【ラブライブ μ's物語 Vol.4】オレとつばさと、ときどきμ's ~Winning wings 外伝~ 作:スターダイヤモンド
オレの名は
オレは『高野 梨里』。
二十歳。
176cm、63kg、O型。
親戚や古い友人などは、幼い頃のオレを『リサ』とか『リリー』と呼んだ。
そのせいで…知らない人からは「えっ?実は女の子だったの?」と思われたことも少なくないが…
本当は『梨里』と書いて『りさと』と読む。
今でこそ『正しく呼んでもらえるようになった』が、昔はだいぶ苦労した。
大抵の人が『りり』と読み間違えるからだ。
その都度「違います!『りさと』です」と正解を告げることになる。
ところで、この歳になり『ようやくここまでの身体』になったが…中学生くらいまでは女子よりも小さく、細かったから、実際、よく「女装が似合う」と言われたもんだ。
いや、あくまで、そう言われただけで…『自分からした』ことはない。
従姉妹に『させられたこと』はある…が…。
あの時『そっちの道』に目覚めていたら…もしかしたら今頃は、別の世界にいたかも知れない。
幸か不幸か、そうはならかったのだが。
因みにスペルや発音を気にしなければ『リリー』とは英語で『百合』のことを言う。
『たかのゆり?』
そういえば…『た◯の友梨ビューティークリニック』…なんてエステサロンがあるけど…オレとそれの間に、因果関係はない!…と思っている。
…百合…
本当に『そっち』に進んでいたら、そこそこ意味深な言葉だな…。
それ故、よく名前の由来について問われるが、なぜこうなったのか、オレもわからない。
両親に訊いても『なんとなく』『雰囲気で』『そういう顔だったから』とか言って、明確な答えが返ってこない。
それでも5年ほど前までは『なにか隠された秘密があるハズだ』と思っていたのだが…
ここ数年は『本当にテキトーに付けたんじゃないか』という考えに変わっている。
出世届けを出す際に、書き間違えた…とか、恐らくそんなところだろう。
まぁ、名前が知れたお陰で、いちいち訂正することもなくなったし、最近では自分自身、かなり受け入れられるようにはなってきた。
もしオレに子供ができたら、わかりやすい名前を付けてあげよう。
男か女か、すぐわかる…誰もが読める名前。
キラキラネームなんて、以ての外だ。
こういう苦労は当事者じゃなきゃ、わからない。
オレは性格的に虐められるようなタイプではなかったが、気が弱い子なら十分、その対象になりえる。
たかが名前。
されど名前。
慎重に付けて欲しいと、心から思う。
余談が過ぎた。
オレの紹介を続けよう。
オレは小学1年生からサッカーを始めた。
両親は身体つきも運動能力も、ごく普通の一般人であるため、特にこれといって受け継いだものはない。
だから、プロ選手を目指していた訳でもないし、なれるとも思っていなかった。
ああいう選手は、ある程度、英才教育というか…親が相当力を入れてバックアップしないと…というのは、誰もが知っているところである。
だが、どうやら、オレにはそれなりにセンスがあったらしい。
自慢じゃないが、サッカーを始めた時から、ボールコントロールが抜群に上手かった。
持って生まれた才能というのは、百の努力にも優る。
背は低かったが、脚は速かったので、このボールタッチを武器にしたオレは、次第にFWを任されるようになった。
高学年になると、快速ドリブラーとして、注目され始める。
ただし、華奢で非力な為、いわゆる『ストライカー』ではなく、敵陣深く切り込みチャンスメイクするタイプ。
ドリブルで相手を引き付け、空いたスペースにパスを出す。
これが得意のプレー。
所属チームが弱かった為、優勝には縁がなかったが…それでも、5年生と6年生の時には、地区の選抜選手となった。
その活躍が認められ、中学からは、Jリーグの下部組織に入団。
しかし、その3年間は『成長期特有の膝の痛み』との戦いとなり、思うような結果を残せずに終わる。
中学入学時には140cmに満たなかった身長が、平均すると1年で8cmずつ伸び、卒業するころには163cmとなっていた(それでも、まだ十分小さいのだが)。
その身体の成長が、オレのプレースタイルを変えさせた。
接触を避ける為、ドリブルで直線的に突っ込むスタイルから、フェイントを多用し相手を抜くプレーへと、徐々にシフト。
アタッキングゾーンでのプレーが増えてきたことにより、積極的にシュートを放てるようにもなっていった。
元来、ボールコントロールには自信があったオレだが、この頃からキーパーのタイミングを外し、力ではなく、技でゴールを狙うようになる。
それが開花するのは高校に入ってから。
ユースチームでトップ下を任されるようになり、レギュラーを奪うと、そこから大会で3連覇、ベストイレブンに選ばれるまでになった。
年代別の代表にも選ばれ、高校卒業後、そのままトップチームに昇格。
今年で3年目を迎える。
ただし所属チームでは、なかなかチャンスをもらえず、ベンチ入りしても、ロスタイムの出場とか…その程度。
歯痒い思いをしている。
そんな中、オリンピックの予選(U-23)では、7試合で4ゴール5アシストを記録。
特に…勝てばオリンピック出場決定という試合で『ジョホールバルの再来』と呼ばれる『ロスタイムでのゴール』をあげ、オレの名前は、一気に全国区になった。
こうして『梨里』という文字は、無事に『りさと』と呼ばれるようになったわけである。
ところが…
代表合宿を1週間後に控えたあの日、オレは事故に巻き込まれてしまった…。
…運命ってヤツは、本当に紙一重だな…
つくづく、そう思う。
あの時、横断歩道の信号が赤にならなければ、オレは事故現場から、数十メートル先を歩いていたのだから…。
~つづく~