【ラブライブ μ's物語 Vol.4】オレとつばさと、ときどきμ's ~Winning wings 外伝~   作:スターダイヤモンド

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新文のスクープ(その3)

 

 

 

 

 

〉さて、そのSさんであるが…ネット上では、わりと早い段階から、高野梨里と一緒に事故に巻き込まれたことは話題になっていた。

 

〉そのSさんの名前が検索ワード等で急浮上したことにより、彼女たちのファンから、アイドル活動再開希望の声が増えている。元々、そういう話がなかった訳ではないが、これを機に爆発したようだ。

 

 

 

〉そこで、元メンバーに直接取材を申込み、彼女たちの今と、ユニット復活の可能性を探ってみた。

 

 

 

〉まずはM'sのリーダーで、現在は都内の大学に通う『Kさん(20)』。

 

〉実家が和菓子店というのはファンには有名な話で、ここは『聖地』と呼ばれている場所のひとつとなっている。

 

〉Kさんは、たまに店頭に立つこともあるらしい。明るく屈託のない笑顔は今も健在で、彼女逢いたさに訪れる客も少なくないという。

 

〉我々は、そんな彼女の通学中に遭遇し、取材を申し込んだ。当時と比べ、かなりふっくらとしたように見える。

 

〉人懐っこい微笑みで我々に挨拶してくれた彼女であったが、アイドル活動の再開について話を向けると「すみません。急いでいますので…」と丁寧に一礼して、その場から去ってしまった。

 

〉大学の同級生によると、普段はムードメーカー的役割で、周囲にはいつも仲間がいるという彼女だが、スクールアイドル時代の話はしたことがないという。

 

〉現在はマスコミ関係の制作に携わりたいと、就活中のKさん。彼女のポテンシャルなら、裏方ではなく、華やかな表舞台の方が良く似合うと思うのだが…。

 

 

 

 

 

「う~…『かなりふっくら』したとか…あんまりだよ~』

 

穂乃果が大きな声で叫ぶ。

 

 

 

高野梨里がベッドで週刊 新文の記事を読んでいるのと、時を同じくしてμ'sのメンバーも、ここ…穂乃果の部屋…に集まって、それを見ていた。

 

 

 

「まぁ、そこは間違ってないから、仕方ないにゃ~」

 

「そんなに太ってないよ~」

 

「それは穂乃果ちゃんが認めてないだけにゃ」

 

「いやいや、そんなことないって」

 

「あるわよ。私たちが忠告してるにも関わらず、全然言うことを聞かないんだもの。まぁ、もうアイドルじゃないんだし、私たちには関係ないことだけど」

真姫は少し冷ややかな目で、穂乃果を見る。

 

「そんなに変わったかな?体重だって少ししか増えてないんだけど」

 

「毎日見ていれば、わからないかもしれないけど、久々に見ると一目瞭然なのだと思うわ」

絵里の言葉も手厳しい。

 

「だって、高校卒業してから、まともに運動らしい運動してないだもん」

 

「それを『自堕落』っていうのよ」

 

「うぅ…にこちゃんまで海未ちゃんみたいなことを…」

 

穂乃果はすがるような目でことりを見たが、彼女は「うふふ…」と笑って、それを受け流した。

 

「そ、それにしても…訊かれてもいないことまで、よく書くよねぇ。穂乃果は、一言も就活の話なんてしてないのに」

形勢が不利と知った穂乃果は、慌てて話題を変える。

 

「確かに。そのリサーチ力と、それを『さも聴いたかのように』書く能力は大したものね…」

真姫は皮肉たっぷりに、呟いた。

 

 

 

「次は凛のことが書いてあるにゃ」

 

集まったメンバーは、その先の記事を読む。

 

 

 

 

 

〉続いて直撃したのは小柄ながら、バツグンの運動神経で人気を博した『Hさん(19)』。現在は専門学校に通っている。

 

〉授業終わりに訪ねたのだが…記者は彼女の外見が変わっていなかったことに、まず驚いた。話し方こそ、大人っぽさを感じたものの、髪型含め、見た目はまったく同じで、恐らく当時の写真と比べても遜色ないであろう。

 

〉我々の取材に対し、落ち着いて受け答えしてくれたものの、アイドル活動再開について話を振ると「そのことについてはノーコメントで…」と、口を閉ざしてしまった。

 

〉噂によると彼女には、付き合っている男性がいるとのこと。同じ専門学校に通うイケメンらしいが、その件についても顔を赤らめながら「ノーコメントです」と、答えてもらえなかった。

 

〉これは全員に言えることだが、今は一般人として生活している元メンバーたち。彼女たちのルックスを見れば、男性が声を掛けない方がおかしいというものだ。彼氏のひとりやふたりいたとしても、全然不思議ではない。

 

〉それはさておき、スポーツクラブのインストラクターを目指して勉強中だという彼女。キレキレのダンスを貴方が直接教わる日も、そう遠くないと思われる。

 

〉もしかしたら、その時に、恋のチャンスが貴方にも訪れるかも知れない。

 

 

 

 

 

「にゃ~!凛は『何にも変わってない』…って書かれてる…。これは誉められてるのかにゃ?」

 

「そうだと思うよ」

ことりはニッコリと微笑んだ。

 

「う~ん…」

 

「どうしたの?」

 

「だって、ことりちゃん!凛はもうすぐ二十歳だよ!大人っぽく、女っぽくなりたいのに…まるで成長してないみたいな書かれ方にゃ…」

 

「いいじゃん!穂乃果みたいに太ったとか言われるよりは」

 

「それはどうでもいいにゃ」

 

「うぅ…」

 

凛の『にべもない』一言に、穂乃果は撃沈した。

 

「まぁ、老けたとか言われるよりは、格段にいいんじゃないかしら。それに、私たちから見ても、凛は凛のままだし」

 

「私もそう思う。凛がどういう女性を目指しているのかわからないけど…」

 

「真姫ちゃん、絵里ちゃん…。凛の理想は、やっぱり『かよちん』なんだにゃ…。凛も誰からも愛される人になりたいにゃ」

 

「アンタには無理よ。花陽の『愛され力』は天性のものなんだから」

 

「そんなことは言われなくても、凛が一番知ってるにゃ!」

 

「そりゃ、そうね…」

 

にこは愚問だったと、納得した。

 

 

 

「それでどうなの?彼氏とはうまくいってるの?」

 

真姫の問いに、そこにいるメンバー全員が、興味津々で凛を見る。

 

 

 

「にゃ!?彼氏?」

凛の顔が瞬く間に、真っ赤になった。

 

 

 

「アタシたちに、全っ然、報告がないじゃない」

 

「にゃ?にこちゃん…どうもこうも…まだ付き合って、そんなに経ってないし…」

 

「まさか凛ちゃんに彼氏ができるとはねぇ」

 

「あら、穂乃果。それは失礼よ」

 

「違うよ、絵里ちゃん。そういう意味じゃなくて…凛ちゃんは花陽ちゃん一筋だと思ってたから、まさか男の人と付き合うとは…って」

 

「それはそうだけど…」

 

「正直、凛も戸惑ってるにゃ。凛のこと『凄い好きだ』って言ってくれて…そんなに想ってくれてるなら、受け入れてもいいかな…って感じで…」

 

「一回、会ったことがあるけど、顔も悪くないし、優しそうな人だったし…何か不満でもある?」

 

「う~ん、真姫ちゃん…例えばだけど…彼はご飯を2杯しか食べないにゃ」

 

 

 

「えっ?」

 

 

 

「かよちんなら軽く4~5杯食べるから、なんか物足りないんだにゃ…」

 

 

 

「花陽と比較する!?」

と真姫。

 

言葉を発したのは彼女だが、そこにいた全員が同じことを思った。

 

 

 

「花陽ちゃんを基準にしたら、彼氏さんが可哀想かな…」

さすがに、ことりも苦笑する。

 

「そうよ、花陽に敵う相手なんて、フードファイターくらいなものよ」

にこも追従する。

 

「例えばって、言ったでしょ!」

 

「他には?」

 

「かよちんなら、凛が『あそこ行きたい』って言ったら『うん、いいよ』って言ってくれるけど、彼は『そこよりもこっちに行ってみよう!』とか言うにゃ」

 

「はぁ…それは凛、無理があるわよ」

 

「真姫ちゃん、どういうことにゃ?」

 

「凛の中から花陽を消さない限り、一生結婚なんてできないってこと…」

 

「え~!?凛から、かよちんを消すのなんてムリにゃ~」

 

「でしょ?だったら彼氏と花陽は分けて考えないと…」

 

「それはわかってる…にゃ…」

 

「まぁ、気持ちはわからなくないけど…。私も花陽がそばにいてくれないと、時々不安になるし。彼女はそこに存在するだけで、精神安定剤みたいな安らぎを与えてくれるから」

 

「真姫ちゃん…」

 

「でも…だから中途半端に付き合うのは、よくないと思うわ」

 

「…うぅ…」

 

「まぁ、凛の彼氏の事は、私たちがとやかくいうことじゃないけど…こういう事が記事になる…っていうのは、頭にくるわね。私たちはまだいいにしても、直接関係のない第三者のことを載せる…っていうのは…認められないわ」

 

絵里の憤りに、全員が大きく頷いた。

 

 

 

 

 

~つづく~

 







しばし夏休みを頂いておりました。
ボチボチ、再開します。



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