【ラブライブ μ's物語 Vol.4】オレとつばさと、ときどきμ's ~Winning wings 外伝~   作:スターダイヤモンド

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Winning wings ~シルフィード~

 

 

 

 

日本中の関心をさらった覆面歌手の正体…。

 

 

 

それは『夢野つばさ』『水野めぐみ』『星野はるか』の3人からなる女性…いや、少女の…『シルフィード』というグループだった。

 

 

 

NHKが生中継に踏み切ったことにより、シルフィードのライブは、関東圏内での時間帯占拠率が、実に92%を記録した。

 

制作サイドとしては『狙っていたこと』とはいえ、これだけのプロモーションを『ほぼ無料』で行えたのである。

 

その宣伝効果は計り知れなかった。

 

 

 

ライブは2曲を歌って終了。

 

特にそれ以上の会見は開かれなかった為、この時判明したのは、その姿、名前…そして彼女たちの実力だけだった。

 

視聴者としては『それで結局、誰?』と多少、不満が残ったが…しかし、すぐにネット民たちによって、その人物像が特定される。

 

 

 

何を隠そう彼女たちこそ『藤綾乃』『阿部かのん』『鈴木萌絵』の3人だった。

 

 

 

飛鳥プロが進めてきた『Project A2』。

 

それは、綾乃を歌手デビューさせること。

 

しかもアイドルではなくて、ギターの弾ける『アーティスト』として。

 

今風の言い方なら『ギタ女』である。

 

その為に、モデル活動と平行して、ギターの特訓を重ねてきた。

 

J-BEATの編集長…永井は、冗談めかして『左利きのギターリストはカッコいい!』と言っていたが、すでにこの時には計画が始まっていたのである。

 

 

 

しかし当初は、綾乃ひとり…ソロの予定だった。

 

そこに、かのんと萌絵が加入したことにより、ユニットでいくことへと変更される。

 

こうして綾乃はまる2年、かのんと萌絵は1年、デビューに向けて準備を重ねてきたのだった。

 

 

 

あくまでもシルフィードとしての3人は、夢野つばさ、水野めぐみ、星野はるかであり、年齢等は非公開。

 

しかしモデルとして活躍していた『AYA』こと綾乃の素性は、いち早くバレた。

 

眼鏡を掛けてイメチェンしたものの、やはり彼女の知名度は、他の2人よりは高かった。

 

 

 

だが…

 

 

 

これまで素人だった『かのん』と『萌絵』も、本名、年齢、出身地など、アッという間にネットにアップされていた。

 

 

 

その辺りは事務所サイドも制作サイドも、十分想定内ではあるが、今の世の中『公然の秘密』という言葉は、死語となっていると言っていい。

 

もはや、個人情報などというものは、存在しないのかもしれない。

 

 

 

 

 

実はこのことが、世の中を二分する論議となる。

 

 

 

それは、未成年(綾乃は高校1年生、かのんと萌絵は中学3年生)が(公営とはいえ)ギャンブルの『片棒』を担いで良いのか?…ということだった。

 

 

 

これに対し…

 

 

 

それとこれとは別物。

 

「そんなことを言い出したら、競馬の育成ゲームも未成年はやるな…ということになる」…という擁護派との間で、激しく意見がぶつかりあった。

 

 

 

一方、製作者側の見解はというと…

 

まず、覆面歌手としたことについては、偏見なしで楽曲の良さを知って欲しかったとのこと。

 

容姿や年齢で評価される…それは本意ではない…と。

 

ライブ形式としたのは、口パクやゴーストシンガーではない…と証明する為。

 

加工できない生歌・生演奏は、彼女たちのレベルを示す、最高の舞台だ…と述べた。

 

 

 

半分は本当で、半分は嘘だろう。

 

 

 

かのんや萌絵が飛鳥プロを選んだ理由は、そこにあった。

 

つまり、実力…歌唱力で勝負したいということ。

 

だから、そういう意味では、間違ってはいない。

 

 

 

一方、敢えて情報を出さなかったことにより、話題性を高めたのは確かである。

 

また、各局がニュースを放送する時間にぶつけてきたことも、戦略的な部分が大きいだろう。

 

 

 

 

未成年云々という議論について、コメントを出すことはなかったが、これは世論が味方する。

 

最終的には、歌詞の内容が『ギャンブルを推奨しているわけではない』との論調が多数を占めたのだった。

 

音楽を性別や年齢で差別すべきではない…との意見もあった。

 

 

 

いずれにしても、シルフィードは覆面歌手としての話題だけではなく、実力そのものが、世の中に認められた存在となる。

 

その後2枚同時にリリースされたCDはともにミリオンヒットとなり、音楽業界に新たな歴史を刻んだ。

 

それはプロモーションひとつで、大きな花を咲かせることができるという一例でもあった。

 

 

 

 

 

~つづく~

 


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