【ラブライブ μ's物語 Vol.4】オレとつばさと、ときどきμ's ~Winning wings 外伝~ 作:スターダイヤモンド
季節は巡り、春。
綾乃は中学3年生となる。
進級とともに、4名のクラスメイトが姿を消した。
その中には、J事務所の田中成臣の名前もあった。
表向きは一身上の都合により…となっているが、実際は素行不良…飲酒、喫煙…が原因で解雇された…というのが、もっぱらの噂だ。
まさか、中学生で…と思うが、芸能界というところは、そういうことが起こりうる世界らしい。
「調子に乗ってるからよ!」
無事(?)進級した島崎圭は、田中の退学を聴き、そう言い放った。
だが、一般社会に比べれば、比較にならないほど、甘い誘惑が多いのは事実であろう。
当然、綾乃もさくらも、社長から耳にタコができるほど「絶対にやってはならない」と指導を受けているが…それでも、明日は我が身と、毎日、心の中で唱えている。
さくらが女優デビューに向かって着々と準備を進める一方、綾乃も次の活動についての戦略が練られていた。
それはJ-BEAT編集部から出向してきた『菊原』が主導となって行い『Project A2』と名付けられたが、今はまだ、公にはできない。
極秘計画だった。
綾乃は、この4月から大きく変わったことがふたつある。
ひとつは後輩ができたこと。
高齢化の進む事務所が、若返りを図るべく、新人2名を採用したのだ。
名前は『阿部 かのん』と『鈴木 萌絵』。
どちらも中学2年生…綾乃とさくらのひとつ下になる。
阿部かのんは秋田県出身。
身長は161cm。
幼い頃から民謡で鍛えたノドを武器に、地元ではコンテスト荒しとして、名を馳せていた。
性格はおっとりしているが、自らのセールスポイントは、雪国育ちの白い肌と、自称『Eカップ』という豊かなバストと語る。
ただし、それはあくまでも見た目の話で、歌には絶対の自信を持っていた。
一方、鈴木萌絵は大阪出身。
身長は158cm。
こちらも地元では有名な、カラオケクイーンだ。
かのんが柔であれば、萌絵は剛。
パワフルな歌声が特徴だ。
父親は千葉、母親が山梨出身とのことで…いわゆる、ステレオタイプの関西人ではないが…ボケもツッコミもできる明るいキャラである。
萌絵も、かのんほどではないが胸が大きい。
綾乃とさくらはともに『B』…。
2人は
「まぁ、胸が大きいモデルはいないから…」
と励まし合っているらしい。
確かに、読者である女子には、そういう体形は好まれない。
だが、かのんと萌絵は…
まだ、あどけなさは残るが、将来はグラビアアイドルとして、十分やっていけそうなルックス、スタイルである。
しかし、本人たちには、そういう意識はない。
ともに(偶然ではあるが)外見優先のアイドルとしてスカウトされた事務所を、断っていた。
敢えて飛鳥プロを選んだのは、自分達の実力を認めてくれたからだ。
ふたりのCDデビューは、まだ先。
どのようなジャンルで、どうするかは…未定。
いや、決まっているが、まだは明かせない。
今は「歌の上手い中学生」という位置付けである。
地方出身の2人は、社長宅で下宿することになった。
都会に不案内な彼女たちをサポートするのは、綾乃とさくら。
どちらも独りっ子である為「妹ができたようだ」と喜んだ。
~つづく~