とある国の誰も近づかない森の中に、一軒の建物がポツンと建っていた。
その森へ入るにはそれ相応の覚悟を持って入らねばならない。魔獣と称される強力な獣が闊歩し、近づく者達は餌食になってしまう。そして、その一番深い場所に一見何の変哲も無い一軒家があるのだ。その家の所有者に関して詳細は謎。賢者や魔女、往年の英雄らが余生を楽しむために建てたとも噂されている。が、命からがら辿り着き生還した者の話では人の気配は無く、不気味な佇まいだったらしい。
だが、今日は珍しくその一軒家に人の気配があった。
『貴様にふさわしい、
俺の目の前で、
『堅牢なる守りの大地、
彼女は持っていた一つ目の調味料を容器へ入れた。
『生み出す事を許さない、
二つ目の調味料も同じように。
『そして、虚空をも噛み砕く、
最後の調味料を入れ容器を叩き、勢いよく容器を飛ばし回転させながら三つ調味料を攪拌させていく。
それを見ていた俺の心は、期待と不安に支配され、彼女の準備が終わる事を今か今かと待っていた。
『調味料を掛けて…これが、私の(愛情てんこ盛り)、特性ステーキです!!』
焼けた鉄製の容器の上でジュウジュウと音を立てながら香ばしい臭いの漂う肉へ、三つの調味料が程よく混ざった調味料がかけられた。
「…こ、これは。」
「さぁ!遠慮せず、食べて下さい!この調味料はフレーバーソルトと呼ばれる物です!この調味料なら、まろやかな岩塩と粉状にしたクミンと香ばしいガーリックがお肉の旨味をさ・ら・に!引き上げてくれます!!」
ま、マジか!!この香ばしく食をそそる臭い!た、堪らない!!で、では!!
「…頂きます。」
(…相棒、忘れてはいないと思うが、両手を使えるのは60秒のみだぞ。)
「(分かってるって。そんじゃ、ま、頂くとしようか!!)」
俺はナイフとフォークを使い、肉を一口サイズに切り分け口に運んだ。
う
う!
うーまーいーぞー!!
その時、風の目と口から黄金に輝く光が溢れ出した―様にその場に居た者達は錯覚した―
まず一口食べた時メインの肉もそうだが、ガーリックパウダーの焦げたパリパリとした食感が堪らない。そして、その後来るクミン香りが旨味と食をそそる!素晴らしい調和!旨い!旨すぎる!!
「…旨い。」
あっという間に食べ終えた俺は、直ぐに彼女…
「よっしゃあ!!」
「…では、次だな。」
「…フ、フフン、この
次はソラノの料理か。
「…では、頂こうk「って、私を無視して食事をするな!!」ムゥ。」
どわぁ!?耳元で叫ばないでくれよ
「「五月蠅い(んだゾ)!!」」
「ヒェッ!」
済まない、俺の所為で巻き込んじゃって。
~二日前~
過去から来たドラゴンを蹂躙しつくした後黒き風は、
「…皆無事k「早く此処から逃げるんだゾ!!」……何?(ぬぉ!?引っ張られる!?な、何か掴むモノは!?)」
<グイ!!>
「え!?」
魔導士達が集まっていた場所へ戻って来た。しかし、皆に言葉を掛けようとした時ソラノによって拉致?されてしまったのだ。
「待てエンジェル、風様を何処へ連れて行く!?…クソォ!地の果てまでも追いかけてやる!!」
『風は渡さないよ。』
「姉さん待ってください!!」
それを、カグラと少し回復し思念体で身体を構成した白き雲、ユキノが追いかけた。
「(な、何がどうなっているんだ!?)…どうしたん「此処まで派手に暴れたんだゾ!評議院共に捕まる前にトンズラするんだゾ!!」…分かった。」
やっぱアレ、やりすぎだったのか?まぁ、あの牢屋に入るのは嫌だし、またソラノちゃんも捕まったら気分が悪い。このまま彼女に身を任せよう。め、めんどくさいんじゃないんだよ!これが最善だと思ったからだ!!(キリッ
「は、早いー!!」
「(ん?聞きなれない声だな?)…誰の声だ?」
超スピードで走っているソラノの肩に腹部を担がれている状態の風の耳に、聞きなれない
「風、どうしたn…こんの泥棒狐がぁ!私の風を
「ち、違うわよ!どう見ても私の所為じゃないわよ!!(エンジェル怖!!)」
声が聞こえた場所…風の
「…済まない、咄嗟に掴んでしまっていた。(スマン、ルーシィちゃん。近くに居たから掴んじまった。)」
「い、いえ!お、お構いなく?」
ルーシィの左腕を掴んでいた。
「風!さっさとそんなモノ捨てるんだゾ!!」
「ちょ、汚いモノみたいに言わないでよ!!」
そんな状態でも、ソラノとルーシィは口喧嘩をし始めた。
「…放す「ダ、ダメ!放さないで!こんな速度で放されたら大怪我しちゃうわよ!!」ムゥ…(仕方ない、このまま連れて行くか。)」
ソラノの速度は風程ではないが、今のルーシィには十分早い。
「…もう片方の手も出せ。振り落とされるぞ。」
「えっ!?…そ、その…」
「そ、そんな!?うらやまけしからん事を!!エンジェルちゃんでも言われたことないのにぃ!!」
「(ん?どうして掴まないんだ?やっぱり、こんなオッサンの手には触れたくないのか!?)…無理強いをした。嫌なら気にする「ち、違うのよ!!」…ム?」
「ゴメン、私
<ザッ!!>
「うひゃあ!?急に止まらないで!!」
驚く事に風が掴んだのは、未来から来たルーシィの方だった。
「…ソラノ。」
「…分かっているんだゾ。私達を追いかけてる筈のユキノと雲、気に食わないけどカグラと合流して一旦私の…
ん?あれ?俺の聞き違い?今新居って言わなかった!?
~現在~
「…流石は、ソラノ。旨かった。」
「フフン、当たり前なんだゾ。7年前は、何カ月も一緒に暮らして(ここ重要だゾ!!)食事は
「グヌヌ…」
二品目のソラノの料理に高い評価をした風。ソラノの料理は、風の知識で云う
『今度は僕だ「って、待ってよ!!あれから一日経ったのに何で話し合いの一つもないわけ!?」…無粋なメスだ。僕たちの営みに文句があるなら、此処で切り刻んであげるよ。』
「ヒィ!?」
「…雲。」
『…分かっているよ。僕とユキノの料理を食べ終わってから話をしよう。』
三品目の雲の料理が出る前にまた文句を言う未来から来たルーシィ。雲の睨みに怯えたが、風が仲裁をして事なきを得た。
『さぁ!僕の料理は…このb「却下。食えるものにしてくれ。(ヤ、ヤバイヤバイ!!俺のケツがヤバイ!!)」つれないな、風は。』
風の貞操は守られた。
「で、では風お義兄様。私の料理をどうぞ。」
「…頂こう。」
ユキノが出したのは、
「ム、風殿が食べるには、少し質素では?」
「(な!?そ、そっちで攻めて来たんだゾ!?)…ユキノ、恐ろしい
何の変哲の無いパンとスープ。だが、
「…こ、これは!?」
風は体が電撃を受けたかのような感覚に陥った。
(質素だが、料理人の心が籠った一品だ。パンは自身で捏ねて作ったんだろう。外の皮はパリパリ、中はしっとりしている。この世界の店で売っているモノでは中々こうは出来ない。そして、スープ。葉野菜はシャキシャキ、人参や芋は中までしっかり火が通っていて口に入れた瞬間勝手に崩れていく。肉も同じだ…いや、皮はパリッとした食感がある。一旦火を通してから煮込んであるのか!?)
「…決まりだ。」
風がそう言うと、
「そ、そんな…」
「やられたんだゾ!!」
『何故!?』
カグラは膝から崩れ、ソラノは悔しそうにし、雲は何故だと虚空を見つめていた。
「じゃ、じゃあ!!」
「…ああ。明日からの朝食はユキノに作ってもらう。」
「やった!!」
「って、誰が朝食を作るか検討してたんかい!!」
今日この日、魔獣の闊歩する森の奥にある一軒家で未来から来たルーシィの鋭いツッコミが響いた。