間違いの先に   作:さまそくん

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【#012】決別、決意

 

 

 「八幡君、君これ書いてみ」

 

 

 エトさんから、そう言われたのが事の始まり。渡されたのは原稿であり、とうの本人はニコニコと笑顔を浮かべている。

 頼まれたなら仕方ない。やろう。

 

 

 「…やってやるか」

 

 

 

 

 

 

 △▼△▼△

 

 

 

 

 

 

 この世界は理不尽だ。理不尽で残酷で、冷酷で残忍で醜くて、優しくなくて厳しいのがこの現状の世界だ。それこそが、人間が住まうこの星、地球。その星には、一つの悪夢が存在する。名を、喰種。人の身であって、人ならざる者達…見た目は人間、主食も人間。それらの忌々しい脅威を葬り去る為に出来たのが、喰種対策局、CCG。そして、そのCCGが喰種を殺害する際の信条はそれぞれ十人十色。「喰種だから」「生きる価値がないから」「憎き仇だから」「殺されたくないから」「楽しいから」etc...。

 さて、例外もあるが、そのような人間を真人間と言えるだろうか。喰種の肩を持つ訳では無いが、喰種を思ってみるとたまったものではない。人として生きたい喰種や、人が好きな喰種。それらが、下記の理由で殺されてしまうと心が痛まなくもない。

 

 

 それに、これは戦争ではない。絶対厳守の法(ルール)も存在しない。疑問に思ったことがあるだろうか?

 

 

 例えば、あなたはあるRPGをしていたとする。これはどのゲームにも言えることだが、「その程度の段差乗り越えろよ」と思う事は一度でも無かったと断言出来るだろうか?答えは否だ。空を飛べるのに塔の中に入って一々戦闘を行うのは、我々から見たら人間性を疑うだろう?目の前を通っただけなのに「目線があったな。勝負だ!!」というのは可笑しいとは思うだろう?バトルに負けたからお小遣いを取られ、目の前が真っ暗になるのは変だと考えるだろう?

 

 

 さて、ここまで仮定して、だ。私からの意見を述べさせてもらおう。クエスチョンとしては、「なぜそんなことも出来ない?」としよう。それは、「その世界には絶対厳守の法(ルール)があるから」だ。

 

 

 とある超有名な、和訳にして龍の依頼という国民的なRPG。シリーズをプレイした者なら分かるだろうが、物語が構築されている。戦いに行くのには理由があり、ましてや仲間が増えていくのにも理由があるだろう。最近では新作、IXの発表がされたではないか。主人公はまたかよと言わんばかりに旅をするが、今回の理由は何だったか思い出せる者は思い出して欲しい。

 

 

 そう、誕生日だ。16歳の誕生日、里では旅立ちの日。だから主人公

 は旅に出る。そういった風に、物語は交差していく。

 

 

 つまり、何が言いたいかと言うと、だ。

 

 

 2次元上の世界と、現実の世界では根本的に違う。単純な話であり、それは絶対厳守の法(ルール)が存在するか否か。

 

 

 現実の世界をよくご覧になってほしい。そんな物が存在するだろうか?もっとも、もしすると言っている輩が居るのなら、キッパリと否定してあげるが。

 

 

 そう、人生には絶対厳守の法(ルール)が存在しない。かと言って物語の終結条件、言い換えると勝利条件(エンディング)すらも存在しない。頑張れば勝ち、楽すれば勝ち、そもそも勝ち負け考えたら負け、等と。約70億人の見解によって、勝利条件(エンディング)とも言えない何かが変わる。だが、頑張った所で、それは死と安息で終わる。だから、たった90年近くという短い期間の中で、人は己の努力を他人に見せる。だが、評価されるのは、結果だけ。頑張ったとされる過程に、意味を求める物好きはいない。

 

 

 では、何故絶対厳守の法(ルール)が存在するか、考えた事はあるだろうか?答えは単純かつ簡単だ。「それではつまらないから」。初期段階でレベルカンストで、ラスボスをワンパン出来るゲームなど面白くないだろう?主人公が強過ぎて敵が弱過ぎるゲームなど面白くないだろう?2次元上の世界、ゲームやアニメでは、そういった類の過程を作り出し、序章から終章までを構築する。だが、人生にそんなものは存在しない。

 

 

 そろそろ長ったらしい文章に、終わりを告げよう。

 

 

 結論を出す。

 世界は、根本的におかしい。砕け散れ。もしくは私が砕こう。

 

 

 だが、そんな私にも愛している者がいる。その者の為に命を燃やすのは悪い事だろうか。

 

 

 その答えは否であり、誰かを守るのに理由などいらないというのが充分な理由で済んでしまう。だから、私が妹を想うのに、理由など必要ない。

 

 今の私に力はない。だから、世界を砕き、愛する者の妹らを守る為に自らの命を燃やせるようになる為、力を携えよう。

 

 

 

 

 

 

 △▼△▼△

 

 

 

 

 

 

 俺の書いた、小説的なのの原稿を震える手で掲げているエトさん。原稿を机に置き、涙を流しながら俺に訴えるかのように言ってきた。

 

 

 「素晴らしいよ。君は考え方こそひねくれているが、自分の考えを素直に包み隠さずに語るその姿はカッコイイよ…!!」

 

 

 予想の斜め上。「そんな考えの人は知らないから死ね」とか言われるかと思って震えてた俺が馬鹿みたいだ。恥ずかしい。

 

 エトさんは肩を震わせながら「後継者が…」と呟いている。後継者?

 

 

 「いや大袈裟ですよ。俺小説家なんてなるつもりないで「そうはさせないよ!!君は私の跡を継いでもらう!!!サキちゃん!君はディレクターというかなんというかそんな感じのあれだ!!」

 

 

 「…」

 

 

 「…あの、愛支さん。アタシらまだ学生だけど…」

 

 

 …。

 

 

 漁る川崎に、無言を貫く俺。

 

 そんな訳で、将来が小説家と決まってしまいました、まる。

 

 

 

 

 いやなんで。

 

 

 

 

 

 

 △▼△▼△

 

 

 

 

 

 

 熊の子見ていた隠れんぼ〜♪

 思わず、口ずさんでしまいそうな程に綺麗な夕日が沈みかけ、街を黄金色に染め上げる。窓から見えるその景色は、かつて俺がベストプレイスと謳歌していた校舎裏よりも美しいかもしれない。美しい物を見ると、誰しもが感動すると言われているが、それは本当の事かもしれない。現に、日本の都市がこんなに美しいとは思った事はここ以外ないし、酷い時はそれ以前の問題で外に出ない。今の時代、画像検索してしまえば画像が出る時代だし、仕方が無いだろう。いやよくねーよ、と、そんな意見は認めない。

 

 美しい夕日が照らす一つの窓にいるのは、比企谷八幡。紛れもない、俺だ。さっきは大変な事になったが、一応収拾はついたし、一件落着と言った所だろう。疲れていたのだろう。隣では、川崎が可愛らしい寝息を立てながら寝ている。その様子に、妹の小町がフラッシュバックする。

 

 

 「…今、何してんだろうな、小町…」

 

 

 妹を想う兄。文だけ見れば計り知れないほどいい兄かもしれないが、事実、死んだ事になっている。追記、喰種に殺されたという事。そんな状況で、あの小町が落ち着いていられるだろうか。

 

 

 「────小町」

 

 

 今は亡き、誰かを想う様に。

 

 

 「お兄ちゃんは、決めたぞ。喰種と、人間の分かり合える世界を作る」

 

 

 

 

 

 

 △▼△▼△

 

 

 

 

 

 

 時同じくして。

 

 最愛の兄のいなくなった総武高校を見つめる、一人の少女がいる。

 

 その少女の名は、比企谷小町。亡き兄は、比企谷八幡。

 

 

 「お兄ちゃん、小町ね、決めたの」

 

 

 涙を溜めているのか、赤みを帯びている目。だが、まるで貼り付けたかの様に、笑顔を浮かべている。

 

 

 「小町────喰種捜査官になるよ、お兄ちゃん。もしかしたら、お兄ちゃんは生きてるかもしれないんでしょ…?そう、信じてるから」

 

 

 喰種捜査官。それが、何を意味するか。自身の命と民の命、喰種の殺生を天秤にかける様なものだ。正義感だけではままならない。

 

 

 「…決意だよ、これは。お兄ちゃんがいなくなってから、色が無くなったの。だから、小町自身で色を付けるの」

 

 

 小町はそれを理解しているだろう。こんなにも兄想いで、優しい少女が殺戮劇を披露するとは考えられないが、小町は血で血を洗う様な事はしないだろう。

 

 

 「殺さないし、殺されない。だって、人が生きるって書いて人生だもん。死んじゃったら、終わっちゃうからね」

 

 

 そう言い、夕日に背を向ける小町。

 

 

 

 

 

 「…もう、泣かないって決めたから」




小町ちゃんの喰種捜査官への道が決定しました
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