【ラブライブ μ's物語 Vol.4】オレとつばさと、ときどきμ's ~Winning wings 外伝~   作:スターダイヤモンド

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内浦の少女たち

 

 

 

 

 

「ぴぃ!」

 

「どうしたのですか、ルビィ、素っ頓狂な声を上げて」

 

「そ、それが…お姉ちゃん、これを見てください」

 

ルビィと呼ばれた…やや気の弱そうな少女…は、PCの画面を指差した。

 

「これは!?…」

 

口元の黒子(ほくろ)がセクシーな、長い黒髪の少女…が、そこに書かれている文字を見て息を呑んだ。

 

 

 

ここは…静岡県東部…伊豆半島の海沿いにある…とある女子高の…とある一室。

 

その入口には『アイドル研究部』と書いてある。

 

ただし『部』という漢字が間違っており、一旦、×が付けられたあと、書き直されているのだが…。

 

 

 

その…部室…には10人弱の生徒が集まっていた。

 

既に放課後を告げるチャイムは鳴っている。

 

…ということは、今は部活中らしい。

 

 

 

「どうしたのダイヤさん?」

 

「大変なことになりました!ラブライブの全国大会ですが…優勝チームは、翌日に行われるA-LISE主催のチャリティライブに出演できることが決まったとのことです!」

 

黒髪の少女は丁寧な口調ながら、若干興奮気味に答える。

 

彼女の名前はダイヤというらしい。

 

 

 

「A-LISEの?」

 

「チャリティライブ?」

 

それを聴いた他の部員が、口を揃えて驚きの声を上げた。

 

 

 

「はい。当初は年末に予定されていたのですが…どうやら3月に変更になったようですね」

 

「どうして?」

 

「千歌さん、それは私もわかりません。ただ、併せて会場も変更になっておりますね。この間までは『武道館』となっていたのですが…」

 

 

 

「『アキバドーム』だ!」

 

千歌と呼ばれた…セミショートの少女は、画面を覗き込んで大きな声で叫んだ。

 

 

 

「はい、その通りです」

 

「…っていうことは…どういうこと?」

 

「わからないのですか?客席数が倍以上違うということです!!」

 

「客席数が倍、違う?」

 

「つまり、開催規模が大きくなったということです!」

 

「おぉ!それに私たちが出られるんだね?」

 

「言いましたよね!?ラブライブに優勝したら!です」

 

「そ、そうだね…」

 

ダイヤにグッと睨まれ、千歌は少し小さくなった。

 

 

 

「でも、お姉ちゃん。開催規模が大きくなった…ってどういうこと?」

 

「そこです!これはもしかして、もしかするかもしれません…ですわ!」

 

「なにさ?どういうこと?」

 

「あの伝説のスクールアイドルの出演があるかもしれないということです!!」

 

「お姉ちゃん!」

 

「伝説の…」

 

「スクールアイドル?」

 

 

 

「『セイントスノー?』」

 

 

 

「ブッブー!ですわ。違います!!千歌さん、なぜ彼女たちが伝説のアイドルなのですか?」

 

「じゃ、じゃあ…まさか…μ's!?」

 

「ピンポーン!ですわ」

 

「本当に?」

 

「会場の規模が大きくなったということは、すなわちそれだけの集客力が見込めるということです。急遽、予定を変更したということは、つまり、武道館では収まりきらないと判断したのではないでしょうか?もちろん、A-LISE単体でもアキバドームは一杯にできると思いますが…」

 

 

 

「ナ~ルホドゥ…デス」

 

いかにも『日本人が真似する外国人』みたいなイントネーションで反応したのは、金髪碧眼の少女だ。

 

制服を身に着けていても、彼女がダイナマイトボディの持ち主だとわかる。

 

 

 

「鞠莉さん?」

 

 

 

「μ'sは今、再結成の噂が沸騰している、一番ホットなグループアイドルだからね」

 

鞠莉と呼ばれた…金髪碧眼ダイナマイトボディ…は、どうやら普通に日本語が話せるらしい。

 

澱みなく喋った。

 

 

 

「はい。もしμ'sが出演するようなことがあれば、これはもう、ラブライブの優勝など関係なく、是が非でも観にいかなくてはなりません」

 

「ラブライブが関係ないことはないけどね」

 

長めのポニーテールを結った、ダイナマイトボディと同じくらいグラマラスな少女…が、半分笑いながら言う。

 

2人とも同じくらいの身長だが、彼女の方が細身で、その分だけ背が高く見える。

 

髪の結び目が、高い位置にあることも影響しているかもしれない。

 

 

 

「ダイヤさんとルビィちゃんは、μ'sのメンバーに会ったことがあるんだよね?」

 

「はい、千歌さん。あれは私が小学校6年生で、ルビィが4年生の時でした。祖母と母に秋葉原まで連れていってもらったのですが…」

 

「帰る時に立ち寄ったファストフードのお店に『絵里』さんと『花陽』さんが、いたんだよね!」

 

「はい」

 

「凄い偶然だねぇ」

 

「やっぱり東京は、普通に芸能人がいるズラ…」

 

千歌の隣で、パンを咥えた少女が呟く。

 

「ルビィたち、アイドルショップでμ'sメンバーのブロマイドとかを大量に買い込んで、それだけでも凄く嬉しかったのに、まさかご本人に逢えるとは…って」

 

「そして、大変おこがましくも、サインをお願いしたところ、プライベートでいらしたにも関わらず、優しく対応してくださって…私には神様に見えましたわ」

 

「そこからだよね。お姉ちゃんが『絵里さん推し』になったのは」

 

「ルビィもその時から『花陽さん推し』になったのでしたね」

 

「あとから知ったんだけど、花陽さんも小さい時からアイドルが大好きで…でも、ちょっと人見知りで、声も小さくて、運動が苦手で…自分がスクールアイドルになるなんて…って感じだったみたいなんです。あっ、ルビィと一緒だ!って思ったら、余計、親近感が沸いたというか…」

 

「ステージの様子を観る限りでは、とてもそうは思えないのですけどね…」

 

「お姉ちゃんは、絵里さんの真似をして、生徒会長になったんだよね?」

 

「真似をしたわけではありません!感銘を受けたといってください!」

 

 

 

「μ'sかぁ」

 

「千歌、どうかした?」

とポニーテールが千歌に聴く。

 

「うん、果南ちゃん、私も動画でしか観たことないから…生で観られたら素敵だろうな…って」

 

彼女はどうやら果南というらしい。

 

「仰(おっしゃ)る通りです」

 

ダイヤが大きく頷いた。

 

 

 

「…」

 

 

 

「どうしたの?梨子ちゃん」

 

「えっ?ううん…私、そんなに有名な人たちと同じ高校に通ってたのに、全然知らなくて…もったいないことをしたな…って、今更ながら思ったりして」

 

梨子と呼ばれた…パッと見『ツン』な感じの、ロングヘアーの少女は、恥ずかしげに下を向いた。

 

「それはさぁ、しょうがないよ。だって、さっきダイヤさんも言ってたけど。μ'sが活躍したのって、私たちが…小学校5年生くらいの事でしょ?それから5年以上も経ってるんだし」

 

「うん、千歌ちゃん、そうなんだけどね」

 

「それに前に東京に行った時にさ、音ノ木坂の生徒も言ってたでしょ?『μ'sは部室に何も残していかなかった』って。だから、在校生でも知らない人がいるみたいだし、梨子ちゃんが知らなくても不思議じゃないよ」

 

「私は最初、梨子さんが音ノ木坂から来たと知った時、単純に『羨ましい』と思ってしまいましたわ」

とダイヤ。

 

「千歌ちゃんがよく見ている『START:DASH!!』って、あの制服で歌ってるんだよね?」

 

μ'sを知っている人間であれば『花陽?』と見間違うほどのソックリさんが、梨子に言う。

 

「うん、そうみたい」

 

「いいなぁ…」

 

ソックリさんは、ヨダレを垂らさん勢いで、彼女を見た。

 

「ふふふ…いくら曜ちゃんが制服マニアでも、あれはあげられません」

 

梨子はニッコリと微笑む。

 

曜ちゃん…と呼ばれたソックリさんは、うぅ…と唸って残念がった。

 

 

 

「マルは『凛ちゃんさん』に会いたいズラ」

 

これまで静かにパンを食べていた少女が、徐(おもむろ)に口を開いた。

 

「ずら丸!『凛ちゃんさん』っておかしくない?」

 

この部屋には場違いの…なぜか黒いマントを身に纏った少女…からツッコミが入る。

 

「凛ちゃんさんは『まじえんじぇ~』なんズラ、本当の天使ズラ。週刊誌によると、今も容姿が変わってないらしいズラ。善子ちゃんの『偽堕天使』とは違うズラ」

 

「善子って言うな!」

と黒マント。

 

しかし彼女は意に介すことなく言葉を続ける。

 

「ルビィちゃんからμ'sのことを教えてもらって…花陽さんのことも聴いて…その大親友が凛ちゃんさんだって知って…マルもルビィちゃんとずっとそういう関係でいたいな…って思ってたら、いつのまにか凛ちゃんさんのことが好きになってたズラ」

 

「へぇ、花丸ちゃんが凛さんのファンというのは意外だねぇ。タイプは真逆って感じだけど」

 

この沼津弁を操る少女は花丸というらしい。

 

「果南さん、それは違うズラ。」

 

花丸は、ポニーテールの少女に言った。

 

 

 

「?」

 

 

 

「マルもあんな風に踊れたらいいなって、ずっと憧れたズラ」

 

「はい、凛さんは小柄ですが、全身バネという感じで、元気の塊みたいな人ですものね」

とダイヤ。

 

「うちにはいないタイプだね」

 

「そういえばそうだね。曜ちゃんも、果南ちゃんも運動神経抜群だけど、ちょっとイメージは違うよね」

 

曜の呟きに、千歌が相槌を打つ。

 

「ボーイッシュ…って言うのかな?」

 

 

 

「曜さん、それは駄目ズラ!」

 

 

 

「えっ?」

 

 

 

「凛ちゃんさんにその言葉は禁句ズラ。多分一番傷付く言葉ズラ」

 

 

 

「そ、そうなの?ご、ごめん…」

 

「これを見るズラ」

 

「こ、これは…ウェディングドレス!!か、可愛い…」

 

「これでも、ボーイッシュとか言うズラ?」

 

「よ、ヨーソーロー!!前言撤回するであります!」

と曜は敬礼をしながら花丸に詫びる。

 

「わかればいいズラぁ」

 

花丸はそう言うと、食べかけのパンを口に頬張り、満足そうな顔をした。

 

 

 

「μ'sってね、歌も踊りも素敵なんだけど、衣装も本当に可愛くって…ね?お姉ちゃん」

 

「はい。当時、衣装を担当されていたことりさんは、今は現役の美大生ながら、ブライダル業界注目の人材ですから。当然といえば、当然ですわ」

 

「なんでダイヤさんが偉そうにしてるのかはわからないけど」

と、善子はボソッと囁いた。

 

 

 

「でも…そっか…ラブライブに優勝すれば、会えるんだね?あのμ'sに!」

 

「い、いえ千歌さん、待ってください。これはまだ、私の予想で。公式に発表されたわけでは…」

 

「シャイニー!!ラブライブに優勝してμ'sに会いに行きましょう!!レッツ、ゴーですぅ!!」

 

「だから、鞠莉さん…勝手に決め付けないでください…」

 

 

 

 

 

~つづく~

 





Aqoursメンバーの、書き慣れてない感がハンパないなぁw

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