俺達と神達と空想神話物語   作:赤色の魔法陳

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 出すの忘れてた。ごめんなさい。


強さとは

……そう言えば俺ウィッチさんの好み知らねぇ...

 

 今日の晩飯の為の素材を探しながら俺は悩んでいた。流石に食べられない物はないと思うが苦手な物とかはあってもおかしくはないし、もし苦手な物ばっか食卓に並んだとしたら、あんな事があった後で食べたいとは思わないだろう。

 

……アレルギーとかないよな?だったら無難に卵料理とか...あ、すき焼きとか。ってこれだと俺が食べたい物だろ!

 

 俺は渋々牛肉を売り場に戻す。わかってはいたが彼女が来てから料理は全て彼女に任せっきり、つまり彼女の好みはこれっぽっちもわからないのだ。

 

……俺、ウィッチさんのこと全然知らないんだ...

 

「お前でもため息をつくのか」

 

 急に背後から声を掛けられ驚いて振り向くと、そこには以外にも新妻が買い出しに来たかのような雰囲気で破神霊香が立っていた。

 

「私が買い物に来るのは変か?」

 

「いや、花嫁修業か何かかなと思って」

 

「え?」

 

 案外冗談は通じなかった。言っている意味がわからないと言うように首をかしげ、自分でかごに入れた物を確認していた。何だこれ、パーティーグッズ?

 

「あぁ、これか。実は今日が私の誕生日なんだが、翔の家族が祝ってくれるらしくてそのために必要な物を買ってくるようにお使いを頼まれたのだ」

 

 何だか物凄いどや顔をしている。初めてお使いを頼まれた子供かよ。まぁこいつにとってはこういうのは初めてなんだろうが。

 

「お前は何を買ったんだ、ってまだ何も入れてないじゃないか」

 

 俺はここに来たいきさつを話した。あれからウィッチさんが暗いこと、だからせめておいしい物を食べて貰いたくて何かを買いに来たことを。

 

「私が翔を心配するようなものか」

 

「まぁ、そうだな」

 

「だったら別に何でも良いんじゃないか?心配してるって気持ちが伝われば」

 

「いやそうなんだけど...いやそうだな、悩んでも仕方ない。すき焼きにするぜ!」

 

 霊香は元気だなと半ば呆れた顔をしながらレジに向かった。

 

 それから俺はすき焼きに必要な物を瞬時に集め、ついでにあるものを買ってすぐに会計を済ませ帰ろうとする霊香を引き留めた。

 

「霊香!ほら」

 

 俺はさっき買った駄菓子の詰め合わせを手渡す。不思議に思っている彼女に誕生日プレゼントだ、と言ってほぼ無理矢理に持たせた。

 

「え、ありがとう」

 

 しかし、こう見ると何ら変わらない普通のJKだ。ちょっと抜けているところはあるが、昨日まで命を狙われていたとは到底思えない。

 

「って言うか出歩いて大丈夫なのか」

 

「多分、確定は出来ないが今朝まで何も無かったし向こうの状況が変わったのかもしれない」

 

「死神部隊とやらが行方不明になったからとか」

 

「いや、それは多分違う。あいつ等はボスの能力で本拠地にまで戻ってる。それなのに動かないって事は、私を処刑する以上に何か優先すべき事が起きたって事だと思う」

 

 それから霊香は自分が知る限りのGDの頭の能力について話した。GD達はボスの能力で本拠地に出入りするため誰もその位置を正確には知らない。

 

「お前を信じて良いんだよな?」

 

「私が言っていいことじゃないが信じてくれるなら嬉しい」

 

「なら信じるってことで」

 

 別に信じない理由もないので情報として受け取っておく。相手の頭は空間を操る能力から、ワープなどが可能と言うことか。

 

「そう言えば、お前とウィッチさんはどういう関係なんだ?前に彼女にお前が彼氏なのかと聞いた時に少し暗い顔をしていたから気になってな。恋人と言うやつではないんだろう?」

 

 知らなかった、そんなやり取りをしていたなんて。暗い顔って事は俺をあんまり良く思ってないのか、それとも...

 

「同居人ってところか?お前で言う寮で同じ部屋みたいな」

 

「年頃の男と女が?」

 

 何でこんなグイグイ来るんだ、興味があるのはわかるが質問攻めは返答に困るのでお控え願いたいんだが。

 

「あ、すまない。何か訳があるのかもしれないのにこんなにしつこく聞いてしまって」

 

「まぁ俺もウィッチさんのこと全然知らないんだけどな。食べ物の好き嫌いも趣味とかも過去に何があったのかさえも」

 

 言ってて悲しくなってくる。俺は知らない。翔や霊香達よりも付き合いが長いがそれでも何もわからない。何もわからないのに彼女を信じてる...いやすがってるのか。

 

「笑えるよな、一番近いはずの俺が一番彼女を知らないんだから」

 

 それを聞いて少し考えた霊香はもしかして、と言うように口を開く。

 

「それは一番近いからじゃないか?一番近いから隠して起きたい事がある。信頼されたいから、疑われたくないから。私も最初は翔の母親にGDの一員なのを隠したし」

 

 本当にそうなのだろうか。俺はあの人に信頼されているかもわからない。もしかしたら俺の事を駒としか見てないのかもしれない。

 

「少なくとも彼女はお前を信頼していると思うぞ。彼女はお前の事を語る時、まるで自分の事のように語ってたし」

 

 それなら俺も信じてみても良いのかもしれない。少しは信頼をおかれていることに。すがっても良いのかもしれない。彼女の言う通りにすれば生き返れると。

 

「何かお前に元気付けられたみたいだな」

 

 俺は家の前まで来ると霊香に感謝を伝え、ドアを開いた。もう一度信じてみよう、俺が信じた人を。

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

「おかえりなさい」

 

「ただいまです」

 

 家に入るとウィッチさんはソファーに座ってTVを見ていた。やっていたのは通販番組だがあまり興味がないのかただ繰り返される喋りを作業のように聞き流していた。

 

「何見てるんですか?」

 

「いや別に、ただTVを着けたら何かやってるかなと思ったけど面白いのがやってなかったからマシなのにしてただけだよ」

 

 何だろう、とてつもなく空気が重い。機嫌が悪いというのとはまた違う雰囲気を俺は感じていた。

 

「ならお話ししても良いですか?」

 

 彼女が首を縦に振ったのを確認して俺は横に腰掛けた。

 

「昨日の話だよね?」

 

 そういう彼女はいつも完璧に整えられた髪の毛が少し跳ね、あまり眠れなかったのかあまり表情も良くなかった。もしかして俺に詮索されるのが気がかりだったのだろうか。

 

 俺は彼女の表情に気を付けながら話を切り出した。

 

「俺は貴女の事を全く知りません、それでも根掘り葉掘り詮索しようとは思ってないです。例え昔何があったとしても、俺は今の貴女を信じてます」

 

 彼女はその言葉を聞いて、少しうつむき気味だった顔をあげた。

 

「ですから話したいと思ったら話してください。それまでは聞こうとはしません。それにきっと受け入れてみせます」

 

 彼女は申し訳なさそうに良いの、と聞いた。俺は深く頷く。その様子に彼女はホッとしたのか少し表情が明るくなった気がした。

 

「それと、ウィッチさんが自分の事を強くないから、って言ってましたが強さって別に人を殺す覚悟とかじゃないと思います」

 

「後輩クンは出来てるの?」

 

 彼女は恐る恐る俺に聞いた。

 

「まぁ、俺が生き返りたいのは復讐がメインってのもありますし、一応は」

 

「そうなんだ、凄いね」

 

「でも俺はそれは強くなんてないと思ってます。過去にこだわってるだけだから。だから俺は過去に何があったとしても、ちゃんと受け止めて、時に後悔に苛まれても前を向いて未来を見てる貴女が強いと思ったんです」

 

 彼女は少し大袈裟だよと言うように手を出して首を横に振った。それでも俺は続ける。

 

「だから、えっとなんて言うか、その強い心で俺を導いてください、生き返るまで」

 

 彼女は手を口に当てたかと思うと少し声を出して笑った。

 

「あははっ、決まらないね、君は。でもありがとう、元気出たわ。年下の君に励まされるなんてね。でも私から言わせると君も十分強いよ」

 

「今俺、励まされてます?」

 

 彼女は首を深く縦に振った。

 

「え、逆じゃないんですか⁉」

 

「あれ、そうだっけ」

 

 彼女はすっかりいつもの調子に戻ったらしく、からかうように作り笑いではなく本物の笑みを浮かべ、

 

「でも言ってる事はカッコよかったよ、後輩クン♪」

 

 そう言って俺の肩を肘でつつく。そして子供っぽい表情から大人っぽい表情に変え

 

「気持ちの整理ができたら話すからそれまで待っててね」

 

「勿論です。じゃあ気分が明るくなったところで通販じゃなくて録っていた特撮を見ましょう!ウィッチさんがこれを好きということは何も知らない俺でも知ってます!」

 

「え、私の好み?あぁ教えたことなかったっけ。そうだね、待ってくれるなら色々私のことも知ってほしいからね。私は本名は美神 卯一で好きな物はアップルパイ誕生日はハロウィーンです。今後ともよろしくね♪」

 

「はいよろしくお願いします...って美神ってまさか⁉」

 

 俺は生まれてからこの名字は一度しか聞いた事がない、まさか違うだろう。あの家じゃないよな、同じ名字ぐらいどこにだってあるだろ、きっと。

 

「うん、美神コーポレーションの美神寅次は私の実兄、つまり私は美神家の令嬢ってこと」

 

 え、あの誰もが知る超有名な大企業のトップの妹、教科書にも名前が載ってた前社長の娘がここにいる...事案だろこれ。大丈夫かな俺、捕まったりしないよな。

 

「そんなに急に距離を取らないで⁉」

 

「いや、急に神々しく見えて、その」

 

「実際肩書きだけで、あの家はもう何年も前に出てるからVIPとかじゃないよ⁉」

 

 VIPと言えば何だか前に馬と羊みたいなやつを相手にしたけどそいつ等が着てる服が高そうだったのを思い出す。

 

「え、じゃあこの前屋敷に行ったと思って目が覚めたら家にいたのって」

 

「あ、あれはただの集まりで変装してして行ったらたまたま君が変装した私と出くわしたのであって」

 

 え、じゃあまさかあの時見た金髪のバニーガールはまさか...そこまで考えて急に鼻血が出てきた。

 

「え、後輩クン?大丈夫⁉」

 

 つまりウィッチさんがあの胸が半分以上見えてる衣装を着てたってことだよな、あの姿ヤバいぐらいエロくなかったっけ。

 

「ちょっ、血がさらに出てきてって大丈夫後輩クン⁉」

 

 どうやら俺の同居人は色々抱えてるみたいだ。少し不安があるが今まで通り大丈夫だろう、彼女に止血されながらそう思った。




 番外編もよろしくっす。
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