【ラブライブ μ's物語 Vol.4】オレとつばさと、ときどきμ's ~Winning wings 外伝~ 作:スターダイヤモンド
「さぁ、じゃあ、お腹もいっぱいになったし、真姫ちゃんの別荘に行こう!」
「穂乃果!私んちのじゃないし…パパの知り合いのコンドミニアムだから」
「いいじゃん、どっちでも」
「どうやって行くん?」
「地下鉄…って言うと、逆方向に行く人がいるから」
と真姫は、穂乃果をチラッと見た。
「たはは…また、古い話を…」
「タクシーで3台に分乗するわ」
「それはそれで不安なのですが…」
「そうにゃ!また変なところに連れていかれたら困るにゃ」
海未と凛が穂乃果を見る。
「いや、だからそれも昔の話だって…」
と頭を掻く穂乃果。
「まぁ、今回は大丈夫じゃない。海外経験豊富な希と花陽、それに通訳を目指してる絵里がいるし」
「なるほど!そこは前と違うところだね!」
「でも、その3人が一緒に乗っちゃったら…」
凛は残ったメンツの顔を見て、不安そうな表情をした。
「穂乃果ちゃんと海未ちゃんと一緒になったら、絶対辿り着かないにゃ…」
「随分な言われようだね…」
「でも否定できません…」
「バカね。だから、そうならないように、分ければいいだけでしょ…」
「そっか!」
「そっかじゃないわよ。じゃあ、こっちで組み合わせを決めるわよ。私はカギを開けなきゃいけないから、先に行くわ。そうしたら…希、穂乃果、1号車」
「は~い!」
「それから、絵里とことりと凛が2号車」
「え~凛。かよちんと一緒がいいにゃ!」
「もう、そういう面倒なことは言わないで…」
「…にゃ~…」
「最後、花陽と海未とにこちゃん。以上!」
「はい、わかりました!」
こうして9人はタクシー3台に別れて乗車し、数十分後、無事目的地に到着した。
「うひゃあ、やっぱり広いね!」
「さすが、外人さん仕様にゃ!
「ほら、すぐそうやって走り回らないの!まったく、いつまで経っても子供なんだから…」
と真姫はため息をついた。
「でも、確かに食事は済ませてしまったし、寝るだけ…って考えたらもったいない広さね」
「じゃあさ、絵里ちゃん、枕投げしようよ!」
「穂乃果ちゃん、それは面白そうやけど…今日はやめといたほうがいいんやない?真姫ちゃんちの別荘やないんだから、なんか壊したら大変よ」
「そ、そうだね…」
「ウチの別荘だって、壊して欲しくないんだけど…」
「ま、真姫!大変よ!」
突然、にこが血相を変えて隣室から走ってきた。
「どうしたの、にこちゃん!!なにかあった!?」
一同に緊張が走る。
「寝室が4部屋あるけど、ベッドがそれぞれ4つずつしかないわ!」
「どういうこと?」
と、首を捻る穂乃果。
「ああ、それ?でも、キングサイズだから、2人1組でみんな充分寝れるでしょ?1組だけ3人になっちゃうけど…」
真姫は意に介していない感じだ。
「なに言ってるのよ!そうしたら、誰と寝るか?』が一番大事じゃない。
「!!」
穂乃果以外はピンときたらしい。
メンバーの視線が彼女に集まる。
「へっ?穂乃果?」
メンバーの中では『穂乃果の寝相の悪さ』は有名で、特ににこは海外ライブを行った際の宿泊において、彼女からの『睡眠妨害』を受けた1人であった。
つまり、組み合わせいかんによって、明日の目覚めが天国と地獄ほど違うのだ。
「そこまで、考えてなかったわ…」
「だ、大丈夫だよ、真姫ちゃん。前にも言ったけど、普段はそんなことないんだから」
「信用ならないわ」
「にひひひ…」
「なんですか!希、そのいやらしい笑い方は」
「いやぁ、思いも寄らないところでスペシャルイベントが訪れたやん。穂乃果ちゃんだけでなく、誰と一緒になるか…めっちゃ楽しみやん!」
「そういうこと?そうね、あの時のリベンジを今、果たす時が来た…ってことね!」
にこは、穂乃果からの睡眠不足の被害に遭った翌日に行われた『部屋割り組み換えジャンケン』においても『まさかの同室になる』というミラクルを起こしていた。
「穂乃果ちゃんだけ、ここで寝ればいいにゃ!」
「凛ちゃん、それはヒドいよ…」
「凛、危険なのは穂乃果だけじゃないわよ。希と一緒っていうのも…」
「た、確かに…」
「え~、にこっち。たまには楽しい夜を過ごさへん?」
と希は顔の前に両手を出し、5本の指をワシワシと曲げた。
「ふん、させるか!絶対回避するんだから!」
「わ、私も希と同室は避けたいです!」
「凛はかよちんと一緒がいいにゃ!」
「ことりも、花陽ちゃんと一緒ならぐっすり眠れるんだけど」
「え~誰か穂乃果と一緒に寝ようよ…」
「まさかと思うけど、海未ちゃん、トランプ持ってきてないよね?」
「ことり、愚問です。トランプは旅の必需品ですよ」
「そ、そうなんだね…」
穂乃果の寝相の悪さと並び『勝つまで止めない』海未のババ抜きも悪名高い。
「ま、負けられないわ…」
真姫も誰と一緒になるのか、戦々恐々としているようだった。
「うふふ…」
「絵里ちゃん、どうしたの?」
花陽は、メンバーの様子を見て笑う彼女に聴いた。
「なんか、こんなどうでもいいことに盛り上がるのが、μ'sらしいっていうか…」
「あっ…」
「やっぱり、このメンバーでいると、心が和むなって…」
「はい!」
「花陽…」
「はい?」
「今日は本当に来てくれてありがとう。相当無理したんでしょ?」
「いえいえ…」
「μ'sは9人揃ってこそμ's…今日、つくづく感じたわ」
「えへへ…絵里ちゃんにそう言ってもらえると来た甲斐があります」
「うん…。あぁ、そうだ!どうせなら私も花陽と一緒に寝てみたいな…」
「えっ!?」
「あ…その…みんなが花陽と一緒に寝ると、すごく気持ちよく眠れるって言ってたから…」
「あははは…光栄です」
「えりち!花陽ちゃん!なにコソコソ話してるん?」
「やるわよ!ジャンケン大会!」
一同が輪になった。
「前回と同様、勝った人から順にA、B、C、Dやね。それでDが3人部屋ということで」
「強制的に割り振るわけね」
「OKにゃ!」
「誰となっても怨みっこなしだからね!」
「アンタに言われると、なんか腹立つわ」
と、にこが穂乃果を睨む。
「あははは…」
「では、参りましょう。いざ、勝負!」
海未が、まだ少し掠れ気味の声で、音頭をとった。
「最初はμ's!ジャンケンポン!アイコでしょ!」
結果は…
A室…にこと凛。
「3回連続穂乃果を回避出来て、本当によかったわ!…凛っていうのがビミョーだけど…」
「にゃ~…かよちんと一緒がよかったにゃ~!」
「ずっと、これを言ってそうだし…」
B室…希とことり。
「ことりちゃんと二人っきり…って、初めてやない?」
「うん、そうかも」
「そしたら今日は…『ことりを夜食にしちゃうぞ!』やね」
「え~、どうしよう。ことり食べられちゃう~」
「…って、全然嫌そうじゃないんですけど…」
「おや?にこっち妬いてるん?」
「はぁ?バカじゃないの!アンタみたいなセクハラ親父と一緒じゃなくて、ホッとしてるわよ!」
「にこちゃん、代わってあげようか?」
「だ~か~ら~…」
「凛は、にこちゃんより、ことりちゃんがいいにゃ!」
「アンタはどうせ『のび太くん』みたいにすぐ寝るんだから、誰だって関係ないじゃないの!」
「にゃ~!!」
「こらこら、騒がしくしないの!って、本当に2人は仲がいいんだから」
「そりゃあ、えりち。川に落ちて、身体を暖めあった仲やもん…ね?」
「関係ないでしょ!」
C室…穂乃果と真姫。
「どうして、このツアーの企画者の私が、こういう目に遭うわけ?」
「真姫ちゃん、それはないよ…」
「まぁ、いいわ。私の睡眠を邪魔するようなら、部屋から追い出すから」
「たはは…」
D室…
「ということで、私たちが3人部屋ですね」
「絵里ちゃんと海未ちゃんと一緒かぁ…海の帰りの電車を思い出します」
「海岸でμ'sの解散を発表した日のことですね」
「ハラショー!確かボックス席で、この組み合わせになって…『各学年の一番年下(誕生日が一番最後)』ってことで盛り上がったのよね」
「あれから、もう5年近くも経つのですね…」
「でも、こうやって1人も欠けることなく、みんなと会える…とても素敵なことだと思わない?」
「はい!」
花陽は元気よく返事をした。
「さぁ、そうしたら、順番にシャワーを浴びて、今日は寝るわよ」
「えっ?にこ、トランプはしないのですか?」
「しないわよ!そんな子供みたいなこと」
「別にトランプは大人でもしますが…」
「アンタはババ抜きしかしないでしょ!」
「いえ、神経衰弱も…」
「頭使うことはしたくないにゃ~」
「…って、ことはアレやね…王様ゲー…」
「するか!」
「なんですか?その王様…」
「別に、海未は知らなくてもいいわよ…」
「はぁ…そうなのですか…」
「だったら、やっぱり枕投げ…」
「しない!…ってさっき言ったでしょ!」
と真姫が穂乃果を睨む。
「前にやった時は、凛、怯えてなにも出来なかったけど…今なら結構イケるかも」
「そういうことでしたら、私も『寝起き』を強襲され、瞬殺されましたので…ですが、今なら」
「は、花陽は審判でいいかな…」
「こ、ことりも…」
「だから、しないって言ってるでしょ!」
「じゃあ、怪談話でもする?」
「穂乃果!」
絵里の顔色が一瞬で変わった。
「確かに季節は夏ですが、わざわざ海外まで来てすることでもないですね…」
「まぁ、それを言ったら、みんなそうやけどね…」
「あれ?凛のバッグにジェンガが入ってるにゃ…」
「おっ!いいじゃん、いいじゃん!」
「はぁ…もう、なにその偶然みたいな言い方?遊ぶ気満々じゃない…」
「にゃは!」
「まぁ、これなら『平和に』みんなで楽しめるし、いいんじゃない?」
「…とか言ってるえりちも、案外ムキになるタイプやけどね」
「基本的に、負けず嫌いの集まりだから」
「よ~し!一番負けた人は明日の朝御飯当番だ!」
と、穂乃果が腕捲りをして、遊ぶ準備を始める。
「パンとコーヒーくらいしかないけどね」
今いるところは、コンドミニアムだ。
自炊出来るので、スタジアムから夕食に行く前に、簡単な買い物はしてきた。
「それじゃあ、始めますか!」
こうして、ジェンガ大会が始まり、夜が更けていった…。
~つづく~