【ラブライブ μ's物語 Vol.4】オレとつばさと、ときどきμ's ~Winning wings 外伝~ 作:スターダイヤモンド
ネット上のバトルは、当事者のファン、アンチだけに留まらなかった。
『μ's』という文字が検索ワードで急上昇すると、それまで鳴りを潜めていた『かつての彼女たちのファン』が堰を切ったように書き込み始めた。
一番多かったのは、μ'sの復活を望む声。
本人たちは『やりきって解散した』のだが、ファンからすると『まだまだこれからだったのに!』という想いが強い。
(公式ではない)ファンが作ったμ'sの応援サイトなどでは、常にそういう意見はある。
しかし、ここに来て『想い出』として胸にしまっていた者たちの中に『μ's復活』の文字が降って湧いてきた。
俄然盛り上がる『再結成希望派』。
署名を募る動きまで始まっている。
一方『μ'sのファンではあるが、再結成は反対』という意見もある。
比率にすれば、半々くらいであろうか。
「μ'sは彼女たちが『女子高生』だったことに意味があって、二十歳を過ぎて『劣化』した姿など見たくない!」
などの理由がほとんどだった。
この議論はなにも、μ'sに限ったことではない。
解散、もしくは活動停止したバンドやグループには、必ず出てくる話題である。
その場合、一般論として、否定派の方が多い。
見た目はもちろんのこと、パフォーマンスのクオリティが『当時とまったく同じ』ということはあり得ず…いわゆる『劣化』によるイメージダウンを怖れるためである。
「こんな姿は見たくなかった…」と後悔するくらいなら、見なかった方がマシというワケだ。
もちろん(海未に非がないにせよ)、今、ここで再結成の話を持ち出すなど、あまりに不謹慎である…という、至極まっとうな意見もある。
高野梨里は意識を取り戻したとはいえ、現役復帰できるかどうかもわからないほどの重症なのだ。
それを差し置いてμ'sの再結成…お祭り騒ぎなど、考えられないという話である。
「このタイミングでμ'sがどうこうは、ひとまず置いておいて…好きだったアーティストの復帰の賛否については…どっちの意見もわかりますね」
と萌絵。
「うん、わかる…。たぶんμ'sに限って言えば『やるからには』中途半端なことはしないでしょうし、逆にレベルを上げてくると思いますけど、それがファンのニーズに合致するかどうかは別問題ですし…」
かのんがそう言うと、萌絵は二度ほど頷いた。
「私個人としては『大人の魅力溢れるμ's』も見てみたいんですけどね」
「萌絵さん…」
「あ、いえ…気にしないでください。あくまでも個人的な意見ですから…」
「確かに、今もμ'sを愛してくださっている方がいらしゃることについては、幸せと申しますか…それは本当にありがたく感じております。…ですが…」
「わかってますよ。私たちが同じ立場となったら…やっぱり悩むと思いますし」
萌絵は、海未の言葉を遮った。
今、その話をすべきでないことは、萌絵もわかっている。
だが、目の前に本人がいる以上、可能性の有無について、訊いてみたくなるのは致し方ないことだった。
「すみません、今の話は忘れてください」
萌絵は、もっと突っ込んで訊きたい気持ちを抑えて、ペコリと頭を下げた。
「問題はメンバーの『プライバシーが荒らされていること』じゃないかしら…。これはなんとかしなきゃいけないと思うわ」
「そうねぇ…。さっき英玲奈が言いかけた時、私は止めたんだけど…やっぱり、そこは避けられない…か…」
「あぁ。我々とは立場が違う。早いうちに手を打たないと」
ツバサ、あんじゅ、英玲奈…A-RISEの3人が次々に口にした。
そう、彼女たちの言う通り、ネット上ではμ'sの『復活する、しない』から派生し、各メンバーの現状に対する書き込みが急増している。
『あの人は、今!?』である。
TVや雑誌の企画ならまだしも、ネットユーザーの推測や伝聞に基づく、無責任な書き込みを、A-RISEの3人は憂いた。
それはシルフィードの面々も同じだ。
そして、そうなったことに関する責任を一身に受けているのが…海未だった。
いや、この場にいる誰もが『彼女に責任がある』…など思っていない。
見当違いも甚だしい。
海未も、周りに諭され、頭では理解しているもの
「…とはいえ、やはり私がこうならなければ…」
と堂々巡りのやりとりに陥ってしまう。
『あの人は、今!?』的な書き込みは以前からあった。
なかったわけではない、
それでも、これまでは実害が及ぶことはなかった。
それが、この数日で状況が一変する。
具体的、かつ詳細な情報が明らかに増えている。
今は玉石混淆…。
ニセの情報の中に埋もれていたり『真実を否定する』書き込みがあったりで、上手い具合にぼやかされている。
だが、見る人が見ればわかる。
そして、同時多発的に別の話題が書き込まれる。
『μ's解散の原因は、メンバーの不仲』
誰が言い始めたのか…
これがキッカケで『実は園田海未のシゴキにメンバーが耐えられなかった』だとか『矢澤にこがアイドルに見切りを付けて、裏切った』だとか『誰と誰が絶交状態である』…など、本人たちからすれば、笑ってしまうような情報が、平然と流されている。
加えてμ'sの中にも『アンチ海未』がいるように、各メンバーのアンチが『攻撃的な主張』を繰り広げ、彼女たちを取り巻く状況はカオスと化してきた。
その内容は、μ'sメンバーのみならず、穂乃果や絵里の妹『雪穂』や『亜里沙』にまで及んでいる。
かなり危険な状態。
高野は病室から『オフィシャルなコメント』として
「事故に巻き込まれた女性は、自分と一切関わりがない一般人であるため、そっとしておいてほしい」
と、マスコミ向けに発表した。
丁度、今時分、それが公開されているものと思われる。
だが、既に手遅れだ。
ネットユーザーたちの話題は、当事者だけでなく、メンバー…その親族にまで及んでいる。
この状況を鑑みるに、果たしてそのコメントが早く出ていたところで、歯止めが利いたかどうか…。
そして、もうひとつ。
μ'sの復活の話題と共に、盛り上がっているのが『μ'sとA-RISEの実力はどちらが上か?』という、ファン同士の争いだった…。
~つづく~