【ラブライブ μ's物語 Vol.4】オレとつばさと、ときどきμ's ~Winning wings 外伝~   作:スターダイヤモンド

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ときどきμ's ~花陽と凛の夢~

 

 

 

 

8チームの総当たりで行われる、今回のフットサル大会。

 

初日は4試合戦い、綾乃たち『Deusa da vitória(デウーサ ダ ヴィットーリア)』は、3勝1分で終えた。

 

 

 

注目の綾乃はここまで、ノーゴール。

 

どこのチームも『K-アヤノ(ん)砲』…あれを見せられたら、マークが厳しくならざるを得ない。

 

 

 

それでもシュートを打つチャンスはあった。

 

シュートフェイントを多用し、ゲームメイクに徹した格好になったが…実際は、初戦で相手ゴレイロを負傷退場させてしまったことが頭にちらつき、ミドルを打つのに躊躇してしまった…というのが実情だ。

 

その辺りはコーチの石井も察したようで、試合後、綾乃は何やらアドバイスを受けた。

 

 

 

初日が終わり、その負傷退場した選手…芸人の『山田ベニ子』を見舞った。

 

検査の結果、脳には異常が見られなかったとのことで、一安心する。

 

 

 

ただし、前歯は1本欠けたらしい。

 

「まぁ、これはこれでネタになるから。気にせんときぃ」

と芸人らしい言葉をもらい、綾乃はその気遣いに感謝した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、大会2日目。

 

 

 

5試合目となるこの試合で、綾乃の左足が爆発する。

 

 

 

シュートフェイントから、パス。

 

そのまま前に抜け出し、リターンを受け、左足を軽く振り抜く。

 

ボールはゴレイロの脇をすり抜け、ネットを揺らした。

 

実際は力を抜いたコントロールショットなのだが、相手ゴレイロが身構えて、身体を硬直させてしまう為、反応が遅れゴールを許す…という状況。

 

このパターンがはまり、綾乃は寧々とともにゴールを量産、この試合を含め、3試合で8ゴールをあげる。

 

チームは5勝1敗1分で優勝。

 

得点王こそ寧々に譲ったが、綾乃の存在感は十分で、関係者にもファンにも、その姿を焼き付けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

それをスタンドで観戦していたのは…

 

 

 

中学2年生の『小泉花陽』と『星空凛』だった。

 

 

 

花陽はフットサルには興味はなかったが、無料で複数のアイドルが見られるとあって、親友の凛を誘って足を運んでいた。

 

目当てのアイドルが登場する度、嬉々としてはしゃぎ、こと細かにその解説をする花陽。

 

 

 

一歩間違えれば『ウザい』と感じてしまうところだが、凛はそんな彼女が、愛おしかった。

 

 

 

「かよちん、アイドルを語ってる時は、本当にイキイキしてるにゃ」

 

「あ、つい夢中に…。ごめんね…付き合わせちゃって…」

 

「ううん、大丈夫だよ。凛、スポーツ観るの好きだし。だけど、それよりも、かよちんの嬉しそうな顔を見るのは、もっと好きなんだにゃ」

 

「…ありがとう。凛ちゃんは本当に優しいね」

 

「違うにゃ!かよちんの優しさには敵わないにゃ」

 

「え~凛ちゃんの方が…」

 

花陽はそこまで言いかけて「あっ!…」と、自分の手で口を塞いだ。

 

毎回毎回、同じやり取りをしていることに気付き

「また、いつもの繰り返しになっちゃうね」

と、凛とふたりで笑った。

 

 

 

「それにしても、アイドルって大変なんだね。ただ可愛いだけじゃなくて、こんなこともするんだ…」

 

「うん。一口にアイドルって言っても、数えきれないくらいいるからね。可愛いとか、歌やダンスが上手とかはもちろんだけど、何か特徴がないと生き残れない、厳しい世界なんだよ」

 

「そうなんだ…。凛ね、かよちんがアイドルになったら、またここから応援するね!」

 

「えっ?…花陽が…アイドル?…いやいや、それは…」

 

「ならないの?」

 

「確かに昔はなりたかったけど…花陽じゃ、アイドルなんてなれないもん。可愛くないし、太ってるし、人見知りだし、運動神経ないし…」

 

「かよちん!!そんなこと言うと、凛は怒るよ!」

 

「…ご、ごめん…でも本当のことだから…」

 

「そう思ってるのは、かよちんだけにゃ」

 

「凛ちゃん…」

 

「凛はね、かよちんがアイドルになったら、いっぱい、いっぱい応援するんだから!」

 

「…うん、ありがとう…。あ、でも凛ちゃんは?」

 

「にゃ?」

 

「凛ちゃんは何になりたいの?」

 

「凛のなりたいもの?…う~ん…ラーメン屋さんかな?」

 

「あははは…相変わらずだね」

 

「…ちょっとバカにしてるでしょ?」

 

「そんなことないよ。凛ちゃんの作ったラーメンなら、絶対に美味しいもん!」

 

「まだインスタントしか作れないけどね…」

 

「これからだよ。だって、道具とかなんにも揃えてないんだから…」

 

「そうにゃ!さすが、かよちん!凛の言いたいことが、わかってるぅ」

 

「ふふふ…。あっ!あのね、凛ちゃん。花陽、このサッカー見てて思ったの…。凛ちゃんこそ、アイドルになればいいんだよ」

 

 

 

「…かよちん?」

 

 

 

凛は花陽の額に、自分の手をかざした。

 

 

 

「何してるの?」

 

「熱はないにゃ…」

 

「えっ?」

 

「だって、凛がアイドルなんて…かよちん、突然おかしなこと言いだすんだもん」

 

「おかしくないよ。凛ちゃん、運動神経抜群だから、きっと、ダンスだってすぐに覚えちゃうし…それに、ほら、みんなアイドルって、ちっちゃくて可愛い娘ばっかりだし…」

 

「ちっちゃいのは認めるけど、可愛いくはないにゃ」

 

「そんなこと言うと、今度は花陽が怒るよ!」

 

「かよちん…」

 

「凛ちゃんは絶対に可愛いよ」

 

「そんなこと言うのは、かよちんだけにゃ…」

 

「もう、なんでみんな、凛ちゃんの可愛さをわからないんだろう」

 

「別にいいにゃ。凛はかよちんが可愛いって言ってくれれば、それでいいにゃ」

 

 

 

「…」

 

 

 

「でも、アイドルの話は別として、これはやってみたいにゃ!」

 

「サッカー?」

 

「フットサルにゃ」

 

「そう、それ…。凛ちゃんだったら、バンバン点、獲っちゃうよね」

 

「当たり前にゃ!スピードなら負けないにゃ!」

 

「そうだよね!」

 

「でも…」

 

「ん?」

 

「あの人はちょっと違うかも…」

 

「あの人?」

 

「あの、ちょっと背が高くて、スラッとしてる人」

 

花陽は凛が指差す方向を見た。

 

「あ、モデルのAYAさんだね」

 

「あの人が…」

 

「そうだよ。J-BEATのトップモデル…さくらとAYA…C.A.2の…」

 

「初めて見たにゃ…」

 

「凛ちゃんも、たまには読んでみようよ!浅倉さくらさんのファッションとか、似合うと思うんだけど…」

 

「凛はいいにゃ…自分の服は自分で決めるにゃ」

 

「まだ、スカートのことを気にしてるの?う~ん、もう何年も前の話なんだから、いい加減忘れようよ…」

 

「かよちんは『女の子』だから、凛の気持ちはわからないにゃ…」

 

「また、そういうことを言う…。あ、それよりAYAさんがどうかしたの?」

 

「えっ?あぁ、あの人、凄くスリムだけど、メチャメチャ『バネ』があるな…って思って」

 

「バネ?」

 

「凛にはわかるんだ。あの人、タダもんじゃないにゃ。絶対に何かスポーツやってたにゃ。凛はあの人と対決してみたいにゃ」

 

「へぇ…」

 

 

 

…あとで調べておこう…

 

 

 

アイドルオタクの花陽でも、モデルまではカバーしていないようだ。

 

 

 

 

 

「じゃあね、凛ちゃん。また明日…」

 

「うん、かよちん!バイバ~イ」

 

 

 

観戦が終わって家路に着いた、花陽と凛。

 

夏休み期間中の為、明日は学校ではないが、一緒に図書館に行く約束をして別れた。

 

 

 

…凛が…アイドル?…

 

 

 

手を振って花陽を見送ったあと、凛は歩きながら、ひとり呟いた。

 

 

 

…にゃ、にゃ…

 

…あり得ないにゃ…

 

…かよちんのバカ!…

 

…凛がアイドルなんて…

 

 

 

…アイドルか…

 

…大勢の前で歌って踊るのって、どんな感じなんだろう…

 

 

 

凛はフリフリの衣装を身に付けてステージに立つ自分を、想像した。

 

しかし、それをすぐに消去する。

 

 

 

…それは凛だって、女の子らしくしてみたいよ…

 

…可愛いカッコとかしてみたいよ…

 

…でもね、無理なんだ…

 

…それはかよちんが一番知ってるでしょ…

 

 

 

…だけど…

 

 

 

 

 

気が付くと凛は、コンビニに寄り、J-BEATを買っていた…。

 

 

 

 

 

~つづく~

 


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