【ラブライブ μ's物語 Vol.4】オレとつばさと、ときどきμ's ~Winning wings 外伝~   作:スターダイヤモンド

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園田さんと高坂さんと南さん

 

さて、諜報部員の皆さんは、同乗して亡くなった少女の情報についても、教えてくれている。

 

 

 

》横山春蘭。

 

》少年と同じく16歳。

 

》父親はいわゆる不動産王で、つまり資産家の娘。

 

》母親は『後妻』で台湾出身だが、本人は生まれも育ちも日本。

 

》腹違いの兄、姉、兄がおり、末っ子。

 

》上の3人はいずれも優秀で、それぞれベンチャー企業の社長、財務省職員、医大生である。

 

》少女自身も有名私立高校に通っており、成績も悪くなかったようだが…素行はあまり良くなく、中学の頃から夜遊びも目立っていた…。

 

 

 

ざっとこんなところだ。

 

 

 

…ってことは、レクサスはこの娘の親父のものか?…

 

…だとすれば、やはりこの親にも責任を追及する必要があるよな…

 

 

 

家庭環境的には、真逆の生活を送ってきたんだと思う。

 

だから、この個々の情報だけでは、お互いを結びつける接点はない。

 

どこで知り合い、いつから一緒にドライブするまでの仲になったのか…。

 

 

 

彼らが過ごしてきた月日について、オレが口を挟むつもりはない。

 

それなりに辛いこともあったことだろう。

 

少年も少女も、家庭の中において『疎外感』みたいなものがあったのではないか…ということは、想像に難(かた)くない。

 

それが、ふたりを引き合わせた共通点なのかも知れない。

 

 

 

ただ、そうであったかも知れないが…無免許で車を運転していい理由にはならない。

 

それは大きな間違いだ。

 

どんな理由であれ、自分たちの都合でまったく無関係の第三者を巻き込んでいいはずがない。

 

 

 

情状酌量?

 

冗談じゃない!

 

それとこれとは話が別だ!

 

 

 

そうだ…。

 

オレは会見のときに、ひとつ言い忘れたことがあった。

 

 

 

それはオレは『少年も救った』ということだ。

 

 

 

同乗者の少女は亡くなってしまったが、下手をすれば、オレも園田さんもあの世に行っていたおそれがあった。

 

…となれば、彼は3名の命を奪っていたことになる。

 

 

 

重罪だ。

 

 

 

しかし、自惚れるつもりはないが…オレは、園田さんを助け、自分自身の機転により直撃も避け『死』という最悪の事態から逃れることに成功した。

 

つまり間接的にオレは彼を『救ってしまった』のだ。

 

 

 

皮肉を込めて言おう!

 

 

 

それは少年にとって『良かったのか?』『悪かったのか?』。

 

 

 

 

 

「高野さん…ご面会の方が…」

 

そんなことを考えていたら、看護師がオレに声を掛けてきた。

 

 

 

…面会?…

 

 

 

「!!」

 

 

 

…そういえば今日は園田さんが来るって、連絡があったんだっけ…

 

 

 

会見後…つまり、彼女が帰国後、LINEで数回やりとしていたが…会うのは久しぶりだった。

 

 

 

「失礼致します。園田です」

 

病室に入る前に、彼女は深々と一礼した。

 

バッサリと髪を切ってしまったので、パッと見のシルエットは別人のようだったが、身体を起こしたときに確認した顔は、間違いなく園田さんだった。

 

 

 

「久しぶり」

 

「こちらこそ、ご無沙汰しております」

 

「改めてだけど…だいぶイッたね?」

 

オレは指でハサミの形をつくり、耳の下あたりで、2、3度チョキチョキとした。

 

「はい。髪を洗うのがこんなに楽だとは思いませんでした」

と、彼女はにこやかに微笑んだ。

 

「そういえば、今日、友達と一緒に来るって言ってなかったっけ?」

 

「はい。私ひとりだと、また『密会だ』などと言われて、色々ご面倒をお掛けしてしまいますので…」

 

「一緒にいるの?」

 

「はい、後ろで控えております」

 

「なんだ。だったら、そんなとこにいないで入ってもらいなよ…椅子はあるから」

 

「すみません。では、お言葉に甘えまして…」

 

彼女は一旦、部屋を出た。

 

 

 

「初めて!高坂穂乃果です!!海未ちゃんが、お世話になってます!!」

 

「ほ、穂乃果!声が大きいですよ!ここは病院なんですから」

 

「あ、いけね…そうだった…」

 

「初めまして。南ことりと申します。今日は海未ちゃんの付き添いでお伺いさせて頂きました。宜しくお願い申し上げます」

 

オレは事前に『予習』をしていたので、2人がどういった人なのかは、ある程度知っている。

 

確か、園田さんの幼馴染みだ。

 

「高坂さんに…南さん…わざわざこんなところまで、すみません」

 

「いえ、海未ちゃんの命の恩人ですから。ぜひ一度、お逢いしたいと思いまして…」

 

「あ、いやいや…。園田さんには何度か謝ったんだけど…あなたたちにも色々迷惑を掛けてしまって…」

 

「そんな、高野さんが謝らないでください!私たちこそ、今まで何のお礼も出来ず…」

 

「はい。海未ちゃんを助けてくださり、本当に、本当にありがとうございました」

 

「高坂さんも、南さんも、大袈裟だよ。…あれさ、今思うと、オレがスゲー余計なことしたんじゃないかって思うんだよね」

 

 

 

「えっ?」

 

「余計なこと…ですか?」

 

言葉を発したのは2人だが、園田さんも驚いた顔をしている。

 

 

「そう。園田さんはあの時アルコールが入っていたから、多分覚えてないと思うけどさ…きっと自力で逃げられたんだよね?」

 

「えっ?私が…ですか?」

 

「そう。それをオレが勝手に間に合わないと思って、突き飛ばしちゃったんだな…。完全な判断ミスだ。うん、本当に余計なことをした。だから、謝んなきゃいけいないのは、やっぱりオレの方なのさ。今になって、その時のことを思い出したよ」

 

「そ、そんなことありません!!あのとき私は間違いなく…」

 

「いや、園田さん!…そうしておいてくれないか…。そう考えれば、お互い気が楽でしょ?いつまでもオレに救われたなんて考えてちゃ、永遠にオレは園田さんと対等に付き合えない」

 

 

 

「対等に付き合えない…って…で、でも…高野さんには…つ、つ、つばささんという大切な人が…」

 

 

 

「ん?」

 

 

 

「あっ!」

と声をあげたのは南さん。

 

顔を真っ赤にしている園田さんを見て、何かを察したようだ。

 

「違うよ、海未ちゃん。高野さんが言った意味は、対等な立場でお話できないっていう意味だよ」

 

 

 

…そう言ったつもりなんだが…

 

 

 

「…!!…し、知ってます!もちろん、私もそうだと思ってました!」

 

「えっと…どうかした?」

 

「な、なんでもないです!」

 

 

 

…の割には、すごい慌てぶりだけど…

 

…まぁ、いいか…

 

 

 

「えっと…だから…ほらオレも恩人、恩人って言われると、調子に乗っちゃうし…一旦、その関係はリセットして…これからは、普通に友達として付き合ってくれたほうが気が楽になるっていうか…なんというか…。こんな形ではあるけど、これも何かの縁だと思うし。もちろん、高坂さんも南さんも含めてだけど…」

 

「うん、うん。そういうことならいいんじゃない。海未ちゃんの友達は、穂乃果の友達だし」

 

 

 

…ジャイアンか!…

 

 

 

「穂乃果!どうしてあなたはいつも、そんなに軽々しくそういうことを!!」

 

「海未ちゃん…」

 

「あっ、ことり…。すみません、高野さん。つい声が大きくなってしまい…」

 

「あははは…じゃあ、屋上行こうか。こんな病室にいるよりはいいでしょ?今日は過ごしやすい…って天気予報で言ってたし」

 

「は、はぁ…」

 

「冷蔵庫の中に、ジュースが入ってるんだ。悪いけど誰かそれ持ってくれないかな。多分、人数分はあると思うけど」

 

「あ、じゃあ、穂乃果が!」

 

「ですから、あなたには遠慮ってものがないのですか」

 

「いいから、いいから。御見舞品で悪いんだけど」

 

「いえ、いえ」

 

「ごちそうさまで~す!」

 

「どうぞ、どうぞ…」

 

高坂さんが冷蔵庫を空けて、ブリックパックタイプのジュースを手にする。

 

「その辺にビニール袋があるから、それ使って」

 

は~い!と返事をして、それを入れる。

 

噂通り屈託のない人だ。

 

 

 

「あっ、そうだ。園田さん、ちょっと見てて…よいしょ!っと」

と、オレは車椅子に乗り移った。

 

「あっ!」

 

「どう?結構回復したでしょ?」

 

「はい!」

 

 

 

「だから大丈夫!オレは必ず、ピッチに復帰するから」

 

 

 

「はい!」

 

やっと彼女が力強い返事をしてくれた。

 

 

 

そうなんだ。

 

オレがこの入院中に気付かされたこと…。

 

それは自分の為だけではなく、誰かの為に闘うこと。

 

いや、俺を応援してくれる人、全ての為に。

 

オレみたいな若輩者が言うのもおこがましいが、オレがメッシに憧れたように、オレも誰かに憧れられるプレーヤーになりたい。

 

オレのプレーで誰かが勇気付けられるのなら、そういう存在にオレはなりたい。

 

 

 

今までオレは、自分が最高のプレーをすれば、ファンが付いてくると思っていた。

 

もちろん、それは間違いではない。

 

だけど、少し独善的な考え方だった。

 

ファンがいるからオレたちがいる。

 

ファンに喜んで欲しいから、オレたちは最高のプレーヤーを目指すんだ。

 

単に技術を磨き、自分だけ満足するのであれば、別に観客などいらない。

 

そういうことに、改めて気付かされた。

 

 

 

そして、オレの目下の目標は、彼女…園田さんを心から笑顔にすることだ。

 

 

 

復帰するまでには、まだ時間がかかる。

 

だからと言って、いつまでも彼女の心の中に、暗い気持ちを宿しておくままにはできない。

 

どうするのが正解なのかはわからないが、少なくとも『助けた』だの『助けられた』だの…そういう関係からは早く脱却したかったのだ。

 

 

 

 

 

~つづく~

 

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