久しぶりに原作を読んだせいで勢いで書いてしまった
ざわざわ、ざわざわ。
「ねぇねぇ!ほらあの子!彼が例の男の子なのかな?」
ざわざわ、ざわざわ、ざわざわ。
ざわざわ、ざわざわ、ざわざわ、ざわざわ。
ざわざわ──。
IS学園へ辿り着いた俺を待っていたのは、女子高生達からの痛い程の興味の視線だった。
くそ、なんと言う針のムシロ……ッ。周りから向けられる視線の悉くが俺に向けられている。
ちくせう、どれもこれも、ワンサマともう一人の野郎のせいだ!
野郎が三人も同じ学園なせいで話題性抜群だってぇの。
一学年くらいずらして入学できなかったのか!
と罪もない野郎達を罪人扱いしつつ、俺こと誠一・ウィリアムは手に持った『1-3』と言う紙を頼りにIS学園中を練り歩いていた。
「はぁ……はぁ。一年生は四階、と。一年間この階段を登り降りすんのか……面倒くさいな」
あまり体力があるとは言えない俺はこれだけでバテてしまう。
嗚呼、ひきこもりたい。
「っと、この階だな。……うわぁ」
四階へ辿り着いた俺の視界に入ってきたのは、『1-3』の教室前を覆い隠す程の人垣だった。
もちろん全員女子だ。
IS操縦者を養成する機関であるこのIS学園では生徒の大半……と言うより本来は生徒全員が女子生徒だ。
研究目的で入学した俺はともかく、IS操縦者として男子生徒が入学する筈はないと思われていたのだ。(本来なら入学目的でも男子生徒が入学する事は出来なかっただろう。本国のロビー活動には頭が下がる)
この目の前に広がる人垣はその男子で初めてのIS操縦者たる少年達を一目見ようと訪れた女子生徒達なのだろう。
実際俺の時のように黄色い声が上がってるので間違い無いはずだ。
しかし困ったな。人垣が邪魔で教室に入れん。
どうするべきか、と悩んでると、黄色い歓声が大きくなり、人垣が割れた。
「ん? ……」
「うぅ、視線が痛い……って」
割れた人垣から現れたのは黒い髪にIS学園の男子制服に身を包んだ少年。
女子達の視線に耐えかねて教室から脱出しようとしたらしい少年は、俺の良く知る人物だった。
何を隠そう、鈍感ハーレム系主人公として名を馳せた原作主人公、ワンサマこと織斑一夏、その人だったのだ!
「お、おお男っ!?」
俺に指を向けやけに驚くワンサマ。
まぁわからなんでもない。
自分達以外に野郎がいるとは思っていなかったら、同じ反応をしていただろう。
「女に見えるのかい? この場で俺のマグナムが見せられないのが残念だ」
「いきなり下ネタで軽く引いたが……何を置いても同じ男が四季以外にいたのが良かったよ。俺は織斑一夏」
「俺は誠一・ウィリアム。好きに呼んでくれ」
「誠一、って言うとハーフって奴?」
「御名答……ん?」
余程女の視線に辟易してたらしい。やつれた顔で(イケメンなのは変わらず)握手を求めて来た織斑一夏。
それに握手で返すと俺はここで一つの違和感に気づいた。
「なぁ織斑」
「一夏で良いよ」
「んじゃ一夏。……君、『1-1』組じゃないの?」
そう。織斑一夏は『1-3』、つまり一年三組から現れた。
だが原作では織斑一夏は一年一組に所属していた筈だ。
それが三組とは……。
「一組には俺の友達が居るぞ? ほら、あっちもすげぇことになってる」
「……うわぁ」
一夏につられて見ると、同じ廊下の端のクラスにこの三組前のように女子生徒でできた人垣があった。
なるほど、つまりはオリキャラが一組に行ったから一夏は三組なんてヒロインもいないし話題にも上がらないクラスに追いやられたってわけか……なんだか可哀相になって来たぞ。
「誠一はどのクラスなんだ?」
「三組、同じクラスだ」
「ほんとか!? いや~、助かった助かった。女子に囲まれるって案外キツくてさ。同じ男がいると思うと安心だ」
比較的女性好きである俺でも視線に晒されるだけでキツかったんだ。一夏のストレスは半端じゃないようだ。
「お、予鈴だ。そう言えば何か用事があったのか?」
「いや、視線が辛かったからHRまで逃げようとしてたんだ」
予鈴のチャイムが鳴ると、周囲にいた女子達も流石に自分達の教室に戻り始めた。
階段を下ってく人もいるので先輩方も来てたようだ。
「俺達も教室に戻ろうか、一夏」
「ああ。……しかしほんと、一人じゃなくて良かったぜ」
◇
その後現れた担任の女教師は咥えたばこのやる気の感じられない先生だった。
午前中の授業は自己紹介とクラス委員決めに費やすらしく、ポニーテールが印象的な出席番号一番綾坂舞さんに進行を任せ、自分は椅子に腰掛けお昼寝タイム。
いやはや今時の教育機関員らしからぬ姿だが、「だってIS学園だし」の一言で済みそうなのは何故だろう。
「つ、次、クラス代表決めですが、誰かやりたい人はいますか? 推薦でも良いみたいです」
若干噛みながらも健気に進行役を勤める綾坂さん。体育会系だと思ったが苦労人ポジションみたいだ。そんな事を考えていると、ガタンと大きな音がした。
椅子の音だろうか。
そして次いで元気一杯に叫ぶ女の子の声が。
「はいっ。織斑君が良いと思います!」
「えっ、えぇっ!?」
話半分で聞いていた一夏が慌てて立ち上がる。
「いやいや、俺そんなのやらないぞ!?」
「で、では他にやりたい人は……い、いないみたいなので……」
嗚呼無情かな。元々やりたくなかったのかそれとも噂の男子の実力を知りたいのかみんながみんな笑みを浮かべて一夏を見ている。
「そ、そんなぁ……せ、誠一は?」
「ISなんて扱えてたまるか。俺は研究目的で──」
と、そこまで言いかけて俺は立ち上がった。
そう、俺の入学は名目上ISの研究を目的としている。
しかし俺の目的は男性IS操縦者を引き込み俺のISを完成させる事だ。
今ここで一夏の味方になれば一夏に俺のISを乗らせる事も可能となるのではないか?
だがこの状況、劣勢以外の何者でもない。クラスの女子は皆一夏がクラス代表になる事を望んでいる。
裁決方法は間違いなく多数決を執られる。
となれば一夏をクラス代表から降ろすのは不可能……いや、降ろす必要はないのではないか?
そう……そうだ!!
「……一夏、クラス代表は諦めろ。その代わり俺がサポートしてやる」
味方になりつつ、一夏に戦わせる方法もあるじゃないか!
「さ、サポートってどんな……」
「織斑一夏、お前はISの事をどこまで知っている? 女性だけが乗れる便利かつ最強の最新兵器、くらいの認識じゃあないか?」
何せこっちの世界に転生した俺がそんな認識だったからな。アニメから入ったせいで原作なんてキャラの掛け合い以外流し読みだったしな。
「え、いや、その、まぁ」
「ISは何故飛ぶと思う? 反重力力翼、流動派干渉、これらの言葉を使い説明できるか?」
「……できません」
「ISってのはオーバーテクノロジーとも呼ぶべきものなんだ。機能の八割以上を制限されている現在ですら、たった一騎で一国を滅ぼす事が可能な程に。……俺はISを操る事は出来ないが、事知識に関してはこの学園の誰にも負けない自負がある。でなけりゃ倍率万倍とも言われるこの学園に入学できもしないしな。……てなわけで、知識による一夏へのサポートは可能だ」
「わ、わかったよ。誠一が手伝ってくれるって言うんなら、まぁ良いか」
反論を許さず、「お前は非力だ」と言い放った後に「でも俺とならなんとかなる」と言い包める。我ながらなんとまぁ外道な方法を取ったもんだ。
しかーし、これで男性IS操縦者は確保!これで金の力で最強のISを作っちゃうもんね! 打倒福音!
『1-3』のクラス代表は織斑一夏に決まった。
2017年12月12日にいくつか修正