【ラブライブ μ's物語 Vol.4】オレとつばさと、ときどきμ's ~Winning wings 外伝~   作:スターダイヤモンド

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Winning wings ~セッター~

 

 

 

 

チョモは小学校を卒業すると、都内のバレーボール強豪校(私立)に、特待生として進学する。

 

そして、ここからヤツの…ジェットコースターのような歴史が幕をあける。

 

 

 

 

 

意気揚々と乗り込だチョモだったが…入った中学では『チョモランマ』ではなかった。

 

『富士山』でもなかった。

 

そう、彼女より高い身長の部員は何人もいたのだ。

 

 

 

小学生の女子で167cmは、確かに大きい。

 

しかし、ことバレーボールの世界においては、それでは余りに小さすぎた。

 

 

 

一昔前なら、それくらいの身長で戦う日本人アタッカーはいた。

 

柔よく剛を征す…高さとパワーが足りない分、スピードと技で立ち向かっていた。

 

 

 

しかし…

 

 

 

今や女子でも180cm、190cmは当たり前の世界。

 

ややもすると2mオーバーの選手さえいる。

 

日本が本気で世界と戦うのであれば、選手のサイズアップは必須であった。

 

 

 

そこでチョモは入学早々、セッターへの転向を命ぜられる。

 

だが、アタッカーとして勝負したいチョモは、納得しない。

 

なんとコーチに直談判へと打って出た。

 

 

 

「この身長で通用するかしないか…テストもしないで、なにがわかるんですか!!」

 

 

 

この負けん気の強さが、今日までヤツを支えてきたと言っていい。

 

コーチはその『気概』については、認めたようだ。

 

 

 

だが…

 

 

 

「スーパーエースであればあるほど、サーブで狙われる。それ故、レセプション(サーブレシーブ)が下手な選手は、世界で通用しない。だから、今はきっちり守備力を高めろ」

そう説得された。

 

結局

「このあと、背が伸びたら、アタッカーへの再コンバートを検討してやる」

と言われ、その条件を呑むことになった。

 

 

 

それからの1年間は、ひたすらレシーブとトスアップの練習に明け暮れた。

 

 

 

 

 

そのチョモには目標とする…いや、越えなければならない、同い年の人物がいた。

 

 

 

名を『山下 弘美』という。

 

 

 

彼女は、高い守備力と『正確無比なトスワーク』で、将来、全日本入りを嘱望されている、ジュニアの有望株だった。

 

 

 

だが、残念なことに…

 

 

 

彼女は身長が、チョモよりも『10cm近く低かった』。

 

 

 

ある日、彼女は言った。

 

「あなたはいいわよ…一時でもアタッカーだったんだから。私なんて、この身長のせいで、スパイクを打つことさえ許されなかったの。だから私の生きる道はここしかなかった!…いい?『にわかセッター』のあなたに、このポジションは渡さない!渡してたまるもんですか!」

 

 

 

この言葉を聴いて、チョモは自分恥じた。

 

体格で劣る彼女にとって、自分より背が高く、同等レベルの技術を持つ選手が現れたとすれば…それは即ち…『死』を意味する…。

 

それくらいの覚悟でプレーをしている。

 

 

 

自分はどうか?

 

 

 

目の前にある与えられた課題を、死ぬ気でクリアしなければならない。

 

その覚悟はあるのか?

 

そう、まずはこの人に勝たないことには、アタッカーへの挑戦なんて、夢のまた夢。

 

 

 

いつか絶対に追い付き、追い越す!!

 

 

 

小学生時代は、どちらかというと守備は免除されていた為、レシーブは苦手だったが、そう決意してからは「地獄の日々を送った」と、チョモはのちに述べている。

 

 

 

それから1年…。

 

 

 

猛練習の甲斐あって、チョモの技術は確実に進歩していた。

 

紅白戦では、控え組のセッターとして、コートに立つことも増え…身長は1cmも伸びなかったが…ジャンプ力は健在で、ブロックだったり『左利きの利点を活かしたツーアタック』だったりと、攻撃において、弘美とは違う面をアピールすることもできるようになってきた。

 

トスワークについては…セッター一筋で生きてきた弘美にはかなわない。

 

しかし、戦況を見て試合を組み立ていく面白さ…のようなものが、少しずつだが、わかり始めてきた。

 

 

 

 

 

この経験がのちのち、サッカーをプレーするのに活かされることになる。

 

 

 

 

 

セッターに対して、自分の新たな可能性が見えてきた、中学1年の3学期だった…。

 

 

 

 

 

~つづく~

 


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