【ラブライブ μ's物語 Vol.4】オレとつばさと、ときどきμ's ~Winning wings 外伝~   作:スターダイヤモンド

1 / 173
第一部
オレの名は


 

 

 

 

オレは『高野 梨里』。

 

二十歳。

 

176cm、63kg、O型。

 

 

 

親戚や古い友人などは、幼い頃のオレを『リサ』とか『リリー』と呼んだ。

 

そのせいで…知らない人からは「えっ?実は女の子だったの?」と思われたことも少なくないが…

 

本当は『梨里』と書いて『りさと』と読む。

 

 

 

今でこそ『正しく呼んでもらえるようになった』が、昔はだいぶ苦労した。

 

大抵の人が『りり』と読み間違えるからだ。

 

その都度「違います!『りさと』です」と正解を告げることになる。

 

 

 

ところで、この歳になり『ようやくここまでの身体』になったが…中学生くらいまでは女子よりも小さく、細かったから、実際、よく「女装が似合う」と言われたもんだ。

 

いや、あくまで、そう言われただけで…『自分からした』ことはない。

 

従姉妹に『させられたこと』はある…が…。

 

あの時『そっちの道』に目覚めていたら…もしかしたら今頃は、別の世界にいたかも知れない。

 

幸か不幸か、そうはならかったのだが。

 

 

 

因みにスペルや発音を気にしなければ『リリー』とは英語で『百合』のことを言う。

 

『たかのゆり?』

 

そういえば…『た◯の友梨ビューティークリニック』…なんてエステサロンがあるけど…オレとそれの間に、因果関係はない!…と思っている。

 

 

 

…百合…

 

 

 

本当に『そっち』に進んでいたら、そこそこ意味深な言葉だな…。

 

 

 

それ故、よく名前の由来について問われるが、なぜこうなったのか、オレもわからない。

 

両親に訊いても『なんとなく』『雰囲気で』『そういう顔だったから』とか言って、明確な答えが返ってこない。

 

 

 

それでも5年ほど前までは『なにか隠された秘密があるハズだ』と思っていたのだが…

 

ここ数年は『本当にテキトーに付けたんじゃないか』という考えに変わっている。

 

出世届けを出す際に、書き間違えた…とか、恐らくそんなところだろう。

 

まぁ、名前が知れたお陰で、いちいち訂正することもなくなったし、最近では自分自身、かなり受け入れられるようにはなってきた。

 

 

 

もしオレに子供ができたら、わかりやすい名前を付けてあげよう。

 

男か女か、すぐわかる…誰もが読める名前。

 

キラキラネームなんて、以ての外だ。

 

こういう苦労は当事者じゃなきゃ、わからない。

 

オレは性格的に虐められるようなタイプではなかったが、気が弱い子なら十分、その対象になりえる。

 

 

 

たかが名前。

 

されど名前。

 

 

 

慎重に付けて欲しいと、心から思う。

 

 

 

 

 

余談が過ぎた。

 

オレの紹介を続けよう。

 

 

 

 

 

オレは小学1年生からサッカーを始めた。

 

両親は身体つきも運動能力も、ごく普通の一般人であるため、特にこれといって受け継いだものはない。

 

だから、プロ選手を目指していた訳でもないし、なれるとも思っていなかった。

 

ああいう選手は、ある程度、英才教育というか…親が相当力を入れてバックアップしないと…というのは、誰もが知っているところである。

 

 

 

だが、どうやら、オレにはそれなりにセンスがあったらしい。

 

自慢じゃないが、サッカーを始めた時から、ボールコントロールが抜群に上手かった。

 

 

 

持って生まれた才能というのは、百の努力にも優る。

 

 

 

背は低かったが、脚は速かったので、このボールタッチを武器にしたオレは、次第にFWを任されるようになった。

 

高学年になると、快速ドリブラーとして、注目され始める。

 

ただし、華奢で非力な為、いわゆる『ストライカー』ではなく、敵陣深く切り込みチャンスメイクするタイプ。

 

ドリブルで相手を引き付け、空いたスペースにパスを出す。

 

これが得意のプレー。

 

所属チームが弱かった為、優勝には縁がなかったが…それでも、5年生と6年生の時には、地区の選抜選手となった。

 

その活躍が認められ、中学からは、Jリーグの下部組織に入団。

 

 

 

しかし、その3年間は『成長期特有の膝の痛み』との戦いとなり、思うような結果を残せずに終わる。

 

中学入学時には140cmに満たなかった身長が、平均すると1年で8cmずつ伸び、卒業するころには163cmとなっていた(それでも、まだ十分小さいのだが)。

 

 

 

その身体の成長が、オレのプレースタイルを変えさせた。

 

接触を避ける為、ドリブルで直線的に突っ込むスタイルから、フェイントを多用し相手を抜くプレーへと、徐々にシフト。

 

アタッキングゾーンでのプレーが増えてきたことにより、積極的にシュートを放てるようにもなっていった。

 

元来、ボールコントロールには自信があったオレだが、この頃からキーパーのタイミングを外し、力ではなく、技でゴールを狙うようになる。

 

 

 

それが開花するのは高校に入ってから。

 

ユースチームでトップ下を任されるようになり、レギュラーを奪うと、そこから大会で3連覇、ベストイレブンに選ばれるまでになった。

 

年代別の代表にも選ばれ、高校卒業後、そのままトップチームに昇格。

 

今年で3年目を迎える。

 

 

 

ただし所属チームでは、なかなかチャンスをもらえず、ベンチ入りしても、ロスタイムの出場とか…その程度。

 

歯痒い思いをしている。

 

 

 

そんな中、オリンピックの予選(U-23)では、7試合で4ゴール5アシストを記録。

 

特に…勝てばオリンピック出場決定という試合で『ジョホールバルの再来』と呼ばれる『ロスタイムでのゴール』をあげ、オレの名前は、一気に全国区になった。

 

 

 

 

 

こうして『梨里』という文字は、無事に『りさと』と呼ばれるようになったわけである。

 

 

 

 

 

ところが…

 

 

 

 

 

代表合宿を1週間後に控えたあの日、オレは事故に巻き込まれてしまった…。

 

 

 

…運命ってヤツは、本当に紙一重だな…

 

 

 

つくづく、そう思う。

 

 

 

あの時、横断歩道の信号が赤にならなければ、オレは事故現場から、数十メートル先を歩いていたのだから…。

 

 

 

 

 

~つづく~

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。