ちなみにまた新キャラ来るからな」

「「「「ここに?」」」」

神「まぁ来年のお楽しみということだ」

零「問題は作者の更新なんだが」

卯「その事ね、来年は色々あるらしいからホントのホントに不定期になるかもだしね」

霊「……ネタ切れ?」

翔「多分勉強ですね、リアルな」

神「まぁ書いてもらわないと私達は生きられないし、それこそ忘れられちゃうからな」

卯「でも某映画曰く記憶さえあれば私達はどこへでも行く事ができるんじゃない?」

霊「……それほど誰かの記憶にいるならね」

神「取りあえず今年もよろしくって事だ、皆まとめてな。じゃあ最新話」

「「「「「どうぞ」」」」」




共闘

……ここでまさか助けに来るなんてね、さすがに予想外よ

 

 私は心の中で敵が救援に来たことに少し安堵していた。と言うのも、私もヒーロー物が好きだからかつての敵と共闘なんて事は燃える展開であり、敵味方を越えた友情なんて事があるからだ。まぁ、目の前の破神霊香には難しそうだが。

 

「人間如きが‼」

 

「……鎧如きが」

 

 二つの鎧は空中で激しくぶつかりあった。霊香の矢を避けながら鎧は接近し、斬りかかる。それを弧の部分で受け止め、つばぜり合いの後に火花を散らしながらお互いに距離をとった。

 

 だが見てるばかりでは意味が無い。折角鎧を惹き付けてくれている内に打開策を練らなければ、状況は変わらない。

 

 手持ちのGod-tellのアイテム欄には使用済みと書かれた傷薬の他に二つのアイテムが残っている。一つは(アンカー)、設置した場所が壊れるまで刺さり続ける杭だ。もう一つは氷結晶石(アイスクリスタル)、衝撃を与える事で雪の結晶を模したエネルギーが生成され、拘束させるアイテムだ。

 

 杭はおいておくとして、鎧を止めるには氷結晶石を当てる事が条件なのだが、人間の速度を越えたあの鎧に確実に当てる方法がない。仮に誰かを犠牲にして固めた場合、鎧だけに攻撃を当てる事が困難になってしまう。

 

 ここで私は一つの作戦を思い付く。ワイヤーを両手首に召喚しそれを外す。これでワイヤーが二個。そして彼のワイヤーを含めて四個。それだけあれば止める事は十分可能だろう。

 

「グハッ...」

 

 直後目の前に落ちてくる霊香。鎧に叩き落とされたらしく、翡翠の鎧が少し傷を負っていた。しかし、この状態から鎧同士ならダメージが通りやすい事がわかった。

 

「調子乗んなよ、コラ」

 

 私はこのままでは作戦の実行は不可能と判断し、ラファエルの力で彼女を回復させる。その行動に彼女はひどく驚いた様子を見せた。

 

「……何でそこまでするの?」

 

 そう言われたところで戦況的選択と言うしかない。まぁ、少しは慈悲と言えるものを込めたつもりではあるが。

 

「聞いて、作戦があって***」

 

 私は自分が考えた作戦を早口で彼女に伝えた。

 

「……乗った」

 

 思いの外、すんなりと了承してくれた。作戦通り、私と彼女で鎧を挟むように滞空する。そしてタイミングを合わせ、同時に攻撃を加えて行く。

 

 だが、鎧は私達を同時に相手し苦戦する素振りすら見せなかった。華麗に彼女の矢を躱し、私の剣を受け止める。接近した彼女に対して私を投げ飛ばし、衝突させてから斬撃を放った。

 

「「ウワアアッ‼」」

 

 地面に衝突する前になんとか体勢を立て直し、滞空できたがダメージは大きい。鬼のような強さだ。

 

「次はこっちだ‼」

 

 すぐにミカエル達天使が応戦し、追撃は避けた。だが、

 

「ちょこまかと鬱陶しいんだよ‼」

 

 ものの数秒で全員叩き落とされ、墜落する。鎧はゆっくりと地面に降り立ち、周囲を凪ぎ払う。その攻撃で倒れていた天使達は吹き飛ばされ動かなくなってしまった。

 

「後輩クン、強すぎない?」

 

「お前が弱いんだよ!」

 

 斬りかかってくる鎧を剣で受け止めるが、余りの威力と覇気で押しきられそうになってしまう。膝を着き、耐えるが弾き飛ばされてしまった。受け身を取り、自身を回復し、他の天使達も回復しようと手を伸ばすと、

 

「どこ見てんだ?」

 

「ッッ‼」

 

 振り向くと距離を詰めてきた鎧が剣を構えていた。殺られる、そう覚悟したが翡翠の矢が鎧に当たり体勢を崩した。

 

「……今‼」

 

 らしくもなく彼女が感情的に叫ぶ。それを横耳にしながら鎧にしがみつき、

 

「Summon、『現在と未来を繋ぐ糸』‼」

 

 彼のGod-tellからワイヤーを召喚する。それを鎧の手首にはまる前に掴みとった。反撃しようとする鎧に再び矢が当たる。

 

……まずは第一段階成功。お次は...

 

「霊香ちゃん!」

 

 手に持った二つの内、一つを彼女に投げる。

 

「……馴れ馴れしい」

 

 そうは言うものの彼女は受け取り、近くのルシフェルの元へと走る。その間に私が鎧を相手し時間を稼ぐ。これが第二段階だ。

 

 これは彼女こと破神霊香の協力、及び四人の天使の協力が必要だった。そして何より大変なのが彼女で、元は私がミカエル、ウリエル、ガブリエルにワイヤーを渡しに行くつもりが全員が気絶してしまったので回復の時間を有することになってしまった。

 

 つまり、彼女が一人で鎧を相手する時間が長くなってしまう。それに余りダメージを受けると暴走状態になり、そうなったら詰みである。

 

……吉と出るか凶と出るか

 

 策が成功することを祈りながら私は剣を振り下ろした。

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

「……ねぇ、協力して欲しいんだけど、これ」

 

 そういって私はルシフェルに無造作にワイヤーを投げた。ルシフェルはそれをいぶかしげに見ると、私に投げ返した。

 

「あいつを倒したところで俺らが勝つ確率は低いからな、これ以上動きたくはない」

 

 ニートかよ、という言葉は心に秘め、私はルシフェルを睨んだ。私が言える事ではないが敗北が決まっている、さらに代償が大きい状況で最後まで粘らないでどうする。

 

「……甘い、反逆したいなら身体を張れ。……お前は私よりも未来がある、仲間がいる。……それを裏切らないようにしろ」

 

 そう激励したところで結果は変わらない事は知っている。今の私もそうだ。どれだけ頑張ったところで最早死は免れない。それなら、最後に慈悲をかけてくれた人を手伝いたい、その為に身体を動かす。

 

 私はルシフェルに手を差し伸べる。ルシフェルは苦々しくその手を握る。直後、力が血管を巡るように流れて来た。それがなんだかわからず不思議と手を眺めていると、

 

「血でも付いていたか?で、策って?」

 

「……それを...」

 

 私は妖美卯一から説明された事をそっくりそのまま伝えた。さてと、次は私が戦う番か。

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

「クッ」

 

 結構キツイ。二人がかりなら鎧の猛攻は耐えれたが一人でいなしきるのは重労働だ。ラファエルの身体だから体力には余裕はあるが。

 

「ハァッ!」

 

 鎧の横から蹴りが入れられる。彼女だった。どうやらルシフェルにワイヤーを渡して来てくれたらしい。華麗な足技で鎧相手に優勢になっているのを見ながら私は気絶した天使達の元へと急ぐ。

 

 その時になった変な気分を振り払うように私は全力で走った。

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

「結構粘るなァ、人間!」

 

「……お前には関係無い」

 

 振り続けられる剣を受け流しながら、己の限界が近い事を段々と感じていた。強力な攻撃を受ける度、意識が飛びそうになるのをこらえ、剣を受け止め続ける。もし一発でも受ければ、意識は乗っ取られてしまうだろう。

 

 自分でも不思議だった。なぜそこまでして妖美卯一を助けようと思うのか。助けられた義理か、はたまた死ぬ前のけじめか。

 

「だがこれで終わりだ‼」

 

 日の光で紅く輝く剣に魔力とでも言い表すだろう力がたまっていく。恐らく繰り出されるのは先程『純翠神破弓』で相撃ちした技だろう。しかし、今から構えたとしても到底間に合わない。これで、私は...

 

天使の一撃ち(エンジェルショット)ッッ‼」

 

 鎧の上体がぐらりと傾く、しかし鎧はまだ倒れずそのままの体勢から剣を振りかざそうとするが、

 

「か、ら、の、発条脚(スプリング)ッッ‼」

 

 それよりも先に妖美卯一の足が鎧の身体を押し飛ばした。土煙の中、某マ●ティキックのような着地を決め彼女は私に手を伸ばした。

 

「待った?」

 

「……別に」

 

 私はその手を握る事なく立ち上がった。一度だけではなく二度までも助けられて気安く手を掴むなんてできない。彼女は私より弱いのに、それなのに。

 

「……これ以上仮を作っても返せないから。……これぐらい大丈夫だし」

 

「そう」

 

 彼女は空を切った手をスナップしてから下げた。私は何故かそれが彼女が鎧に勝てると確信しているかのように見えた。

 

「ふっ..ざけんなァ‼」

 

 鎧が羽を生やし、上空へ飛び上がる。それに合わせ私達もそれぞれの羽で飛び上がった。鎧の撃つ斬撃波を巧みに躱して距離を詰め弓の刃を振り下ろす。

 

 それは火花を散らして鎧の身体を切り裂いた。すぐに鎧の攻撃範囲から離れ引き付ける。

 

「逃げんじゃねぇ‼...あ?何だこれ?」

 

 私に注意が向いている隙にワイヤーが鎧の両手に巻き付けられる。ワイヤーの先にいたのは茶色髪と水色髪の天使。

 

「これぐらい...なっ⁉」

 

 鎧が足を動かそうとすると、両足にもワイヤーが巻き付けられていた。その先にいるのは、朱色髪の天使とルシフェルだ。四人の天使はそれぞれの方向へ力強く引き、鎧はなされるがまま身体を広げていく。

 

「舐めんなァ‼」

 

 が、鎧はそれでも抵抗し天使達は逆に引き寄せられそうになる。そこへ、

 

結晶弾(クリスタルショット)ッッ‼」

 

 彼女がオレンジの大きな銃から鎧に近距離から青白い粒子を纏った弾丸を放つ。それは鎧に当たると同時に雪の結晶の花を開き、巨大な氷柱へと変わっていく。

 

「皆逃げて‼」

 

 それはワイヤーを伝って凍結していく。天使達はワイヤーを外しその場をすぐに離れたが、

 

「うっそ、ヤバッ」

 

 彼女だけ足が氷に捕らわれてしまっていた。そこへ朱色髪の天使が剣で氷を砕いた。

 

「何やってんだ」

 

「ど、どうも」

 

 すぐに後退したので二人ともこれ以上巻き込まれる事はなかったが、できた氷柱を見て息を飲んだ。

 

 それはなんと地面まで根を張り、神が造形したかのような美しさでそこに建っていた。鎧を着ていても涼しいとさえ思えてしまう光景、もし巻き込まれていたら...そう考えると本当に寒気がした。

 

「決めるよ‼霊香ちゃん」

 

「……わかってる」

 

 彼女の呼び掛けで、我に返り私は氷柱の真ん中で固まっている鎧の剣に照準を定め、弓を引いた。それに合わせ彼女は携帯端末を銃にセットし、トリガーを押し続け、エネルギーを溜め始めた。体力的にも一発が限界、外すわけにはいかない!

 

「……純翠神破弓‼」

 

天使の旋風(エンジェルショット)‼」

 

 私が放った翡翠の矢は彼女が放った旋風を纏い、鎧の剣に吸い込まれるように真っ直ぐ飛んでいく。やがて矢が幾本にも分裂し氷柱に亀裂を走らせ、その隙間を縫って旋風を纏った矢が剣の柄を弾いた。

 

 衝撃で氷柱が砕けダイヤモンドダストの如く光を反射しながら崩れ落ちていく。

 

「……back...『翡翠の弓(グリーンアロー)』またね」

 

 私は手短に別れを告げると鎧の装甲を解き、ネックレスを砕いた。落ちてゆく意識の中、羊を数えるように私は命の期限を数えた。

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

……どこにいるの?後輩クン...

 

 崩れゆく景色の中、私は視界の中に彼を入れようと目を走らせていた。氷と共に砕け散ったと言う最悪の事態が感じたがワイヤーがまだ四本視認できるので現実には戻っていない。

 

 と言うのも、こっちの世界で召喚したアイテムはネックレスを壊したと同時に強制的にbackとなるからだ。

 

 私は何度も目を走らせた後にようやく彼を視界に入れる事ができた。彼は氷の塊の中に右手が入ったまま落下していた。

 

「ラファエル、お願い」

 

 私はラファエルから抜け出して元の身体に戻り、彼の風の力を使って飛ばしてもらう。推定距離50メートル前後、それなら...

 

「“神”、使ったアイテムの片付けよろしく」

 

「え、ちょっウィッチまさか⁉」

 

 私は一度自分のワイヤーをしまってもう一度手元に召喚する。そして、銃に端末を装着し画面から『赤車』を選択した。

 

……帰るよ、一緒に

 

「弾丸車ッッ‼」

 

 発射した赤車に瞬時にワイヤーをくくりつけ、その勢いに乗り加速する。車体を風避けにしてワイヤーを縮め後ろから車体に乗り込んだ。

 

「『運転手』‼緊急脱出ボタン押して!」

 

 既に車体は風の勢いを受け減速を始めている。

 

「…ですがそしたら私も...」

 

「助手席だけでいいでしょ‼」

 

「…了解しました」

 

 私は助手席に滑り込み、シートベルトをしっかりと取り付ける。すると助手席の天井が開き青空が映った。そして、身体がふわりと浮かんだかと思うと、私は座席ごと車の外に投げ出されていた。

 

 この装置の面倒くさい点として、緊急脱出にはシートベルトをしている状態でないと発動しないというなんとも律儀な設定ゆえ、こういう場合一度締めてまた外すという二度手間に、ってか説明も面倒くさいよ!

 

「捕縛...射撃!」

 

 ワイヤー型の弾丸をすぐ近くまで迫った氷塊に突き刺し、縮めて氷塊の上にたどり着く。氷ゆえに滑って動き辛いので、“神”が既に戻していた『杭』を使いながら彼の元に這っていく。

 

「後輩クン!ねぇ、聞こえる⁉」

 

 応答はない。仕方ない、ここは彼を助け出して二人で...

 

 

 

 

 

……どうするんだ?落下する中、氷を砕いて脱出方法を同時進行で考えなければならないわけで、何より時間が無さすぎるではないか。

 

「おい、どうするんだ‼ウィッチ!」

 

 考えられる選択で最善な答えは...

 

「ここで二人のネックレスを壊す。落下死する前に」

 

 目的は達成しているし、お互い死んでから戻るよりはその方が痛み無く現実に戻れる。それが私達にとって最善の選択。それが二人で帰る最善の...

 

 

 

 

「それは...逃げじゃないか?」

 

「ッッ⁉」

 

 脳内に懐かしいような声が響き、不意に顔がその声の方を向く。しかし向くことは出来なかった。途中で首が動かない、否、振り向く動作の途中で時が止められているかのような感覚。

 

「約束守らなきゃな?う****」

 

 そこから先は聞こえなかった。気がつくと私はその方を向いていたが勿論そこには誰もいなかった。

 

「ウィッチ⁉どうした?」

 

 私はしばらく呆然としていたが“神”の声でハッ、と我に返り辺りを見渡す。こんな短時間で移動できるはずがない。きっとまだどこかにいる...

 

「目覚ませ!ウィッチ、零矢を助けろ‼」

 

 違う、私が今やることはそれじゃない。後輩クンを助けなければ。私はもう一つの杭を手にして氷を...ん?杭?......これいけるかも

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

 

「もしかして死んじゃった?」

 

「こらこらウリエル。しかし」

 

「無理だろう、あれは」

 

 私が彼女を風に乗せてから何やら色んな事をやってたどり着いたように見えたが、後三秒程で地面に衝突するだろう、そうなれば私でも治せるかどうか...

 

「あ、あれ!」

 

 突如爆発音と共に彼女達がいるであろう氷が爆散する。一瞬光のような物が見えた気がするが?すると煙を突き抜け光の矢のような物が地面に突き刺さった。

 

「あれさっきの、後ろにひもついてるし」

 

 まさかな、と皆が思った次の瞬間。

 

「行けぇぇぇぇッッッッ‼」

 

 再び煙を突き抜けて男を抱えた彼女が飛んできた。

 

「『運転手』‼」

 

 いつの間にか彼女達が落下するであろう場所に赤い物がおいてあり、それから出た布が彼女達を受け止めた。弾力性があるのか彼女達は何回も布の上で跳ねていた。酔わないのか?あんな上下運動して。

 

「大丈夫か?」

 

「あぁ...ラファエル...あの...この子を」

 

 上下運動のせいで声が大きくなったり小さくなったり面倒くさい。

 

「いったん降りろ」

 

 彼女は渋そうな顔をした後で男を抱えて降りてきた。

 

「人生初トランポリンだったのになぁ」

 

「なんだトラン?」

 

「あぁ、こっちの話だから気にしない...」

 

 急に彼女は男のように倒れてしまった。意識はまだあるが息が荒くなっていた。全く手のかかる人間だ。

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 少し身体が楽になってきた。周りを見るとラファエルが私に手をかざしていた。回復してくれていたのか。

 

 起き上がれるようにまで回復した後で、後輩クンの方を回復してくれるように頼んだ。顔が青白かった彼だが回復してもらい徐々に顔に赤みが戻ってきた。

 

 やがて目が覚めると、

 

「ん?...ウィッチさん...ってえっ?」

 

 私は彼を膝枕していてその上から覗きこんでいたので彼は自分がどういう状況なのか瞬時に理解したらしく、慌てて頭を起こそうとして私の胸に当たり、そのまま膝に跳ね返された。

 

「ご、ごめんなさい。わ、わざとじゃなくて」

 

「慌て過ぎ」

 

 彼はすぐに起き上がり、顔を赤くして慌てふためいていた。なんか可愛いな。

 

「って言うかどういう風に脱出したの?」

 

「あぁー、裏技?って言うか奥の手って言うか」

 

「最初から使えよ...」

 

 そんな事言われたってあれは体力の消費がおかしいから今のままだと二秒持たないし、本当に奥の手だから普段は絶対に使わないのよね。

 

「まぁ、なんとか助かったし私達は元の世界に帰ろ♪」

 

「良いんですか?」

 

「これから先は私達は関わってはいけない、過去の出来事だからね」

 

 恐らくこれ以上関わると天使側全滅なんてのもあり得なくなさそうなのでここらでお暇しようというわけだ。

 

「じゃ、帰ろうか?二人で」

 

 私は微笑んで彼に手を伸ばした。彼は照れくさそうに、

 

「はい」

 

 と言って私の手を握り返した。彼の手は氷のように冷たかった、だけど私はやっと手に入れる事ができた光のように思え温もりを感じる事ができた。

 

 私達は自分達のネックレスを壊し、光へと還った。

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

 

「この後、ルシフェルは再び反旗を翻し天使側に反乱、しかしミカエル達に敗北し全員堕落させられる。これはその前にあった物語。神代の時代にも忘れられし話というものは存在して...」

 

「何独り言言ってんの、あんた」

 

 帰ってきたウィッチがお茶と言って勝手に私のソファに腰掛ける。ついでに零矢も同じように座った。似た者同士かよ、こいつら。

 

「はいはい、友達には冷たくルームメートには優しくですか」

 

 そう言って二人にお茶を差し出すと、

 

「そんな訳...ないでしょ」

 

 と言いながらお茶をすすっていた。零矢の方も、

 

「サンキュ」

 

 と言っていた。こいつも心配だったが案外大丈夫なようだ。

 

「飲んだら帰れよ、ったく」

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

 

「汗かくわぁ~」

 

「あっちぃ~、ってか痛い」

 

 私達は現実に戻りヘルメットを外したらが身体中凄い汗だった。後輩クンも巻いていた包帯が緩んでいるようだった。時計を見ると既に午後十時過ぎ。

 

「帰ってお風呂入ってから晩御飯かな、洗ってあげようか?」

 

「えっ⁉」

 

「冗談」

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

 

「へぇー、失敗ねぇ。そのわりには『翠女神』、お前すっきりとした顔してないか」

 

「私の顔は何も変わってない」

 

 暗闇の中、廃病院のような灯りの元で二人の人間が会話している。しかし、数名がそろりと入って来て『翠女神』の周りを囲っていく。そこには少年の様にも見える男が鎌を引きずっていた。

 

「良いの?殺って」

 

「まぁ、誕生日近いしその日まで猶予与えてやるよ。但し...」

 

 格上と思われる男は『翠女神』に近づき、

 

「変な気だけは起こさないようにな」

 

 耳元で呟き、数名を引き連れて去っていった。残された『翠女神』は顔色一つ変えず、ずっと男が座っていた場所を眺めていた。




──命拾い?──

 次回新章

『僕達と私達と命がけの日常物語』

「……私は生きてて良いの?」
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