【ラブライブ μ's物語 Vol.4】オレとつばさと、ときどきμ's ~Winning wings 外伝~ 作:スターダイヤモンド
「え~、なんで、あらいずが!?もしかして、わたしのために、きくれたの?うれしい!」
「プッ!綾乃さん、それはさすがに棒読みしすぎじゃないですか?」
「あははは…それは、あなたが悪いんでしょ?先に『来る』って教えちゃうんだから…」
「そうなんですけどね、もう少し、上手にやりましょうよ…って、なんか逆に向こうがビックリしてますね…。綾乃さんへのサプライズが、A-RISEへのサプライズになっちゃった…」
「どうして園田さんがここに?」
「は~い!私が呼びました!」
綺羅ツバサの問いに、萌絵が手をあげて答えた。
「はるかさんが?」
「詳しいことはあとにして…まぁ、座ってくださいな」
「あ、今、場所を空けますね?」
かのんが自分のグラスと皿を持って、席をズレた。
「いや、そんなことをしなくても…私たちはここでいいわよ」
ツバサは元々空いていた席を指し、かのんにそう言ったが
「まぁまぁ…」
と半ば無理矢理腕を引っ張られ、イスに座らされる。
あんじゅと英玲奈も同様のことをされ、並び順は…綾乃(つばさ)、ツバサ、あんじゅ、かのん(めぐみ)…反対側に海未、英玲奈、萌絵(はるか)となった。
店員に飲み物を訊かれ
「同じのでいいわ」
とツバサ。
あんじゅと英玲奈もそれを頼む。
萌絵も、自分たちの分がなくなったから…と追加注文をした。
ほどなくして、7人分のオレンジジュースがテーブルに運ばれる。
萌絵が全員にグラスが行き渡ったのを確認すると
「それじゃあ、改めて…『夢野つばさ、オリンピックでメダル獲ってこないと、許さないぞ!の会』を始めます。カンパーイ!!」
と、再び音頭を取った。
「カンパーイ!」
「…って、そんな名前の会だったっけ?」
「はい、綾乃さん。シルフィードの活動を休んで、これに懸けてきたんですから、それはメダルを獲ってきてもらわないと…ねぇ?」
「萌絵の言う通りです」
「うん、まぁ、やるだけのことはやるわよ。それより、A-RISEの皆さん、わざわざ、ありがとうございます」
「他ならぬ、シルフィードの夢野つばさの壮行会だもの?それは来ないわけにはいかないでしょ?」
ツバサは綾乃にそう告げた。
シルフィードとA-RISEの関係は、少し複雑だ。
年齢でいうと、上から…A-RISE、夢野つばさ、アクアスターという順になる。
一方、芸能界のデビューは早い順から夢野つばさ、アクアスター、A-RISE。
綺羅ツバサたちは一番後輩だ。
さらに夢野つばさは、カリスマモデル『AYA』として、A-RISEがデビューする3年も前から活躍していた。
彼女たちからすれば、年下ではあるが芸能界の『大先輩』だと言える。
そういう事もあり、夢野つばさとA-RISEには、少し『距離』がある。
アクアスターの2人ほど親密とは言いがたい。
だからこそ、今日、3人が来るというのはサプライズだったのである。
実は、夢野つばさとA-RISEが会うのは、これが3回目だった。
それは『つばさが音楽活動を休止したのと入れ替わりで、A-RISEがプロデビューしたから』であり…つまりアクアスターの2人とは何度も競演しているものの、つばさと絡む機会がなかったからである。
仕事で一度。
音楽のイベントでアクアスターを激励に訪れた時に、楽屋で居合わせたことが一度。
それ以外に…すれ違った…くらいのことは、あるかも知れないが、ほぼその程度だ。
その唯一の仕事は、音楽雑誌の企画『シルフィード×A-RISE』の対談で…それも、つばさが『サッカーに専念するから』とオファーを断り続け…オリンピック出場が決まってから、昨年末にようやく実現したものだった。
話題は、お互いの音楽感や衣装・ステージのこだわり、休日の過ごし方から趣味の話まで多岐に及んだ。
進行役のライターが、それぞれの印象について訊ねると…シルフィードはA-RISEがデビューする前から、注目していたことを打ち明けた。
そして、自分たちと同じジャンルでないことにホッとした…と素直な気持ちを語った。
A-RISEも、シルフィードと同じような印象を持っていたようだ。
ただし、世間に知られるようになったのは、A-RISEの方が少しあと。
それ故、かなり苦労もしたらしく、今まで明かすことのなかったエピソードを、初めて述べた。
例えば…3人の風貌がシルフィードの3人と似ていたことから、彼女たちのモノマネを強要されることもあったらしい。
「私たちの方が先に生まれてるのに、なんでシルフィードのマネとか、二番煎じって言われなきゃいけないの?」
とえらく立腹したそうだ。
ツバサはツバサで、名前に関して
「(夢野つばさ人気にあやかって)お前もツバサかよ…」
みたいなことを随分言われたという。
その度に
「向こうは芸名、私は本名なの!と反発していたのよね」
…と笑った。
だが
「私たちは私たち。自分たちの歌を、ダンスを突き詰めていこう!」
という想いが、今に繋がっている…とも語った。
その上で
「シルフィードは年上とか年下とか、そういうことは関係なく、尊敬すべきアーティスト。ジャンルこそ違え、私たちに刺激を与え続けてくれる、大切な人たち」
との言葉を残している。
更に
「夢野つばさは芸能界においても、スポーツ界においても、唯一無二の存在であり、同じ名前を持つ者として心から応援している」
とツバサは言った。
それは社交辞令ではない。
彼女の本心だった。
「いつか6人でステージに立てたらいいね」
対談の最後は、そんな一言で締め括られた。
その6人が、ステージではなく、イタリアンの店で集まろうとは、その時は誰も想像しなかった。
綾乃が事前に知らされたとしても、A-RISEの参加は、サプライズに間違いなかったのだ。
「オリンピックかぁ…凄いわね…」
「あぁ、何故かわからないが、こっちが緊張してしまう」
あんじゅは少しアンニュイに、英玲奈はやや男言葉で…その喋り方は昔から変わらない。
「どう、調子は?」
『ツバサ』は横にいる『つばさ』に問い掛ける。
「可もなく、不可もなく…ですね。本番にピークを持っていきたいので、これから徐々に」
「なるほど」
「明後日から合宿なので、リラックスできるのは、今日までって感じです」
「そう…。そんな大事な時に呼んでもらって、逆に光栄だわ」
「メダルは保証できないけど…精一杯暴れてきます」
「『藤綾乃』じゃなくて『夢野つばさ』で出るんだから、世界に『羽ばたいて』ほしいわ。私もいつか絶対に世界に羽ばたいてみせる!でも、その前に…頼むわよ!」
「はい、頼まれました!」
綾乃はツバサの言葉に、敬礼をして答えた。
「折角なら、園田さんとアクアスターで、応援歌を作ってあげたらどうだ?」
「えっ?私が…ですか?…」
英玲奈の唐突な提案に戸惑う、海未。
ツバサもあんじゅも…シルフィードの3人も、驚いて彼女の顔を見る。
「『何故、ここにいるか?』の理由は、まだ聴いていないが、稀代の名作詞家がこの部屋にいる。ギターリストも、キーボーディストもいる。壮行会ならそれくらいのプレゼントをしてもよいのではないか?」
「なるほど…それは面白いですね。英玲奈さん、ナイスアイデアです!」
「た、大したことではない…」
萌絵に誉められ、英玲奈は顔を赤らめた。
「それでしたら… タイトルは『Winning Wings』などというのは、いかがでしょうか?」
「早っ!」
「もう、できたんですか?」
「いえ、萌絵さん、かのんさん…できた…というよりは降りてきた…というところでしょうか」
「『Winning Wings』…勝者たる翼…か。夢への翼が、夢じゃなく現実のものとなり…さらにオリンピックでメダルを目指し、勝利をもぎ取る…『つばさ』にピッタリのタイトルだ」
「韻を踏んでて、語呂もいいわね」
「さすが、園田さん。まったくブランクを感じさせない」
「恐縮です…」
「ところで、はるかさん。『何故、園田がここに?』…の説明はいつしてくれるのかしら?」
綺羅ツバサは核心を突いてきた。
「すみません、本来、私は参加する資格などないのですが…」
「園田さん、誤解しないでほしいわ。居てはいけない…という意味ではなくて、私たちが最後に会ったのは、もう3年以上前だったから…今、目の前に入るのが、嬉しくもあり、懐かしくもあり…。実は色々な感情が溢れだしてきて、少し興奮しているの!訊きたいことも、山ほどあるし」
「右に同じ」
「私もだ」
「ツバサさん…あんじゅさん…英玲奈さん…」
…なんか私、出る幕ないかも…
萌絵は4人の様子を見て、心の中で呟いた。
~つづく~