【ラブライブ μ's物語 Vol.4】オレとつばさと、ときどきμ's ~Winning wings 外伝~   作:スターダイヤモンド

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第四部(最終章)
Happy new year!!


 

 

 

 

 

年が明けて1月1日。。

 

高野が目覚めてTVを点けると『元天才子役の島崎某とかいう女優が、覚醒剤で捕まった』というニュースが流れていた。

 

 

 

…正月早々、ご苦労なこった…

 

…でも、こういうヤツが数年後シレッと復帰するのが、芸能界ってとこなんだよなぁ…

 

 

 

ニュースは臨時だったようで、スタジオのアナウンサーが

「それでは、引き続き駅伝をお楽しみください」

と言うと、画面が切り替わった。

 

 

 

すでに1年のうち『1番早く日本一が決まる大会』…『ニューイーヤー駅伝』の走者はすでに2区を走っていた。

 

気持ちいいほどの快晴。

 

だが、風は強そうだ。

 

寒さが苦手な高野は、それを観るだけで身震いがした。

 

 

 

昨晩、高野は何年かぶりに家で紅白を観て過ごした。

 

 

 

…前回は確か…シルフィードが出るのか、出ないのか…と騒いでいた時だったか…

 

 

 

星野はるかも水野めぐみも、あれから毎年出演しており、すっかり常連という感じになった。

 

もちろん…A--LISEも…である。

 

だが、音楽業界に疎い高野。

 

8割は知らない歌手だったことに、少なからずショックを受けた。

 

 

 

…さすがにこれは…まずいかな…

 

 

 

21歳かそこらでオッサンになるのもどうか…そんなことが頭をよぎったようだ。

 

 

 

日本のサッカー界では、年が明けて初めてボールに触れることを『初蹴り』と呼び、その多くは、チーム単位で集まり、軽く練習を行った後、餅つきをしたり、鍋を焚いたりして親睦を深め『今年1年頑張ろう!』的なイベントのことをいう。

 

今日の午後行われる天皇杯の決勝に進んだ2チーム…はともかく、それ以外は帰省して地元で過ごすJリーガーが結構いる。

 

そういった選手は、自分が出た小・中・高の部活、あるいはクラブチームにOBとして初蹴りに参加したりする。

 

ファンサービスの一環でもあるが、子供たちからすると、地元のスーパースターと触れ合える絶好の機会。

 

大きな『お年玉』である。

 

 

 

高野も、昨年の正月までは『出身小学校の初蹴り』に参加していたが、今年は自粛した。

 

諸々事情はあるにせよ『退団した選手が顔を出す』というのは、あまり縁起がいい話ではないだろう。

 

そう思ったからだ。

 

 

 

その替わりと言ってはなんだが、彼はジャージに着替えるとボールを抱えて、近くの公園へと出掛けた。

 

もちろん、ベンチコートを羽織い、ネックウォーマー、手袋と防寒対策は万全である。

 

 

 

負傷してからトレーニングを続けてきた高野であったが、実はまだ一度もボールを使った練習はしていなかった。

 

特に拘(こだわ)りがあったわけではないが『それをするのは年が明けてから』と決めていた。

 

つまり、まさに今日が退院してからの『初蹴り』ということになる。

 

 

 

今、駅伝が行われているのは栃木だが、そことは違い、風は強くない。

 

室内の窓際にいれば、うたた寝をしてしまうかのような穏やかな天気。

 

高野はベンチコートを脱ぎ、ネックウォーマーを外した。

 

 

 

ジャンプしなら、右、左、右、左…と交互に足の裏でボールに触れていく。

 

幼い頃から行ってきた、自分の身体にボールの大きさと距離感を馴染ませる儀式。

 

ルーティーンと言ってもいい。

 

当然、高野くらいのキャリアになれば、そんなことをやる必要はないのだが、逆にこれをやらずには何も始められない。

 

それほど、彼の中に染み付いたものとなっていた。

 

 

 

ひとしきりそれをやったあと、リフティングを始めた。

 

意外に知られていないことだが、サッカー選手だからといって、必ずしもそれが上手いとは限らない。

 

『リフティングがへ…』と検索しただけで『リフティングが下手なサッカー選手』と出てくるくらいだ。

 

更に言えば、日本の小学生と欧州の同年代の子供とでリフティングの回数を較べた場合、圧倒的に前者の方が長い時間続けられる…という話もある。

 

つまり、それの技術とプレーヤーの実力は、一致しないということ。

 

…とはいえ、下手であるより上手いに越したことはない。

 

特に高野のように…フィジカルやパワーでプレーするのでなく、スピードやテクニックを重視するものにとっては、必要不可欠な技術。

 

頭、首の後ろ、肩、背中、腰、胸、太もも、膝、足首、踵、つま先…1ヶ所ずつ感触を確かめながらボールをぐるぐると回していく。

 

本人がその気になれば、何時間でもできるだろう。

 

 

 

「さすが、元日本代表!!」

 

 

 

「!?」

 

 

 

一瞬、声の方向に目をやった高野だが

「ば~か!お前と違って、オレはU-23代表だ…っつうの!…ほら、いくぞ!」

と言うと、ポ~ンと小さくボールを蹴り出した。

 

 

 

「わっ、急に!?」

と受け取った相手は胸でトラップすると、そのまま太ももで数回ボールは跳ねさせたが、長くは続かず、地面に落ちた。

 

 

 

「これが本当の…落とし球…なんて」

 

 

 

「なでしこのスーパーエースが言う台詞か?」

 

 

 

「我ながら、恥ずかしいとは思ってる…」

 

夢野つばさは頬を紅くした。

 

 

 

「あけましておめでとう」

 

 

「あぁ、おめでとう」

 

 

 

2人はベンチに腰をおろした。

 

 

 

「多分、ここじゃないかなぁ…と思って来たら、正解だった」

 

「まぁ、オレにとっちゃ、聖地みたいなもんだからな…この公園は」

 

「順調に回復してるみたいだね」

 

「どうかな…リフティング(これだけ)で、試合ができるんだったら…って感じだけど」

 

「全然ブランクを感じさせないね。錆びてない!惚れ惚れしちゃう」

 

「何千回、何万回ってやってきたことだから…力を使うわけじゃないし…」

 

「そうだね」

 

「…で、そっちは?」

 

「おかげさまで…7日に会見するわ」

 

「いよいよ、ブンデスリーガか」

 

「まだ、実感沸かないけどね」

 

「寒いだろ、向こうは?」

 

「うん。寒い!たぶんキミが来たら、凍死しちゃうよ」

 

「やだやだ…やっぱオレはスペインに行くわ」

 

「ふふふふ…」

 

「あ、お前に報告しなきゃならないことが…2点ほど…」

 

「なに?」

 

「オレ、無職になった」

 

「知ってるわよ、それくらい。思い切ったことしたなぁ…って。でも、キミらしいとも思ったよ」

 

「そう?」

 

「それはだって…『夢野つばさ』じゃなくて『海外でのプレー』を選んだ人だもん。それくらいの決意をみせてくれなきゃ『割りが合わない』わ」

 

「あははは…自分で言うかな?そういうこと」

 

「やっと私もそう思えるようになった…ってこと」

 

「そっか…」

 

「それで?」

 

 

 

「?」

 

 

 

「もうひとつ」

 

 

 

「あぁ…まぁ…」

 

「当ててみようか?」

 

「えっ?」

 

「海未さんとお付き合いを始めた…でしょ」

 

 

 

ゲホッ!ゲホッ!

 

咳き込む高野。

 

 

 

「なんでわかるんだよ」

 

「わかるわよ、それくらい。長い付き合いだもの」

 

「そういうもの?まぁ、いいや…えっと、その…なんだ…この間のクリスマスの時に、お互いの気持ちがそうだってことになって…まだ、何がどうって話じゃないんだけど」

 

「普通、そういう話を元カノにする?」

 

「一応、許可はもらっておいたほうがいいかと」

 

「…ばか…なんで私の許可が必要なのよ」

 

「そうなんだけどさ…」

 

「まぁ、キミはそういう人だけどね。変に真面目っていうか、正直っていうか…」

 

「なんか、お前が知らないうちに『そうなってました』…っていうのも気分悪いだろうと思って…」

 

「二股掛けられてたなら腹も立つけど、一応、別れたあとのことだし…。これが『はるか』とか『めぐみ』とかだったら、どうなってたかわからないけどね」

 

「お、おう…」

 

「実は、キミのこと海未さんに託したのは…私なんだ。キミのことを守ってくれるのは、この人しかいないって」

 

「ちょこっと、そんなことそんな話は聴いたけど…なんで?」

 

「女の…勘…ってやつ?」

 

「へぇ…」

 

「…っていうか、やっぱり、そういないと思うわ。あれだけ礼儀正しくて、純粋で、真っ直ぐで…。だからそうなったのなら、大事にしなさいよ」

 

「あ、あぁ…」

 

「私と違って、冗談、間に受けるタイプだから」

 

「そうだね」

 

「特に下ネタは…キミはすぐ『おっぱいが』…とか言い出すし」

 

「お、おう…」

 

 

 

…その顔は、もう言ってるな…

 

 

 

さすが、つばさである。

 

よくわかっている。

 

 

 

「じゃあ、そろそろ…」

 

「ん?」

 

「これから初蹴りに参加してくるの」

 

「初蹴り?どこの?」

 

「ほら『大和シルフィード』って、下部組織もあるから」

 

「あぁ、そう言えばそうだな」

 

「今、下は幼稚園児から、上は高校生まで…200人近くいるんだよ」

 

「なんだかんだ言って、一番しっかりしたクラブに成長したよな」

 

「逆に言えば、女子サッカーの人口は増えたけど、受け皿が少ないっていうことかな。地元の子だけじゃなくて、小田原とかから来てる子もいるし…」

 

「小田原?遠いなぁ…付き添う親も大変だ」

 

「うん」

 

「でも、その中から、お前みたいなのでいっぱいでてくれば」

 

「そうね」

 

「チョモの責任は重大だ」

 

「精一杯頑張るわ」

 

「あぁ…。初蹴り、みさきちゃんも来るの?」

 

「たぶん。ちょっと、ここのところバタバタしてて、確認はとってないけど…」

 

「そっか」

 

「じゃあ、行ってくる」

 

「行ってらっしゃい」

 

つばさは高野に手を振って歩き始めた。

 

 

 

…が…

 

 

 

直ぐに戻ってきた。

 

 

 

「どうした?忘れ物か?」

 

「うん、忘れ物…」

 

高野はベンチから立ち上がって、キョロキョロと周り見た。

 

「何も落ちてないけど」

 

 

 

 

 

「Happy birthday dear RISATO!」

 

チュッ!

 

 

 

 

 

「あっ…」

 

 

 

「明後日、誕生日でしょ?だから…私から最後のプレゼント…」

 

 

 

「…どうせなら…その続きをプレゼントして欲しいんだけど…」

 

 

 

「それは、海未さんに、お願い…し・な・さ・い!」

 

つばさは左手で、高野の額にデコピンを放った。

 

 

 

「…チョモ…」

 

「?」

 

「世界を驚かせてこいよ!」

 

「うん!…梨里も…頑張ってね!」

 

 

 

2人はお互いにハイタッチを交わすと、つばさは公園をあとにした。

 

 

 

 

 

~つづく~

 







明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

あと少しだけ続きます。


余談①
インフルエンザになってしまいました。
予防接種も射ってたのに…。

余談②
Aqours、ラブライブ優勝したんですね…。
優勝するか、しないかで、今後のストーリーも2パターン用意してたんですけどね…。
因みに、私は優勝しないと思ってました。



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