カルデアに見捨てられたので単独で特異点巡ります   作:脳みそ縛り

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※大量の独自解釈、独自設定が混入してます


情報収集

 体への異常は感じられなかったので、とりあえず部屋の外に出てみることにした。

 カルデアではほぼ自動的と言っていいほどに食事が勝手に出てきたがこの身は既に捨てられた身、食事をするにしても何をするにしても金が必要になってくる。

 アサシンに言えばどうにかしてくれるだろうが、任せてばかりでは愛想をつかれてしまう。アサシンにまで捨てられてしまえば、今度こそ俺に救いはない。そこらで餓死して白骨化するのがオチだろう。故に行動を起こすべきだ。

 とは言ったものの、現在地もわからなければいつの時代の特異点であるかもわからないのが現状だ。町並みから西洋であることは間違いないのだが、それ以上は何もわからない。ここにマシュやダ・ヴィンチがいれば町並みだけで建築方式を見破って時代を特定してくれるのだろうけれど、俺にはそんな知識も目もない。

 しかし過ぎたことを振り返って高望みをするのは良くないことだ。なんにしても、まずは現状把握だ。

 

「そもそもアサシン、どうして俺たちはここに来れたんだ? ここってどこからどう見ても第三特異点と別の時代に見えるんだが」

 

 情報を得るために街を巡る最中に、質問を投げ掛ける。

 カルデアにあるあの地球儀も無しに転送するなんて、そう簡単に出来ることなのだろうか。俺は魔術使いだから、本職とは違って然程詳しくはないのだけれど、かなり難しいことだろうと言うことはなんとなく理解できる。あれか、所謂時空の歪みに巻き込まれたうんたらみたいな。

 

「あぁ……そうだな、それは私がやったんだが……」

 

「やったのか!?」

 

 時空転移とか魔法使いぐらいじゃないと出来なさそうなことさらっとやったとか言ったかこのサーヴァントは。もしかしてアサシンはアサシンでもキャスターであったりとかダブルクラスであったりとかするのか? それか魔術:Aのスキルを持ってたりとか?

 

「いや、正確に行ったのは姉ではないぞ」

 

「は? ……ん?」

 

「とにかく、私はアサシンであることに変わりはない。疑うのなら、ステータスを透視してみたらどうだ」

 

 アサシンは足を止めてこちらを見てきた。

 別に疑っているわけでなく、単に言っていることの真意がつかめなかっただけなのだが……しかし自分の本心が彼女を全て信頼していると言えば、違うのかもしれない。ここは彼女を本当に信頼するために、少し覗かせてもらおう。ステータス透視は、スキルとかそういう辺りがその人の人生に関することだから、あんまり覗きたくはないのだけど。

 

【クラス】アサシン

【マスター】大仁 陣

【性別】女性

【身長・体重】160cm 41kg

【属性】混沌・中庸

【真名】

【ステータス】筋力:C+ 耐久:D+ 俊敏:A 魔力:B 幸運:― 宝具:  

【クラス別スキル】『気配遮断:C』

【保有スキル】『単独行動:D』『変  魔: 』『 術:C』『    :  』

【宝具】『    ・   』『  三   』

 

「……ほとんど視認できないんだが?」

 

「姉とてそう易々と肌を晒すほど尻軽ではないさ」

 

 そう言って耳を隠すほどの長髪を揺らして正面へ向き直した。

 それはつまり、俺をマスターとして認識してはいるが、真に認めているわけではないと言っているも同然だった。結構親身にしてくれていたから勘違いしていたが、そもそも俺のマスター適正自体は立花よりも低い。誇れる物なんて魔力が普通の魔術師より多めな点ぐらいなもので、それ以外は正直並以下。そこら辺は立花とすらどっこいどっこいだろう。

 それに俺はまだこうして現状を把握しようとしている以外の行動なんて起こしてもない。それで信頼を勝ち得る訳もなし。

 なら、ここからだ。

 

「……よし、わかった。アサシン、ここは特異点であることは間違いないんだよな?」

 

「ん、あぁそうだな。とりあえず近場の漂ってる所へ飛んできたからな」

 

「今のところ、殺意とかピリピリとした感覚とかはないか? 戦争が起こりそうであるとか」

 

「そういうのは感じられないな。むしろ平和すぎて誰もが気を抜いているから、気を巡らせているのがバカらしくなってくるほどだ」

 

 ならそう焦る必要はないか。少なくともここら辺は戦争やらなんやらとは無関係のようだし、確実に情報収集するとしよう。幸い、こちらにいるのは単独行動持ちのアサシンだ。

 

「アサシン、周辺の見回りを頼めるか。この特異点の大まかの広さを知っておきたい」

 

「相分かった。マスターはどうする?」

 

「情報収集をする。具体的には貨幣や相場だな」

 

 今行動を起こしたとしても、どんな伏兵に合うかもわからない。いや何よりも、知らずに行動した結果の先に敵に回ったのがこの世界の一般人であった、なんて事があっては行動を制限されるどころの話ではない。

 というか、多分俺は生き抜くことすら不可能になるだろう。食料や水を確保できないどころか、睡眠時間を確保できるかも怪しいところだ。

 

「うむ、次第点だ。今は事を急いても仕方がないからな、そこは分かっているようだな」

 

「じゃあ、惜しい点は?」

 

「地名や街の状態だな、人に困っている所であるとか噂を調べておくのも重要だ。この町に滞在するのであれば、尚更だな」

 

 そう言われてそこを完全に見落としていたに気づいた。いや、正確にはそれよりも酷い意識の外という場所にあったのだろう。今まで知識人に投げていたつけがここになって来ているのが痛いほど理解できた。

 精進あるのみ、か。

 

「だがこんな状態で冷静な判断を出来るだけで十分上出来だ。これからに期待させてもらうぞ、弟よ」

 

「精々裏切らないよう、出来る限りの努力はさせてもらうよ」

 

 さて、では行動開始だな。

 

◆◆◆

 

 一通り歩き回った所で、この街の情報を整理するために持っていたペンとメモ帳を取り出す。

 まずこの街の面積自体は然程大きなものではなかった。東から西へ、端から端まで歩いてかかった時間大体15分ぐらい。毎分大体75歩ほどであったから、歩数に換算すれば1125歩、一歩を大体一メートルだとすれば、多く見積もっても1125メートル、1キロほどの町であるのとわかる。町というより、村並の小ささだが。

 ある店と言えば八百屋と鍛冶屋、それに酒場に服屋ぐらいなもので、これらのことから少なくとも近代からはかけ離れていることぐらいしかわからない。先程も言った通り、俺は建築様式に詳しくはないので時代を特定することは不可能に近い。

 ただなんでも鉄で作られている辺り、本当にかなり昔であることはわかる。世界史の授業で言っていたルネサンス期ぐらいだろうか、しかしルネサンス期に特異点になり得るほどの大きな出来事が存在していたのか、これが分からない。

 

「……分からないこと考えても仕方ないか」

 

 一旦この事からは離れるか。次はこの町の内情についてでも綴ろう。

 まさか親に内緒で学んでおいた翻訳魔術が役立つ日が来るとは思わなかったが、十分に活用しこの町について酒場にいた呑兵衛に聞いてみた。

 貨幣を見せてもらったが、よくゲームで見かけるような西洋にありそうなものだった。金貨大銀貨銀貨等々。しかしこの金貨に掘られている女性、見覚えがあるような気がするのだが、気のせいだろうか。

 次に相場の話だが、ぶっちゃけ俺に相場のことはよく分からない。ただおじさんの感覚からすれば随分良心的な物であるらしい。領主がちゃんとしているからなのだろか、一度顔を拝んでみたいな。

 

 さて、最後に仕事の話だ。

 先程も述べた通りこの町は非常に小さいわりには人口密度が思ったよりも高いので、人の数には然程困っては無いとのことだった。確かに店の規模はどれも小さいから人手もあまりかからない、しかも店自体も大きくする気がないようでますます人手は充実しているとのことだった。

 畑仕事などの農作業は人がいくらあっても足りないイメージがあったのでそっちの方面で攻めてみると、そんな柔い指の人間に頼むほど困ってないだろうよと笑って言われてしまった。

 しかしただで金が貰えるわけでもないのに働き口がないのは非常に困る、というのが表情に出ていたのだろう。一つだけ町人では解決できない問題があると、その呑兵衛は神妙な顔をして口を開いた。

 

「モンスター?」

 

「あぁ、そうさ」

 

 モンスターと言うと、化け物という意味のモンスターだろうか。そう言われると大物な感じがしてなんとなく不安に思っていると呑兵衛が口を開いた。

 

「この町には入り込んでは来ねぇんだが、町の回りにはうようよといるのよ」

 

「そんなに多いのか」

 

「そう不安そうな顔をするなよ、町には入って来ねぇんだからさ。それに、モンスターっつってもドラゴンとかがいるわけじゃねぇんだ。ウェアウルフ、スケルトン、ゴースト。大まかに挙げたらこんなもんか」

 

 陳列して出てきたそのモンスターの名前にはどれも聞き覚えがあった。

 ウェアウルフは成人男性の二倍はある大きさの魔物で、主に武器を持って飛びはねたりお得意の速さを使って襲いかかってくる厄介な敵だ。しかしそれよりも面倒なのは眼と嗅覚、それと勘がいいのか弱点をついてくること(クリティカルヒット)が多いことだ。どんなサーヴァントでもつかれてはダメージになり得る部分というのは存在する、その為まともに受けては英霊と言えど油断は出来ぬほどだった。

 スケルトンはその名の通り骨だ、呪いやらなんやらだけが筋肉の代わりにその体を動かしているからか、思考力がかなり欠如しているため御しやすい相手、凪ぎ払いやすい敵と言える。だが数が多く、まともに相手をしていてはキリがない、なんてこともざらにあった。楽ではあるが、油断せずに相手する必要があるだろう。

 ゴーストはそのまんま、幽霊だ。スケルトンと違って明確な意思というものがあるのでそれよりは厄介な相手である。攻撃方法は呪いを主軸としているものだから、サーヴァントと言えど油断していたらポックリお陀仏なんてこともある。ただそのままが霊体なので魔術に弱いという弱点があるため、上手くついていきたい所だ。

 

「他にもワイバーンや岩の巨人がいるなんて話を聞いたが、酔っぱらいが多いからなぁこの町は」

 

「けど町には入ってこないんだろ? どこに困るんだ?」

 

「ばっかお前ぇ、この町に畑があるように見えるか? 森や鉱山があるとでも?」

 

「……なるほど」

 

 少し考えれば分かることだった。町に入れば安全ではあるが、この時代は今と違って町の中にいるだけでは生きていけない。農業を生業とする人は畑に出向かわないといけないし、肉が欲しければ森に向かわなくてはならない。木材も木を切り出しに行かなくてはならないし、鉱山に居なければ鉱夫は稼げない。

 町を出るということは、即ちモンスターと戦うことを意味するのだ。

 

「傭兵なんかもいることはいるが、何せ数が少ねぇもんだからよ。カバー仕切れてねぇのさ」

 

「……なぁおじさん、そのモンスター共を倒したら、報酬は貰えるのか?」

 

「は? そりゃあ貰えるだろうが……本気かよ坊主、鍬も握ったことねぇ腕してるくせに、そいつぁ無茶ってもんだ。止めときな」

 

「物を振り回すだけが戦いじゃないさ。これでも自信はあるつもりだぞ」

 

 サーヴァントに守られていたとは言え、一応二つの特異点で生き残ってきてるからな。そこらのモンスターに一方的に殺られるほど無力な訳でもない。それに戦うのは俺一人じゃない、メインを張ってくれるのはアサシンだ。確証はないが、あれは多分すごいサーヴァントだ。ウェアウルフ共程度、相手にもならないんじゃないだろうか。

 とにかく自信はあるんだ、という目で見ていると呑兵衛も諦めがついたのかため息をついた。

 

「分かった分かった。俺は畑を持ってるんだがな、毎年収穫の時期になると奴等がよく出てくるのさ。明日がその収穫の日なんだが、例に漏れず奴等が出てくると思う。お前さんにはそいつらを追い払ってもらいたい。ちゃんと出来れば、それなりの報酬をやる」

 

「分かった、任せておけ。それじゃあ、どんなモンスターが出るのか教えてくれ」




『気配遮断:C』
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。完全に気配を断てば発見する事は難しい。

『単独行動:D』
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。ランクDならば、マスターを失っても半日間は現界可能。

『翻訳魔術』
相手の脳から一時的に知識を取り出し自身へと反映させる魔術、所謂コピーアンドペースト。大仁程度の魔術使いでは言語等の常識ぐらいしか取り出すことができないが、優れた魔術師なら相手の魔術をコピーすることも出来るとか。

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