【ラブライブ μ's物語 Vol.4】オレとつばさと、ときどきμ's ~Winning wings 外伝~   作:スターダイヤモンド

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新文のスクープ(その2)

 

 

 

 

高野は週刊誌を読み進める。

 

 

 

 

 

〉しかし、高野を支えているのは夢野だけではなかった。彼にはもうひとり、面会を許す女性がいるのだ。

 

〉その人は『Sさん(20)』という。

 

〉Sさんは伝説のスクールアイドル『M's』の元メンバーで、現在は都内の大学に通う3年生だ。

 

〉M'sで活動していた当時は作詞を担当しており、等身大の彼女たちの感情を表現した詩は、多くの若者の共感を呼び、今なお歌い継がれてる。

 

〉彼女は歌唱力、運動神経の良さにも定評があり、ストイックな性格も相まって、チームを引っ張るリーダー的存在だった。

 

〉また趣味は書道、特技は弓道という和風テイスト漂う、文字どおり、文武両道のクールビューティーである。

 

 

 

 

 

…へぇ、弓道ねぇ…

 

…初めて彼女の後ろ姿を見たとき、オレの脳裏に浮かんだ『大和撫子のイメージ』は、まんざら間違いじゃなかった…ってワケだ…

 

 

 

 

 

〉さて、まずは彼女と高野との接点だが、あの事故に一緒に巻き込まれたのがSさんだったらしい。

 

〉衝突して向かってくる車に対し、逃げ損なったSさんを助けたのが、高野だったということだ。

 

〉高野と一緒に救急車で運ばれたSさんだったが、検査の結果、掠り傷だけで、頭とかは打っておらず、幸い大事には至らなかった。

 

〉しかしSさんは、高野が意識不明の重体と知ると、一晩、回復を祈り、病院内に留まったという。

 

〉高野が意識を取り戻してからも何度か、彼を見舞っている。実は我々が取材した当日も、病院へ向かう最中だった。彼女曰く「助けていただいた恩人を見舞うのは当然のこと」だという。今時、実に義理堅い、健気な女性である。

 

 

 

〉しかし、夢野つばさ不在時に、彼と二人きりになるというのは、いかがなものか?

 

 

 

〉実は高野の病室で、夢野つばさとSさんは、同席している。それも一度ならず二度までも。

 

〉共に、訪れるには純粋な理由があり、たまたま見舞った時間が同じだったということなのだろう。

 

〉また後述するが、二度目に同席したときは、まず夢野が星野はるかと水野めぐみ(つまりアクアスター)と一緒に病室を訪れ、そこにあとからSさんが合流している。

 

〉さらに4人は、病室を出たあと一緒に出掛け、なんとA-RISEと共に食事をしているのだった。

 

〉それだけ「親密な付き合い」をしているわけだから、Sさんが高野と夢野の関係を知らないというのは、逆に不自然なことである。

 

〉実際、我々の取材に対し「高野さんには彼女がいますので…」と証言したのはSさんなのだから。

 

〉…であるならば、夢野がオリンピックで不在の中、ひとりで病室に乗り込むというのは「いくら恩人の見舞い」とはいえ、あまりにも軽率な行動ではないだろうか?

 

〉李下に冠を正さず。

 

〉その仲を疑われても、仕方がないことである。

 

 

 

 

 

…おいおい…ツッコミどころ満載だな…

 

…そもそも、園田さんはあの日以来、ここには来ていない…

 

…まぁ、オレはその必要はないと思っていたから、別に気にもしていなかったが…

 

 

 

…いや、待てよ…

 

 

 

…本当はここに来るつもりだった?…

 

…だが、その途中に捕まり、やむ無く予定を取りやめた?…

 

 

 

…だったら、それは本当にとばっちりだ…

 

…チッ!なんてことだ…

 

 

 

高野は舌打ちをして、一旦、週刊誌を閉じた。

 

だが、記事はまだ続いている。

 

苦々しく思いながらも、その文章に目を落とす。

 

 

 

 

 

〉さて、もうひとつ。疑問がある。

 

〉何故、彼女は高野と一緒に事故に巻き込まれたのか…ということだ。

 

〉これについて高野は「女性と一緒にいた事実はない」とコメントを発表している。同じようにSさんも「事故現場で居合わせたのはまったくの偶然で(彼が高野選手だということも)まったく知らなかった」と、我々に語った。

 

〉片やサッカー界のホープ。片や伝説の元スクールアイドル。この広い日本で、2人が偶然居合わせるという確率は、天文学的数字であり、にわかにその話を信じることができない。

 

〉Sさんはこの日、大学の弓道サークルの飲み会に参加していたが、二次会を断り、早々に帰宅したという。事故はその道中で起こった。

 

〉「もしかしたら、そのあとデートの待ち合わせでもしていたのかも知れませんね」とは、同じサークル仲間の話。

 

〉なるほど、それなら少し合点がいく。

 

 

 

 

 

「いかねぇよ!」

 

黙読していた高野は、思わず声を出した。

 

「どうした?」

 

「なんだよ、この『そのあとデートの待ち合わせだったかも知れない」とか、テキトーな話は…。それに『偶然会う確率は、天文学的数字』だと。そうだろうとなんだろうと、そうだったんだから仕方ないだろ」

 

「論点をぼかして、話題をすり替える。ゴシップ誌の常套手段だよ。数字の根拠を明確にしてないだけで、間違ってはいない」

 

「あぁ?」

 

「確かに『地球上で偶然会う確率』はそうなんだろう。だがそれは世界の人口に対しての話であって、日本の人口に対してなら?都内なら?新宿区なら?という数字ではない」

 

「…」

 

「文章を読んでも『○○だろう』『○○らしい』とか、断定した言葉はひとつもない。この辺が上手いとこだな」

 

「感心してる場合じゃないだろう」

 

「向こうは売れてナンボだからな。その為ならなんでもする」

 

「人を不幸にしても…か?」

 

「…しかし、真実はひとつしかない…」

 

「コナンみたいなことを言うなよ…」

 

「まぁ、お前のことはどうでもいいが、彼女のことは心配だな」

 

「あぁ…」

 

 

 

高野は最後まで読むのをやめようかと思ったが、彼女を守る為、内容の確認だけはしようと思った。

 

 

 

 

 

~つづく~

 


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