カルデアに見捨てられたので単独で特異点巡ります 作:脳みそ縛り
理不尽とは、万人に降りかかるものだ。
何時、何処で、何をしているときに来るのか。それは誰にも分かりはしない。全てにおいて万全を期していれば理不尽であろうと跳ね返せるかもしれないが、そう出来ないのが欠点であり、人間である。
そして理不尽は時として不幸だけでなく死を招く。地震、津波、落雷、台風、日照り、飢饉。形は様々なれど、どれも人の手の届かぬ最上位の理不尽。そういう物に人は畏れを抱き、何時しか蔑ろにしてはいけないという気持ちを産み出し、そうしていつの間にか敬意となった。
曰く、それは怒りである。曰く、それは悲しみである。曰く、それは試練である。人の届かぬ者達がいると仮定し、そしてそれに押し付けることこそが人類が取った責任放棄であった。
敬意は想像を募り、想像は象られ信仰を産んだ。
そういう経緯で、我々は産み出された。
◆◆◆
深い微睡みに入っている。なんだか心地がいい気もするから、何も考えずに暫くそうしていないように思えていた。柔らかな質感が全身を包んでいるのが分かる。布団だろうか、にしてはなんだか暖かいし水っけすらも感じる。こういうのを、なんというのだろうか。油揚げ? 湿気たコットン? シリコン?
あぁそうだ、これはこう言うのだ。
人肌の温もり。
「……あぁ!?」
急に意識が浮上した。人肌だ、紛うことなき人肌に間違いない。しかもこの柔らかさは男のものじゃない、ガサガサしてないから絶対に男のものじゃない。男のものだったら不能になる勢いで落ち込むだろう。
「おぉマスター、目が覚めたか」
トーンの高い声が耳をくすぐった。これは、あれだ。予想が正しければ我が眼を疑う光景がそこに広がっていることだろう。
見たくない、しかし男としては今見なければ一生後悔するような気がする。男子高校生において優先すべきことは理性<<<<<<<<(越えられない壁)<<性欲なのだ。
そうつまりこの先には、R指定が待っている。しかしここは男として紳士的になりぐっと我慢する所ではないだろうか? 彼女が誰だか知らないが少なくともうちのアーチャーではないうちのアーチャーは絶対にこんなことをしたりしない。あの世話焼きがこんな火に石油をぶちまけた挙げ句リンボーダンスを始めるような真似をする筈がない。してたら俺はとっくの昔に肉欲に呑まれているあぁ間違いなく呑まれている。
「……なんだ色々考えてる奴だな。何でも良いが、姉には筒抜けな故それ以上妄想を膨らむのはやめておいた方がいいぞ」
「はっはっはっ、男な物でして」
すっと目線を自身の胸へと向けて、あぁやっぱりと思った。
俺という男は現在進行形で、裸の女に布団代わりと言わんばかりに乗っかられている、所謂
「ふぅむ、最近の愛し子はこういうのを好むのか。慎ましさ等微塵も感じさせん、ぶっちゃけ悪趣味以外の何物でもないと思う訳で、そこのところどう思ってるんだ?」
「最高だと思います」
「欲まみれだな」
けらけらと笑って会話を区切ると、彼女はベッドから離れて何処からか取り出した衣服を身に付ける。もう少し味わいたかったのだけどなぁ……。と、ここで違和感。
どうして俺はあんなにも人肌を直に感じ取れてしまったのだろうか。すっと視線を下ろしてみると、そこには逞しくも天を仰ぐ息子の姿が。
「……すいません、俺の服どこっすか」
「ふむ、ふむ。……ん、あぁ、そこだ」
感想を述べられても辛いけど、何か言うわけでもなく流されてしまうのも辛いのでやめてほしいです。男子高校生の心の脆さは異常なんだぞ。
さて、と服を着替えたところで気分も変わって、色々と疑問も沸き出してきた。
「えっと、まずだけど、サーヴァントってことでいいっすかね」
「おう、そこは間違いない」
やはり、と思った。彼女の身に付けた衣類は髪色と同じく黒い生地が使われている色々とすけすけなドレスではあるもののアジア系の和風を思わせる雰囲気であった。
それに、感じられる魔力の質も桁違いだ。隠しておいてこれなのか、それともヒントを出すためにわざと出しているのかは定かではない。いずれにしても、まるで底を感じさせない恐ろしさを秘めていることだけは間違いない。
「それで、さっき言ってたマスターっていうのは……」
「目の前の愛し子、つまり弟のことだな」
弟って、もしかして俺のことを言っているのだろうか。俺はこんな年上の姉を持った覚えはないどころか一人っ子なのだが、どういうことだ。そういえば、さっき一人称もなにかおかしかったような。
「弟っていうのは?」
「私が姉だからな、であれば愛し子が弟なのは当然の帰結。故に、敬語は不要だ」
頭がこんがらがってきたぞ。愛し子というのは自身の子息に向けて言う言葉だ。そして弟は兄弟だし、姉は姉妹だ。つまり俺は息子でありながら弟でありマスターだった? ダメだ変なことを考えたら余計に混乱してきた。ここまで酷いのはロムルス様以来だ。
「そう難しく考えずともいい。一番重要なことはマスターが弟であること、なのだからな」
「……おっけー、弟であることはまぁいい。でも俺の名前は大仁 陣だ。呼ぶならちゃんとそっちで呼んでくれると助かるんだけど」
そう苦言を漏らしてみるが、彼女はくすりと笑って善処させてもらおうとだけ答えた。
する気ねぇなこいつ。だが言ったからには考えてはくれるだろう、スパルタクスのようなバーサーカーでも無さそうだし。今はその時を待つとしよう。けど可愛がられるのは慣れてないから出来るだけ早めにお願いします。
「それで、あんたのことはなんて呼べばいいんだ?」
「ふむ、姉のことか。姉、姉貴、姉御、姉ちゃんお姉ちゃん、姉さんお姉さん等々バリエーションは豊富だぞ。因みにおすすめはお姉ちゃんだ」
「はいはい、クラス名がシスターな訳じゃないんだから、さっさと教えてくれ」
そういえば世の中にはエクストラクラスのサーヴァントがいると聞いたことを思い出す。代表としては裁定者クラスであるルーラーが挙げられるだろう。だからと言って目の前のサーヴァントがシスターとかいうエクストラクラスであるわけがない、と断言できれば良かったんだがちょっと自信がなくなってきた
あいつらほんとなんでもありだからな。
「つれない奴め。クラスはアサシンだ、暗殺が得意なわけではないがな」
「おっけー、アサシンな。それじゃあアサシン、俺とあんたはいつの間に契約したんだ?」
少なくともパスを自分から繋いだ覚えはない。というかこんな魔力からして凄そうと思えるはぐれサーヴァントと契約できるような気がしない。
どう考えても立花案件のサーヴァントだぞこいつ。
「その前に、一つ確認のほどをいいだろうか」
質問を質問で返すのは礼儀がなっていない、と言いたいところだが明らかに強そうな奴にサーヴァントだからと上から物を言う態度なんて取れるわけもなし。素直に掌を向けて譲る仕草をとった。
「弟は、どうしてベッドに寝込む羽目になったのか、覚えているか?」
「……」
正直、痛い質問だった。どうしてここにいるのか、という質問であれば答えられた。それは俺がカルデアに見捨てられたからだ、それはハッキリと言える。しかし、分からない
どうして俺はここにいるのか、それが全くわからない。
すっぽりと、何かが抜け落ちているのだ。何か、俺の身にあった何かを、思い出すことができない。忘れているのでもないと思う、ただ漠然と無いのだ。そんなもの、初めから無かったと謂わんばかりに。
俺に一体何があったと言うのだろうか。体は健康そのものだ、どこにも傷一つありはしない。だがこの違和感、俺は一体どうなったんだ?
「答えられないのなら構わない。姉としても責めたいわけではないんだ」
「……悪いなアサシン。嘘をついたり、疑ってるわけじゃないんだが……」
「いいんだ、分かってるよ。弟のことだからな」
俺、あんたの弟になったつもりは更々ないのだけど。
まぁ、いいか。どうせ何しても無駄だろう、アサシンの癖にバーサーカー並に考えが読めない女だ。訂正したって耳を貸したりしないだろう。
「失礼だな、姉はこれでも融通の聞く気配りの出来る存在だと自負しているのだが」
「……あぁ、考え読めるんだっけ?」
さっき筒抜けがどうのこうの言ってた気がする。しかし本当かどうか、少し疑わしいと感じる部分がないのかと言われれば、少なからずはあると答えられる。
「その考え、分からないでもない。ならば是非もなし、証明して見せよう」
「ほう、どうやって?」
「ふむ……そうだな」
じっ、とこちらを見るアサシン。絶妙に目を合わせないところに、魔術やハッタリを使っているわけでもないという証明をしようと意地になっている部分が見受けられた。しかし、考えを読むだけでそんなに集中する必要が一体どこに、
「上から三番目のファイルとやらの中」
「……は?」
「そうその中にある高二の頃の写真を纏めたファイルの中に区分されている春ファイルの中にある五月ファイルの中にあるバイキングファイルにある飯ファイルと銘打って偽装しているファイル」
「ちょ、まっ」
「暗号は……なんだ幼稚だな、好きな売春女の名前とは。高橋しょ……」
「OKわかった万事分かったっ! お前が覚かなんかの部類ってことはよーく分かった! これから信用することにする! だからもう勘弁してくれ!」
なんの公開処刑だよこれ! 親にすらバレたことの無い俺のおかずファイルを見事的中させやがって、悪いかよ高橋しょ〇〇好きで! ぐうしこなんだよ!
「ふふん、それでいいんだ。これからは姉をちゃんと敬うように」
「へーへー。全く厄介な……どこの英霊だよ」
ドレスを着ているところを見る限り、少なくとも大昔の日本人という訳でも無さそうだ。しかし外国人にしては顔付きがアジア寄りだ。在日二世か。しかし在日二世に人の考えを読むような英雄がいただろうか、いやそもそも人の考えを見通すことのできる英雄なんてそれこそ限られているはずだ。
こんなことならマシュを見習ってキチンと勉強しておくべきだったな。
「その、なんだ弟よ」
「なんだよ」
「あんまりこっちを、特に顔を見ないでくれるか。人に見つめられるのは、慣れていないんだ。……本当に」
そんなことを言っては目を伏せて顔までそらす徹底ぶりを見せる。
なんだこいつ。人の一押しAV女優当てておいて、急に生娘みたいなことし始めやがって。
これがギャップかくそったれ。
「……おっけーわかった。話は変わるが、いいかアサシン」
「あぁ。因みに顔を見るのはいいが三秒以内にしておいてくれ、それ以上は私の心臓がつらい」
めんどくせぇなこいつ。
「随分と部屋の内装が洋風なんだけど、ここって一体どこなんだ?」
「ん、そうだな。まずは状況確認が先だったな」
うっかりしていた、なんてことをもらしてベッドを立つ。そのまま光が遮断されている窓まで近づくと、音を鳴らしてカーテンを開いた。
まず見えたのは夜空の星々、その次に見えたのは布を被ったりお手製の何かを身につけ徘徊している子供たち。そして子供にお菓子を配る大人たちと、それらを彩るかぼちゃのランタン達。
「……おいおい、これって……」
「あぁ、その考えに間違いはないぞマスター」
こんなの、現代人なら誰にも分かる。でも俺は分かるからこそ困惑している。だってこんなことしてる暇もなければ、こんなことするわけもないし、できる環境でもないんだ。そう、
「――ハロウィン」
こんな、お祭りなんて。
【クラス】アサシン
【性別】女性
【マスター】大仁 陣
その他、スキルやステータスは一切不明
顔付きはアジア系ではあるが、自棄にドレスが合っている。
心が読める。
自称愛し子の姉。
※ご指摘されて初めて気づきましたが、この作品は大きな設定ミスを犯しています。
具体的には存在証明がないと特異点に介入したマスターは消滅するという設定です。そこの辺りの設定を完全に忘れて勢いだけで書き始めたので、今さら修正するのは筆者の脳みそでは難しいです。とりあえず設定が思い付くまではこのまま突っ走ろうと考えています。設定が思い付いたら修正版としてまた新しいのをあげようと思います。
なのでこの作品はこれから二次創作にも成り得ない妄想の塊になります。ぶっちゃけチラ裏に移ります。通常投稿で浮かぶのはいつのことになるかわかりませんが、その時にはどうぞよろしくお願いいたします。
今までのお目汚し、大変失礼いたしました。