Fate/Grand Order -flowering night-   作:紅劉

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前回のあらすじ

1、モミジとともに害虫を討伐し、ハクモクレンたちと合流後、ブロッサムヒルへ退却する。

2、ネロと朝食後、藤丸を花騎士と魔力供給出来るように世界花とパスを繋ぐ儀式を執り行う。

3、ネロに手渡された地図を頼りに目的地へ到着。そこで待っていたのはファラオであるオジマンディアスと花騎士であるサボテンだった。


第2話「カルデア騎士団」

 

「あー、すみませんでしたファラオ・・・」

 オジマンディアスにツッコミを入れたらこうなりますよね。

 

『ファラオに歯向かう愚か者めがッ!』

 と、逆に吠えられてファラオの背後に召喚されたミニサイズの顔のないスフィンクスからビーム攻撃されました。

 どれくらいの威力かというと、日焼けサロンの熱を直接顔に当てられる。

 うん、そんな感じ。とにかく熱さにやられたおかげで顔中汗まみれだ。

 

「あの、大丈夫・・・ですか?」

 倒れたオレにタオルを手渡してくれたサボテンに感謝する。

 しかし手際がいいような気がする。

 もしかして最初から仕組まれていた計画だったのか?

 

「よくやったぞサボちゃん。ウィンターローズから帰還したら熱々のパエリアを賜す」

「ありがとうございます。・・・兄上」

「あのぉ、サボテンさん。ファラオとはどのようなご関係で?

 それと、ファラオの言いなりにならなくて大丈夫ですよ」

 タオルを丁寧に折りたたんだサボテンは答えた。

 

「サボテン、でいいですよ。兄上は私たち(、、、)を窮地から救ってくれた・・・英雄なんです。

 二週間前、私は最前線で・・・害虫たちの進撃を阻止する任務に・・・あたっていました。でも数は増える一方で・・・そこへ、巨獣の群れを率いるファラオが、助けてくれました」

「最初は気紛れであったのだがな。益荒男どもならともかく、あのような醜穢の汚物に女子供が蹂躙されることを余は捨て置けぬわ」

 さすがファラオ。何かと文句は言うものの、ファラオとしての芯はとおしている。

 

「けど、サボテンに兄上と呼ばせるのは――」

「最初は冗談で言ったつもりだったのだ。だがオジマンディアスでは長いとサボちゃんに告げられたのだ。

 であれば、呼び名を考えねばならぬ。それゆえ兄上と呼ぶよう伝えたのだ」

 やっぱりおまえが原因かい! サボテンは反対しなかったのか?

 いくら助けられたからといって見知らぬ男に兄上と呼ばせようとする輩にいうとおりにしなくてもいいのに。

 

「兄上と呼ぶのは・・・呼びやすかったから、だけど」

 やはりそういうことか。うん、納得した。

 オレも人のことは言えないな。

 ファラオって呼ぶのも結局は呼びやすいし・・・いや、そうじゃないな、単に彼がファラオファラオと連呼するせいだと思う。

 呼び名には親しみが込められるものだ。

 サボテンが否定することなく兄上と呼ぶのもきっと彼なら安心できると感じたからなのだろう。

 

「私以外にも。兄上と呼ぶ人もいれば、兄者とか、旦那とか、金ピカとか、いろいろと呼ばれてる。信頼、されてるから」

 このとおりだ。サボテンだけでなくこの町の人々からもファラオは愛されている、

 それは、彼が持つ絶大なカリスマ性だけでなく、生前ファラオとして民を支え、慈愛を浴びせてきた太陽としての輝きが眩しく飛び込んできたせいなのかもしれない。

 

「当然。余は偉大なるファラオであり、須らく民を等しく支配するものである。

 だが此度の余はおまえたちとともに同じ穴の狢である。

 ならば余と肩を並べることを許す。隣に座することを許す。余の配慮、みな等しく受け取るがよい」

 いつにも増して本当に上機嫌で在らせられますな。これから雨でも降るのかな?

 いや、それは困る。今からウィンターローズへ旅立つというのにいきなり足止めを喰らうわけにはいかない。

 とにかく、今見た限りではこのファラオはここで上手くやっていけそうだし、何の心配もすることなくこの地を後に出来る。

 

「それじゃあファラオ。オレたちはそろそろ行きます。ブロッサムヒルのこと、お願いします」

「よい。既に手は打ってある。ブロッサムヒル城外に余の"獣"を野放しているからな。迂闊に手は出せぬ」

 それはまたトンデモないホームセキュリティ、いや、キャッスルセキュリティだ。

 ファラオが謂う獣とは、スフィンクスのことであり、サーヴァントに匹敵する力を有している。その大きさは大型トラック以上の巨体。オレが知ってる限りではファラオのスフィンクスは何十匹もいるわけだから、それらが警備しているとなると確かにブロッサムヒルは安寧を約束されたも同然ということになる。

 

「ありがとうございますファラオ」

「藤丸が気にすることではない。余は放し飼いしてるだけだ。サボちゃん、余の友を頼んだぞ」

「はい。熱々のパエリア、期待してます」

 オジマンディアスに重ねて礼をしたオレは建築ギルドから引きあげた。

 この世界に来て二日目から別の国に移動というのは酷な話だが仕方ない。

 今はモミジとサボテンが頼りだけどオレもしっかりしないとな。

 

「じゃあこれからよろしくお願いするよサボテン」

「うん。任せて。けど、モミジがまだ、出てきてない」

「あれ? ほんとだ。ファラオと話してるのかな?」

 何か変なこと吹き込まれていないか心配だったが杞憂に終わった。

 入口の方へ目を向けてみると、モミジが颯爽と駆け寄ってきたのだ。

 

「すみません。遅くなりました」

「気にしなくていいさ。それよりファラオに何か言われた?」

 問いを投げかけてみるとモミジは普段通りの落ち着いた表情で答えた。

 

「いえ。特に何も」

 その瞳は一層輝かせている。激しく燃え滾る炎のように見えたし間違いなく何か告げ口されたな。

 

「あの、そろそろ向かいましょう。今の、ウィンターローズは、不規則な吹雪が・・・起こるから。それに、ウィンターローズまで、乗せてくれる馬車を、待たせている、から」

「そうなの? じゃあ急いで乗りにいかないと。走るぞ二人とも!」

「あっ、また急に! 待ってください団長! 道わかってるんですか!?」

 

 

ブロッサムヒル 城門前

 

 

 というわけで道などわかるはずもなく、オレはサボテンの案内に従うまま後をついていき、町の窓口までたどり着いた。

 いつもならこの城門を通って商人たちが行き交う様を見られるとサボテンが教えてくれたが、害虫の襲撃を恐れているせいか今では見る影もない。

 そのせいもあってか、待たせてある馬車はすぐに目に入った。

 屋根がついているわけでもなく、ただ荷物を荷台に乗せるためだけの、平たく言えば軽トラのようなもの。恐らく輸送用の荷馬車なのだろう。

 余程教育が行き届いているのか、馬は手綱などの馬具が外されており、荷台の傍で足をたたんで寝ている。

 その隣で、馬の(たてがみ)を撫でる女性の姿があった。

 ふんわりとした金色のショートヘアをしており、ジャンヌと同じく頭部に装飾品を付けている。聖女、というよりは詩人のように感じるが、深緑の鎧の下に生地の薄いワンピースを着こなしている。ジャンヌと同じく気品と貫禄のある田舎娘といったほうが正しいのかもしれない。

 

「お? 待ってたよサボちゃ~ん♪」

「サボテン、です。その、呼び方は兄上だけ」

 子どもみたいにはしゃいで手をブンブン振っている彼女が今回オレたちをウィンターローズまで連れて行ってくれる人物なのだろうか?

 

「紹介します、団長。彼女は」

「あっ。いいよサボちゃん。挨拶くらい自分でするから。

 というわけで紹介に預かりかけたアカシアよ。輸送任務専門部隊、つまり私が立ち上げたアカシア隊のリーダーなの。だからといって堅苦しいのはなし。気軽でお願いね。

 私のことはアカシアって呼び捨てで構わないから。

 キミたちのことはネロから聞いてるんで説明不要だよ。フジマルリツカとモミジでしょ? よ・ろ・し・く・ネ♪ はい、以上。終わり!」

 これはまた、さっきのファラオと同じく自己中心で我儘なタイプだなきっと。

 で、間違いなくこの人は、実力はあるけど色々とめんどくさい人種だ。

 

「すみません。アカシア隊って具体的にどのような」

「具体的に? そうねぇ、主に花の蜜を運ぶのだけど、基本は頼まれた物、必要としてる物なら何でも運ぶ、運び屋っていったほうがわかりやすいかな?」

 ニコニコと笑って説明してくれるのはありがたいけど説明が大雑把過ぎる。

 

「さてさて、よっこらしょっと。それじゃ早速出発しよっか。人数は三人でいいのかな団長さん?」

「いやいや四人だからね。人をパシリにしといて忘れてもらっちゃ困るよ」

 突然背後から聞き覚えのある声が耳に伝わってきた。

 振り向けばそこには、両手に袋いっぱい担いでいるガンナー、ビリー・ザ・キッドの姿があった。

 この西部のガンマンは変わらずにこやかな笑顔をしている。

 

「久々だねマスター。とうとう君もこっちの世界に来てしまったんだね」

「おかげさまでね。ダ・ヴィンチちゃんにしてやられたんだよ。

 ビリーの方こそ、どうしてここに?」

「僕は気がついたらそこの荷馬車に乗せられていてね。雇い主の彼女に拾ってもらったんだよ」

「雇い主? アカシアが? 他に行く当てなかったの?」

「マスターの言いたいことはわかるよ。でもここの方が何かと落ち着くから構わないよ。はいこれ、マスターの分」

 そう言って唐突に何かを差し出された。

 見ればそれはそれは見事な飾り付けがされたオシャレな弁当箱。

 白米に野菜の天ぷら、ポテトサラダにはミニトマトが被せられており、その隣には春巻きが寝かせてある。そして極めつけはこれだろう。お子様なら誰もが喜ぶタコ様ウィンナーとウサギを模った林檎。弁当箱の周りはツメクサやオシロイバナなどといった蜜を吸える花で埋め尽くされており、中央には満開のタンポポが飾られている。

 職人の努力が伝わってくる。これは広々とした草原とかにピクニックで食べれば最高ではないだろうか。

 

「ありがとう。もしかしてこれを買いに行ってたの?」

「そうさ。ウィンターローズまで着くのに時間が掛かるから弁当買ってきてくれと彼女にね。ちなみにお代は王様に押し付けたよ」

「ちゃっかりしてるなぁ。って、ネロに請求したってその弁当いくらなのさ!?」

「はいはい。おしゃべりはそこまで!」

 オレたちの輪に割って入ってきたアカシアはビリーが下げている袋からささっと弁当を取り出しモミジとサボテンに手渡しした。

 

「いろいろ話したい気持ちはわかるけどそれは道中でもできること。立ち話は時間の無駄よ。キミたちを送り届けることだけが私の仕事じゃないんだからね」

 さぁ乗った乗ったとアカシアがオレの背中を無理矢理押してきた。

 乱暴なのか、強引なのか、なんだかはっきりしないけど、ビリーがこの人の隣にいる理由に察しはついたよ。

 彼女は自由奔放なんだ。ビリーも自由に生きる気ままな性格だから性に合うのだと。

 

「はいはい。全員乗ったわね! ビリーよし、リツカよし、モミジよし、サボちゃんよし!」

「だから、それは」

「以上! それじゃあ張り切ってウィンターローズへしゅっぱー・・・、えーっと」

 アカシアが手を振りかざした途端、電池が切れたように動きが停止した。

 言葉が詰まったようだけど、何か忘れたことでもあるのだろうか?

 

「そういえばリツカ。キミが団長なんだよね? 騎士団の名前はなんていうのかな?」

「騎士団の名前?」

「あれ? いやいや騎士団の名前だよ。たとえば・・・テンプル騎士団とか! どう!?」

 いやいやいや、どこの十字軍の護衛だそれは。

 しかし騎士団の名前か。団長と呼ばれるてはいるけど騎士団を作った覚えはないんだけどなぁ。どうしたものか。

 

「騎士団の名前? そうですね・・・、団長がもといた世界で、務めていた組織名でいいと思う?」

 オレの前に座っているサボテンがさらっと助言を提示してくれた。

 恐らくカルデアのことを言っているのだろう。

 

「・・・カルデア騎士団ですか?」

 続いてモミジが隣でポツリと呟いた。

 

「カルデア騎士団か。・・・うん。しっくり来るしオレにとっても馴染み深い。これでいこう! いいかな二人とも?」

 そう決定したオレの決断に二人は顔を見合わせた。

 

「私は、ウィンターローズまでの案内係だけど、団長がそれでいいなら、私はいいと思うよ」

「異存在りません。私は団長に従うまでです。ですが、カルデア騎士団・・・、えぇ、とても素敵な団名だと私は思います」

「ふふっ、どうやら決まったようね」

 アカシアの言葉にオレは頷く。

 カルデア騎士団。これからはサーヴァントのマスターであるのと同時に、花騎士の団長で在り続けなければならない。

 心が引き締まるのを感じる。

 オレはビリーに目を向けた。これでいいかと問うように。

 すると返答はすぐに念話となって返ってきた。

 

――君がそれでいいと思うなら僕は反対しないよ。他のサーヴァントだってそうさ。君は、君が信じた道を今日まで突き進んできたんだから。僕らもそれを信じて君と戦ってきた。

 だから、答えはそこにあるよ団長(マスター)

 

 念話が切れる。

 そうだよな。ビリーの言うとおりだ。本当に何を今更、オレは恐怖していたのか?

 騎士団の団長となるということは、すなわち花騎士の命を預かるということだ。

 これまでの戦いで犠牲のなかった戦いはない。

 人であれ、獣であれ、神であれ、必ず誰かが犠牲となった。

 サーヴァントは霊体であって、死ぬわけではない。魔力が尽きれば英霊の座という在るべき場所へ戻るだけだ。

 だが今回はどうだ? 別世界とはいえ、オレが背負うのは命そのもの。死なせてしまえば取り返しのつかないことになる。

 死者は蘇らない。だからこそ人は今ある生を謳歌する。

 それをオレは奪ってしまうことになるのだ。

 その資格がオレにはあるのかと、これまでの経験がオレ自身に訴えかけてきた。

 足が踏みとどまる。

 確かに犠牲はあった。嘆きはあった。悲しみはあった。

 手を伸ばせば救えたかもしれない命が、いつもそばにいてくれた命が消えた。

 我儘だと、とんだエゴイストだと罵られるだろうが。

 

――オレは、正義の味方(団長)を貫き通す。

 

 オレが、生きるために戦ってきたように。

 オレが、守られて戦ってきたように。

 

――今度は立場が変わっただけだ。

 

 オレが、彼女たちを守るために戦うだけだ。

 この先の未来が見れるように、目いっぱい太陽の光を浴びれるように。

 この先の(未来)は続いているのだから。

 

「カルデア騎士団。これがオレたちの騎士団の名前です」

 決心は揺らがない。

 アカシアは穏やかな表情を浮かべて、ただ静かに頷いた。

 

「ネロの言うとおりね。キミ、本当に私たちの世界の勇者様だわ」

「陛下が何か?」

「何でもない。ビリー、やっぱり私リツカとおしゃべりしたいから変わってもらっていい?」

「そう来ると思ってたよ。全く、だから始めに僕が騎乗するって言ったのに」

 選手交代。騎乗スキルを持つビリーが華麗に乗馬する。

 確か生前、彼は同僚のカウボーイや世話になった家族の前で見事なロデオの腕前を披露したらしい。

 英霊となった今では、ましてや騎乗スキルを持つ彼なら任せて安心だ。

 

「それじゃあアカシアに代わって僕が導くよ。カルデア騎士団御一行、ウィンターローズへ」

「お届けしまーす!!」

 最後の台詞をアカシアに持っていかれて一瞬空気がどんよりしたが、構わずビリーは馬の腹を軽く蹴った。

 荷台の車輪が回り、荷馬車はガタゴトと音と揺れを奏で始める。

 乗り心地がいいとは言えないがこれが旅の始まりのように感じてならない。

 RPGに登場する勇者もきっとこういう高鳴る高揚感を胸に冒険の旅に出るんだと思うと釣られてオレも冒険心が溢れ出てきた。

 空は快晴、雲一つない青い海の下、そよ風に優しく撫でられながら、オレたちはブロッサムヒルに見送られた。

 




【お・ま・け】
エジプトって? あぁ!!

ファラオ「このブロッサムヒルを我がエジプト領とする!」
サボテン「兄上、エジプトとはどんな」
ファラオ「エジプトとはすなわちファラオ! ファラオが治める領地! ならば余が此処を支配するのもまたファラオであり、エジプトである!!」
サボテン「つまり?」
ファラオ「ファラオはエジプト! エジプトはファラオ! ハンムラビにも書いてあるわ!!」
ネロ「ねーよ」


【コメント】
 ツイッターとかで2話はウィンターローズ編に突入するとか言っていたな。アレはウソだ。
 今回はここが区切りいいかなと思ったので結構短く収まったよ。ごめんね。
 次回からがウィンターローズ編だからそれで許してヒヤシンス。
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