間違いの先に   作:さまそくん

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【#013】曲がりくねった道の先に

生まれた事が罪なものなんて、存在しない。自分が生きる為、他者を喰らう。何が悪い…?貴方だって、まるで当たり前かの様に豚肉を食べるでしょう…?それと同じですよ…!!

 

 

第2作、町崎愛加、恋愛小説、タイトル 【超越】より。

 

 

町崎…いや、ここでは比企谷にしよう。彼の書いた恋愛小説は大ヒットし、今では世界中で注目される程だ。

 

 

私は川崎沙希。皆も知っての通り、総武高校に通っている。今日も今日とてつまらない授業を小耳に挟みながらノートを纏め、バレない様に一つの資料を見ている。

 

 

【異例の喰種捜査官】

 

異例の喰種捜査官。女性ながらにして、有り得ないほどの実力を発揮した、アカデミー生、比企谷 小町 (15)。 喰種に兄を殺されたという復讐に身を投げる訳ではなく、死を受け入れ、どう生きていくかを決めている強い少女。CCG側はこれを【異例】とし、彼女を三等捜査官と称し、クインケの使用を許可。

 

 

「…、」

 

 

紛れも無く、比企谷 八幡の妹だ。それに、異例…。

 

 

「…大変な事になったな」

 

 

一人ノートを閉じ、筆記用具からメモ帳を取り出した。書き記す事は決まっていて、スラスラと文字が進んだ。

 

 

「【比企谷 小町。異例の喰種捜査官として三等へ昇格、クインケはBレートの物を使用。今の所、アンタ達道化師に害はない。攻撃しない様にアンタから言いな】…と」

 

 

簡単に要約し、メモ帳の紙を切る。切った後は二つに折り、そのままポケットにしまう。その後、周りをチラ、と見てみると、まるで比企谷など最初からいなかったのでは、と思わせる程に、誰も、比企谷のいない机を見ない。戸塚も、例外ではない。

 

 

「…クソ」

 

 

その様子を苦虫を噛み潰した様な顔で眺め、歯がギリ、と音を立てるのを感じた。

 

 

胸糞が悪くなった所で、授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。起立と礼をして、私は逃げる様に足早にその場を去った。

 

 

「川崎さん」

 

 

そこで、後ろから誰かに声をかけられた。爽やかで、まるで偽っているかの様な声。この声は。

 

 

「…アンタ誰だっけ、葉山?」

 

 

「葉山で合ってるよ」

 

 

「…なんか用?アンタなんかに時間使いたくないんだけど」

 

 

「まあそう言わないで、質問に答えてほしいな」

 

 

葉山は、ニコニコとしている。その気持ち悪い形相に、吐き気と憎悪と呆れが浮かぶが、どうせ碌でもない質問だろうと自己完結する。

 

 

「────比企谷の事だ。知ってるんだろ?」

 

 

顔が強ばり、まるで私を睨むかの様な眼差しを向ける葉山。気に入らない。

 

 

「…で?それを知ったアンタはどうす────」

 

 

「いいから答えろよ」

 

 

葉山が声を荒げる。周りに野次馬が集まり、ザワザワと広がり始めた。

 

 

「…あのさ、アンタ。自分の立場わかってんの?」

 

 

「…っ」

 

 

「答えてやらないなんて一言も言ってないんだけどね。ま、一つだけ教えてあげるよ」

 

 

「比企谷は…ッ」

 

 

私は、振り返って、言い残す様に葉山に吐き捨てた。

 

 

「────、アンタとは別の世界で生きてるよ。地獄じゃない、何処かでね」

 

コツ、コツ、と、靴が地面を蹴る音が、静かな廊下中に響いた。

 

 

「────また、俺は」

 

 

そんな声が聞こえたが、もう聞く耳も持たなかった。

 

 

 

 

 

 

△▼△▼△

 

 

 

 

 

 

「喰種って生きてる価値あんの?」

 

 

「無いよねー、屑ばっかだし」

 

 

そんな会話が、嫌でも聞こえてしまった。昔からいたのに、頻繁になってきたら流れに便乗して喰種の存在を否定する。…傲慢ではないか。

 

 

自分の害になりゆるのなら、それを排除しようと否定する。周りすら巻き込んで、組織化を目論む。反吐が出る。

 

 

「…アンタらより喰種の方が人間らしいよ、ほんっと」

 

 

存在が否定されていい人間などいない。ましてや、そんな存在は生き物の中には該当しない。だが、現に喰種は差別対象、殺傷対象とされている。それは何故か。

 

 

 

 

 

────人間が、喰種の事を恐れているからだ。怖いのなら、克服しようと努力するのが人間だ。克服しようとするなら、まず恐怖の原因を探すのが人間だ。そして、その原因に当たるのが【喰種】。

 

 

比企谷の書いた小説にも書いてあった通り、自分が生きる為に他者を喰らう事の何がいけない?人間はどうだ?豚肉や牛肉、それらを食す際に、一々その肉になる前の彼等のことを思ったりなどするだろうか?

 

 

 

 

 

────否だ。頂きます、ご馳走でした、この二言で終わってしまう。カレーには、豚肉が入っているだろう。ハンバーグには、挽肉が使われるだろう。

 

 

 

 

 

 

────私の好きなオムライスには、生まれ、生きていく筈だった雛鳥が育成されたであろう卵が使われているだろう。

 

 

その様に、私達人間は、過ぎたことには目を向けない。

 

 

自分達の犯している罪咎など、興味も示さない。因果応報と言っても過言では無い筈だ。

 

 

「…だから、アンタ達は嫌いなのさ」

 

 

命の重み。そんなもの、まだ学生、未成年である私達には到底分かりはしない。だから、軽々しく扱える。

 

 

 

 

 

 

────たまたま、喰種に生まれたかっただけなのに。

 

 

人間が間違えた道の先に、何があるのだろうか。絶望?希望?平等?平和?戦争?権力?実現?夢?全て該当しない。

 

 

そこにあるのは、虚無感だ。達成した、という満足感によって、脱力するのが人間だ。それだけに満足し、慢心するのが人間だ。

 

 

それに反比例するかの様に、喰種は間違えても、道を軌道修正し、新たなる道を再構築し出す。曲がりくねってはいるが、しっかりとした道だ。人間として生きようと努力している喰種はそれの典型的な例だ。

 

 

彼等の道の先にあるのは。

 

 

「────運命、か」

 

 

私は、一人呟き、雨の振りそうな、雲行きが怪しい空を見つめた。

 

 

 

 




初の本格的なサキサキ目線ですかね?
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