【ラブライブ μ's物語 Vol.4】オレとつばさと、ときどきμ's ~Winning wings 外伝~   作:スターダイヤモンド

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聖地に雪の戦士

 

 

 

 

 

「改めまして、あけましておめでとうございます」

 

彼女が『改めてまして』と言ったのは、LINEで挨拶済みであるからだ。

 

「おめでとう。今年もよろしく…いや『…も…』はおかしいか。『これからよろしく』かな?」

 

「あっ、はい…こちらこそよろしくお願いいたします」

 

海未は、丁寧にお辞儀をした。

 

「そして、お誕生日おめでとうございます」

と言葉を続けた。

 

「あぁ、ありがとう。無事、21歳の誕生日を迎えることができたよ」

 

今年初めて顔を合わせた海未に、高野は照れくさそうに返事した。

 

 

 

「それにしても…」

 

「はい、なんでしょう?」

 

 

 

「綺麗だ…」

 

 

 

「!」

 

 

 

「その着物…」

と高野。

 

 

 

「振袖のことですか!!」

 

 

 

お約束のギャグ…。

 

 

 

「うそうそ、晴れ着の海未さん、めちゃくちゃ綺麗だって。女優さんみたいだ」

 

 

 

紺地に薄紅の花が咲き乱れる柄の着物で、帯は鮮やかな赤。

 

特技が日舞、趣味が書道や筝(そう)と言うだけあって、和服を着慣れている感がある。

 

 

 

「そう言われると…それはそれで恥ずかしいのですが…」

 

彼女は顔を紅潮させた。

 

 

 

「オレも着物!…って思ったんだけどさ。持ってなかった」

 

「高野さんのスーツ姿、とても新鮮です」

 

「1年に1回、着るか着ないか…だからな。変?」

 

「いいえ!とてもお似合いです」

 

「ホント?良かった」

 

 

 

…まぁ、そりゃあそうだな…

 

…チョモの見立てで作ったスーツだからねぇ…

 

…海未さんには言えないけど…

 

 

 

1月3日。

 

晴天。

 

高野は幼い頃から「初詣」と言えば『八方除の相模國一ノ宮(はっぽうよけのさがみのくにのいちのみや)』である『寒川神社』に参拝することが多かった。

 

今年も『何事もなければ』そこに行くつもりであったが、今日訪れた場所は違う。

 

 

 

「ここが『神田明神』?初めて来たよ…」

と高野。

 

そちらにお伺いいたします…と海未は言ったが

「晴れ着で、神奈川の田舎まで出てくるのは大変だから」

と断り、彼女の居住区に合わせ、彼が出向いたのである。

 

 

 

初詣の参拝客数ランキングは1位が明治神宮、2位が成田山新勝寺、3位が川崎大師だという。

 

それに較べれば、神田明神は10分の1くらいの人出らしいが、混雑していることには変わりない。

 

なにはともあれ、2人はまず、お参りを済ませることとする。

 

 

 

何百人と並んだ参拝客は、数回に分けられ少しずつ前に進み、30分ほどかかってようやく賽銭箱の前まで辿り着いた。

 

二礼二拍手一礼して祈願を終えると、押し流されるようにして本殿の脇に逸れた。

 

 

 

「せっかく来たんだから、ぐるっと一周歩いてみよう」

との高野の発案で、2人は境内の奥の方を散策し始めた。

 

高野は一箇所、一箇所、もの珍しそうに歩みを止めながら、建物や石碑を眺めていく。

 

「あははは…説明書きを見ても何がどうなんだか、さっぱりわからないんだけどね…オレ、歴史とか苦手だし」

 

「正直言うと、私もあまり奥まではあまり来たことがないので、かなり新鮮な感じです」

 

「そうなんだ…おっ!『力石(りきいし)』だって」

 

「おそらく『力石(ちからいし)』かと…」

 

「な~んだ。『力石徹』の墓かと思っちゃったよ」

 

「どなたですか?」

 

「知らない?『矢吹ジョーのライバル』で…いや、ごめん、気にしないで」

 

 

 

「?」

 

 

 

高野は歴史には詳しくないようだが、誰の影響なのか、意外に漫画やアニメに造詣が深いようだ。

 

 

 

 

「海未さん。オレ、さっきからちょっと気になってることがあるんだけど」

 

「はい、なんでしょう?」

 

「ここってさ、やたらイラストが描いてある絵馬が多くない?」

 

高野は、自分が普段行く寒川神社にはあまりない光景に、違和感を覚えた。

 

「そうですね…。実はここは希が昔『巫女』のバイトをしていた所なのです」

 

「希?この間会った、希さんのこと?」

 

「はい」

 

「へぇ…」

 

「それでいつしか、ここがμ'sファンにとって、名所のようになりまして…」

 

「そうなんだ…あ、あれ?…なんて言ったっけ?…聖地巡礼?…」

 

「はい、そう言うようですね。それがいつしか、ラブライブ出場を目指すチームとか、応援する人たちとかが、いわゆる願掛けに訪れるようになった…とのことみたいで…」

 

「なるほど。確かに良く見ると『ラブライブ』って文字が多いね…そんでもって、みんな異様に絵が上手い」

 

 

 

…絵馬だけに…

 

…絵がウマい…

 

 

 

高野は海未が拾ってくれないので、自分の心の中で呟いた。

 

 

 

「私たちも、学校のみんなに『ラブライブ頑張れ!』という絵馬を沢山奉納して頂いて、改めて期待の高さを感じたといますか、勇気をもらったと言いますか…その時のことは今でもはっきり覚えています」

 

「想い出の場所?」

 

「えぇ…。…ですが…どちらかというと、東側の神楽殿の前を私たちは練習場所にしていたので、そちらの方が思い入れはあります」

 

「練習場所?あれ?学校の屋上…って言ってなかったっけ?」

 

「はい。主に行っていたのはその通りです。ですが、こちらでは体力トレーニングの為に『階段登り』を行ったりしておりまして」

 

「階段上り?階段なんてあったっけ?」

 

「ここからグルッと回って、参門の方に戻るのですが…入ってすぐ右手側に神楽殿がございまして、その前が私たちの練習場所でした」

 

「あ、じゃあ、ここを周っていけばいいんだ」

 

「はい」

 

2人は本殿の東側にある『銭形平次の碑』などを見ながら、歩いていった。

 

 

 

「おお!ここか!うわぁ、これ結構きつそうだな」

 

高野は、海未が「想い出の地』と語った階段の上に立ち、下を覗いた。

 

「『男坂』と言って、68段あるそうです。昔はここから海が見えたようですよ」

 

「海未さん、ここを登ってたの?」

 

「駆け登ってました」

 

「マジか!」

 

「はい!高野さん、私と勝負してみます?」

 

「冗談でしょ?」

 

「いえ。冗談ではございません。松の内が明けたら、ここで走り込みをするつもりでおりますので」

 

「走りこみ?」

 

「チャリティライブに向けての体力作りです。しばらくブランクがありますし、今回は曲数も増えるので…」

 

「偉い!!さすが海未さん。意識がプロだね、プロ!」

 

「高野さんのトレーニングに較べれば、たいしたことではありません」

 

「いやいや…。それって海未さんだけ?」

 

「個々、忙しいので、無理強いはできません。それに今回のステージが如何に大事で、如何に大変かは各々わかっていると思いますので、それなり調整はしてくると思います」

 

「そっか…」

 

「一応、この走り込みには、ことりも穂乃果も誘ってはいるのですが…」

 

「えっ?ことりちゃんも、ここ、登ってたの?あんな華奢な身体で?」

 

 

 

「当たり前です!」

 

海未は少しムスッとした。

 

ことりとはバストサイズこそ違え(…いや、この差がとてつもなく大きいのだが…)身長、ウエスト、ヒップは変わらないのだ。

 

体重だって、500gと変わらない。

 

それなのに、ことりが『華奢』と言われたことに、納得いかないようだ。

 

 

 

「イメージ沸かない…」

 

 

 

「ああ見えて、芯は強いのですよ。練習で弱音を吐いたところは見たことありませんから」

 

間違ったことは言っていないが、少しトゲがある口調。

 

 

 

「へぇ~…」

 

しかし、高野は気付いていない様子だ。

 

 

 

「大雪でライブ会場に向かうのが困難だったときも『絶対にあきらめちゃいけない』と私たちに発破をかけたのは、むしろ、ことりでしたし」

 

「なるほど…」

 

「そういう意味では、穂乃果の方が心配です。お尻に火が点かないと動かないタイプなので…」

 

「大丈夫なんじゃない?海未さんの親友でしょ?やるときはやるよ」

 

「そうなのですが…」

 

 

 

 

 

「あの…人違いでしたら、申し訳ございません」

 

 

 

 

「えっ!?」

 

 

 

高野とそんな会話をしている時に『一組の少女』が海未に近づいてきた。

 

ひとりは長めの髪をポニーテールにしており、もうひとりはツインテールである。

 

 

 

「μ'sの園田海未さんではないでしょうか」

 

「は、はい…」

 

「わぁ、やっぱり!」

 

「お静かになさい!このようなところで、大きな声を出したら、周りの人たちに気付かれてしまいます」

 

「あっ…お姉さま…ごめんなさい…」

 

「すみません。実は…私たち北海道でスクールアイドルをしておりまして」

 

 

 

「!!」

 

 

 

「聖地と呼ばれるこのような場所で、まさかご本人にお会いできるとは思っておりませんで…」

 

「握手だけでもしていただけないでしょうか」

 

「えっ、えぇ…私でよろしければ…」

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

「北海道から、わざわざ?ひょっとしてラブライブ出場チームなのですか?」

 

「いいえ…昨年は出場できたのですが、今年は予選で敗退してしまいました。なんとしても優勝して、皆さんと同じステージに立ちたかったのですが…」

 

「…それは残念でしたね…」

 

「ですが、友人が本大会に出場するので、彼女たちを一生懸命応援したいと思います」

 

「ご友人が?」

 

「はい。東海地区代表の『Aquors』っていいます。リーダーの娘は、μ'sの『START:DASH』を観て、スクールアイドルを始めた…と申してました」

 

「そうなのですか」

 

「そもそも、なぜスクールアイドルを始めようかと思ったかというと、通ってる学校が廃校になっちゃうからだと」

 

 

 

…!!…

 

…どこかで聴いたことがある話ですね…

 

 

 

「結果として、それは阻止できなったみたいですけど…ラブライブに優勝して、歴史に学校の名前を刻むんだ!…μ'sと同じステージに立つんだ!と燃えているのです」

 

「そう。今年のラブライブの優勝チームは、チャリティライブに出演できるのでしたね…」

 

海未は、当時の自分たちのことを想い出した。

 

 

 

「元日から練習されていて…私たちはその応援の帰りなのですが」

 

「そうですか…では、そのご友人に『頑張って』とお伝えください」

 

「は、はい!ありがとうございます。きっと、喜ぶと思います」

 

 

 

「キミたち、カメラ持ってるの?」

 

突然の呼び掛けに驚く2人。

 

 

 

「!?」

 

 

 

「せっかくだから写真、撮ってあげようか?」

 

 

 

「えっ?あ…」

 

 

 

「これだけの人出の中で、海未さんを見つけて声を掛けてきたんだから、ご褒美をあげてもいいんじゃないかな?お年玉ってことで」

 

「…そうですね…」

 

「よ、よろしいのでしょうか…」

 

「ほら、そういうことだから、パッと撮っちゃおう。カメラ貸して」

 

「す、すみません」

と…ポニーテールはスマホをカメラ機能のすると、高野に手渡した。

 

 

 

 

 

「あ、ありがとうございました!」

 

 

 

「ついでにオレたちも撮ってくれない?」

 

「あっ、これは気が回りませんで…」

 

「これでよろしく…」

と今度は高野がスマホを渡した。

 

 

 

 

 

「あ、くれぐれもオレたちのことは、内密に頼むよ。こう見えても『お忍び』なので…って、全然隠してないけどね…あははは」

 

「はい、はい。私たちもアイドルの端くれですので、無粋な真似は致しません。むしろ、このような計らいに感謝申し上げます」

 

「神対応とはこのことです」

 

「じゃ、そうことで…」

 

「ありがとうございました!!」

 

2人は深々とお辞儀をすると、周りに気付かれないよう、人並みに紛れて姿を消していった。

 

 

 

 

 

~つづく~ 

 






…ということで、今日は高野同様、私も誕生日でした…。
しかしながら今年はインフルの為、完全に寝正月となってしまいました…。


箱根駅伝は…
弟の出身大学は優勝候補と目されながら、5区の大ブレーキが祟って13位に沈み…自分の母校は序盤からシード争いにすら絡むことなく、19位でした…。
まぁ、毎回毎回、予選会を勝ち上がってくるだけマシだけどねぇ…。

とにもかくにも選手の皆さん、お疲れさまでした。




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