俺達と神達と空想神話物語   作:赤色の魔法陳

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翔「言いたい事は特に無し!本編どうぞ」


Amusements

……何をどこで間違った...

 

「え、本当に僕ん家で良いんですか」

 

──遡ること数分前

 

「霊香ちゃんはどうする?後輩クン...あぁ零矢君の家に来る?」

 

 車の中で妖美 卯一に私は問われた。確かに何も考えていなかった。私の寿命は残り三日。何か霊繋がりの番組のあらすじみたいな言い方になった。

 

 そんなことより私が身を置く場所は確かに問題だ。下手すると一緒に死神部隊に狙われかねない。なら、

 

「……いや、こっちにする」

 

 私は時神 翔の腕を掴む。彼はあり得ない、という顔で私の方を見ているが気にせずに続ける。

 

「……一応私は狙われの身だが翔はどこから見ても普通だ、流石に向こうもどこかの富豪や豪傑の家に泊まり込んでいると思うはず。だから...」

 

「それ僕メッチャ危険なんじゃ...」

 

「だから、頼む...私じゃない、翔とその家族を守って欲しい」

 

 相手がもし一人なら私一人で応戦できる。だけど複数の場合、私一人では到底全てを相手することが出来ない。そうしたら彼の家族に危険が及ぶなど目に見えている。

 

「え、良いけど...後輩クンの回復次第かな」

 

「……神木 零矢が協力してくれるとは思えない」

 

 確かに彼は戦力になるだろうが、彼が簡単に協力するとは思えない。彼とは三回も戦っている。そんな相手の死活問題に簡単に協力するような人間などこの世にいるだろうか?

 

「ん~、多分協力してくれると思うけどな。私も付き合いが長いわけじゃないけど、困ってる人を見過ごすことはしないと思う」

 

 そういうものなのか。実際私と彼の間には関わりと呼べるものなどこれっぽっちもない。それなのに赤の他人を救うなんてお人好しにも程がある。

 

 この世にはお人好ししか苦しまないなんて事は数えきれない程ある。それ一つ一つに関わっていたら精神が持たない。だから私はお人好しが嫌いだ。自分の人生を歩めば良いのに、といつも思う。

 

 それでも私は翔のお人好しに救われた。卯一も零矢のお人好しに救われたのだろうか。まぁそうでなければこんなに穏やかな顔で他人の自慢話などしないか。

 

「取りあえず、了解。あ、着いたみたい」

 

 車はごくごく普通の一軒家の前に停まった。薄暗い空の中、窓から漏れる光がどこか懐かしさを感じる。いつの記憶だろうか。

 

 恐らく家族の記憶、何年も前の人並みの思い出。笑顔が飛び交い、暖かな雰囲気が続いていたあの場所はもうない。もう、戻ることは出来ない。

 

 私は彼女にお礼を言い、車を降りた。

 

……ん待って。よくよく考えれば私が泊まりに来たら普通に問題じゃないか?彼女とかでもないのに

 

「え、本当に僕ん家で良いんですか」

 

 しかしこの際そんな事を真面目に考えていたら風邪をひいてしまう。そうなれば襲われた際に全力を出すことは出来ない。

 

「……背に腹は代えられない」

 

「わ、わかりました。では...」

 

 彼が恐る恐る家のドアに手を掛けると、勝手にドアの方が開いて、中から女性がひょっこりと顔を出した。

 

「何だ、翔か」

 

「いやびっくりするから止めてよ、母さん」

 

「だって家の前に豪華そうな車が停まったから何事かと思ったの。って言うかあんた泥だらけじゃない何してた...」

 

 そこでようやく彼の母親は私の存在に気づき、何度か瞬きをした後で私の身体を上から下へ見ると彼に向き直って言った。

 

「え、本当にナニしてたの、母さん怒らないから言ってみな、内容によっては家族の縁を切るかもだけど」

 

「いや、そんな変なことやってないって」

 

「えっ、ヤったの?ちょっと、えー」

 

「もう!誤解が生まれるから早く中入るよ‼」

 

 そうして半ば強引に彼は私を家の中に入れた。

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 ちゃぷん、と言う音と共に身体中に温かさが染み渡ってくる。寮には大浴場はあったが丸腰で他人と一緒に入ることは嫌だったのでいつも部屋のシャワーだったから湯船に浸かるのは久しぶりだ。

 

 手で湯を掬うと腕を伝って湯船へと戻っていく。先程の雨とは正反対の感覚が私の身体から疲れを取っていく様だった。

 

 湯船に沈む自分の身体を見ると、先程の傷や痣はほとんど消えていた。やはり回復能力だけは尋常では無いようだ。髪の毛の泥も取れ、すっかり清潔感を取り戻した。長く入ってのぼせるのも情けないのでここらであがるとしよう。

 

 脱衣所に戻り、用意された服に手を掛ける。下着や、ズボンなどは恐らくあの母親の物なのだろうが上着は男物のようだ。

 

 全ての服を着て鏡の前に立ち髪を乾かしながらふと胸に手を当てる。

 

……何食べたらあんなのになるの...?

 

 少し敗北感を感じていると、ドアの向こうから翔が声を掛けてくる。

 

「あがりました?サイズとか大丈夫でしたか?」

 

「あぁ」

 

「良かった、じゃあホットミルク作ったので後でリビングに来てください」

 

 何だか歓迎されているような気がしてむず痒い。世話になるのはこちら側なのだから何か持ってくるべきだっただろうがあの状況の後ではそんな事ほぼ不可能だろう。

 

……甘えても良いのだろうか...

 

 ドライヤーのコンセントを外し、髪をゴムでポニーテールに纏めながら私は鏡の向こうの自分に問い掛ける。なにせ家族に触れるのが久しぶり過ぎるのだ。図々しくなってしまわないかとても不安だった。

 

 だからなるべく甘えないようにと自分に言い聞かせドアを開きリビングに向かう。この後翔に対して何を言えば正解なのか?お構い無く...他人事過ぎるか。ありがとう、で良いのか...?もっとフレンドリーに...

 

 リビングに入ると翔がこちら側を見て、こちらへと言うようにテーブルの椅子をひいてくれた。それを見て私は何度も心で練習したフレンドリーな言葉を投げ掛ける。

 

「……さ、サンキューでーす」

 

 どうだ、最近の女子高生というものはこう言う風に挨拶をするとクラスメイトが言っていた。これならフレンドリーに思えるだろう。そう自信満々に彼を見ると、掌で口を覆い、

 

「……ブフッ」

 

 と笑い声を漏らした。完全にミスった。恥ずかしさで冷や汗が出てくる。

 

「……忘れろ」

 

「あ、どうぞ...フフッ、さ、冷めない内に」

 

「明日までに忘れてなかったら殺す」

 

 しまった。つい癖でこんな言葉を発してしまった。そんな事を言いたかったわけじゃないのに。こんな時なんて弁明すれば良いのか。暴力の世界で生きてきた私に取って何よりも簡単な年下男子との会話がこんなにも難しいとは。

 

……妖美卯一はどうやって神木零矢と打ち解けたんだ?

 

 もはや同じ女として尊敬の念すら抱ける。大体普通の会話って何だ、どうやれば世間一般的に見て普通というレッテルを貼られるんだ?

 

「何か無理してません?……無理って言うか緊張かな、そんな気がするんですが」

 

 見透かされていたか。まぁ普通こんなにも感情を露にしていたら見透かされるのも当然か。私は自分を落ち着かせるように一気にホットミルクを飲み干した。湯船に浸かっていた時と同じように身体の芯から暖まりだんだん火照って来た。

 

 不思議と気持ちが軽くなった。落ち着きを取り戻し、頭の中がスーっと冴えてくる。いつもの調子に戻ったようだ。今なら先程の発言も謝れそうな気がした。

 

「……かけ」

 

「た、だいま~‼あ、あがった?似合ってるわね、良かった良かった」

 

 気配がしないと思ったら、買い物に行っていたのか。雨で少し濡れた様子の母親はスーパーのビニール袋を冷蔵庫の前まで持っていき、買ってきた物を冷蔵庫の中に入れながら言う。

 

「さっきは泥だらけだったからあまり見なかったけど以外にべっぴんさんじゃない?」

 

「え、あ、ありがとう...ございます」

 

「母さん止めろ、困ってる」

 

 反応しきれない私に対し彼が助け船を出してくれる。確かに褒めてくれるのは嬉しいが上手く受け答え出来る自信など無いから正直困る。

 

「ごめんなさいね、何だか娘みたいで可愛くなっちゃって。迷惑だったかしら?」

 

「い、いえ。私も家族に触れるのが久しぶりなので緊張してしまって...」

 

 それから私は自己紹介や境遇を語った。一応念のためにGD関連の部分だけは綺麗に抜き取って話した。なので彼との出会いは仕事場でということにしておいた。言葉が詰まりそうな時は少し嘘を使ったが、それ以外は本当の事を言ったつもりだ。

 

 因みに彼の父親の名前は針太郎、母親は薫らしい。両方とも働き手で家計を支えているらしい。父親は全宇宙管理局──通称ASMの地球支部で警察を取り締まる課の副部長、母親は広告会社の幹部の一人と中々のハイステータスで、共働きの意味がわからなかった。どちらかの仕事でも食べてくには十分なはずである。

 

「まぁ、二人とも好きで仕事やってるからね。家計を支えると言っても大分余裕はあるのよ」

 

 仕事の楽しみ...そんなもの本当に存在するのか。

 

「まぁ、翔とはそこまで進んでなかったしただの友達ね。何か残念だけどホッとしたわ」

 

 まぁ、普通息子の異性の友達と初対面にあの言葉はどうかと思うが彼女も模索していたということなのか。

 

「あ、そういえば仕事場で遊園地のチケットもらってたんだけど期限切れるまでに行けそうにないのよね。明日学校休みなら二人で言ってくれば?」

 

 遊園地か...行ったことはないが明らかに騒がしそうなあの場所は仮にも狙われの身が行くような場所ではないだろう、だが気晴らし程度ならば良いかもしれない。

 

「……翔、その、一緒に...行こ、行かないか?」

 

「え...あ、はい、ぜひ」

 

 予想外の提案に彼はあたふたしながら答えた。それを見て彼女は、

 

「あら友達よりは進んでる?」

 

 とニヤニヤしながら笑って見ていた。

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

 

「すみません、部屋が無くて」

 

 なぜだか翔と同じ部屋になってしまった。彼はベッド、私は敷き布団である。彼の部屋はアイドルのポスターが貼ってあったりとか、楽器が置いてあったりとかはなかった。玩具らしき物はあったが。

 

 しかし、何だか衣食住を全て用意されて家族の一員となった気分だ。妙に心地が良い。

 

「やっぱりベッドで寝ませんか?」

 

「……誘ってるの?」

 

「いえ!流石に女性を床に寝かせて、男がベッドは良くないかなって」

 

 以外に紳士的だった。まぁ私もそっち方面はよくは知らないのだが。しかし、敷き布団の方が気に入ってしまった私はこれを手放したくはなかった。

 

 彼が起き上がり、私の顔を覗いてくる。まさかこれは...本当にそっちなのか?経験など無いからわからないが...徐々に彼の顔が近づいてくる。私は掛け布団の中で身構えた。

 

「あれ?寝てます?ちょっとトイレ行って来るんでベッドが良いなら寝ててください」

 

 と言って部屋から出ていった。天然というやつなのか?また同じ事をやられても困るので先に寝てしまおう。

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

 

「神聖遊園地へようこそ‼」

 

 そんな言葉が明るげなBGMに乗せて告げられる。キュート?なのかよくはわからないがウサギやネコなどの着ぐるみが来場を歓迎してくれる...やっぱりこういうのは苦手だ。

 

 それに...格好が格好なのだ。いつものストレートではなくツインテール──海老の味がするやつではない──それに白いワンピースと洒落ているからだ。

 

 翔はというと、少しクセのある元の髪の毛をまっすぐに伸ばして半袖半ズボンのラフな格好だ。周りから見ればただ遊びに、というよりはまるでデートのようだ。

 

 彼も流石に緊張しているのか笑顔がひきつっている。やはり私とでは不満だったのだろうか?

 

「……翔、私とじゃ...」

 

「い、行きましょう‼」

 

「ちょ...」

 

 彼は私の手...ではなく指を掴み私を園の中へと引っ張っていった。気のせいか彼の耳が赤くなっているように見える。

 

 それから二人でメリーゴーランドやジェットコースター、お化け屋敷などこの遊園地のほとんどのアトラクションを体験した。彼は何度も私に笑いかけてくれたがそのほとんどに私は応えることができなかった。

 

 そして空が夕焼けに染まる頃、私達は観覧車に乗った。

 

「……霊香さん、僕とじゃ楽しくありませんでしたか?」

 

「え?」

 

「あんまり笑ってなかったから」

 

 やっぱり彼も気にしていた。それはそうだろう、遊びに来て、気晴らしとして暗い気持ちを忘れるためにここに来たのに、当の本人はずっと無表情なのだ。失礼極まりないはずである。彼の思いやりも何もかも私は踏みにじったのだから。

 

「……そんな事ない...私は楽しか...ううん」

 

 思ってもないのに、目から何かが零れ落ちる。私は感情が薄い、そんな事わかっている。だから何もないこんなところで、何回も見た空を見て感傷に浸るなんてあり得ない。あり得ないはずなのに...

 

「え、あ、ごめんなさい‼僕何か失礼な事を⁉」

 

「ち、違う...翔のせいじゃ...ない。私は...明後日でもう死ぬから...楽しいなんて、感じちゃいけない、から...」

 

 未練が残ってしまう。贅沢を望めば望むほど、生きたくなる。死にたくない、生きていたい。一緒にいてほしい、一緒に生きてほしい。そんな思いなんて露知らず、アイツ等は殺しにくる。だから...何も感じないで、何に対しても笑わなければ、未練なんか残らないって思ったのに。

 

「……生きたいんですね」

 

「生きたい...生きていたい。翔と薫さんと...妖美卯一達ともっと...もっと」

 

 涙が止まらず、上手く話せなくなる前に彼の胸に顔を埋める。そのまま彼のシャツをつかんで声を殺して子供のように泣いた。そんな私を彼は落ち着くまで背中をさすりながら待っていてくれた。

 

「……写真撮りませんか?」

 

 やっと落ち着いて観覧車を降りた私に彼は問い掛けた。

 

「そういう気分じゃないかもしれませんが、きっと...残るから。ここに来た、ここにあなたが僕といたことは残るから、きっと明日を生きる糧になってくれるから。だから写真...撮りましょう?」

 

「……うん」

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

 

「はーい、ご来場ありがとうございます‼では写真撮りますね。カップルですか?青春ですね~‼じゃあ彼氏さんもうちょっと彼女さんと近づいて、彼女さんもうちょっとにこやかに」

 

「……こうか?」

 

「今...霊香さん笑って...」

 

「彼氏さんこっち向いて‼行きますよ、ハイ、チーズ」

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

 

「あら~、良く撮れてるじゃない。良い笑顔ね。やっぱり笑ってた方が良いわ」

 

 帰って貰った写真を薫さんに渡すと、彼女はとても喜び、お膳立てした甲斐があったと満足げに言った。何だかとても恥ずかしい。写真に写った私は本当に楽しげに微笑んでいた。

 

「ただいま~‼」

 

「おかえりなさい、あなた。この子、翔のお友達ですって」

 

「……最近の高校生は進んでるな」

 

「もう、そういう事じゃないのよ」

 

 そこに彼の父親こと、時神 針太郎が帰って来た。どうやら昨日は夜遅く帰り、今日の朝早く家を出たらしく、私の存在は知らなかったらしい。

 

 彼は私を睨み付けるように眺めると、その険しい顔をくしゃっとして笑顔になり、

 

「家の馬鹿息子をよろしく。麗しき少女」

 

 と冗談交じりに歓迎してくれた。何だか私の来訪を心から喜んでくれているようで嬉しさを感じる反面、申し訳なさも感じた。期限は明後日、そうなれば今日中には真実を話しておく必要があるだろう。

 

 四人揃った賑やかな食事が終わった後、私は遂に切り出した。

 

「お二人にお話があります」

 

「なぁに?」

 

 何だかそわそわして待ってくれているがそういう話ではない。もっと暗い、今までの雰囲気とは真逆の話なのだ。

 

「私は...国際犯罪組織GD(ゴッドドミネーター)の一員です。……殺しも犯罪もやったことがあります。ここにいて、こんな待遇を受ける事など許されてはいけない存在です。かつてあなた方の息子の翔の命さえ狙った事もあります。……ですが、翔に救われて私は罪を償って生きていきたいと思いました。しかし、組織は任務に失敗した私を抹殺しに来ます、それも明後日には。なので、こんな事頼むなんてあり得ない事は重々承知の上ですが、ここでかくまって貰えないでしょうか?」

 

 自分で言ってはなんだが随分と自分勝手な告白だった。こんな奴許すはずがない、大切な一人息子が命の危険にさらされたのだ。どこにその当人を許す親がいるだろうか?

 

 きっと翔ともここまでだ。もう近づかないでくれと言われるに決まっていく。そしてまた独りになって...

 

「僕からもお願い」

 

 彼は机の下に隠れた私の手を強く握り机に頭を着けて頼み込んだ。それを見てさらに私は頭を下げる。自分の事じゃないのに、どうしてここまで...

 

「それって俺達も危険にさらされる、しかも命の保証はない、それにこの子が犯罪者だから警察にも頼れない。そんな状況でこの子をかくまうなんてどれだけ難しいかわかってるんだろうな、翔」

 

「……わかってる...でも!」

 

「母さん、俺三日間ぐらい有給取るわ」

 

「私も取ろうかしら」

 

 その後の予想外の提案に私と彼は呆然となってしまった。二人とも家にいる、それはどういう意味なのか?

 

「何で二人ともこんな時に有給なんて?」

 

「え?そりゃ霊香ちゃんを守る為でしょ?人はいた方が良いし、何より明後日までずっと怯えて暮らすなんて可愛そうでしょ」

 

「俺だって、警察の端くれみたいなものだ、助けてって言った子を助けないでどうする」

 

 まさか二人とも私をかくまってくれるのか?私を守ろうとして、普通の生活を送らせる為に家に残ってくれると言う事なのか?にわかには信じがたい事実が私の脳内をショート寸前まで追い込める。

 

「正気ですか⁉何でこんな私なんかの為に...」

 

「あなただからよ、あなたは翔の大切なお友達。それで理由は十分でしょう?」

 

「それに例え命を狙っていたとしても現に俺等の息子はここにいる。つまり、君が殺さなかったから、君は今この家に来たんだ。だから今度は君を俺達時神家が守る」

 

 何で何で何で、皆天使みたいに優しいのかもう私の汚れきった頭では理解できない。思っていたこととどんどん逆の事が起こっていくような魔法をかけられたかの如く、怖いほど私が本当に心から望んでいた事ばかり物事が進んで行ってしまう。

 

「私はそんなに優しくしてもらっても返す物なんて何もありません。それに...」

 

「返さなくたって良いの!あなたの存在が私達を救ったのもあるんだから。だからそんなに自分を責めちゃダメよ。これまで辛かったなら、これから楽しく生きれば良いじゃない」

 

 私は涙を流しながら薫さんに抱きついた。久々に感情を露にして、私はこの家族を命を懸けて守り抜くと誓った。

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

 

「明後日の『翠女神(ゴッドネス)』の処刑って何人で行くの?」

 

 薄暗い部屋の中、円卓に座り顔もシルエットさえもわからないほどマントを被った者が他の同じような格好をした者達に問い掛ける。

 

「リーダーが前、四人って言ってませんでした?」

 

「四人...多いな」

 

 そこにまた別のマントの人物が入って来る。既にそこにいた全員がそちらを見て表情を強張らせた。

 

「アイツは魔王装備を持っている、だから四人だ。メンバーは、僕、『(ラビット)』、『天使(エンジェル)』、『音速(マッハ)』で行く」

 

「リーダー直々の出撃、これは俺することないだろ」

 

「リーダー、相手が魔王装備なら私は相性が悪いのでは?」

 

 『兎』と呼ばれた者がリーダーと呼ばれた者に寄って問い掛けた。彼女の能力を知る全員が疑問に思っていたのかボスの方を垣間見る。

 

「お前は、『翠女神』じゃない、多分例のあの女の相手をしてもらう」

 

「手を組んだと...言うわけですか?」

 

「あぁ、我らがボスからその情報が来た」

 

「リーダーがボスって言うとどっちがどっちだかわからなくなるね」

 

「お前らが勝手に呼んでるだけだろ、僕は『死神(ハデス)』の名を持つ者。全てを終わらせる者。お前らも同じ刻印を持つ者。その使命において『翠女神』の首を取る」

 

「回復は任せてくださいね」

 

「俺は走ってれば良いのか?」

 

「私があの女を殺ります。リーダーは『翠女神』を」

 

「では、またその日に会おう」




──束の間の幸せ──




 次は夏明けぐらいです。多分前後編だと思います。
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