【ラブライブ μ's物語 Vol.4】オレとつばさと、ときどきμ's ~Winning wings 外伝~   作:スターダイヤモンド

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after μ's

 

 

 

 

「一番の要因は、モチベーションの低下だと思います」

 

「モチベーション…ですか?」

 

海未の言葉に、萌絵が鸚鵡返しをする。

 

「はい…。まず私たちがスクールアイドルを始めたのは、母校の廃校阻止が目的でした。A-RISEの皆さんを見た穂乃果が、本当に思い付きで言い出して…」

 

「その行動力とか決断力が、高坂さんの素晴らしいところね」

 

「いえ、ツバサさん。それは褒めすぎです。私はそのせいで、どれだけ振り回されてきたか…あっ、すみません。つい穂乃果のことになると、愚痴ばかりが出てしまい…」

 

「構わないわよ。園田さんが高坂さんを、どれだけ好きか…は知ってるもの」

 

「あ、いえ…それは…」

 

「それで、廃校は阻止ができたんですよね?」

 

「えっ?は、はい!そうです。お陰さまで…」

 

一瞬、ツバサの言葉に顔を赤くして、返答に困った海未だったが、萌絵のフォローに救われたようだった。

 

「そして、次に生まれた目標がラブライブでした。諸事情で一旦はエントリーを断念しましたが…その後、もう一度挑戦することができ、A-RISEの皆さんと戦えて…なんの間違いか優勝までしてしまいました…」

 

「『間違い』などと言わないでほしい。それでは私たちが納得できない。あれはμ'sの実力だ」

 

「英玲奈さん…そうですね…ですが実力以上の『なにか』があったのも事実です」

 

「そうかもね。勢いとかタイミングとか…でも、そういうのを引き寄せるのも実力があってこそ!でしょ?」

 

「運も実力のうち…って言いますしね」

 

あんじゅの言葉を、かのんが継いだ。

 

「勢い…というのは、その通りかもしれません。海外ライブも、アキバでのラストライブも、無我夢中でしたから」

 

「飛ぶ鳥を落とす勢い…ってこういうことだと思ったわ」

 

「その節は…ツバサさんたちにもご協力頂きありがとうございました」

 

「私は…またいつか、ああいうことができると期待していたんだけど…」

 

「…はい…」

 

 

 

「燃え尽きた?」

 

 

 

「えっ?」

 

 

 

「その短い間に完全燃焼しちゃったんじゃない?」

 

「綾乃さん…」

 

「私はね…バレーボールも、モデルも、アーティストも…全部中途半端に終わってるから、このサッカーはボロボロになるまでやろうと思ってるの。でもμ'sは…その短期間でやりきっちゃったんじゃないのかな?」

 

「仰(おっしゃ)る通りです。3年生の3人が抜けて『μ'sがμ'sじゃなくなった』…と気付かされた時…もう私たちには、新しく何かを始める気力は残されていませんでした…」

 

「精も根も尽き果てた…って感じですか?」

 

「はい、萌絵さん。しかしながら…私たちだけでしたら、どこかで活動を再開していたかもしれません」

 

「…と言いますと?」

 

「新入部員の存在が、大きく方向性を変えました」

 

「新入部員…ですか?…」

 

「私たちの場合、μ'sは『アイドル研究部』という『部活の中』に存在しておりましたので、年度が替わり、部員が新しく入ってくる…というのは、当然のことなのです」

 

「部活…か…」

 

「ただ…私たち9人は…学年こそ違え同じ時期に活動を始めた…いわば『創設者』みたいなものでしたから、実質、後輩を迎え入れるというのは初めてのことで…彼女たちとどうやっていくかが、一番の課題だったのです」

 

「なるほど、なるほど…つまり、新入部員も同じグループで、一緒に活動するかどうか…ということですよね?」

と萌絵。

 

「えぇ…。それが、ひとりふたりなら、それもありえたと思うのですが…10名以上も入ってくるのは想定外と申しますか…いえ、そのような事も考えてはおりましたが…」

 

「あれだけ派手な活躍をすれば、当然の結果であろう」

さもありなん…と英玲奈が呟く。

 

「はい…嬉しい誤算でした。それだけの人数が集まる…ということは、私たちが認められた証しだとも言えますので。…それと同時に、彼女たちを育てなければならないという『責任』が発生しました」

 

「責任?」

 

「目指すべき目標がない私たちと、同じユニットで活動をさせる…ということは、大変な失礼だと思いました。それに生徒会の仕事もありましたし、充分、そこに注力できないのは目に見えてましたから」

 

「いざ自分がその立場になったら…って考えれると難しい問題ですね…」

 

かのんは腕を組んで「う~ん…」と唸った。

 

「それで、私たちは新入部員たちを指導、育成していく道を選んだのです。スクールアイドルは曲も、衣裳も、振り付けも…全て自分たちで作るのが基本ですから」

 

「そうだな」

頷く英玲奈。

 

「穂乃果は生徒会長でしたので、どうしても、そちらの仕事を優先せざるをえなかったのですが…私は作詞、真姫は作曲と歌唱指導、ことりは衣裳デザインや裁縫、凛は体力トレーニンとダンス…そして花陽は総合演出…と分担して指導にあたりました。それはそれで充実した毎日だったと思います」

 

「でも…μ'sのように目立った活躍はなかったですよね?その後輩たちは…」

 

「彼女たちの目標が、必ずしも『ラブライブ出場』『優勝』ではなかったということです。もちろん、そういう部員がいなかったわけではないですが『楽しく、そういうことをしてみたい』という者もいましたし」

 

「ストイックで有名な園田さんとしては、それは『アリ』なのかしら」

 

「ツバサさん、私も鬼ではありませんので…」

 

「これは失礼…」

 

「いえ、実を言うと…花陽に言われたんです。『多様性を認めてほしい』と」

 

「多様性?」

 

「アイドルが好きって言っても、歌うのが好き、観るのが好き、可愛い衣装が好き…曲を作りたいとか、プロデュースしたいとか…一様ではないと。だから、新入生が入ってきた時には、できるだけその人の要望を聴いてほしい…と」

 

「小泉さんらしい考えだ」

 

「はい。彼女自身、幼い頃からアイドルに憧れていて、知識も豊富で…でも内向的な性格から、それを披露することもできず、随分寂しい思いをしてきたようですからね。そういった同じような境遇の人の、受け皿になりたい…というのは強くあったようです」

 

「確かに。私たちは大勢のスタッフに支えられて今がある。そういうことに興味をもってくれた人が、その道に進むこともあるだろうし」

 

「ええ。花湯自身、この経験が活きて、今や新進気鋭の映像クリエイターですから」

 

「それってA-RISEの皆さんが橋渡しをしたんですよね?」

 

「彼女が録ったPVを、一緒に仕事しているディレクターに紹介しただけだ」

 

「そのチャンスをものにしたのは彼女の実力よ」

 

英玲奈とあんじゅは微笑みながら、萌絵に話した。

 

「いつか、私たちも一緒にお仕事するかもしれませんね」

 

「そう遠くない気がするわ」

 

かのんの問い掛けに、ツバサがそう答えた。

 

 

 

 

 

~つづく~

 


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