遊戯王 第四魔法と決闘者達   作:T3PO

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清かろうが恩だろうが、椅子一つ。
汚かろうが憎かろうが、理解二人。
せめてもの理由のために、我らは札へ手を伸ばす。


第一話 卑怯者の闘い

3月。桜の花が咲き始めて・・・

 

 

 

 

 

「貫 誠」。

 

名前には先祖のルーツと親の願いが込められている、とは言ったものの、流石に二文字で完了する自分のそれには違和感を持ってしまう。

 

苗字の時点で「ツラヌキ」。一文字で読ませるには余りに強引。

そこに裏ドラ、名前の「ジョー」。語感だけは認める。

 

誰が聞いても一瞬耳を疑う芸名じみたこの名前。

 

プラシーボ効果だとかレッテル張りが致命傷に至る初等学校時代は、自分の名前が鬱陶しくて堪らなかった。

それに僕は、決して「まこと」の文字が似合う人間性ではない。性格にしても。デュエルスタイルにしても。

気高くモンスター操り、魂を賭けて敵の眷属を打ち倒す事が「正々堂々、誠実な決闘」ならば、僕のそれは堕落しきった強盗の様な決闘だ。誠実さの欠片も無い。

 

それでも、今回ばかりは。・・・いや正確には昨日も含めて二回は、この名前に感謝せざるを得ない。

 

一つ目。昨日のウンザリするほど多いテスト用紙に「名前の記入が楽」。

二つ目。

 

決闘場中央で試験官が名簿から読み上げようとするも、ムッと顔をしかめた。

 

「つ・・・つら・・・」

 

「つらぬき じょー です。」

 

初老の試験官は目を丸くして、こりゃまた失礼と軽く謝罪をした。

 

二つ目。インパクトだけは負けない。

 

 

総合決闘育成都市「デュエル・ユニバース」。またの名を、「決闘者の楽園」。その中核の一つ、「香蘭高等決闘学院」に定員枠500人に対し全国から10000人もの志望者が集う凄まじい学校だ。

 

やっとこさっとこ、エントリー試験、筆記テストを抜けてきたけれど。それでも最終決闘面接に1500人近く残っている、らしい。500に対し1500。単にこれから望む決闘に勝てば定員に収まるワケでは無い、と言された様なものだ。

 

ならば。この際、名前のインパクトだろうと、なんであろうと試験官の印象に残るべきだ。

ただでさえ、これから誠実でない決闘を見せつけるのだ。受験生としての誠実さは残しつつも、それとは別の存在感を植え付けなければ、きっと「楽園」の入国切符は渡されない。

 

「申し訳ないね。№258 貫誠さん。と、」

 

試験官のオジサンは言い終わって小さく「「つ」の子は一人だけか」と呟いて、その後「№262。舎人ライナーさん」と緊張しきった受験生の群れに呼び出しをかける。

 

・・・分かっていたとも。言ってしまえば殺し合いだ。

1500人も残っていて他の学校の様に試験官と決闘をかましていたら日が暮れてしまう。

「楽園」に入るには、受験生同士の決闘で勝つ。シンプルでいい。

などと強がりを吐く余裕はない。

 

負ける決闘プロはいらない。ならそれを目指す生徒だって負ける奴はいらない。そりゃそうだ。分かっていた。

しかも、勝ったうえで。その上で試験官の目にかなわなければならない。

 

重なる足跡。

 

きっと僕の顔は、目の前の舎人ライナー君とやらと同じように、真っ青なのだろう。

 

「負けない」「負けたくない」何回漏らしたであろう言葉。

 

僕とこの舎人君はこれから明確に「殺し合う」。

安っぽい比喩に過ぎない、ワケでもない。未来を殺す程の差が、「デュエル・ユニバース」内への進学と他の決闘専門校にはある。

 

僕は。これからこの舎人君を「殺す。」

もし舎人君に病気の家族がいようと、体を張って更生させてくれた恩師がいようと、伝説の決闘者の血筋の一人だろうと。いや何も知らないけれど。

 

知ったことではない。

 

舎人君も小さく「お願い」と呟いて。口だけが「死んで」と動いた、様な気がした。

「殺す」と気取ってみたものの、殺されるのは僕の方、なのかもしれない。

 

健全の欠片も無い決闘。当たり前だ。だって僕も彼も誰もが「決闘者」なのだから。

命もかけずに何が決闘だ。

 

だから。祈る。この決闘がどんな残酷な結果であろうと。

僕と彼とが「楽しい」ものになりますように。

 

「「決闘」」!!!

 

デュエルディスクが後攻の文字を点滅させる。

やっちまった、感。どちらかといえば後攻向きのデッキだけれど、この大事な一戦において一切妨害が介入されないターンを相手に与えたかと思うと、冷や汗が落ちる。

 

「僕は、ライトロードライデンを召喚。効果でデッキから2枚カードを墓地に送る」

 

「ギャラクシーサイクロン」「ライトロード・サモナー・ルミナス」

 

「更に。魔法カード「愚かな埋葬」!デッキから「ライトロード・ビースト・ウォルフ」を墓地に送り、そのまま自身の効果で特殊召喚」」

 

この時点で既にレベル8のシンクロか、ランク4のエクシーズは確定。

そして、墓地肥やしを加速させるのは・・・。

 

「僕はッ!二体のレベル4モンスターでオーバーレイネットワークを構築!X召喚ッ!!」

 

「黄昏の闇夜を抜けて、光明の兆しを、もたらしたまえ!ランク4!!「ライトロード・セイント・ミネルバ!」」

 

ライトロード・セイント ミネルバ エクシーズ・効果モンスター

ランク4/光属性/天使族/攻2000/守 800

レベル4モンスター×2

「ライトロード・セイント ミネルバ」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。自分のデッキの上からカードを3枚墓地へ送る。その中に「ライトロード」カードがあった場合、その数だけ自分はデッキからドローする。

(2):このカードが戦闘または相手の効果で破壊された場合に発動できる。

自分のデッキの上からカード3枚を墓地へ送る。その中に「ライトロード」カードがあった場合、その数までフィールドのカードを選んで破壊できる。

 

ライトロード・セイント ミネルバ→攻撃表示でX召喚。

 

「ミネルバの効果発動!デッキからカードを三枚送るッ!」

 

手札誘発は何もない。こればかりはどうしようもない。

意気揚揚と3枚が墓地へダイブする。

 

「妖精伝姫シラユキ」「ライトロード・サモナー・ルミナス」「死者蘇生」⇒墓地へ

 

「ルミナスが落ちたため。僕は1枚ドロー。」

 

・・・っ。本当に、好き勝手に動き回ってやがる。このさい、1ドロー位くれてやる。

だが、シラユキはまずい。それを序盤に落されると、2回。いや3回位は発動されかれない。

 

「カードを二枚伏せてターンエンド。貴方のターンです。」

 

2枚の伏せ札に、鬱陶しい効果持ちのXモンスター。手札は2枚で墓地肥やしも上々。

 

超えてみせる。この決闘。とりあえず展開して予定していた流れにできて良かった、なんてほっとした顔、を超える。

 

「ドロー!!」

 

ドローしたカードは…ッ!乾坤一擲。ってやつか。この大勝負には丁度いい。

それに。このカードならば。きっと・・・。

 

「俺は。手札から魔法カード「ヒーローアライブ」発動!ライフを4000払って、デッキから「HERO」を呼び出す!!」

 

 

一瞬目を見開く舎人君。けれど殆ど条件反射の様にカウンターを宣言する。

 

「させない!「神の警告」!!2000ライフを払ってその効果を無効にするッ!」

 

・・・ひひ。

リストカットの様に無意味なライフが流れていった。

 

舎人ライナー ライフ6000

貫誠     ライフ4000

 

「「V- HERO ヴァイオン」。召喚。」

 

幻覚の英雄。静かに場にたたずむ。

V・HERO ヴァイオン 効果モンスター

星4/闇属性/戦士族/攻1000/守1200

「V・HERO ヴァイオン」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。

デッキから「HERO」モンスター1体を墓地へ送る。

(2):1ターンに1度、自分の墓地から「HERO」モンスター1体を除外して発動できる。

デッキから「融合」1枚を手札に加える。

 

「ヴァイオンのエフェクト発動。HERO限定の「愚かな埋葬」だ。デッキから「E・HEROシャドー・ミスト」を墓地に送る。そして「シャドー・ミスト」のエフェクトにより、デッキから「HERO」を手札に加える。俺が加えるのは・・・」

 

「D・HERO ディバインガイ。」

 

一瞬顔をしかめる舎人君。E・HEROの動きの定跡ならばメジャーなだけあって知っているかもしれない。だが、「D」の動かし方を良く知る人は決して多くはない。

 

そしてその表情を浮かべてくれるのならば…ッ。

 

「ヴァイオンの二つ目のエフェクト発動。墓地のシャドー・ミストを除外し、デッキから「融合」を加える。」

 

準備は整った。ここからは、既にドロドロの世界。その清廉潔白なライトロード。引き摺り込んでヤる

 

「俺は。「融合」を発動!手札の「D-HERO」。「ディバインガイ」と「ディシジョンガイ」を融合。」

 

「出でよ・・・ッ。レベル8、暗黒郷の男。「D‐HEROディストピアガイ」!」

 

D-HERO ディストピアガイ 融合・効果モンスター

星8/闇属性/戦士族/攻2800/守2400

「D-HERO」モンスター×2

「D-HERO ディストピアガイ」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが特殊召喚に成功した場合、自分の墓地のレベル4以下の「D-HERO」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。

(2):このカードの攻撃力が元々の攻撃力と異なる場合、フィールドのカード1枚を対象として発動できる。

そのカードを破壊し、このカードの攻撃力は元々の数値になる。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

輝かしき闇の戦士。後戻りできない開戦の火蓋が切って落とされた。

 

「ディストピアのエフェクト、発動。墓地の「ディシジョンガイ」の攻撃力1600分のダメージを与える。」

 

舎人ライナー 6000-1600=4400

 

「ちい!!たかだか1600!それくらいなら・・・!!」

 

「「たかだか」?ならばお代わりはいかがですか?バトルフェイズ。ディストピアで「ミネルバ」を攻撃。」

 

「ん!?」

 

だんまりを決めていた試験官殿は怪訝な声を挙げる。

 

恐らく減点。道ずれの可能性のある「ミネルバ」に不用意に触れる。確かに、褒められることじゃない。だけど止めらない。僕はそうやって負けてきたし、勝って来た。それで受験に堕ちるならば、その程度だったと笑うしかない。

 

たかだか800のダメージが。在り得ない扉を開ける、かもしれないのだ。

 

ライトロード・セイント・ミネルバ→破壊。

舎人ライナー ライフ4400-800=3600

 

「ミネルバの効果発動!デッキから三枚墓地に送り、その中のライトロードの数だけ相手のカードを破壊する!!落ちろッ!!」

 

墓地へ飛び込む三枚…ッ!!!

 

「ライトロード・サモナー・ルミナス」「青眼の白龍」「パワーウォール」

 

「1枚だッ!「ディストピアガイ」を破壊!!」」

 

わざわざ三枚のカードを使ってまで出した戦士は、あっけなく滅びた・・・

不幸中の幸い。本命は・・・!

 

「続けて、「ヴァイオン」でダイレクトアタック。いけ。」

 

「だからそれ位ならば!!」

舎人ライナー 3600-1000=2600

 

「ジャブ・ジャブ・ストレート・・・」

 

「ん?」

 

やば。うっかり独り言を漏らしたようだ。やっぱり、人に良く思われるためのダメだな。どうにもモヤモヤして、蓄積した興奮が破裂しそうになる。

 

さて、必死の一手。このパンチが当たれば勝ちだ。

 

「手札から、速攻魔法「マスク・チェンジ」発動。HEROを同じ属性の「M・HERO」へ変身召喚させる。」

 

 

「っく!闇のHERO・・・!ダークロウか!?」

 

ここまで来てそれを想定するなんて、悠長過ぎる。

投げたナイフはもうとっくに心臓一突き直前だ。

 

「変☆身。「M・HERO闇鬼」!!」

 

M・HRRO闇鬼 レベル8 攻撃力2800。

 

「!!!」

 

「喰らえ。このダイレクトアタックでライフはゼロッ!」

 

「そんな事はさせないよ!墓地の「妖精伝姫シラユキ」!特殊召喚だ!」

 

そりゃそうだよな。流石にそこまで都合よくはいかないか。

 

墓地の7人の小人の力を受け、華麗なる姫君は復活を遂げる。

 

墓地の「ミネルバ」「ライデン」「死者蘇生」「愚かな埋葬」「ライトロード・サモナー・ルミナス」×2 「パワーウォール」「神の警告」⇒除外

 

「妖精伝姫シラユキ」⇒蘇生

 

「シラユキは復活と共にモンスターを裏守備に出来る!選択するのは当然「闇鬼」!!」

 

毒林檎を押し付け闇鬼は昏睡、裏守備になった・・・。自分のされた嫌な事を押し付けるのはよくないと思いまーす。

 

妖精伝姫-シラユキ 効果モンスター

星4/光属性/魔法使い族/攻1850/守1000

(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを裏側守備表示にする。

(2):このカードが墓地に存在する場合、自分の手札・フィールド・墓地からこのカード以外のカード7枚を除外して発動できる。

このカードを墓地から特殊召喚する。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

そして。見逃しそうになったが、さっきポロっと落ちていった「ブルーアイズ」・・・。予想が正しいならば、次の彼のターンで僕が見せつけられる「ソレ」は、完成された肉体美の様にスマートな手筋だ。相手の拳をいなし。そして剥き出しのグラスジョー目掛けて撃つ、最大最強のカウンター・・・!

 

「・・・カードを一枚伏せて、ターンエンド。」

「その瞬間、リバースオープン。「サイクロン」です。その伏せを破壊します。」

 

「業炎のバリア ファイアフォース」⇒破壊

 

・・・貴重な勝ち筋がまた一つ消え去った。

「ボクのターン。ドロー!「マンジュ・ゴッド」を召喚!召喚成功時の効果で、デッキから「ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン」を手札に加える!」

 

テンションが上がっていく舎人君。彼にとってそのカードは手にしただけで心を昂らせる。そんな一枚なのだろう。試験官がその流れの意図を察し、無邪気に表情を明るくさせる!

 

「儀式魔法「カオス・フォーム」!墓地の「青眼の白龍」を除外!手札から「ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン」を降臨させる!」

 

益荒男。ワイルド。漢。語彙力なき僕には表現しきれない、圧倒的な「カッコイイ」存在感が場を支配した。

 

ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン

儀式・効果モンスター 星8/闇属性/ドラゴン族/攻4000/守 0

「カオス・フォーム」により降臨。このカードは儀式召喚でしか特殊召喚できない。

(1):このカードは相手の効果の対象にならず、相手の効果では破壊されない。

(2):このカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が越えた分の倍の数値だけ戦闘ダメージを与える。

 

「続いて、レベル4のシラユキとマンジュゴッドでX召喚!「希望皇ホープ」、からのXチェンジ!!「SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング」!!」

 

手札1枚で爆睡中の闇鬼以外に何も持たない、投了寸前の相手にもこの殺意。彼は本気だ。本気で殺りに来ている。

 

「バトル!「カオスMAX」でセットされた「闇鬼」へ攻撃!」

 

なんと無力。夢うつつのまま情けなきHEROは光の中へ消えていく。

そして、その濁流は勢いを止めず僕へと迫る。

 

「カオスMAXは!貫通効果を持つ!そしてその時のダメージは二倍だ!!5600のダメージを受けろおォォォォォォ!!」

 

いっそダイレクトアタックならば、手札発動で乗り切る手段も多いがモンスター越しのダメージにはそれすら使う暇がない。シラユキの蘇生からの美し過ぎる戦略。

 

だからそう。その、思わず目を奪われる試験官殿や華麗なる勝利を確信する舎人君の目の前で。突如として意味不明の爆発を起こす僕はきっと、空気の読めない男なのだろう。

 

「なあああああ!?」

 

「・・・戦闘ダメージが二倍になる。ならば、そのダメージそのものを打ち消してしまえばいい。野暮な爆発で丸ごとな。」

 

反撃開始。狼煙代わりの血煙を発したそのカードを魅せつける。

 

D-HERO ダイナマイトガイ 効果モンスター

星5/闇属性/戦士族/攻1000/守1000

(1):モンスターが戦闘を行うダメージ計算時にこのカードを手札から捨てて発動できる。その戦闘で発生する自分への戦闘ダメージは0になり、お互いのプレイヤーは1000ダメージを受ける。

(2):墓地のこのカードを除外し、自分フィールドの「D-HERO」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの攻撃力は次の相手ターン終了時まで1000アップする。

 

「手札の「D‐HEROダイナマイトガイ」のエフェクト発動。手札から捨てる。すると戦闘ダメージを無効にして、その後お互いに1000ポイントのダメージを与える。更に墓地の「ディシジョンガイ」発動。その自爆ダメージを自分だけ無効にして、墓地の自身を手札に加える。」

 

「くう!だが、がら空きだ!ライトニングでダイレクトアタック!」

「・・・そう。がら空き。それどころか手札1枚のみ。だけど。生きている。」

 

貫誠ライフ 1500

舎人ライナー 1600

 

徐々に青ざめていく舎人君。

それはきっと必殺のコンボが決まらなかった事だけじゃない。

何故、盤面も手札も。こんなにも優勢を維持しているのに。

自らのライフは残り僅かまで削られているのだろう、と。

 

そして、頭のよさそうな彼は気が付く。先ほどサイクロンで割ったカードがなんであったろうと。そして、しまったと明確に慄く。

 

「~~~ターンエンド・・・。」

 

・・・けれど、それは僕も同じ。手札のディシジョンガイだけでは、この死線を越えられない。

そう。結局。最期はドロー。それに尽きる。シンプルでいい。

これまでだってそうやってきた。

 

「Dirty」汚く、罵られる様な。

「Desert」不毛な戦いを。

「Desire」それでも生き残りたいと醜く望む。

 

 

「ドローッ!!!」

 

「!!!手札から魔法カード「増援」!!来い!「D‐HEROドリルガイ」!!」

 

「そして通常召喚でこのドリルガイを!その効果により「ディシジョンガイ」を特殊召喚!そして、「ディシジョンガイ」のエフェクトを発動した上で・・・・X召喚ッ!!!」

 

「撃ち抜け。心臓を!!ランク4、「ガガガガンマン」を守備表示でX召喚!!!」

「ガガガガンマンのエフェクト発動!ドリルガイを墓地に落とし、800ポイントのバーンだ!」

 

舎人ライナーのライフ 1600-800=800

 

たかだが800のダメージが、こんなにも価値ある事もある。

安っぽいバーンを受ける舎人君は、さっきまでの興奮は消え失せて、怯えきっていた。

 

「そのまま、墓地のディバインガイのエフェクト発動。自身とドリルガイを除外して2枚ドロー。・・・。」

 

が、次の僕の言葉を聞いて、彼は「安心」した。

 

「これでターンエンド。」

「・・・!?これで!?」

「そうですが。」

「伏せもなし!?」

「はい。」

「!!!!~~~~~~~!!!!!」

 

悪夢は覚めた。冬は去った。やっと終わった。そんな幸せにつかる彼を。

 

「ディシジョンガイのエフェクト発動」

 

再び、混沌へ引き摺り込む。

 

「な、何を!?」

 

「ディシジョンガイは、召喚特殊召喚した場合、1デュエルに一回だけ、エンドフェイズ時に墓地の「HERO」を回収できる。」

 

「だ。だけど。それがなに、」

 

「「D‐HEEOダイナマイトガイ」を回収。」

 

「!?!?!?!?!??!~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!?!?!?!?!?!」

 

王手。残り800ライフしかない状況での、「ダイナマイトガイ」を握られる。

 

 

「相手を傷つけた瞬間負ける」という理不尽な銃口を額に押し付ける。

 

言うなればこのサルベージは、そう。

 

「動くな。少しでも俺を襲おうとするならば。おまえの御主人公の命は無いぞ?」

 

ヒロイックさの欠片もない。だって当然、Dだから。

卑怯でも、なりふり構わない。どんな手段を使ってでも勝つ。それが、Dark Hero。

 

戦闘を実質的に封じきった。

けれど詰みではない。

 

効果ダメージを防ぐカード。

戦闘中の手札発動すら封じられるライトニングの二枚目を出す作戦。

一番現実的なのは何らかのカード効果でガンマンを除去し、ライトニングで止めを刺す。

 

だからこれはまだ「王手」「詰めろ」であって「詰み」ではない。

まだ「受けろ」を掛けただけだ。けれど。

 

「~~~~!!ドロー!!・・・~~~~~」

 

ドロー後の悲痛な表情が、雄弁に苦難を語っていた。

だが、「苦難」。「絶望」ではない。まだ・・・来るかッ!!!

 

「ライデンを召喚!!効果でデッキトップ2枚を墓地に送る!!」

 

ッ!!これで!「ウォルフ」や「ライトロード・アーチャー・フェイリス」が落ちれば、自身の効果で特殊召喚され、アーチャーの効果やランク4のXモンスターによる効果除去を撃たれるッ。優男と思いきや、舎人君。カオスMAXといい男気あるなぁッ!

 

「来い・・・!」

「落ちろォ!!」

 

一枚目!「光の援軍」!

二枚目・・・・!!

 

「EMトリック・クラウン」!!!

 

「おおおおおおおお!!!くそおおおおおおおお!!」

 

悪運、ここに極まり。本来なら「ウォルフ」の同一の機能を働いて、ランク4に繋げられていただろう、「墓地に送られた時復活する」モンスター。

 

だがその為には1000ダメージのセルフバーンが必要で。普段なら安く感じたその値段は永劫の距離遠く。

この場で一番皮肉のきいたカードを舎人君は落としてしまった。

 

それでも彼の目は死んでいない。

 

 

「バトル!!ホープ・ザ・ライトニングで「ガガガガンマン」を攻撃!そして効果により、素材を二つ取り除き、攻撃力5000にした上でアタック!ターンエンドだ!!」

 

「ガガガガンマン」⇒破壊。

 

此処に来て、何という粘り・・・!

X素材になっていた「シラユキ」を墓地に送り、再び特殊召喚と昏睡効果の条件を整え、僕のターンに仕掛けてくるモンスターの攻撃を封じた・・・ッ!

 

手札に☆4がいるのであれば、次の彼のターン、さっきのライデンとX召喚。昏睡状態の僕のモンスターを除去して、ライトニングでトドメ。

 

参った。王手を防ぎつつ、逆に王手をかけた斬り返し。

これで僕の用意していた「手札の適当なモンスターで「カオスMAX」に特攻させて、その瞬間「ダイナマイトガイ」の爆破でバーン勝ち」は「昏睡蘇生」の「シラユキ」によって

死筋になってしまった。

 

・・・舐めるなと言っている。舎人君を通じて「楽園」が。

温い手じゃ越えられない。限界を見せろ、と。

 

最高だぜ。故郷では決して認められなかった「僕の決闘」を。

「卑怯」だと罵られた「穢れて不毛な欲望」を。

この「楽園」は「温い」と言ってくれている。

もっともっと出せと焦れしてくれている。

 

もはや、この決闘、怖いモノがない。ありがとう舎人君。

 

僕は。もっと高く飛ぶッ!!!

 

 

「ドローォォォォォォ!!!」

 

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

「ッ~~~~!カードをセット!ターンエンド!!」

 

「ッ!!!決めるッ!!ドロー!!!バトルフェイズに、」

 

「させない!!それを言われたなら俺の負けだ・・・!その、ライトニングが支配する「バトルフェイズの前に・・・・!!発動!!」

 

「!!!!」

 

「これが最後だッ!!!「リビングデッドの呼び声」!!墓地の「ディストピアガイ」を蘇生!!」

 

「ここで!?ディストピアガイだとォ!?」

 

「そのエフェクトはッ!墓地の☆4D・HEROの攻撃力を!「特殊召喚」された時与えるッ!!」

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

「「ドリルガイ」分の!1600バーンだッ!!!」

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

悪あがきの。みっともないその一撃で。僕は・・・・!勝った!!!!

 

「決着ッうううううううう!!!!」

 

WIN 貫 誠 ―  LOSE舎人 ライナー

 

「勝ったぁぁ!!!!決着ウウウウウう!!」

「ああああ!!!!ちくしょおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

 

 

「・・・キミたち。」

 

「「!?!?!?」」

 

「ハッ」と我に返る僕ら2人。生暖かい眼差しで試験官殿が呆れていた。

 

「失礼しました!!」「すいません!!!」

 

「よし、落ち着いたね。じゃあ、「礼」!!」

 

「「ありがとうございました!!!」」

 

本当に。本当にありがとう。

僕は愉悦を隠しきれないし、彼は涙目だけれども。それでもきっと僕らはガチで感謝し合えたと思う。

これは確かに殺し合いだったけれど。

とても楽しかった。彼もそう感じていてくれている。きっと。

 

後は。試験官殿の採点次第かぁ・・・。

最後のはしゃいだのは明らかにマイナスだよなぁ・・・。

こういう、-のイベントの時。やっぱり思う。

 

僕、「貫 誠」という名前の印象の大きさは、都合が悪い時は本当に憎たらしい、と

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

香蘭学園。

多くの決闘者が鎬を削る魔窟。

その中でも成績優秀者だけが入る事が許される「レコードの間」。

知らない人は見たら社長室を思わせるその一室で、緑髪の美女はデスクトップ越しにLIVE中継を楽しむ。

 

「カルーア・ミルク」

 

それが少女の名。

決闘実技にける「香蘭」のトップ。

この学園のトップランカーの数人には、幾つかの与えられる「特権」と「仕事」がある。

その一つが「入試試験」の特別採点。

 

一部の入試試験の生中継を見て、当人の気にいった試験者の評価に口出しできる、特別制度。

実のところ、数年前に「身内贔屓」すら出来ると批判を受けたため、せいぜい評価ギリギリの際どい生徒の最後の判断基準程度にしか機能していなかったが、彼女「カルーア・ミルク」は「たくさんの決闘を見れる」娯楽として楽しんでいた。

 

画面に映るのは、D‐HEROの少年と、ライトロード・カオスデッキの少年の決闘が終わった所だった。

「わあ!そんな手で!!すごいわ!!」

はしゃぐ少女。

 

「失礼します。」

そこへ、燕尾服のコーヒーを盆にのせた青年が入る。

香蘭の№2にして、楽園内の融合召喚使い手500人から成るチーム、「融合連」代表、「豆板醤」。薄いピンクの襟なしシャツと白ミニパンツという、緩い大学生の様な格好のカルーアミルクとは真逆に、ベタなまでに仕事のモードの執事。カルーアミルクにとっては採点は娯楽であったが、彼にとっては真っ当な仕事であり、そこに休日も関係なかった。

 

「コーヒーを入れましたが。」

「ありがとう。でね!見て頂戴!この子ちょっと凄いよ!」

「はア。・・・融合使いですか。だとしたら私の管轄に入るかもしれませんね。」

「そんな事じゃないのよ!この子は相当変な子よ!そもそも名前が変だし。」

「それだけは貴女も私も言っちゃいけないと思うんですがね。・・・ほお・・・。」

「ね?面白いでしょ?このギリギリ感というか。」

「個人的には、最後まで冷静に勝ち筋を用意し続けた舎人さんの方が評価できるのですがねェ。」

「確かに彼も凄かったわ。香蘭落ちはしたけれど、試験官から他の楽園内の学園の入試チャンス貰えると思うわ。けどそういう事じゃないのよ。この「ツラヌキジョー」君。彼は。」

 

「彼は、ある種「異能感覚」の持ち主だわ。」

「!!」

 

異能感覚。それは豆板醤を驚かすには十分な言葉だった。

それは少なくとも真面目で現実主義の豆板醤にとっては信用しきれない言葉。

「クオリア」という言葉がある。同じ「赤色」を人は皆、「赤」と呼ぶが、実は他者の見る「赤」は自分の知る「赤」とは全く違うものではないか?という、認識の差異。

 

「決闘異能感覚」はある種それに近い。普通の決闘者にとっては、相手との鎬合いである決闘も。

ある決闘者にとっては「決闘」は戦争の様に領地を広げるゲーム。

ある決闘者にとっては、如何に山札を削り耐え続ける我慢勝負。

ある決闘者にとっては、相手と協力して行う「お芝居」。

当然、彼らの決闘は「一般的な決闘」とは明らかに異なりがちになるのだが。

 

「・・・彼にとっての決闘は、どんな視線なのでしょうか?」

「ううん。それそのものは普通よ。「決闘」は「決闘」でしかないのでしょうね。」

「回りくどくい表現は辞めて頂けませんか?」

「そうじゃないのよ。貴方にとって「決闘」に勝つとは何かしら?」

「それは、相手のライフをゼロに」

「嘘よ。確かに建前はそうなのだけれど。きっと現代決闘者の殆どはこう考えるのじゃないかしら。「如何に、アドバンテージを稼ぎ、相手を封じ込めるか」が「決闘に勝つ事」だと。」

「!!それは!」

 

「あたしだってそうよ。あたしの決闘だって、相手の全てを無力化するタイプだから。だけど。彼は違う。勿論、現代的なアドバンテージや封じ込め論を無視しているのでない。けれど。」

「「相手のライフをゼロにする」。さっきの質問の答えを実践するのが彼の決闘感。彼にとってはきっと、相手の攻撃表示のモンスターは「ダメージを与えるチャンス」。ぞっとしたわ。彼が、一番愉悦を表情にだしていたのは、止めの一撃でもなく、相手の勝負手を潰したときでもなく、一番最初。自分のヒーローアライブを神の警告でもみ消されたあの時よ。4000のライフを捨てたあの一手を簡単に止められたのに。むしろ彼にとっては、2000のバーンに変換できたから上出来。明らかに常軌を越えているわ。

 

だから「ある種」の「異能感覚」。誰よりも目標に沿った行動が却って異なって見える。「現代決闘論」の題材に取り扱ったら金賞貰えるかもしれないわ。うん。よし。決めたわ。」

 

気軽なクリック。

カルーア・ミルクの特別評価が入力された。多少態度に難アリだろうと勝ち星をあげて特別評価が入ったならば、彼は楽園一の決闘校「香蘭」への入学が決定された。

 

コーヒーを啜りながら、彼が期待に応える決闘者ならいいなと、カルーア・ミルクは静かに微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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