【ラブライブ μ's物語 Vol.4】オレとつばさと、ときどきμ's ~Winning wings 外伝~ 作:スターダイヤモンド
ヤツに好きだと言われた。
オレは…
「チョモ…」
「はい?」
「…オレも…お前のことが…」
「えっ!?」
「…好きだ…」
「…うそ?…」
「この状況で嘘を言うと思うか?…オレも同じだ。ずっとお前が好きだった…」
「…信じられない…いつから?…」
「…小学生の頃から…」
「聴いてないよ…」
「お前と一緒…。当時は、それが好き…っていう感情だとは気付かなかった。むしろ、お前のお母さんの方が好きだった。ムチャクチャ綺麗だったし…今もそうだけど」
「元モデルだからね」
「そうなの?そりゃあ、綺麗なわけだ…」
「高野くん…ひょっとして、熟女好き?」
「違ぇ~よ!…違うって!…まず、お前のお母さんは熟女じゃね~し…えっと、その…だから、あれだ!お前のお母さんはそれだけ綺麗だし若く見える…ってこと」
疑惑については、全力で否定。
…だけど、もし誘われたら…断る自信はない…
「…うん、わかった。まぁ、私から見ても、そう思うから、それはそれでいいけれど…。…で、私はどうだったの?」
本題に戻った。
「お前は…お前は倒すべき相手だと思っていた」
「倒すべき相手?」
「上手く表現できないが…勉強でも性格でも、どうやっても勝ち目がないことは知っていた。オレにないものを持ってるお前が、羨ましかった」
「…」
「だから…なんとか認めてもらいたい…っていう気持ちがあったんだと思う」
「認めてたよ、私は…」
「今、知ったよ…お前の気持ち」
「うん…」
「だから、さっき『ライバル視してた』みたいなことを言ったけど…反面、どこか憧れみたいなとこがあったんだと思う」
「憧れ?…」
ヤツは首を傾げた。
「なにが一番そうさせたのか…って言うと…やっぱり身長だな」
「…身長?…そんなに気にするものなの?」
「あっ!わかってねぇなぁ…そりゃあ、気にするよ。…人によるかも知れないけど…」
「特に小学生の時なんて、だいだい女子の方が高いわけじゃん。チビ扱いされるのは、イヤなわけ」
「私、そんな扱いしてた?」
「直接『チビ』とは言わなかったが、いつも見下ろされてた」
「ぷっ!だって、それは仕方ないでしょ」
「だから、それはこっちの被害妄想だ」
「だよね」
「だけど、男なら考えるぞ。彼女が、自分より大きかったらどうなるか。一緒に傘に入るの大変だな…とか、壁ドンとかできないじゃん…とか、お姫さま抱っこしたら、そのままシュミット式バックブリーカーになるな…とか」
「シュミット式バックブリーカー?」
「抱き抱えられられずに『こうやって、こうなる』ことだ」
オレは方膝を立てて、人をへし折るフリをした。
「小学生で、そこまで考えるんだ?」
ヤツは、笑うかと思ったら、逆に真剣な顔でオレを見た。
「考えるよ」
「そうなんだ…」
「だから…チョモは『対象外』にしていた…というか…」
「…なるほど…」
「あ~…上手く言えねぇ!…伝わってるか?…」
「なんとなく…」
言葉で説明するのは難しい。
「今思うと…好きだったと思う。お前の性格、嫌いじゃなかったし…。でも、素直に認めたくなかった。そうこうしてるうちに、卒業しちゃって…」
「そうだね…」
「だから、公園で再会したときは、正直嬉しかった」
「偶然だったけど…」
「あぁ、あそこで会わなければ、そのまま想い出で終わってたんだけどな…」
「うん、あんなところで会うとはわなかったね…」
…運命なんて言葉、簡単には信じないが、あの時会わなければ、今はない…
「だけど、お前はバレーボール辞めて、モデルになってるじゃん」
「うん」
「その瞬間、お前は永遠に手の届かない存在になった」
「大袈裟だよ…」
「大袈裟じゃねぇよ…」
「こっちは張り合えるところはサッカーしかないからな。そしたら、まったく違う分野に行っちまいやがった」
「ごめん…」
「あ、いや、謝らなくてもいいんだけど…。そんでもって、また、忘れた頃にコーチを頼まれて…」
「うん…」
「もしかしたら『オレのこと、好きなんじゃね?』とか思い始めて…そうしたら、なんかスゲー意識しちゃって…『あれ?好きだったのはオレかも』みたいな…」
「じゃあ、これって…両想い?…」
「…なのかな…」
「…ホントに私なの?私、女の子っぽくないよ?」
「知ってる。優柔不断より、よっぽどいい」
「私、束縛されるの嫌いだよ」
「大丈夫。オレも嫌いだから」
「私…胸大きくないよ?…」
「大きくても垂れてたら意味ないし、乳輪が大きいのも好きじゃない」
…何を言ってるんだ?…
さすがに、これはヤツもスルーできなかったらしい。
「ばか…」
再び、ヤツが呟いた。
「い、今のは置いといて…。なんでオレがそんなことを言ったかというと、やっと、並んでも恥ずかしくない背の高さになったから…」
「また、身長の話?私はそんなに気にしてないよ」
「気にしろよ!こっちはやっと対等な目線で話せるようになったんだから」
「…でも、本当に並んだのかしら?」
「並んだよ!いや、抜いただろ!」
「どうかな?」
「じゃあ、そこに壁に背中付けて立ってみ?」
「こう?」
「お前の頭が、この高さだろ…」
オレは自分の掌を、ヤツの頭の上に置いた。
「あっ!」
ヤツが先に声を出す。
「おっ!」
オレもその状況に気付いた。
…近い!…
「これって…壁ドン?」
「…いや…そういうつもりじゃなかったんだが…」
「してみたかったんでしょ?」
「してみたかったわけじゃない。…それに…何か違う…」
…あと、10cm身長が足らないか?…
「オレが上から覗き込む形にならない」
「ふふふ…そうだね」
理想的な壁ドンではなかったが、期せずして近い状態にはなった。
ヤツは壁に背を向けたまま『動かない』。
オレも、ヤツの正面に立ったまま『動けない』。
ふたりの時間が止まった。
暫くして、ヤツは目を閉じた。
…これは!…
「…チョモ?…」
オレの呼び掛けに、ヤツは小さく頷いた。
何が言いたいか、悟ったようだ。
オレは覚悟を決めた。
ヤツの唇を見る。
こんなに間近で見るのは初めてだった。
艶々として、柔らかそうだ。
オレはヤツの頭に手を回し、顔を近づけた。
だが…
寸前で止めた。
「チョモ…今、キスなんかしちゃったら…オレ、それだけじゃ収まらない気がする…。お前のお母さん、下にいるし…」
キスもエッチもしたことがない…わけじゃない。
だけど…
…相手は夢野つばさだぞ!…
ちょっと怖じ気付いた。
「…高野くん…」
「…スマン…」
「ううん…なんか、私こそ…ごめん…」
ヤツはそう言うと、その場にドスッとしゃがみ込んだ。
「おい!大丈夫か!?」
「緊張が解けたら、腰が抜けちゃったみたい…」
「なんだ。…らしくないな」
「どうせ…私は…女らしくないですよ!」
ヤツはそう言うと、壁に手を付き、立ち上がろうとしたが、またよろけて、再度尻餅をついた。
「おいおい、大丈夫かよ」
「大丈夫…」
「手ぇ、貸すよ…」
「ありがとう」
オレは右手を差し出し、引っ張りあげると、ヤツは立ち上がった勢いで、全体重をオレに預けてきた。
「ぬぉっと!」
ヤツを抱き止める…。
「すまん、不可抗力だ!」
オレはすぐに身体を離そうとした。
しかし、ヤツがオレの腰に回した両腕は、離れない。
「チョモ!?」
「ちょっとの間だけ、こうさせて…。少しだけ、私にも好きな人ができた!…って、実感させて…」
「…あぁ…わかった…」
…どこが女っぽくないだよ…
オレはリクエストに応えて、一旦は下ろした腕を、肩越しからそっと巻き付けた。
どれくらいの時間、そうしたか。
ヤツは一向に離れる気配がない。
…寝てるのか?…
「チョモ?」
オレは呼び掛けた。
「…なぁに…」
「あ、いや…動かないから寝たかと思って…」
「…寝てないよ…。だけど、なんか、すごく幸せな気分になっちゃって…ちょっと、意識をなくしてたかも」
「は?じゃあ、もっと意識なくしてみる?」
オレの精一杯の照れ隠し。
…「ばか」って言うに決まってる…
でもヤツは…
何も言わずに頷きやがった!
そうなったら仕方ない。
「許せ…」
オレはチョモを壁際に押しやると、ついに自らの唇を、ヤツの唇に重ねた…。
知り合ってから、約6年。
初めてお互いの秘めていた想いが、結実した瞬間だった…。
~つづく~