【ラブライブ μ's物語 Vol.4】オレとつばさと、ときどきμ's ~Winning wings 外伝~   作:スターダイヤモンド

102 / 173
どうしよう、どうしよう…迷うよね!?

 

 

 

 

 

交代でシャワーを浴びながら、異国の地で行われたジェンガ大会は深夜にまで及び、日付が変わった頃に就寝となった。

 

おやすみなさい…と各人、ジャンケンによって割り振られた部屋に入る。

 

 

 

 

 

「凛…もう眠っちゃった?…」

 

小声でそう呼んだのは、顔に入念なパックを施した、にこ。

 

隣には、枕を抱いて猫のように丸まって寝ている凛がいる。

 

小柄な2人には、キングサイズのベッドはあまりに大きく、持て余しているように見える。

 

「…んぅん…なぁに、にこちゃん…いい感じで…眠ったとこだったのに」

 

むにゃむにゃ…と凛。

 

「あ、ごめん…」

 

「…どうしたにゃ?…ホームシック?…」

 

「ぬわんでよ!…その状況で、よくそういう言葉が出てくるわね…」

 

「…違うんにゃ?…」

 

「さっきの話よ!アタシたちが、このあと、どうするかっていう…」

 

「あぁ…その話か…むにゃむにゃ…にこちゃんはまだ未練があるんにゃ?…」

 

「未練ってわけじゃないけど…」

 

「凛はとっくの昔に、諦めてるにゃ…」

 

「そ、そうなの?い、いや、にこもそんな話、今更と思うわよ。でも、ほら、ちょっとでも、可能性があるなら…少しはその気になってもいいかな…なんて…」

 

「無理、無理…」

 

「うっ!…そんな無下に否定しなくも…」

 

「無理にゃ~!どんなに頑張っても、にこちゃんはかよちんのおっぱいにはなれないにゃ~!!」

 

「わかってるわよ!そりゃあ、アタシだって、もう少しあれば…って思って…る…わ…って、何の話よ!!そうじゃなくて、A-RISEが言ってたチャリティライブの話!1日くらいなら、復活するのもアリかな?って、にこは思うわけ。もちろん、9人全員参加が大前提だけど…」

 

 

 

すぴー…

 

 

 

「…って、寝てるんかい!!」

 

 

 

…まぁ、いいわ…

 

…あんまり変なことを言って、みんなを惑わせるのはどうかと思うし…

 

…それに中途半端に、それをやったら、戻れなくなるかも知れないし…

 

 

 

「おやすみなさい」

 

にこは自分に言い聞かせるように、呟くと、静かに目を閉じた。

 

 

 

…にこちゃん…ゴメンね…

 

…凛にその話をされても、答えられないにゃ…

 

…でもにこちゃん、本当はやりたいんだね…

 

…凛も…

 

…凛も少しはそう思うけど…

 

…少し?…少しかな…

 

…ごめん…

 

…やっぱり、ちょっと、わからないや…

 

 

 

…おやすみなさい…

 

 

 

 

 

「ことりちゃんは、A-LISEの話、どう思うん?」

 

「チャリティーコンサートの話?」

 

希は「そうやね」と頷いた。

 

 

 

こちらはB室。

 

 

 

2人はまだ就寝の態勢には入っていない。

 

ルームランプだけ点けた薄明かりの中、お互い枕を抱きしめながら、ベッドの端に横並びで座っていた。

 

もちろん、ことりは自分専用の枕だ。

 

「う~ん、急に言われてもわかんないなぁ」

 

「ウチも…」

 

「でもね、本当言うと、ときどきμ'sのメンバーをイメージしながら、衣装のデザインはしてるんだ。季節ごとっていうか、イベントごとっていうか…もう誰も着ないってわかってるのに…ね」

 

「でも、それは今後の仕事に役立つんやない?」

 

「うん!…だけど…ちょっと違うかな?『希ちゃんだからこういう感じ』…だとか…『絵里ちゃんならこうだよね』…とか…人物が先に出てきちゃって…どうしてもμ'sなの、イメージは。…心のどこかで、やっぱり、みんなに着て欲しいって思ってるのかな…」

 

「着て欲しい…だけ?」

 

「えっ?」

 

「…たまに夢に出てくるんよ…。ステージの上からA-LISEに呼ばれて…それで『あれ?ウチなんで客席にいるんやろ?早く行かなきゃ!』って、慌てて向こうに走るんやけど、着いたら誰もいなくて…。それで『あっ!』て目覚めて…『あぁ、ウチ、もうそっちの人間やないやん!』って」

 

「希ちゃん…」

 

「これって未練なんやろか?」

 

「ことりも、似たような夢は見ますよ。ステージの上で歌って踊って…でも、それが夢だった…っていう夢」

 

「複雑な夢やね」

 

「起きてもまだ夢の中なのかな…って思っちゃたりして」

 

「うふふふ」

 

「えへっ」

 

「不思議やね…もう全部『やり切ったって』思ってたんやけど…」

 

「そうだね…」

 

 

 

そう言ったきり2人はしばし黙りこんだ。

 

 

 

「まぁ、今、考えても…ね?今日は寝ますか」

 

「うん!」

 

「それじぁ、おやすみ…」

 

「おやすみなさい…」

 

2人はベッドに入ると、希がランプの明かりを消した。

 

 

 

それから少しして…

「…ことりちゃん…」

希が小さな声で、囁く

 

「…はい?…」

 

「…後ろから…ギュってしていい?」

 

「えっ!」

 

「ウチ、こう見えて寂しがりやなんよ…」

 

「うふっ!いいですけど…でも、ワシワシはなしですよ」

 

「え~、いいやん!」

 

「希ちゃんがワシワシしたら、ことりもワシワシしちゃいますよ!」

 

「大歓迎やけど」

 

「あはっ!…でも、本当はことりじゃなくて、花陽ちゃんが良かったんでしょ?」

 

「ありゃ、意地悪なことを言うんやね?…でもそういう、ことりちゃんもウチより花陽ちゃんが良かったんやない?」

 

「ん?…えっと…」

 

 

 

「…」

 

「…」

 

 

 

「あっ!なら、花陽ちゃんをえりちの部屋から連れ去ってきて、ウチら2人の間に入れれば一件落着やない?」

 

「うん!それだ!」

 

 

 

「…」

 

「…」

 

 

 

「ね、寝よか」

 

「う、うん…」

 

「じゃあ…」

 

「お、おやすみなさい…」

 

「おやすみ…」

 

 

 

 

 

 

そしてC室。

 

 

 

「真姫ちゃんと2人きりって、すごく新鮮だね」

 

「別に、寝るだけだし、そんな意識することじゃないでしょ?」

 

「それはそうだけどさ…」

 

「さっきも言ったけど、私の安眠を邪魔するようなら、容赦なく部屋から追い出すから」

 

「頑張るぞ、おう!」

 

「何の気合いよ…まぁ、でも…すぐセクハラしようとする希よりはマシかしら。いつ襲われると思うと、本当に眠れないんだから」

 

 

 

はっくしょん!

 

 

 

「おや?隣の部屋からくしゃみが…真姫ちゃんの話、聴こえてたりして」

 

「まさか…。それより、どうするつもり?」

 

「えっ?」

 

「A-LISEの話」

 

「なんだっけ?」

 

「もう、これだから穂乃果は…しっかりしてよ!チャリティライブのこと」

 

「あっ、あぁ、その話ね」

 

「海未が嘆くのもよくわかるわ」

 

「えへへ…」

 

「笑ってないで、答えなさいよ…」

 

 

 

「…でもさ、その前に…なんで穂乃果に訊くの?」

 

 

 

「なんで?って…アナタ、リーダーでしょ?」

 

そう言ってから、真姫は何かに気付いた。

 

「あっ…」

 

「ほら!ね?μ'sは今なくなっちゃんだから、穂乃果がリーダーっておかしいでしょ?」

 

「…確かにそうね…まぁ、μ'sだった時から、穂乃果がリーダー…ってことがおかしかったけど」

 

「そういうことじゃなくて…」

 

「こういうことは、やっぱり、まずは隣の人たちに相談するべきね…」

 

「よし、じゃあ今から…」

 

「よしなさいよ!今、そんな話をし行ったら、今晩徹夜じゃすまされないわよ!」

 

「そ、そうだね」

 

「こんな話を振った私が悪かったわ」

 

 

 

「私はやりたい!」

 

 

 

「えっ!?」

 

 

 

「もうスクールアイドルじゃないけどね…」

 

「穂乃果…」

 

「あ、ほら、それはもちろん、全員参加できたら…だよ。でも、みんな都合があるし、難しいとは思うけどさ…」

 

「そうね…」

 

 

 

…考えてもみなかったわ…

 

 

 

…ううん、うそ…

 

…いつか、また…って、ずっと思ってた…

 

…けど…

 

…そんな日なんて、来るハズないって…

 

 

 

…もう、なんなのよ!…

 

…こんなこと考え始めたら、また眠れなくなるじゃない!…

 

 

 

…A-RISEのバカ!…

 

 

真姫は「はぁ~…」と大きく深い溜め息をついて、頭を抱えた。

 

 

 

 

 

~つづく~

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。