捻くれぼっちプレイヤー   作:異教徒

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第11話:やはりこの人選は間違っている

 逃げよう。俺は割と本気でそう思った。

 アスナの一喝の前に皆が怯えて動きを止めた中、俺は一人足音を忍ばせて撤退を図った。

「うん?なに逃げようとしてるのかな80000君?」

 あっさりバレた。いや、まあ、バレないと思ってはいなかったがこうもあっさり捕まるとも思ってはいなかった。

「セレビス!助けろ!麻痺状態なり移動阻害なりなんなりかけて逃がして!早く!」

「無理です!あの人なんて呼ばれてるか知ってますか?バーサクヒーラーですよ、ALOでも五指に入るプレイヤーですよ??私はまだ死にたくないです!」

 こいつ使えねえ!そう思った俺はセレビスに頼るのは諦めてひたすら扉へと走った。扉に手をかけて飛び出すと、何かにあたって跳ね飛ばされた。

「ってて......」

「すまない、大丈夫か?」

「ああ。大丈夫だ。」

部屋に入ってきたのは高身長の侍装飾のエルフだった。

「ところで、ここがゆきのん氏のストーカー対策会議の会合場所で会ってるか?」

「そうだ。あそこにいる黒髪のケトシーがそいつだ。ところで、お前は?」

「ああ。名乗りが遅れたな。我こそは剣豪将軍、足利義輝!縁あって参上した。」

 .........。

 ものすごく嫌な予感がするが気のせいだろう。だいたいあの材木座がこんなイケメンなはずがないし...

「そういえば、ゆいゆい氏もいると聞いたが彼女が誰か教えてくれるか?」

「お、おう...。いまゆきのんを羽交い絞めにしてるのがそうだ。.........俺はちょっと急用を思い出したから抜ける。じゃあな!」

 これ以上この場にとどまりたくない要因がさらに一つ増えた。しかし、俺の腕が何者かにがしっと掴まれた。後ろを振り返らなくてもだれかわかってしまう。さて、どうしたものか...

「80000くん?なに一人だけ逃げようとしてるのかな?」

「ほら、アスナ一人でも今みたいに場を収めれるんだからきっと大丈夫だって。俺はいるだけで場の空気を乱しかねないから早めに退散したほうがいいというか、常識人枠は一人で十分だし...」

 俺の言葉にアスナは能面のような表情でにっこり笑った。

「死なばもろとも、だよ?」

 

「嫌だ!放せって!なんでヒーラーなのにこんなに力強いんだよ!?だ、誰か、助けてくれ。」

「ふむ...。今の話を聞くにお前、さては八幡か?」

突如会話に乱入してきたのは足利義輝__もとい、材木座だった。

「さあな?誰だ八幡って。そんな目が腐ってそうな名前のやつは知らん。」

「80000君、誰もリアルの方の八幡が目が腐ってるって言ってないわよ。」

雪ノ下の冷静な突込みも今回は無視して必死に逃亡を図る。こんなグダグダなメンバーだけでなく材木座まで加わるなんて想像しただけで怖気が走る。

「いいか義輝。ここはお前みたいな中二病が出る幕じゃない。引き返すなら今のうちだぞ?」

しかし材木座は俺の忠告を鼻で笑うと声高に宣言した。

「安心するがいい。こう見えて我はOSSを二つ保有し、道場を3つ構えるハイランカーだ。だから安心して頼るがいい。」

「なあアスナ、あいつの言ってること本当か?聞いていてすごく痛々しいんだが。」

「大丈夫。彼の言ってることは全部本当よ。確かキリト君と2回戦って2回とも引き分けてたよね?」

その言葉に室内の皆の視線がキリトに集中するが、キリトは相変わらずの表情でうなずいた。

「ああ。確かにあいつは強いよ。ユージーンの戦ったらきっと義輝のほうに軍配が上がるだろうな。俺だって引き分けに持ち込むのがいっぱいだったから。」

 キリトの言葉に皆は絶句した。黒の剣士の強さを知っているものからすればよほどのことなんだろう。そして材木座がそれほどのことをできるほど強いということは、今のところALOで上位五人に入るプレイヤーのうち三人がこのチームに所属していることになる。ここまで大きくなりすぎると逆に動きづらいかもしれないな。

「義輝。悪いがお前は別動隊だ。今ここでパワーバランスを崩すと冗談抜きにギルド対俺たちの全面戦争になりかねない。ここは一旦見掛け上は戦力を分散させた方がいい。お前は良くも悪くも目立っているから陽動には最適だろ。そこでお前には下部組織と思われるところに行って話をつけてきてほしい。お前が動けば門下生たちも動く。そうすればお前たちの陰に隠れて俺たちが行動しやすくなる。引き受けてくれるか?」

材木座は一瞬の黙考ののち快諾してくれた。

「うむ!よかろう。我の弟子らが力、見せてくれる!」

 なにはともあれ、大まかな作戦のめどは立った。後はリズベットが引き出してくれた情報をもとに攻撃対象を絞って狙い撃ちにしたらいい。証拠を押さえたら後は陽乃さんがどうにかしてくれるだろう。

「それじゃあ、オレたちはどうしたらいいんだ?話しぶりからしてばらけて動いた方がいいんだろ?」

「クラインの言うとおりだ。ここはまず、シリカとリズベットでターゲットの誘導と尋問。そして後ろの武力要因にクラインとエギル。シノンとアスナはゆいゆいとゆきのんの警護。セレビスとユイは外部からリアルでのつながりや相手の動きをモニタリングしてくれ。リーファはシルフのトップたちから自情報収集を頼む。」

「ところで80000はどうするんだ?」

「俺とキリトはリーダーに直接交渉に行く。たぶんかなり危険だからこの二人で行った方が一番安全だろう。」

「そうね。あなたは逃げ足と小手先の小細工は速いものね。」

 チキンなのは百も承知だがそれ以外に出る幕がないんだよ!いざ戦闘になったら現場指揮はキリトたちがとるだろうし、俺が何もしてなかったら絶対後でいろいろ陰で言われる。

「まあ、ヒッキーがやる気になってくれたならそれでいいじゃん。ね?」

「...それもそうね。最初のころに比べたらだいぶんましになってきたわ。」

「それじゃあ、今日は一旦これで解散でいいか?何かあったらどこかの掲示板...は、あぶないか。」

「だったらうちの店に来るといい。ダイシーカフェって店なんだが、御徒町にあるんだ。来れるか?」

「俺たちは千葉に住んでるんで、ぎりぎりセーフです。」

「じゃあ、次の日曜日にダイシーカフェ集合で。それでは、今日のところは解散で。お疲れさまでした。」

 この言葉を合図に三々五々部屋を出て行ったりログアウトしたりと皆が帰っていく。

「じゃあ、俺たちも帰るか。」

「ええそうね。...ところでチキン谷君。」

「なんだ?俺の名前は比企谷だ。」

「.........その、今日はありがとう。感謝するわ。」

 雪ノ下は顔を少し赤く染めるとそのまま部屋を出て行ってしまった。

 ...あいつ、急にどうしたんだ?

「それはまた今度ゆきのんにでも聞いてみたら?じゃあね、ヒッキー。また学校で。」

「お、おう。またな」

 由比ヶ浜も部屋を出ていくと、あとには俺一人が残された。

「さて、今日は疲れた。ログアウトっと。」

 俺は迷わずログアウトを押し、現実へと帰還した。家に帰ったら今日は親がいないから小町の分も夕食を作らなきゃな。

 今日の俺は、ゲームを終えた後の感覚が、なぜか少しだけ気持ちがよかった。

 

 

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