【ラブライブ μ's物語 Vol.4】オレとつばさと、ときどきμ's ~Winning wings 外伝~ 作:スターダイヤモンド
はい。
『Winning wings』の主役は彼女でした。
オレとチョモの関係…。
ありきたりな言葉を使うなら『友達以上、恋人未満』。
しかし、オレの両親も公認の付き合いをしていることを踏まえれば…やや後者寄り…。
チョモとは小学生からの知り合いだが、幼馴染みというわけではない。
まともに付き合い始めたのは、高校生になってから。
かれこれ4年が過ぎたことになる。
きっかけは、サッカー。
オレとチョモは師弟関係にある。
当然、オレが師匠で、チョモが弟子だ。
チョモの人生は波瀾万丈。
前にも言ったが、ドラマ化・映画化の話があるほど、起伏に満ちていて面白い。
「面白い」と言うと、当の本人は怒るけど。
オレもすべてを知ってるわけじゃないが、彼女のこれまでの人生を、簡単に紹介しよう。
チョモ…。
本名『藤 綾乃』。
父は元陸上選手で、スポーツ用品のメーカーに勤務。
母は元モデルで、今は女性ファッション誌の編集長。
小学校3年の時に『近所の友達に誘われた』のと『一番近くにあったスポーツクラブ』という理由でバレーボールを始める。
だが、その1年後…
父親が、飲酒運転のトラックにはねられ事故死…。
以降、母子家庭となったが、トラックを所有していた大手運送会社から慰謝料が支払われ、金銭的にはあまり苦労せずに育ったらしい。
『オレとは違って』チョモは『両親のDNAを良いとこ取り』している。
入ったバレーボールクラブでは、高い身長、ズバ抜けた運動神経(特にジャンプ力)、さらには『左利き』という特徴を活かし、5年生から『ウイングスパイカー/ライト』として活躍。
6年生の時には『オポジット(守備免除のセッター対角/スーパーエース。女子の場合はユニバーサルともいう)』としてチームを引っ張り、県大会準優勝の原動力となった。
自身も県のベスト6に選ばれている。
オレは5、6年とチョモと同じクラスだった。
サッカーとバレーボール…
ともに競技は違えど、同じように『エース』であった為、自分で言うのもなんだが、オレたちは学校じゃ、ヒーロー、ヒロイン的な存在だった。
しかし…
オレとチョモとの間には、圧倒的な差があった。
どんなに努力しても越えられない壁。
それが身長…。
当時のオレは138cm。
チョモは確か…167cmだった…と記憶している。
この30cmの差は大きい。
常に上から見られている感覚。
バカにされている感じ。
自然とオレは、チョモをライバル視するようになる。
今から考えれば、メチャクチャ幼稚だな…と思うけど。
当時のチョモは短髪であった為、どちらかというと中性的で、女子から見れば『格好いい』という形容詞で呼ばれていた。
イメージとしては『宝塚の男役』。
性格は明るく、勉強もできた。
クラスを纏めるリーダーでもあった。
それ故、女子から絶大な人気を誇っていた(その人気を妬んだ一部の女子から、陰湿なイジメを受けていたらしいが…なんとか、そこは乗り切った…と言っていた…)。
男子という生き物は『可愛い子』『気になる子』に、ついチョッカイを出してしまうもの。
それはいつの時代も同じだと思うが、その頃のオレたちもそうだった。
ことあるごとに逆らっては…しかし反撃され、返り討ちを喰らっていた。
身体の小さなオレたちからすれば、ヤツは、まさに『巨人』。
可愛いなんて思ったことは、一度もない。
ただし、心の奥深くで、どこか『憧れていた』部分があったのかも知れない。
あくまでも、今、思えば…だが。
女子からヤツは『藤さん』と呼ばれていた。
誰も『藤』とか『綾乃』とか、呼び捨てにはしていなかった。
そう呼ばせないオーラがあった。
逆に言えば、対等な立場の友人がいなかったのかも知れない。
とにかく、なにもかも突出した存在。
頭も良く、明るくて、リーダーシップもあって、体格でもかなわない(おれ自身は、運動神経だけは互角だと思っていたが)。
オレたちの…そんなヤツへの、せめてもの抵抗が『チョモ』という呼び名だった。
「藤さん?いやいや、そのデカさは『富士山』じゃなくて『チョモランマ』だろ!」
チョモランマとは、もちろん世界一高い山…『エベレスト』のことである。
エベレストと呼ばなかったのは、そっちの方が『通』だと思ったから。
ガキの頃の発想なんて、そんなもんでしょ?
そして、この時に付けた呼び名を、恥ずかしながら、オレは今も使い続けているのだった…。
~つづく~