遊戯王 第四魔法と決闘者達   作:T3PO

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「もっと、ぎりぎりの、私の知らない世界を、ウィンドウ越しに見せてちょうだい?」

天の玉座で彼女は笑う。
背後に迫る津波も知らずに。


第三話 現実改変

女王、カルーア・ミルク。香蘭高等学園の三年生。一目見ただけならば、読者モデルの様な、ありふれた美しさと軽薄さを持つ女子高生。

その頭角を現したのは1年生後期。当時行われていた学年対抗団体戦で先鋒に抜擢されると、本人ですら無自覚だったポテンシャルが大爆発。連戦連勝。最終的に団体としては敗退するも最後まで彼女個人では黒星を付けなかった。

 

以降、学年別大会では優勝。2年生の時点で公式大会では無敗・・・つまりは学園1位に座していた。勿論、公式大会戦以外の場所で負けることはあったものの、周囲の者から負け知らず、潔癖などと思われるに十分だった。

 

・・・ところで、どこの決闘専門校にも、昔から「異名」という伝統染みた悪癖がある。

それは力ある決闘者に対する羨望であり、同時に目の上のたん瘤への皮肉であったりするが、少なくとも何かしらの二つ名を持つ事が彼ら彼女らにとっては名誉だった。当然、それは楽園の中でもあった。

 

カルーア・ミルク。またの名を「ヴァージン」。彼女のあまりの公式大会での穢れなき白星。彼女の「届かせない」決闘スタイル。そして如何にも男遊びをしてそうなルックスへの遠回しな揶揄も含めた二つ名。鉄壁・難攻不落・アイアンメイデン。

 

彼女の前では全ての決闘者の闘いは「献上物」であり、それを見届けるかどうかは彼女の気分次第。ましてや、新人戦で優勝した浮かれた1年生なんてのは、休日の午後、甘味を楽しむ様なものだった。

 

少なくとも。今日までは。

 

 

「第3話 現実改変」

 

・・・既に16時半。1日中戦い抜いてようやく終わった、と、思いきや再びの決闘。

そりゃ腹も減るし疲れも感じるワケだ。

ギャラリーの声も目線も此処にきて最高潮に感じる。負けたところで相手が悪かったといえる状況ではあるのは理解している。だけど、「デュエルである以上、負けて当然の勝負なんてない」・・・。偉人の名言を引っ張り出してでも、ここは強気を守る。

 

まずは視界を閉じる。

それから呼吸を整える。吸って。吸って。吸って。維持。酸素を取るだけ取ったら、眠りにつくように無意識へと潜る。

 

・ ・ ・ ・ ・。

・ ・ ・ ・ ・、10秒。

 

よし。後一戦だ。

僕の前にいる女は強い。だけど、倒せないと誰が決めた。

 

ディスクが点滅・・・久々に先行。勝つしかないだろう。

 

 

「「デュエル!!」」

 

余裕しゃくしゃくのご尊顔。

突き抜ける為には、弾丸が必要だ。

 

「魔法カード「ディスティニー・ドロー」。手札の「D・HERO」を捨てて2枚ドローする。捨てるのは「D・HEROダイナマイトガイ」。2ドロー。もう一回「ディスティニードロー」。今度は「ディシジョンガイ」を捨てて2ドロー。」

 

「いいじゃない。回転数も上々。墓地も肥やせて上機嫌?」

 

無視。ギャラリーから「話しかけて下さっているのに失礼だぞ!」とか信者の声がきこえるけれど。幾ら不敬罪だろうと決闘中は治外法権。知るか。

 

「「増援」。デッキから「V・HEROヴィジョンガイ」を手札に入れる。そして召喚。そのエフェクトは「愚かな埋葬」。デッキから「E・HEROシャドーミスト」を墓地の落とし、そのまま「D・HEROディヴァインガイ」を手札に入れる。」

 

「実質増援の二回撃ちじゃない。やだ怖い。」

 

「怖いのはまだ終わらない。墓地のディシジョンガイを除外して「ヴィジョンガイ」のエフェクトを発動。「融合」をサーチ。そして発動だ。手札の「ディヴァインガイ」と「ディシジョンガイ」の二枚を融合。」

 

「カモン…ッ。暗黒郷の男。「D・HEROディストピアガイ」!!早速傷物になれ。エフェクトで1600のバーンダメージだ。」

 

 

「きゃあ!先行1ターン目でこんなに喰らうなんて久しぶりだわ。」

 

「墓地のダイナマイトガイのエフェクトで、ディストピアガイの攻撃力を次の相手ターン終了時までアップ。カードを2枚セット。ターンエンド。」

 

少なくとも。ここ最近で最高の制圧の構えだ。最低でも2手は決まっている。

 

女王の右手がデッキトップを掴む。重圧も軽蔑もなく。自然体のままに彼女の番は始まった。

 

「ドロー。」

 

「あたしは、手札から「テラフォーミング」を発動。デッキからフィールド魔法「セフィラの信託」を手札に加える。」

 

そこだ。その起点を捌く。

 

「リバースカードオープン。「マスクチェンジ」。場のV・HEROヴィジョンをリリースし、エクストラデッキから「M・HEROダークロウ」を変身召喚。」

 

歓声のあがるオーディフェンス。ダークロウの効果はあまりに熾烈。ターン1制限は流石にあれどサーチした瞬間相手の手札をランダムにハンデスできる効果と、墓地へ送られるカードが除外される二つの力が本来あり得たハズの選択肢を切り殺す。

 

 

「フィールド魔法をサーチし、手札に入れた瞬間。ダークロウの力でハンデスだ。右から2枚目のカード。」

 

「!!!それは、「セフィラの信託」。」

 

ビンゴ。サーチしたカードをすぐに落せた。それにしても「セフィラ」。読みにくい上にペンデュラム系・・・。

 

「ならしょうがないわ。Pカード「智天の神星龍」をセッティング。」

…ッ。ええい。南無三ッ!

 

「ディストピア・ガイのエフェクト発動!攻撃力を元の2800に戻して、今置かれた「トーラ・グラマトン」を破壊する。」

 

「ええ~~~。」

 

これで正しかったのか・・・・。いや少なくとも、間違えではない。下手にPカードを破壊すると、すぐさまEXデッキから出てきて、効果の無駄撃ちに繋がりかねない。だが今破壊した「トーラ・グラマトン」は通常ではP召喚されない特殊なモンスター。すぐに復活される恐れはない。それに正確には覚えていないけれど奴はセフィラデッキの展開の要。P効果でデッキからEXデッキに同カテゴリカードを直送して、P召喚の際に欲しいモンスターを増やしてくる凶悪な性能だ。効果を使われる前に叩くしかなかった。

 

少なくとも2手は削った。残りは4枚。耐えき「フィールド魔法「セフィラの信託」を発動。デッキから「セフィラモンスター」を手札に加える。選択するのは「智天の神星龍」。」

 

~~~~!!!積み木崩し。床の覆水。波に攫われる砂上の楼閣。こちらの妨害したモノをあっさりと再び用意された。と言うよりも。下手するとこちらの妨害を先に使い切らせるための動きですらある。公開情報のディストピアガイについては兎も角、「マスクチェンジ」からの「ダークロウ」の可能性を読んで、誘発させるようなプレイングをした。

最悪こっちのフィールドが更地になるのも覚悟しなければならないかもしれない…ッ。

 

知ってか知らずか・・・いや、確信犯の顔をして女王は判決を突きつけるように手札を切る。

 

「魔法カード。「セフィラの神意」。デッキから「セフィラ」のカードを1枚サーチ。というか除外効果鬱陶しいわね。「竜星因士セフィラバーン」を手札に入れて。それと。Pスケールに「宝竜星セフィラフウシ」張っておいて。「バーン」召喚。効果使って「フウシ」と「M・HEROダークロウ」を破壊。何かあるかしら?」

 

「~~~。無いです・・・・ッ。」

 

「あ、っそ。ならサイナラね。」

 

そう、ダークロウこそがこの決闘の勝ち筋だと信じていた。Pモンスターをエクストラデッキに行かせず除外し、持久力を丸ごと削ぐ。それが最大最高のプランだったのに。意図も容易くこのモンスターは・・・!!!

「セフィラ」。様々なカテゴリの名を持ちよってその恩恵を享受するPモンスターテーマ。

豊富な優秀なサーチカードと他テーマのサポートを使える、確固たる最善の型のないデッキ。その程度にしか思っていなかったが、知らなかった。このカテゴリ、下級モンスターの効果も十二分に厄介…ッ。高性能でなくともサーチ力の高さと噛みあうと、こうまでも機能するのか・・・!

 

「Pスケールにスケール1の「セフィラフウシ」をセッティング。「智天の神星龍」のP効果でデッキから「秘竜星セフィラシウゴ」をEXデッキに送ってそのスケール分をコピーする。シウゴはスケール7。そしてそのまま。P召喚。」

 

女王の口元が僅かに緩む。大げさな喜びや勝ち誇った愉悦でもなく、唯ひたすらに心地よさを感じただけの、笑み。気概で考えない様にしていた恐怖が目覚め始める。

 

「口上とか面倒くさいから省略でいいわね?P召喚。エクストラデッキから「セフィラシウゴ」」「セフィラフウシ」。二体の効果発動。「フウシ」で「バーン」をチューナーモンスターに変化。「シウゴ」でデッキからセフィラか竜星の魔法・罠をサーチ。入れるのはカウンタートラップ「セフィラの神撃」。」

 

秘竜星-セフィラシウゴ ペンデュラム・効果モンスター 星6/地属性/幻竜族/攻 0/守2600

【Pスケール:青7/赤7】

(1):自分は「竜星」モンスター及び「セフィラ」モンスターしかP召喚できない。この効果は無効化されない。

【モンスター効果】

「秘竜星-セフィラシウゴ」のモンスター効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードがP召喚に成功した時、または自分のモンスターゾーンのこのカードが戦闘・効果で破壊された時に発動できる。

デッキから「竜星」魔法・罠カードまたは「セフィラ」魔法・罠カード1枚を手札に加える。

セフィラの神撃 カウンター罠

(1):モンスターの効果・魔法・罠カードが発動した時、自分のエクストラデッキから表側表示の「セフィラ」モンスター1体を除外して発動できる。

その発動を無効にし破壊する。

 

「セフィラの神撃」。あらゆる発動を無効に出来る万能カウンター。依然此方には攻撃力2800のD・HEROディストピアガイがいるし、伏せカードも1枚あるが、女王の戦略は既にそれを突破した後の制圧を目標としている。今日の新人大会中、一度も考える事の無かった。それこそ「完全体マーキュリー」を相手にしたときでさえ感じなかった濃厚な、それも溺死していくような敗北の悪寒が過る。

 

「レベル3のフウシにレベル4のバーンをチューニング。シンクロ召喚。レベル7、「邪竜星ガイザー」。さっさと効果発動。自分自身と「ディストピア・ガイ」を破壊。」

 

「くうう!!」

 

「「ガイザー」の更なる効果。破壊された時デッキから別の幻竜族を特殊召喚する。レベル7のチューナー幻竜「タツノオトシオヤ」。」

 

「タツノオトシオヤの効果は自身のレべルを一つ下げることでレベル1のトークンを出す。三回までの限定付きでね。」

 

ッ!それはもう一度レベル7までのシンクロをしますよと言った様なモノ。

 

「タツノオトシオヤの効果でレベル4まで下げてトークン3つを精製。そしてレベル4になったタツノオトシオヤとトークン一つでシンクロ召喚。レベル5「源竜星ボウテンコウ」。」

 

源竜星-ボウテンコウ シンクロ・チューナー・効果モンスター

星5/光属性/幻竜族/攻 0/守2800 チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

自分は「源竜星-ボウテンコウ」を1ターンに1度しか特殊召喚できない。

(1):このカードが特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「竜星」カード1枚を手札に加える。

(2):1ターンに1度、デッキから幻竜族モンスター1体を墓地へ送って発動できる。

このカードのレベルは、墓地へ送ったモンスターと同じになる。

(3):表側表示のこのカードがフィールドから離れた場合に発動できる。デッキから「竜星」モンスター1体を特殊召喚する。

 

「~~~~~~!!!」

 

思わず恐怖で叫びたくなるのを必死で抑える。

ボウテンコウ。自身の戦闘力のリソースを全てアドバンテージに転換させた様なSモンスター。出ても、起動しても、消え去っても何らかの形で得をする最悪のモンスター。けれど。

僕がボウテンコウに恐怖したのはなによりも「チューナー」であるという一点。

目の前にあるモノに恐れる事はない。目の前に無いが、繋がっていく克明な未来に恐怖したのだ。

 

「ボウテンコウの能力。デッキから竜星カード「竜星の九支」を手札に加える。トークンとボウテンコウでそのままシンクロ召喚。レベル6「スターダスト・チャージウォーリア」。シンクロ召喚成功時1枚ドロー。ボウテンコウが墓地に行ったのでデッキから2枚目の「秘竜星セフィラシウゴ」を特殊召喚。」

 

・・・。余りに辛い・・・。だが・・・それでもこの伏せがあれば・・・まだ頑張れるハズ・・・。

 

気付いたらあれほど騒いでいたギャラリーが静まり返っている。教祖の言葉を噛みしめる信者の様な男子生徒もいれば、忌々しげな女子生徒もいた。ドン引きをする新入生もニマニマと嘲笑う上級生もいた。沈黙という合言葉の元に。

 

「さあ。最後の砦を立てようかしら。レベル6のチャージウォーリアとシウゴでオーバーレイネットワークを構築・・・。エクシーズ召喚!!!。」

 

ここまで事務処理的だった口調が急に勢いつき、熱がこもる。先ほどの自分の発言を無視し、彼のカードの召喚を謳う。

 

「直系たる彼の竜よ。咎人を串刺し、見せしめにしてくれよう。」

「ランク6.高潔なる、No.24 竜血鬼ドラギュラス!!!」

 

No.24 竜血鬼ドラギュラス

エクシーズ・効果モンスター ランク6/闇属性/幻竜族/攻2400/守2800 レベル6モンスター×2

(1):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、エクストラデッキから特殊召喚された表側表示モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを裏側守備表示にする。この効果は相手ターンでも発動できる。

(2):表側表示のこのカードが相手の効果でフィールドから離れた場合に発動できる。

このカードを裏側守備表示で特殊召喚する。

(3):このカードがリバースした場合に発動する。フィールドのカード1枚を選んで墓地へ送る。

 

鬼じゃない。鬼畜だ・・・!エクストラデッキから出るモンスターを潰す幻竜。

なんたる制圧。女王の手札には「シウゴ」と「ボウテンコウ」で加えた2種の万能カウンタートラップ、「セフィラの神撃」「竜星の九支」。確実に相手のアクションを二つ潰せる構えだ。そしてダメ押しの「ドラゴギュラス」。万が一、二つの壁を乗り越えてもEXからのモンスターを磔にする奴がいる限り、主導権は戻らない。・・・くそ。分かっている。9割がた、ほぼ負けだ。この盤面からの逆転はあまりに厳しい。それでも、1割を「カードを二枚伏せてターンエンド。」

 

!!!!!?!?!?!?!?!?!?!?!?!!?

 

…攻撃してこない・・・!?ッ!!!くっそ!!嘘だろ!?まさかこの人は・・・!!

 

僕の最後の伏せカード、「業炎のバリアファイアーフォース」を読んでいる・・・!?

確かにこの学園に来てからこのカードを使う機会はそれなりにあった。・・・いや。違う。そうじゃない。分かっていないのかもしれない。ただ、彼女は。女王は。確実に今手に入れた二種のカウンタートラップが機能できる様になってから。正体不明の可能性を確実に潰してから攻撃をすればいいと、本気で考えている。

 

口上後から顔の紅潮を隠しきれていない女王「カルーア・ミルク」が、ニヤニヤと口を開ける。

 

「さあ。魅せて頂戴な。「ツラヌキジョー」。貴方の卑怯で意地汚い決闘をもっと見せて?」

「この・・・・くゥ。」

 

すべての決闘は女王への献上物。彼女だけが見届け、多少なり良い所、面白いものだけが見えたらばそれで終了。何重もの壁がシャットダウンを強制する。

 

楽園1位。カルーア・ミルク。「ヴァージン」。その正体は好きなTV番組を好きな所まで見たいだけ。勝つのが大前提のうえで相手の決闘を楽しみたい。「勝てたけどこっちが「カウンタートラップ」をサーチしてなかったら危なかったよ~。面白いデュエルしますね?」」と、のうのうと、のたまう。そんな種類の最悪だった。

 

くそ。ここで僕は負けるのか?まずドローして手札は2枚。今の手札は「D・HEROディヴァインガイ」。次の1枚がドリルガイか魔法・罠なら手札を0にして墓地のディヴァインガイの効果の効果で2ドロー。4枚での攻め手になるけれど。恐らくそのドロー効果を「九支」が潰すだろう。万が一。何らかの方法であの二枚の壁とドラゴギュラスを突破したとしても・・・入れてはないけど壊獣とかいれば一応その筋はある、そう。突破できしたとしてもなのだ。多少のダメージを与えたところでそれで終わり。再び次のターンでP召喚。少なくとも「シウゴ」によるアドバンテージの差は広がり、制圧は再びかけられる。

 

それでも。それでも。意地汚く、不毛に、強欲な。・・・負けたくない・・・!!

 

 

「ドロー!!!!」

 

観客から悲鳴が上がった。いつの間にか、窓から見える空が暗い。

そして僕のドローの声に重なるように稲妻が落ちた。不必要にドラマチック。

 

引いたカードは…ッ。

しかし、僕がカードを使うよりも早く。

 

その「異変」は起きた。

ふらり。小さな。一粒の白い何かが降ってきた。

 

最初に目に映った時は二階席の観客のせいで落ちた埃かと思った。

最初に触れた時は、落ちたものは埃でなくソフトクリームのこぼれだと思った。

 

だけど。観客からも動揺の声が聞こえ、カルーア・ミルクも僕と同じようにそれに気づいたとき。その正体があり得ないものだと理解した。

 

雪だ。

 

今は初夏なのにとか、雷が落ちているのに、とかでなく。このデュエル場は完全に閉めきっていて天井も当然あるのに、それを透過して雪が降っている。

それは手に触れると冷たく、ソリッドヴィジョンだとか幻でもない、本物で普通の雪だった。

 

ザワめく観客の一般生徒。落ち着いてくださいと叫ぶ教師陣。そうしている間にも雪の勢いは増していく。不可思議な事に深々と降る雪は床に落ちても積もらずに消え去っていくのみ。例えば、「この雪にあてられると死んでしまう」とか、液晶画面に謎の悪の組織が登場して「雪」を止めたければ金を用意しろ、とかとにかく何かが起こるのならば反応できた。

だけどこの雪はあくまで降り続けるだけ。意味不明にシュールなだけで、展開がなかった。

だから、誰もかれもがどう反応していいのか分からなかった。

 

「あれ?俺のデュエルディスク、光ってね?」

 

一人の男子生徒が零した一言。

つられて順々に生徒達が自分のそれを確認する。

・・・!このデュエルディスクを使って3年位だが、今までに見た事のない仄かなピンクの光が、雪に触れるたびに点滅している。

益々意味が分からない。困惑と混沌に囚われた。「改変」は静かに進んでいる事も知らず。

 

「事象」の終焉、「現実」の終了を告げたのは、カルーア・ミルクのデュエルディスクだった。唐突にエラーメッセージを鳴らし、流石の女王も焦り出す。

 

【エラー。エラー。即座にルールに従い、モンスターを一枚墓地に送ってください。エラー。エラー。】

 

「はあ!?何言っているのよ‼?何もルールに触れていないじゃない!?」

 

【エラー。エラー。】

 

【エクストラモンスターゾーンに対し対象のモンスターが2枚あります。すぐに墓地へ送ってください。エラー。エラー。】

 

!?!?!?!?!?!!?!?!?!?!?!?!?

 

比喩でなく。この時、この場にいた誰もが驚愕した。だってEXデッキからのモンスターが並ぶことなんて当然の事で、それは常識ですらあったから。

そして一番恐ろしかったのは、少なくとも僕は「納得」していた事だ。そのエラーメッセージに対し故障であるとか、一時的な応急策とかでなくて、どれだけ驚愕しうる内容だったとしても、この決定が覆す事はない。例えるなら、「ホープザライトニング」が如何に強かろうと、その能力をズルいから誰も使うなとは誰も言わない。殺したい程、憎んだとしても存在を否定できないような。そんな気持ちだった。

 

いつのまにか雪は降りやんでいる。きっと、既に仕事を終えたのだろうと思った。

 

「楽園」全体に流されるアナウンスが流れる。

 

「「直ちに、決闘を中止し、自宅へ戻りください。本日の授業は全て休校となります。繰り返します。直ちに決闘を中止し、」」

 

なんとなく、世界終焉のラッパみたいだな、と思った。

もっとも、始まる前でなく終わった後に鳴ったのだけれど。

 

パニックのまま誘導され、外へと出る楽園の学生。

さっきまでの悪天候なんて忘れてしまったと言わんばかりに快晴。

 

出る直前に後ろを振り返る。そこには、世界の終わりに恐怖する。今にも泣きだしそうな女王、カルーア・ミルクがいた。・・・僕はそれを無視して、ひとまずアパートに向かった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

後にこの日は「変革の日」「終焉の日」などと言われる事となった。

 

唐突で世界中に同時に起きた「デュエルモンスターズ」の「ルール改変」。暫定名「第四魔法」。

印刷会社もデュエルモンスターズの元祖制作会社も、そんな事は知らない、いっさい関与していないと口を揃える。

 

「現実改変」。誰も原因も分からない。賛同もしていない。だが、誰もその魔法に背くことは出来ず、勝手に改変の起こる前のルールを維持しようだとか何て言えない程に、心は受け入れていた。絶対たる神の一言に背くことが出来ない様に。

 

そして。「デュエル・ユニバース」。決闘者育成都市。通称「楽園」は混乱を極め。

半年間のあらゆる教育機関の休業を決定した。

 

あの日。世界は終わった。夢にまで見ていた「楽園」は。狂気はびこる「ソドム」の街へと変わった。

 

変わったのだ。

 




第四魔法、マスタールール4(仮)始動。
次回よりタイトルも変えるかもです。

尚、現実の環境とリンクはしない、出来ないので御容赦を。
というか、ルールどうなるか一切分からないから迂闊にリンク出せぬ(-_-;)

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