【ラブライブ μ's物語 Vol.4】オレとつばさと、ときどきμ's ~Winning wings 外伝~ 作:スターダイヤモンド
シルフィードは、デビュー曲を披露した後、マスコミの前に姿を見せることなく、季節は夏になった。
表向きの理由としては、飛鳥プロの方針はあくまで学業優先であることが挙げられる。
そこは他事務所と一線を画している。
旬を逃せば、売り時を失う。
それはわかっていること。
しかし事務所サイドとしては『露出過多は飽きられるのも早い』と考え、ギリギリまで『次のタイミング』を窺っていた。
彼女たちの人気を、ブームで終わらせない為の戦略。
目の前の事象に囚われず、中長期的な計画だと言えた。
だがそれは、ある種の賭けであり、実際あまりの露出の少なさに、業界の内外から批判が出たのも事実だ。
放送局サイドとしては、音楽番組だけでなく、トーク番組、バラエティ番組、CM…とにかく出演さえすれば数字が取れる…という思惑が蠢き、右から左から、綱の引っ張り合いがなされた。
だが、事務所は頑として応じない。
90年代には『曲はリリースするが、TV出演はしない』という自称アーティストが数多くいた。
その為『歌担当』と『ビジュアル担当』『作詞作曲担当』は、それぞれ別にいる…などという都市伝説が、実(まこと)しやかに流れたこともあった。
大抵はすぐに消えていなくなった訳だが、当時はバブルのまっ最中。
パッと咲いて、パッと稼げた時代だったのである。
それと較べれば、手段は似てるが、目的は違う。
シルフィードはまだ十代半ば。
これからも長く活躍させる為の、戦略だった。
夏休みに公開された映画『オートレーサー』は事前の宣伝効果もあって、そこそこの興業成績を上げる。
時期を同じくして、その主題歌・挿入歌を含んだシルフィードのファーストアルバムは、これまたミリオンヒット。
上半期の音楽チャートは、彼女たちの独壇場となった。
そして、この時期に、早くも紅白出場決定の噂が流れ始める。
秋。
浅倉さくらが初主演したドラマが放送される。
その主題歌はシルフィードが担当した。
メインボーカルは夢野つばさ。
さくらのバーターがシルフィードなのか、シルフィードのバーターがさくらなのかはわからないが、この辺りのマネージメントは、さすが老舗芸能事務所だ。
綾乃とさくらは、学校では顔を合わすものの、放課後は殆ど一緒に行動することはなくなっている。
そういう意味では、間接的ではあるが、久々の『共演』だった。
その頃の『オレ』。
周りはシルフィードの話題でもちきりだった。
既にファンは、その見た目から『夢野つばさ=美カテキョ』『水野めぐみ=フンワリお嬢』『星野はるか=愛ドール』と呼んでいる。
この日はオレのクラスメイトが、数人集まって、その話をしていた。
「高野は誰推し?」
「えっ?」
「シルフィード…」
「あぁ…う~ん…特に興味は…」
「嘘つけ」
「本当だよ…」
…顔見知りだけに『夢野つばさ』と言いたいところだが…
小学生の頃のオレとヤツの関係を考えれば、素直にそうは表明できなかった。
「オレは水野めぐみかな」
そばにいた友達が口を挟む。
「おお!さすがムッツリ!一番の巨乳だしな」
「年下だけど優しく包まれたいわ」
「わかるわぁ」
「え~、オレは星野はるかだな。元気いっぱいの妹って感じで、一緒にいるだけでパワーもらえそうだもん」
「あぁ、それな」
「ヤダ、ヤダ…これだから男子は…」
それを聞いていた女子が、茶々を入れる。
「なんだよ?」
「女子は圧倒的に、つばさ推しよね!」
「そうそう」
「モデル時代から知ってるし、どうしても肩入れしちゃうよね」
「カッコいいよね!まさかギター弾くなんて思ってなかったし」
「水野めぐみも星野はるかも、男子に媚び売ってる感が強いもんね」
「その点、夢野つばさはモデル時代と変わらず、クールで素敵よね」
「名前はダサいけど…。『AYA』の方が良かったね」
…おぉ!相変わらず女子人気は、高いな…
「つばさはないわ。デカイし、性格キツそうじゃん!」
「まぁ、綺麗だと思うけど…あれが好きって男は『M』だな…」
「だよなぁ…」
「あぁ!?」
オレは大きな声をあげてしまった。
「高野…突然どうした?」
ちょっとみんな引いている。
「あっ…スマン。多分だよ…多分、そんなにキツい性格じゃないんじゃないかな…」
…ん?なに言ってるんだ、オレ…
「なんで?」
「あ、いや、だから…なんとなくだよ…なんとなく」
「ひょっとして、お前、つばさ推し?」
「Mだった?」
「だから、どうしてそうなるんだよ!」
…ただ、知り合いが悪く言われて、腹が立っただけだよ…
…と思ったが、そうなのか?…
…それにしても…
ヤツがモデルになった時も驚いたが、今度はバンドかぁ…
追い付かねぇなぁ…
身長は同じくらいになったし、ユースにも選ばれるようになった。
けど、ヤツは常にオレの想像を越えて先に行く。
知らないうちに、オレはヤツに惹かれていた…。
~つづく~