平塚先生から聞いた。比企谷は事故に合ったんだ、と。戸塚は即死、比企谷は一命を取り留めたが、戸塚の臓器を移植された為、自身が半喰種になってしまったと。
どうも気にかかっていた。比企谷は、比企谷八幡は自身の理由だけで物事を中断する男ではない。文化祭、比企谷は相模を連れ戻す際に、「エンディングセレモニーがあるから戻れ。」と、世間話でもなく、仕事の話を進めた。結果論としては解決したが、比企谷自身が傷つけられてしまった。比企谷は満更でもない顔をして知らん振りをしていたが、その顔の奥底には寂しさが灯っている様な気がした。そんな中起きてしまった鉄骨落下事件。さっき言ったが、戸塚は即死。比企谷の事だ、これを気にしないわけがない。
なら私はどうするべきか?
決まっている。
私は強くない。1人では無力で非力で弱い。でも、それは比企谷だって例外じゃない。いや、ほぼ全ての人間がそうだ。誰しもが強い訳じゃない。でも、誰かが苦しんでいるのを見過ごす程、私は落ちぶれてはいない。平塚先生から託されたんだ。
『────君なら彼を救える。頼んだよ。』
血で血を洗う様な事はしない。比企谷のやり方はどうもいけ好かない。だからと言って、その全てを否定する事も出来ない。彼は彼なりに迷い、それで決断した判断だ。誰かがどうこう言えるわけでもない。ここからは私の独壇場だ。彼の為、その為だけに動く。
好意?それとも大志の貸し?
いや違う。いや、違わないのかもしれない。好意は抱いてるのかもしれない。でも、分からない。大志の貸しも返せてない。でも、それはそれ、これはこれだ。もう嫌なんだ。誰かの為に誰かが傷つくのは。見ていて胸糞悪い。かと言って注意しても止めない。なら、助けてやるんだ。私は────
比企谷八幡。アンタをね。
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川崎沙希。俺が最も気になっている女だ。何故、そこまで俺のことを気にしてくれているのか。何故、俺を助けてくれようとしているのか。何故、何故、何故。語り始めたら、もう那由多にも及ぶ。
偽善の為に動いてるのだとしたら、それはやめろ。お前らの言う〝正義〟何てものは下らない薄っぺらい自己満足感だ。
「皆は1人の為に。1人は皆の為に。」こんな言葉があるよな。前半の方は文化祭の時と以下同文だ。後半だ。1人は皆の為に。つまり、だ。1人だけが皆に貢ぐ。それは1人は皆の為に、だろう。1人を排除する、皆は1人の為に。周りにいい様に使われる、1人は皆の為に。文面だけでなく、最低だ。人々の言う1人は皆の為に、なんてそんなものだ。正義なんていらない。それに、人々は自慢げに〝絆〟とかぬかす。糸偏の物が強い訳ないだろう。何か1つの原因で崩れてしまうのが絆だ。下らない。
そこまで仮定して、だ。
川崎沙希の事が分からない。
でも、気付けば川崎に助けを求めていた。否定もされず、軽蔑もされず、微笑みを浮かべて肯定した。俺はもっと知りたいのかもしれない。川崎の事を。
どうしてそこまで俺のことを、どうしてそこまで助けてくれるのかを。
────比企谷八幡は。
────川崎沙希は。
お互いにお互いを気にし始めた。