【ラブライブ μ's物語 Vol.4】オレとつばさと、ときどきμ's ~Winning wings 外伝~ 作:スターダイヤモンド
「…ということで、今年のラブライブは萌絵イチオシの『Aquors』が優勝でした」
「別にイチオシだったワケじゃないわよ。注目はしてたけど」
関係者の特別室で、ラブライブ本大会の様子を見守っていた、水野めぐみと星野はるかは、表彰式を眺めながら、会話を交わす。
「では萌絵解説員、ズバリ勝因は?」
めぐみがはるかに、エアマイクを差し出す。
「他のチームが自滅した…ってところかな」
「手厳しいわね…」
「どのチームも大差はなかったと思う。でも、みんな『彼女たち』が予選会で見せた『ロンバク』に踊らされた感は否めないなぁ」
「…っていうと?」
「よりインパクトを求めちゃったのよね、アレに勝たなきゃいけない…って。その結果、無理やり難しいことを取り入れようとして、崩れていった感じ」
「ところが今回、彼女たちは奇を衒(てら)わず、ストレートに勝負してきて、それが奏功した?」
「うん、それは評価していいと思う」
「それだけ?」
「歌も、パフォーマンスも及第点。9人っていう大所帯だし、まぁ、よくやったんじゃない?」
「それでも納得してない理由は?」
「う~ん…熱量…かな?」
「熱量?」
「注目してた分、厳しく観すぎてたのかも知れない…」
「気持ちはわかるわ」
「ちなみに言うと…またμ'sとの比較論で、かのんには怒られるかも…だけど…」
「うん」
「μ'sは支えてくれた人々へ感謝の気持ちを歌にして、それをステージの上から観客席に投げた。彼女たちも…想いは同じだったかも知れないけど、それがステージの上で自己完結しちゃった。そんな感じ」
「抽象的すぎない?」
「そうだね、主観の問題。だから言ったじゃん、あくまでもμ'sとの比較論だって。だけど単年、単体で見れば、妥当な結果じゃないかな…とは思う…。かのんはどう観た?」
「概ね、萌絵と一緒。他のチームの戦略云々は抜きにしても、華があったし、妥当だと思う」
「うん、かのんが言うならそうだね」
「個人的には『アンコールで披露した曲』の方が好きかな」
「さすが、かのん。激しく同意!1番、スクールアイドルっぽい曲だと思う…『青空ジャンピング ニーパッド』」って言ってたっけ?」
「『Jumping heart』じゃなかったけ?」
「…だったかも…」
「よし!じゃあ、明日は一緒のステージに立つわけだし、ここは素直にお祝いに行ってきますか」
「今から?」
「ふふふ…手ぶらだけど。くれぐれもμ'sと較べて…とか言っちゃだめだよ?」
「言わないよぅ。そんな無粋な真似はしないって!」
2人は、表彰式が終わるのを待ってAqoursの楽屋へと向かった。
そして、翌日…。
ラブライブ優勝者が決定してから、19時間後。
チャリティライブの本番、5時間前。
会場の控室に入ってきたのは絵里だった。
「ごめんなさい、遅くなってしまって…」
そう言った彼女ではあるが、実は遅刻でもなんでもない。
むしろ、集合時間よりは1時間近く早い。
それでも、そんな言葉を発したのは、既にメンバーが集まっていたからだ。
「みんな早いのね」
「えへへへ…やっぱり、待ちきれないというか、ジッとしてられないというか…」
と言った穂乃果だが、様子がおかしい。
はじけるような笑顔ではない。
「私もそれで、早く出たつもりだったのだけど…みんなには負けたわ」
絵里は不思議に思いつつ、何気なくそう言ったが…メンバーの反応が変だ。
なんとなく、空気が重い。
…本番前の緊張感?…
いや、それとはまったく別物であると絵里は直感した。
「どうしたの?なにかあったの?」
「…う、うん…大変なことが起きてるんだ…」
「穂乃果…どういうこと?」
「花陽ちゃんがまだ来ていないんよ…」
「えっ?それって…」
「本来なら午前中には空港に到着して、それから凛と合流する予定だっだんだけど…向こうを発(た)つ時にエンジントラブルか何かがあったらしくて…」
凛は泣きそうな顔で、絵里に説明をする。
「それで間に合うの?」
「今、海未ちゃんが、空港に問い合わせてる」
この部屋に彼女はいない。
どこかで電話をしているのだろう。
「まったく、あの娘のトロさは、相も変わらずね」
「にこちゃん、そんな言い方ひどいにゃ…」
「そうだよ。悪いのは遅れた飛行機で、花陽ちゃんに責任はないよ」
ことりは凛の言葉に、同調した。
「わかってるわよ、そんなこと。でも、スケジュールは前々から決まってたんだし、ライブの当日…それも本番直前に帰国って日程が、そもそもおかしいんじゃない?」
「にこっち…それは言ったらあかんよ…花陽ちゃんやって、ギリギリまで仕事の調整してくれたんやから」
「わかってるけどさ…わかってるけど…8人で歌うのなんて、アタシはイヤだからね」
にこは悔しそうに唇を噛む。
「…」
「お待たせしました!」
突如、扉が開いた。
入ってきたのは海未だ。
「どう!?」
「はい。結論から言うと、成田到着予定は今から3時間半後です」
「…っていうことは…ギリギリ間に合う?」
「いえ、穂乃果…荷物の受け取りとかもありますし、成田からここまでは、どんなに急いでも1時間近くはかかります」
「1時間近く…か…」
「それも順調に行っての話ですから…余裕を持って1時間半~2時間と見たほうが良いのではないでしょうか」
「5分、10分なら開演を遅らせてもらうこともできるかも…やけど…」
「そこまではさすがに引っ張れないわね…」
希も絵里も困り顔だ。
「まずはA-RISEに相談してみるしかないんじゃない?」
今まで黙って話を聴いていた、真姫が口を開いた。
「私たちは中盤以降に3回に分けての出演だけど、それを極力後ろにズラしてもらうように頼んでみるしかないと思う」
「…そうですね…真姫の言う通りです。まずはA-RISEに事情を説明してみましょう」
「そうやね…。最悪、曲数を減らしてもらうとか…」
「うん!わかった。海未ちゃん、行こう!」
「はい!」
穂乃果と海未は、控室を飛び出していった。
その2人が控室を出てしばらくしてからのこと。
ドアがノックされた。
「はい!」
絵里が返事をする。
「失礼します」
ドアが開くと、その向こうに数人の少女が立っていた。
「お忙しいところ、申し訳ございません。本日、ご一緒させて頂く『Aqours』と申します」
「ラブライブの優勝チームの?」
「は、はい!」
「そう。優勝おめでとう」
と絵里。
「あ、ありがとうございます。そ…それで、一言、ご挨拶をと思いまして…」
「…いいわ、入って」
「は、はい! 失礼します」
千歌を先頭に、ぞろぞろと9人が入室する。
「改めまして。私たちは静岡県にある浦の星女学院のスクールアイドル『Aqours』です。本日はお日柄もよく…じゃなかった、憧れのμ'sさんと同じステージに立てて、大変光栄であります」
「うふふ…そんな硬くならないでもいいわ。楽しくやりましょう」
「実は私、秋葉原に来た時に、偶然μ'sさんの映像を見て…それですごく感動しちゃって…普通の女子高生が、あんなにもキラキラしてて、可愛くて、格好よくて…私も超普通の女子高生だけど、μ'sさんみたいになれるかな…って思って、ここまで来たんです。なので、今、目の前に本物のμ'sさんがいることが信じられなくて」
「そう言って頂けると、私たちも今日、ここに来た甲斐があるってものね」
「あの私も一言、ご挨拶申し上げてよろしいでしょうか?」
千歌に替わって、進み出たのはダイヤだ。
「絢瀬絵里さま!」
「私?」
「小泉花陽さま」
「かよちんは今、いないにゃ」
「…それは失礼いたしました…」
「?」
「恐らく…ゴミの如き、私たち姉妹の存在はお忘れだと存じますが…」
とダイヤは、ルビィを横に引っ張ってきた。
「ゴミの如き?」
「いつぞやは、ご丁寧にサインを頂き、誠にありがとうごうざいます。以来、その生写真は家宝と致しておりまして」
「サイン?」
絵里は首を傾げた。
「えりち、覚えてるん?」
「あまりサインなんて書いたことはないけど…」
「絵里さまと花陽さまがファストフードでお食事されているところ、無理やり、私と妹でお邪魔し…」
「ハラショー!!」
絵里は両手をパチン!と合わせ
「思い出したわ!解散直前の頃ね…確か静岡から旅行で来てて…お母様とお婆様とご一緒に…あの時の姉妹なの!?」
と表情を崩した。
「さすが絵里さまです!!」
「ありがたき幸せ…」
ダイヤとルビィは、両の膝を床に付けると絵里を拝み仰いだ。
「これ、なにかの宗教?」
「さあ…」
にこに突然振られ、返答に困ることり。
「やめてよ、そんなことしないで。そう…あの時の姉妹がこんなに大きくなったの…私も歳を取るわけだわ…」
「な、何を仰いますやら」
「オー!ダイヤさん、ベリー ストレンジで~す」
「まぁ、ダイヤにとってはある意味、神と等しいからね」
その様子を見て、鞠莉と果南は頭を掻いた。
「あ、あと…この人は『桜内梨子』って言うんですけど、なんと音ノ木坂出身なんです!」
「ち、千歌ちゃん!?恥ずかしいから、そんなこと言わなくても…」
「音ノ木坂出身?」
「あ、あの…正確にいいますと、3月まで1年間、音ノ木坂にいて、4月から転校したので…出身というのは語弊があるのですが…」
「Aqoursのメロディーメーカーずら」
と花丸がフォローする。
「そうなんや」
「…ってことは、音ノ木坂でもピアノを弾いていたのかにゃ?」
「は、はい…」
「へぇ、そうなの。まさかこんなところで、私の後輩に出会えるとは思ってなかったわ。大事に使われてたかしら、あのピアノ?」
真姫は梨子の目をまっすぐ見た。
「はい。きちんと、調律もされていましたし、今でもとてもいい音色を奏でます」
それを聴いて、軽く微笑む真姫。
「良かったにゃ~!真姫ちゃん以外、弾く人がいなかったから、その後のことを心配してたんだよね?」
「それは凛、真姫の私物だと思われていたんじゃない?」
「にこちゃん、何、それ?意味わかんない」
「まぁまぁ、おふたりさんってば」
と、ことりが制する。
「あの…それで海未さんは…?」
申し訳なさそうに、千歌は小声で訊いてみた。
「ごめんなさい。穂乃果ちゃんと海未ちゃんと花陽ちゃんは、ちょっと用があって、今は席を外してます」
ことりの返事を聴くと
「そうですか…」
と落ち込んだように彼女は呟いた。
「どうかした?」
「はい…実は今年のお正月に偶然、友達が神田明神で海未さんにお会いして…私たちのことを話したら『がんばってと伝えて』と言ってもらえたとのことだったので、どうしても一言お礼がしたかったんですが」
「そうなの?でも、今は…」
「そうですよね!わかりました!それは、また後にします」
「うん、ごめんね」
「あれ?でも、そうしたらことりちゃんも一緒にいたんじゃないかにゃ?」
「うん…初詣は、穂乃果ちゃんと3人で元日に行ったよ!」
「えっ?元日?あれ?理亞さんから連絡もらったの…って3日だったよね?」
「3日?」
「元日はマルたちの練習に付き合ってくれてたから、3日で間違いないズラ」
「じゃあ、2回行ったんだね」
「2回?1人で?」
「に、にこちゃん、別に今はそこ、どうだっていいことでしょ」
「そ、そうやね。真姫ちゃんの言う通りやん。そこは流すとこやん」
「1人じゃなかったみたいですよ。一緒に男の人が…」
「千歌!」
「千歌っち!!」
「千歌ちゃん!」
「あっ!」
「海未に男?」
「高野さん?」
「ハラショー!!」
「ってことかにゃ?」
「真姫と希は知ってたのね?」
「そういえば、この間の帰り、3人でコソコソしてたにゃあ」
「…」
「…」
希と真姫はお互いの顔を見合わせた。
そして、覚悟を決めたのは希。
「にこっち、凛ちゃん、ことりちゃん…そしてえりち…黙ってって、ごめん。ウチはクリスマスの時、偶然2人に会ってしまってな…」
「そんな前からなんだぁ」
ことりは呆然としたように呟いた。
「私は正直に言うと、その少し前から海未に相談されて…」
「でも、今は大事な時期やんかぁ。だから、落ち着くまでは、黙ってたほうがいいんやろうなぁ…って」
「でも、別に海未がそういう気持ちだったことは知ってたわけだし、聴いたところで驚きはしないけど」
「そうにゃ!そうにゃ!にこちゃんの言う通りにゃ」
「だけど…ひとりいるでしょ?そんなことを聴いたら、なにもかも手に付かなくなちゃいそうな人が…」
「あっ…」
真姫の言葉に、にこも凛もことりも絵里も、同じ顔を思い浮かべた。
「なるほど。ということは、ある意味、今、ここにあの2人がいなかったことは不幸中の幸いってことかしら?」
と絵里。
「そうやねぇ」
「…ってことで、アナタたち。そのお礼の件やけど、海未ちゃんにはウチたちから伝えておくから、あとで会っても、くれぐれも秘密にしておいてや」
「す、すみません…変なこと言っちゃったみたいで…」
千歌は、深々とお辞儀をして謝った。
「それより、凛、さっきからすごく気になってることがあるんだけど…」
「はい?」
「なんで、かよちんがそこにいるのかにゃあ!?」
「アタシも気になってたんだよねぇ」
「ウチも」
「私も」
「ことりもです」
「そ、そんなに似てますか?」
突然注目を浴びた曜は、びっくりして一歩後ずさりをした。
確かにAqoursのメンバーからも、前々から似てるとは言われていた。
だが本人たちから、こぞってそう言われるとは思っていなかったのだ。
「似てるなんてもんじゃないにゃ。生き写しにゃ…」
「アンタ、身長は?」
「157cmです」
「1cm高いにゃ」
「誤差の範囲じゃない?」
と真姫。
「因みにスリーサイズは?」
「希!それはいくらなんでも失礼よ」
「いいやん、えりち。減るもんやないんやし」
「えっと82-57-81です」
ごめん、無理やり言わせて…と絵里が目で謝った。
「かよちんは当時、82-60-83だったはずにゃ」
「今の花陽ちゃんは、もっと、おっぱい大きくなってるんやけどね…」
「希!」
「名前は…なんて言うん?」
「は、はい。渡辺曜といいます。曜でいいです」
「曜さん…ひとつ相談があるんやけど…」
「はい」
「花陽ちゃんの代役になってくれへん?」
「よ、ヨーソロ…」
と言いかけて、曜は思い止まった。
「えぇ!?代役ぅ!?」
Aqoursの9人の大声が、控室に響き渡った…。
~つづく~
かよちん、誕生日おめでとう!
…と言うことで、こんな『イベント』を用意してみました。