【ラブライブ μ's物語 Vol.4】オレとつばさと、ときどきμ's ~Winning wings 外伝~   作:スターダイヤモンド

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隠しきれない想い

 

 

 

 

 

「それで、どうかしら?μ'sは参加できそうかしら?」

 

「あの話は本当だったのですか?」

 

「あら、単なる社交辞令だと思って?」

 

「いえ、そうは思ってないでけすけど…」

 

 

 

ここはUTX学院のカフェスペース。

 

OGである綺羅ツバサは、いわゆる『顔パス』で出入りできるらしい。

 

なんだかんだ言って「ここが一番落ち着くから」…と穂乃果を秋葉原まで呼び出した。

 

確かにこの中であれば、一般人に囲まれワーキャー騒がれることはない。

 

 

 

「チャリティライブの概要が決まったわ。チケット代、グッズの売上げ含む全額を、交通遺児の為の団体に寄付。日付は3月初め」

 

「えっ?年末って言ってませんでしたっけ?」

 

「最初はそのつもりだったわ。でも、それじゃあ、準備期間が短すぎるでしょ?」

 

 

「準備期間?…」

 

 

 

…それはつまり、私たちの…ってこと?…

 

 

 

穂乃果はツバサの顔を見た。

 

「もちろん!」という表情だ。

 

 

 

「そして場所は…アキバドームよ」

 

 

 

「!!」

 

 

 

「そう。あなたたちが立つことができなかった、夢舞台」

 

「そ、そんな大きいところで…」

 

「当初は武道館を考えていたんだけど…あなたたちを迎えるのに、そこじゃ『役不足』だわ」

 

「いやいや…」

 

「メインは私たちが務めるけど、他に何組か出演してもらうつもり。実は前日にラブライブの決勝大会があるから、その優勝チームにも出てもらうとも思ってるの。そしてスペシャルゲストが…『μ's』」

 

 

 

…うわぁ!完全に出ることを前提に話が進んでるよ…

 

 

 

ごくり…

 

穂乃果の喉が鳴った。

 

 

 

「全体としては3時間くらいの予定でいるわ。時間配分とか、細かいところはこれからだけど、μ'sにどれくらいの時間を取るかは…あなた達次第ってとこかしら」

 

「本当に…本当に…私たち?」

 

「うふふふ…ノーギャラだけど」

 

「あはは…お金は別にいいんですけど…私たちでは荷が重いというか…」

 

「あら、μ's再結成の支持率は70%を超えているわ。なにか問題ある?」

 

「う~ん…」

 

 

 

「ふふふ…ごめんなさい。本当言うと、私たちがどうしてもあなたたちと一緒にステージに立ちたいの」

 

 

 

「えっ?」

 

 

 

「『そこ』を封鎖して行ったμ'sのラストライブ。あれはあれで楽しかったけど、やっぱり『A-LISEとして』共演できなかったのが心残りで…公私混同かしら?」

 

「あ、いえ…いまだにそんな風に言ってもらえるなんて、光栄です!」

 

穂乃果は頭を下げた。

 

 

 

「今から2週間…」

 

 

 

「えっ?」

 

 

 

「2週間以内に参加の可否の連絡してほしい」

 

「2週間ですか?」

 

「今、結論をもらっても構わないけど…『出ます!』って」

 

「ま、まずはみんなに訊いてみます…」

 

「でしょ?」

 

「は、はい。私だけでは決められないですから…」

 

「最悪、全員でなくても…」

 

「えっ?あ、はい…」

 

「いい返事を、お待ちしているわ」

 

「わ、わかりました!」

 

穂乃果はそう言うと、出されたジュースで喉を潤した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…っていうことなんだけど…」

と穂乃果。

 

彼女の部屋には、いつものメンバーが集まっている。

 

ただし、仕事の都合で希、にこ、花陽は来ていない。

 

 

 

「完全に外堀を埋められた…って感じね」

 

そう言って苦笑いしたのは絵里だ。

 

「そうなんだよ。ツバサさんは、もう私たちが出る…って思ってるみたいで…」

 

「あとは私たちの気持ちひとつ…ということですか…」

 

「うん!」

 

 

 

「…」

 

 

 

「黙っていても何も決まらないわ。まずはみんなの気持ちを訊きましょ?できるできないは別として…真姫はどう?やりたい?やりたくない?」

 

年長者らしく絵里が仕切る。

 

「どちらとも言えないわ…新しく曲を作る必要がないなら、そんなに面倒ではないと思うけれど…」

 

「でも、衣装は新調したいな!」

 

「ことり!?」

 

「じゃあ、ことりは…賛成ってことかしら?」

 

「うん!ことりは出たい!ことりはね…叶うはずはない…って思いながらも、ずっとみんなをイメージしながら衣装のデザインを描き貯めてきたから…。もし、お披露目できるなら、こんなに嬉しいことはないもん」

 

「なるほど…穂乃果は?」

 

「う~ん…色々考えたんだけど…断る理由が見当たらないんだよねぇ…」

 

「私も穂乃果と同じ意見です」

 

「海未ちゃん…」

 

「μ'sを解散した時と今とでは、状況が違います。これを機に活動を続けよう…などとは思っていませんが、私たちは常に応援してくれる方々の期待に応えたいと歌ってきました。ですから…」

 

「だよねぇ?だよねぇ?自分達だけだったらさぁ、やりたいな…なんて思っても、なかなか、決心がつかなかったかもしれないけど…A-RISEもここまでしてくれてるし…乗らない手はないと思うんだよね」

 

「はい。それに…ここでやらないと一生後悔するような気がしてならないのです…。縁起でもありませんが、あと何年、このメンバーで集まれるのかなと思うと…」

 

「本当に縁起でもない」

 

真姫は、ぶっきらぼうにそう言った。

 

「…ごめんなさい…」

 

謝る海未。

 

「だけど…わからなくもないわ…。『海未が事故に遭った』…って聴いた時、そういうことを考えなくもなかったから…」

 

「そうねぇ…卒業した時は、精一杯頑張ったつもりだし、やり残したとも思ってなかったけど…でも、私も海未の事故を知った時は、もうあの頃には二度と戻れないかも…とは考えたわ」

 

「つまり、真姫ちゃんも、絵里ちゃんも反対ではないってことだね」

 

「どちらかと言えば…だけど…」

 

「私も…」

 

「もう、素直じゃないにゃ!やりたいならやりたいって言えばいいにゃ!」

 

「わ、わかってるわよ!凛に言われなくても。でも、そう簡単に言えるわけないでしょ!それなりに気持ちの整理が必要なの」

 

「本当に、面倒くさい人」

 

「ちょっと、それは私のつもり?」

 

凛に真似されて、真姫は顔を紅くした。

 

「私ね…思ったんだ…『応援してくれる人たちの期待に応えたい!』っていうのが、μ'sの原点だったでしょ?だけど、よく考えたら…解散した時って『一方的に辞めます』って感じで、『応援してくれてありがとう』じゃなかった気がするんだよね」

 

「穂乃果…」

 

海未が彼女の顔を見る。

 

「えへへ…高野さんが、教えてくれたでしょ?『解散してからμ'sを知った人もいる』って。もう、5年以上も経ってるのにさ、未だにμ'sを愛してくれてる人がいる…。そういう人たちも含めて『もう一回感謝の気持ちを伝えたい』…私はそう思う。ねっ、海未ちゃん?」

 

「は、はい…いえ…あの…その…はい。穂乃果の言う通りです。高野さん云々は別としましても…私もそう思います。みんな心の奥底では、また、いつかできたらいいな…と思っていたはずです。ですが、それを口にはしませんでしたし、してはいけないと思ってました。ですが…色々なことがあった中で、今、このタイミングでこういうお話を頂いたということは、やはり何かの縁だと思いますし…」

 

「はぁ…ホントA-RISEもお節介だわ…」

 

「だから、真姫ちゃんは回りくどいにゃ!やりたいならやりたいって言えばいいのに…」

 

「うるさいわね!そういう凛はどうなのよ!?」

 

「凛はやるに決まってるにゃ!ダンスなら昔より上手に踊れるよ!」

 

「あなたは現役だものね…」

 

「絵里ちゃんは?」

と問い掛けたのは穂乃果。

 

「今、この状況で、私が水を差すようなことは言えないわ」

 

「ズルい言い方…」

 

「真姫…」

 

 

 

「μ'sはひとり欠けてもμ'sじゃないんだから。ちゃんと意思表示はしなさいよ!」

 

 

 

「ハラショー…」

 

絵里は目を丸くした。

 

 

 

「な、なによ…」

 

 

 

「真姫から言われるとは思わなかったわ…」

 

 

 

「ヴェ~…なにそれ?意味わかんない…」

 

 

 

「いやぁ、わかるにゃ~!!」

 

「凛は黙ってて!」

 

「ごめんなさい、真姫…茶化しちゃって。正直、膝のこともあるから、不安がないわけじゃないし、足を引っ張るかもしれないけど…それでもいいと言ってくれるなら…」

 

「うん!うん!これで、ここにいるメンバーはみんな、OKだね!」

 

「あとは…希とにこと…花陽ですか…」

 

「希ちゃんは問題ないんじゃないかにゃ?『ウチのカードがそう出てたんや!スピリチュアルやね!』で、終わりにゃ」

 

「ぷっ…」

 

凛の真似があまりにも上手く、一同吹き出しそうになる。

 

「ま、まぁ…そうね…」

 

絵里が笑いを堪えながら、相槌を打った。

 

「にこちゃんもA-RISEと一緒って言えば、ふたつ返事で出るっていうよね?」

と穂乃果。

 

「そうでもないんじゃない?」

 

「えっ?真姫ちゃん!なんで?」

 

「にこちゃんってアイドルに対して、妙なこだわりを持ってるでしょ?私たちとは、ちょっと考え方が違うもの」

 

「ありえるにゃ!『いい?一度引退したアイドルは、そう易々と復帰なんてしないの!だから伝説になるんじゃない?私はいつまでも伝説でいたいの!』とか言いそうにゃ」

 

「あはっ、言いそうだね?」

 

ことりが手を叩いて笑う。

 

「そうね…にこならありえるかも知れないわね」

 

「そうしたら、花陽ちゃんの出番だね!」

 

「穂乃果?」

 

「だって、アイドルのことでにこちゃんを説得できるメンバーっていったら、花陽ちゃんしかいないでしょ?」

 

「確かに、それはそうですが…花陽自身が参加できるかどうか…って問題があります」

 

「でも、海未ちゃん。高野さん、言ってたじゃん。やろうって意思があれば、日程なんてどうとでもなる…って」

 

「それはそうですが…」

 

「大丈夫!あと半年もあるんだし、花陽ちゃんなら、絶対OKしてくれるよ!」

 

「毎回毎回、あなたのその根拠のない自信はどこからくるのでしょうか…」

 

 

 

…ですが、何故か穂乃果が言うと実現できそうで、不思議です…

 

 

 

 

 

 

~つづく~

 







すみません。
次話より少しの間、お休みします…。




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