【ラブライブ μ's物語 Vol.4】オレとつばさと、ときどきμ's ~Winning wings 外伝~ 作:スターダイヤモンド
「『さくら』と『あや』で…『サクラーヤ』はどうだろう?」
「『安さ爆発』っすか?家電量販店じゃないんですから」
「ダメか?」
「ダメっす!」
「じゃあ『桜藤(さくらふじ)』…」
「関取みたいですね…」
「編集長のネーミングセンスは古いですよ」
「そうか?」
永井の発言は、ことごとく若いスタッフに却下され、頭を掻いた。
永井は、綾乃の写真を見た時から『J-BEAT』での、モデル採用を検討していた。
その過程において、想定外の出来事はあったものの、結果として、その想いは成就した。
そして、その時から考えていたこと…。
それが、浅倉さくらと藤綾乃でコンビを組ませることだった。
『J-BEAT』はローティーン…小学校高学年から中学生を対象にしたファッション情報誌。
浅倉さくらは、そのJ-BEATにおいて、人気・実力とも誰もが認める絶対的エースだ。
その彼女も中学2年生となり、5年目のシーズンを迎えた。
中学の卒業は、すなわちJ-BEATの卒業でもある。
つまり、残りは2年。
彼女の人気は揺るぎないものではあるが、最後にもう一度、爆発させる為の推進力が欲しかった。
その起爆剤。
それが藤綾乃だった。
相反するふたつの個性を合わせることで、お互いの長所を際立たせる。
このふたりなら、それができると永井は直感していた。
綾乃のデビューは極秘裏に計画が進められた。
次号は5月発売。
いささか間が悪い。
だからこそ、いかにインパクトを与えられるかが、大きな課題だ。
社内では綾乃のデビューに向け、特別チームが設けられ、その計画は『Project A』と名付けられた。
冒頭の会話は、その一場面だ。
綾乃は本名ではなく『AYA』という表記で活動することになった。
ファッションコンセプトは『Cool』。
大人びた雰囲気を、全面に押し出していく戦略である。
そしてコンビ名は『C.A.2』に決まった。
『キャッツ』と読む。
弾ける明るさが魅力の『CuteなAsakura』。
落ち着いた雰囲気漂う『CoolなAYA』。
2人のC.A…そんな意味だ。
ちなみに綾乃は…明るくない訳じゃない…が、前回の撮影時、緊張や恥ずかしさのあまり、上手く笑えず、少し怒ったような顔で写ってしまった。
ところが「その媚びない感じがいい」と評価されるのだから、世の中、何がどう転ぶかわからないものである。
…ということで『AYA』は『綾乃』とは真逆のキャラ設定となった。
諸々の手続きが終わり、綾乃はゲー校への転入初日を迎える。
4月も既に4週目に入っていた。
GWも目前だ。
…なんて中途半端なタイミング…
新しい制服に袖を通しながら、綾乃は思わず笑ってしまった。
そして、鏡の前でポーズを決める。
…モデル…か…
既に何パターンか撮影を済ましているものの、実感が沸かない。
自分がモデルになった…ということも、不思議でたまらなかった。
学校に着く。
久美子は「一緒に行こうか?」と言っていたが、断った。
親としては心配なのだろうが、入学式でもないし、それくらい、ひとりで充分だ。
職員室に行き、挨拶をする。
担任から「ホームルームで紹介するから」…と、そこで座って待っているよう指示された。
そしてチャイムが鳴る。
綾乃は、担任とともに教室へと入った。
綾乃のクラスは全部で40人弱。
うち、1/4は欠席している。
仕事で休みなのか、サボりなのかはわからない。
男女の構成比、ほぼ半々。
TVや雑誌で見たことがある顔も、数人いた。
「今日から新しい仲間が加わる。藤綾乃くんだ」
「はじめまして、藤です。よろしくお願いします」
綾乃が頭を下げると、まばらな拍手が返ってきた。
どうやら歓迎されているムードではなかった。
事前にさくらから聴いた話によれば『ゲー校に入学』イコール『ライバルが増える』ということらしい。
活動するジャンルが被る、被らない…は、ある意味、死活問題なのだという。
まばらな拍手の理由はそこにある。
つまり綾乃の存在は、自分にとってプラスかマイナスか…まだ、その見極めができていない状況。
「確か藤は…浅倉と同じ事務所だったな…」
「はい」
その一言に教室内がザワついた。
それで、浅倉さくらが、このクラスでも一目置かれた存在であろうことは、なんとなくわかる。
「浅倉、隣の席、空いてったっけ?」
「大柴くんですけど…今日は休みです」
「そっか。じゃあ、今日はそこに座っておいて」
…そんな、いい加減な…
綾乃は、口から出掛かった言葉を飲み込んだ。
~つづく~