【ラブライブ μ's物語 Vol.4】オレとつばさと、ときどきμ's ~Winning wings 外伝~ 作:スターダイヤモンド
「それは…」
机の上に出された雑誌を見て、綾乃は血の気が引いた。
…まさか?…
「『J-BEAT』だよ。それで…ここ…」
彼女がページをめくる。
「!」
そこには、2ページに渡り4枚の写真が掲載されていた。
「これ、あなたでしょ?」
綾乃はそれが、先日、表参道で撮影されたものだと、すぐにわかった。
しかし、簡単には認めたくない。
…っていうか、聴いてないし…
「えっ?いや…似てる?別人じゃないかな?」
「似てるもなにも…」
「ははは…ほら、世の中には自分に似てる人が3人いる…っていうし」
「でも…ここに書いてあるよ『B学園中等部2年 / 綾乃さん』って…」
「うわっ!」
「どうしたの?」
バレー部の仲間が近寄ってくる。
「えっ?綾乃?」
「うそっ!綺麗!普段のイメージと全然違う…」
「いつ撮ったの?読モってやつ?」
「あははは…」
しかし、こうなると笑ってごまかせない。
仕方なく、事情を説明する。
ただし「掲載されることは知らなかった」と、そこは強く主張した。
「ちょっと、お母さん!どういうこと!」
家に帰るなり、綾乃が怒鳴る。
母の久美子は、その意味をすぐに悟った。
「見ちゃった?ごめんね、私も知らなかったのよ…」
テーブルの上には、昼間学校で見た『J-BEAT』が置かれていた。
「そんな…」
「あまりにクオリティが高かったから、急遽、挿し込んじゃったんだって」
「プライバシーの侵害だよ!」
「まぁまぁ…」
「載せるなんて言ってなかったじゃん!」
「わかってるわよ…。でも『綺麗』ってことで掲載されたんだし…怒ることじゃないでしょ?」
「うう…」
…確かに『綺麗』と言われて…照れ臭さはあるが、怒る理由にはならない…
「人生の『ほんの一瞬の記念撮影』だと思えば、いいじゃない」
納得はしてないが、載ってしまったものは仕方がない。
この日は、それ以上どうしようもなかった…。
しかし、思った以上に反響は大きく…
翌日以降、休み時間に綾乃の姿を見ようと、学年を問わず教室に『見物客』が訪れるようになる。
なかには、サインやツーショットの撮影をねだる者もいた。
もちろん、綾乃は
「すみません。モデルでもなんでもないので、そういうのは、ちょっと…」
と、丁重に断る。
そんな、やりとりを見て
「後輩が入って来て、一段と競争が激しくなるっていうのに…随分と余裕ね…」
と綾乃のライバル…山下弘美はそう皮肉った。
「そんなつもりは、これっぽっちもないわよ。これは『アクシデント』なんだから…」
「いいんじゃない?サインくらい。この先、代表にでもなれば、絶対に書くんだから。今からその練習をしておけば?」
「『ヒロリ』…他人事だと思って…」
ヒロリとは弘美のあだ名。
2個上の先輩が付けた。
身長が低く、幼く見える彼女を…誰かが『ロリータ』と言い始め…それが名前と合わさって、いつの間にかそうなった。
本人からすれば、余り、嬉しくないだろうが
「私も小学生の時は『チョモ』って呼ばれてたんだ…」
と打ち明けてから、綾乃と弘美の距離は縮まり、こんな『軽口』が言えるほどの仲になっていた。
それにしても…
この騒動は何日か続いた。
たった4枚の写真が雑誌に載っただけで、これほどまで騒ぎになるとは…想像もしていなかった…。
~つづく~