魔法少女育成計画 electric   作:怠惰のブルーコ

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お久しぶりです。
他の方のSS読んでて時間なくて少し遅れました。嘘です。
個人的な用事で少し忙しくなるので、投稿スピードは遅くなると思います。
それではどうぞ。


第九話

☆ルーラ

 

あれから何とか、本当に苦労して場を収め、話を始めることに成功した。

どうやったら話し合いを始める行為に、こんなに疲れさせられるのだろうか。やはりライデンはおかしい。

 

「んー?ルーラちゃん何か失礼なこと考えてない?」

 

「…考えてないわよ」

 

おかしい上に意外と鋭いのだからタチが悪い。

 

「それで、そこの二人はもういい?」

 

「はい…すみません…」

 

「い、いやいや、私が悪かったんだ。だから、スノーホワイトが謝る必要はないさ」

 

「……ツーン」

 

「うっ…」

 

スノーホワイトはラ・ピュセルに少しご立腹らしい。

まだ引きずってるのかこいつらは。

…ホントに追い出した方がいいか?

 

「まあまあそう怒らずに。それじゃ、マジカロイドちゃんはさっき聞いたから、次はスノーホワイト。さっきも聞いたけど、貴女はなんのためにここに来たの?」

 

「私は…ファヴが言っていたことか信じられなくて、ライデンに直接会いたかったから。こっちももう一度聞くけど、ライデンは、自分の快楽の為に、カラミティ・メアリと森の音楽家クラムベリーを倒したの?」

 

「違うよ?」

 

ルーラが、カラミティ・メアリはくたばってくれて感謝してる人も多そうだなー、ついでにライデンもくたばらないかなーなどと思っていると、ライデンがこちらを向きニッコリした。

 

…本当に読心の魔法でもあるのだろうか?

 

「そっかあ…」

 

「…まあでも私が手にかけたのは事実だよ」

 

「……え!?」

 

ライデンはここで、カラミティ・メアリに脅迫状を送られてきたことや、森の音楽家クラムベリーとファヴについて、ひと通り説明した。

 

「嘘だろ…」

 

「ファヴがそんなことを…」

 

スノーホワイトもラ・ピュセルも信じられないと言った様子だ。かく言うルーラもまだ半信半疑ではあるのだが。

 

「まあルーラちゃんもだけど、流石に鵜呑みにはできないよねー。…そこで、さっき思い出したんだけど、過去にクラムベリーとの会話を一度だけ録音した物が残ってた気がするんだよねー」

 

「ホント!?」

 

「うん。でも場所遠いからそれは後ね」

 

「え?後なの?さっさと取ってきてちょうだいよ」

 

「まあまあ、ラ・ピュセルの話聞いてからね?それで…」

 

「ちょっと待って」

 

とここで口を挟んだのは、スイムスイムだった。

ルーラの鼓動が早くなった。

 

「何かな?」

 

「ラ・ピュセルに聞く。今から話す話は私達も聞かなきゃダメ?」

 

「いや、そんなことはないが」

 

不思議そうな表情でラ・ピュセルが応える。

するとスイムスイムは立ち上がると、寺の奥に…。

 

「それじゃあ私は…」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ。どこへ行くんだ?」

 

よくぞ聞いたと、ラ・ピュセルに対してルーラは頷いた。

話を聞く必要がないからと言ってどこかへ行くのは怪しい。

何を企んでいる?

 

「言わなきゃダメ?」

 

「あ、ああ。今は少しでもバラバラになる行動は避けるべきだろう。それでも離れるのなら、理由を述べてから離れることにした方が…」

 

「トイレ」

 

「…え?」

 

は?

 

「トイレ」

 

…これは自分で聞かなくてよかった。

 

「……す、すまない!いや、悪気があったわけじゃ…」

 

「スイムちゃん、行っちゃっていいよ」

 

「うん」

 

そのままスイムスイムは何事も無かったかのようにお手洗いに向かった。

 

「…ラーピュセールちゃん?」

 

「は、はい」

 

「今のはダメだねー。乙女に恥かかせるなんて万死に値するのだよ」

 

「ごめんなさい…」

 

「そうちゃん…」

 

「……ごめんなさい……」

 

ラ・ピュセルは涙目になりながら謝っており、ルーラも思わず同情してしまうほどだった。

 

「…まあ、よし。そんなこともあるか。それでラ・ピュセル、貴女はなんのためにここに来たの?」

 

「私は……ライデンが、ファヴから聞いたとおりの魔法少女なら戦いに。そうでないなら話し合いに。そういう覚悟できた」

 

それを聞いたルーラはギョッとした。

ライデンと、戦う覚悟と言ったか?

それは…流石に無謀だろう。

ルーラは頭の中で、ラ・ピュセルの評価を下げた。

…無意識下では、自分が屈した相手に勇敢に立ち向かう姿へ、嫉妬していることにルーラは気づかない。

 

「なるほど。…それで?どうだったの?」

 

「今こうして話し合ってるのが答えさ」

 

爽やかに笑ってラ・ピュセルが答える。

カッコつけてるけどさっき涙目だっただろ。

 

「…オーケー理解した。まあ誤解が解けたのはコチラとしても嬉しいよ、うん。さて、じゃあ取りに行くかー」

 

ラ・ピュセルとの話が終わり、ライデンは立ち上がる。

その横顔が少し嬉しそうに見えたのは、恐らくルーラの気のせいだろう。

 

「帰ってくるのにそんなに時間はかけないから、まあその間は君たちで親睦を深めててね。喧嘩とかダメよ?」

 

「さっさと行かんか」

 

「最近ルーラちゃんが冷たい件」

 

そう言い残し、飛び立っていったライデン。

言い残す言葉にもイライラさせられるとは、流石ライデン。

墜落しろと念じながら、そういえばスイムスイムはまだかとトイレの方に目を向けた。

 

「ルーラ、あたしらは何しとけばいいの?」

 

「ひまー」

 

「後に…いや、まあそこの三人と適当に話でもしてたら?」

 

「「オーケー」」

 

後にしろと言おうと思ったが、恐らく仲間にはならずとも味方になる者と話をするのはいい事だろう。

まあバカはバカと話しておけばいいのだ。

 

双子天使がマジカロイドに絡みに行っている間にルーラは、なかなか帰ってこないスイムスイムが向かった扉へと歩き出した。

 

 

ーーーーー

 

 

☆ライデン

 

屋根から屋根へと飛んでいく。

ライデンは持ち前の素早さを生かして、自分の担当区域へと急いでいた。

 

会話を録音したのは、クラムベリーと出会って間もない頃だった。

クラムベリーが行っている残酷な試験を知り、それを告発する事で早急にパムに会えるのではないかと思ったためだ。

 

しかし、クラムベリーは魔王塾の生徒だ。

クラムベリーその悪事の深刻さから、魔王にも責任が問われる可能性もある。

ライデンが魔法の国に告発するのを避けていた最大の理由がそれだ。

 

しかし、ファヴにより端末が使えなくなったため、告発する手段が無くなった。

どう考えてもライデンの失態だ。

これから犠牲者が出るのは避けなければならない。

 

管理者用端末を破壊できるものさえあれば、ファヴを始末して、普通の端末から連絡することはできるが、自分のバチでは少し威力に欠けるし、魔法では端末は壊せないようになっている。

何か魔法の国のアイテムが手に入れば別なのだが…。

 

そんなことを考えていると、ようやくライデンの住んでいるアパートに到着した。

自分の住処がバレてないか確認するために反射的に2の魔法を使い、魔法少女反応があったことに驚いた。

 

録音したものを取り出す前に、そちらを片付けよう。

魔法少女反応がある方を見ると、二人の魔法少女がいた。

ライデンもその二人は知っている。

コンビを組んでいる二人だ。

さてどう説得しようかと悩みながら、ライデンは二人に歩み寄っていった。

 

 

ーーーーー

 

 

☆ヴェス・ウィンタープリズン

 

亜州雫は自分を、一般的に見ても善人とは呼べないと自覚している。

今まで同性とも異性とも付き合ってきたが、長続きしないのはそのせいだ。

人の役に立つことにそこまで価値も感じない。喜びも感じない。

と言っても悪人だとも思ってないのだが。

 

そんな雫でも、羽二重奈々…シスターナナだけは別だ。

彼女は何物にも変えがたい存在で、どんな手段を用いても守り抜く。

彼女の笑顔を見ることには最高の価値があり、最高の喜びを感じる。

 

雫…ウィンタープリズンにとって、シスターナナは己にとっての全てだった。

シスターナナは博愛の心を持ち、平和を望んでいる。

そのため困った人を助けると喜ぶ。

それが理由でウィンタープリズンは魔法少女として一般人を助けている。

もし1人だったなら、あまりこういうことは自発的にしなかっただろう。

 

そんなシスターナナは、危険因子ライデンによって心を乱していた。

自身の快楽のために魔法少女を手にかける。

そんな魔法少女がいるとファヴが言った時、ウィンタープリズンは驚き、シスターナナは震えた。

 

シスターナナが悲しんでいる。

それはつまり、ウィンタープリズンがライデンを許す理由など皆無ということだ。

今隣にいるシスターナナは、ライデンと話すためにライデンの担当地区へ向かっているが、ウィンタープリズンは出会った瞬間に攻撃できるよう身構えながら歩いていた。

 

そして担当地区に入ってしばらくすると、ライデンを発見することが出来た。

そして向かい合うように立っているのは、忍者の格好をした魔法少女と、箒に乗った魔法少女。

確か、リップルとトップスピードという名だったはずだ。

 

ウィンタープリズンは、その二組に何か剣呑な空気を感じ取り、近づこうとするシスターナナを手で止めて、近くの柱に隠れて様子を窺うことにした。

そして、ライデンが手を上げて何か押し止めるような、どうどうとジェスチャーをすると、リップルが突然手裏剣を投げた。

ライデンはどこからともなく取り出したバチで防ぎ、トップスピードがリップルの頭を叩いた。

 

「何してんだお前!向こうは話を聞く態度だっただろうが!」

 

「…でも…アイツは危険だから…」

 

「俺には今のお前の方がよっぽど危険に見えるけどな!」

 

リップルは言い返してはいるが、思ったよりトップスピードの声が真剣だったのか、少しバツが悪そうな顔をしており、何度か舌打ちをしていたが音は小さかった。

ライデンは離れた所でそれを見ていたかと思うと、自然な動作でバチを太鼓に叩きつけた。

そして次の瞬間。

 

ウィンタープリズンとライデンの目が合った。

反射的に隠れそうになったが、ここでシスターナナが前に出てしまった。

 

「覗くような真似をしてしまいすみません。なかなか割って入るような雰囲気では無かったもので…」

 

「…ああ、別にこっちは怒ったりはしてないよー。それで、何か用?」

 

「いえ、ライデンがファヴの言っていた通りの人なら、一度話し合いをした方がいいと思いまして」

 

「あーまあそうだね。そう思うのも無理はないよ。ファヴ結構酷いこと言ってたらしいしね」

 

うんうんと頷きながら応えているが、その様子だとファヴが言うほどの人物ではない様だ。

 

「リップルちゃん達にも色々説明したいんだけどね、今ちょっと用事があるの。スノーホワイト達のところに行かないといけないから、明日詳しく話し合わない?」

 

そう言って、リップルとトップスピードと、シスターナナに向かって問いかけた。

 

「私は構いませんよ」

 

「俺もいいぜ。リップルもいいよな」

 

「……チッ」

 

「よし、こっちはオーケーだぜ!」

 

今のどこがオーケーなのかウィンタープリズンにはさっぱり分からなかったが、ライデンは了解とばかりに敬礼の動作をとると、「また会おう!」と言ってそのまま駆け出して行った。

少し頭がおかしいのだろうと納得し、ウィンタープリズンはシスターナナに歩み寄った。

 

「ナナ、今日はもう帰ろう。明日またライデンと会って話せばいいさ」

 

「そうですね。では、お二人共お気を付けて」

 

シスターナナは二人にお辞儀をして、ウィンタープリズンと共に帰路についた。

後ろで舌打ちが聞こえた気がしたが、気のせいだと気にしないことにした。

 

 

ーーーーー

 

 

☆ライデン

 

「めんどくせー」

 

周囲に誰もいなくなったのをいい事に、ライデンは独りで愚痴をこぼしていた。

ライデンはシスターナナとウィンタープリズンの事が苦手だった。

あの博愛主義にもイライラするが、あれは根本的な部分で歪んでいるのだと、ライデンは心の中で二人を評していた。

 

シスターナナのあの博愛は、どうもライデンが普段から明るく振舞っているように、自らの本心ではないような気がしてならない。

だからと言って、別に好きな相手の前でいい子ぶっている訳でもないのだ。

 

ただ、シスターナナの内面には、ドロドロとした歪んだ本性が隠れているようで、ライデンは彼女を不気味がっていた。

そして、当然ウィンタープリズンはその歪みを知っているのだろう。何せほとんど関わりがなかったライデンですらその気がついたのだから、いつでもどこでも一緒にいる彼女が気づかないはずがない。

 

そして気づいている上で、あのような付き合いを続けているのだから充分おかしい。

ウィンタープリズンにも、シスターナナとはまた違った歪みがありそうだと、今でもライデンは感じている。

そんな嫌いな二人が隠れてこちらを見ていることを知った時、ライデンは咄嗟にそちらを向いてしまった。

 

リップルもトップスピードもいい子だと思うが、あの二人は違う。

ライデンにとっては、カラミティ・メアリのように殲滅対象ではないにしても、あまり関わりたくない相手だった。そんな相手に覗かれていると分かれば、動揺するのも仕方なかったと言えよう。

 

とりあえず録音を理由に逃げ出せたが、明日をすっぽかしてしまうとウィンタープリズンが襲ってきそうで面倒だ。

無論ライデンにとっては撃退など容易いが、リップル達への印象もある。

 

明日は遅刻しないよう気をつけよう、などと考えながら、ライデンは自分のアパートから録音テープを取り出し、試しに聞いた。

きちんと聴けるようだ。

よし、とライデンはそれを持ち上げ、ついでに消費した電力の充電も行った。

 

ライデンの魔法は電力を消費しなければ使えないため、こまめな充電は大切だ。

とは言ってもライデンは現在学校にも通わず働いてもいない。いわゆるニートだ。

時間は余るほどあるので、一日中家で充電することも珍しくない。

そのため、ライデンの電力は常にたっぷりある。

 

それでも、少しでも無いに越した事はない。

ライデンは太ももの部分に巻き付けているプラグとコードを出し、家のコンセントに刺した。

数分後、多少の充電が終わり、ライデンは録音テープを持って、ルーラ達の寺へ駆け出した。

 

魔法少女の中でも屈指のスピードを誇るライデンが本気で走れば、一つの街程度なら直ぐに通り過ぎる。

暫くしないうちにルーラの寺が見え始めたが、寺で少しアクシデントが起こっているようで、ライデンはため息をついた。

 

ルーラの寺では、ライデンがいなくなって様々な事があったのだろう。

仲良くしてと言ったはずなのだが。

恐らくスイムスイムあたりが()()()()()を作り出したのだろうか。

 

ひとまずたまやスノーホワイトの安否を確かめるため、ライデンは()()()()()()()()へと足を踏み出した。




…リップルを動かすのが思ってたより難しい。
遂にスイムスイムがやらかしたので、次からは一気に最終局面まで入るつもりです。

なんと六話から今まで一夜の話です。流石にちょっと延ばしすぎたか…。
別にハードゴア・アリスは忘れていません。ちゃんと出てくるタイミングは考えてますとも。

生存者多めにするつもりなので、生き残る人を予想するという、まほいくならではの楽しみ方もオススメです。

感想や評価、お待ちしております。
モチベとか湧きます。

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