【ラブライブ μ's物語 Vol.4】オレとつばさと、ときどきμ's ~Winning wings 外伝~ 作:スターダイヤモンド
ダイジェストでお送りしております。
騒動発生から、約一週間。
綾乃は突然、校長室に呼ばれた。
中に入ると、そこには担任とバレーボール部のコーチ…そして校長。
「これは…藤綾乃くんだね?」
校長が綾乃のに見せたのは、例の雑誌…『J-BEAT』。
付箋で目印を付けておいたページを開く。
「…はい…」
それを見て、綾乃は首を縦に振った。
これが理由で呼ばれたのではないか…という、予想はしていた。
ただ、こんな重苦しい空気の中に身を置くことになるとは、想像していなかった。
「そうか…残念だ…」
綾乃の返事を聴くと、コーチは静かに呟き、そのまま部屋を出ていった。
「藤綾乃くん。…明日は…自宅謹慎とする…」
校長の低く、冷たい言葉が部屋に響く。
「えっ?…」
「詳しくは担任の岡野先生から、聴いてください…」
「えっ?」
「藤…今回の君の行動は…校則違反と見なされる」
「校則…違反?…」
「我が校は、無許可のバイト活動を禁止している」
「バイト活動!?」
「同時に芸能活動も禁止している」
「芸能活動!?」
「明日、君の処遇が審議される」
「処遇?」
綾乃のは余りに突然の出来事に、聴いた言葉をおうむ返しすることしかできない。
「最悪、退学もありえる…。以上!」
「…」
事態が呑み込めず、校長と担任の顔を、交互に数回見た。
だが、ふたりとも押し黙ったまま何も言わない。
「ちょっと待ってください!誤解です!私はバイトも芸能活動もしてません!!」
綾乃は耐え切れなくなり、ついに反論をする。
「藤のお母さんには、これから連絡するが…話は明日訊く」
「ウソ…でしょ?…」
「残念ながら、ウソではない。…とりあえず、今日は家に帰りなさい」
「家に…帰る…?」
綾乃は、そう呟いた。
そこからの記憶がない…。
気が付いたら家にいた…。
カギは持っていたが、中には入らず、玄関のドアに寄りかかり、母が戻ってくるのを待った。
そうしている間に、少しだけ気持ちが落ち着いてきた。
綾乃は父親を亡くしてから、人前で涙を見せたことがない。
バレーボールでチームが負けたときも…
陰湿な嫌がらせを受けても…
卒業式の日も…
「泣くのは、お風呂の中」と決めていた。
だから…家に入らず、泣くのをグッと堪えていた。
外にいれば、泣くことはない。
そう思ったからだ
でも、悲しいのか、悔しいのか…あるいはバカバカしいのか…自分の感情が整理できていないのも事実だ。
そして、泣いても何も解決しない…という冷静さが、頭のどこかに…数%ほどあった。
この数%がなければ、綾乃の心は崩壊していたかも知れない。
「話は聴いたわ…」
どれくらい経ったであろうか…母の久美子が職場から戻ってきた。
「お母さん!」
「綾ちゃん…」
母は娘をギュっと抱き締めると
「…大丈夫、明日ちゃんと説明するから…。話せばわかるわよ…」
そう言って、綾乃の額に、自分の額をくっつけた。
「明日は助っ人も呼んだし…」
「助っ人?」
久美子は力強く頷いた。
「綾ちゃんは、何も心配しなくていいから」
「…うん…わかった…」
綾乃は極力、平常心を保とうと努力した。
いつものよう食事を摂り、入浴して、ストレッチを行い、就寝した。
だがさすがに、気持ちよく眠ることはできなかった。
何度も何度も目を覚まし…それを繰り返しているうちに、朝を迎えた…。
~つづく~