IS学園での物語 作:トッポの人
ちょっと……真面目に仕事が4月まで忙しくてすみませんです……。
現状俺が知り得る最高級の戦力が揃った。本当なら織斑先生や山田先生にもいてほしいところだが、このメンバーでやるしかない。
「で、何か分かったんじゃないの?」
「……ああ」
「ほう?」
鈴に問われるも肯定しか出来なかった。通信妨害によりプライベートチャンネルは勿論、普通の通信も行えない。
あと出来るのは接触通信だが、皆でノコノコと集まるのを目の前にいる三号が許すとは思えないし、堂々と話すのなんてもっての他だ。
《皆さん大丈夫ですか!?》
「山田先生? 何で急に……?」
どうしたものかと考えていると突然ウィンドウが開かれ、焦った様子の山田先生の声が響いた。
《わ、分かりません。何をやってもダメだったのに突然……と、とにかくもう少しで織斑先生がそちらへ着きます! 何とか持ちこたえてください!》
織斑が訊ねるも返ってくる答えは分からないとだけ。だがこの状況において最高級の朗報が俺達に舞い込んできた。世界最強がこの場に来てくれるのだ。これに勝るものはないだろう。
「という訳だ。三分だけ待ってやる。その間に話を済ませろ」
続くこいつの話がなければ。浮かれそうになった気分が一気に沈んでいくのが分かる。
それは誰もがそうだったようで、柔らかくなった目付きが険しいものへと変わった。
「あら、レディが到着するのも待てないんですの?」
「何とでも言え。あの女は例外だ。それに時間をやった上に妨害もやめたんだからケチでもない」
「……何故妨害をやめた?」
時間がないのは分かっていたが、どうしても気になる点だった。
「さっきから言ってるだろ? 俺はお前らには興味ないが、櫻井春人には興味がある。何を考えたのかがな。それだけだ」
「……期待するだけ無駄だぞ」
「無駄かどうかは俺が決める事だ。そらそら時間がなくなるぞ」
「……ちっ」
当然のように忠告したが、こちらの話を聞いてくれそうになかった。やばい、とても期待が重い。
相変わらず俺にぞっこんなこいつを放っておいてプライベートチャンネルを開く。少しでも傍受される可能性を下げるためだ。
《……聞こえますか?》
《お、おう!》
俺の問い掛けに慣れてない織斑だけが返事をしてきた。他のメンバーは僅かに頷くだけで済ませる。こういうところで代表や代表候補生との経験値の差を感じさせた。
《で、分かった事って何よ?》
矢継ぎ早に鈴が問い掛けてくる。時間もないし、さっさと話すとしよう。
《……あいつの倒し方だ》
《まじか!?》
《まじで!?》
《……まじだ》
『ミコトちゃんがいいねしました』
えっ、今の織斑、鈴、俺のまじの三段活用のどこにいいねを?
よ、良く分からんがまぁいい。
《……結論から言う。多分このメンバーであいつを倒せるのは織斑だけだ》
「お、俺!? むぐぅ!?」
《馬鹿! 聞こえないようにしてるのに声に出してどうすんのよ!》
まさか名指しされるとは思ってなかったのか、織斑が驚きのあまり普通に声を出してしまう。しかも声がでかい。
慌てて鈴が口を塞いでくれて助かった。悪いがこのまま続けさせてもらうとしよう。
《何でそう思ったのか、聞かせてくれる?》
《……切欠は織斑への敵意です》
《敵意……?》
《……ええ》
更識会長から当然のように出てきた質問。
最初は俺も何でか分からなかったが、気付いてしまえば何て事はない話だ。ある意味で当然なのかもしれない。
《……他の皆は攻撃しても敵意を向けられていませんが、織斑にだけは明確な敵意を向け、挑発までしています》
やたら喜ばれている俺はまた別として、鈴や他の皆には邪魔だと言うだけ。だが織斑にはそれ以上の何かを向けている。
そこまで言うと少し冷静になった織斑が再び通信で話し掛けてきた。
《そうだけど、俺の攻撃当たってないから通じるかどうか分からないだろ?》
《……それだ。それが二つ目の理由だ》
《へ?》
《……言い方は悪いが、織斑だけ攻撃が当たっていない。正確には防がれている》
俺や鈴の攻撃に対してはほぼ確実に警戒していないようで防御行動をしない。更識会長やセシリア、簪は一回しか攻撃していないが、少なくとも遠距離からでは警戒に値しないようだった。
《……織斑の攻撃には警戒するのがある。それが――――》
《『零落白夜』ね》
《……はい》
恐らくあの三号が持つ強固なシールドでも防げない唯一の例外。ISのシールドを無効化させて、その先にある絶対防御を発動させる。攻撃力に関して最強の
《じゃあ倒すのは一夏くんで……》
《わたくし達で一夏さんの露払いをっ》
そう、作戦的にはそれでいい。さっきまではそれで良かった。でも気付いた時にはもう遅かったんだ。
更識会長に続き、セシリアもどうすべきか口にしたところで織斑の顔が青白くなっていく。原因は分かっている。
《……織斑、エネルギーは残り幾つだ?》
《悪い……もう五〇もない……多分、足りない……》
《……そうか》
落胆で皆声も出なかった。漸く勝てる方法が見つかったというのにその戦法も使えない。
そもそも気付くには織斑が攻めるしかなかった以上、仕方のない事だった。
《……もう一つのプランにするか》
《もう一つあるのか?》
《……通じるかどうか分からないがな》
《それはどういう事なんですの……?》
《……あいつのシールドエネルギーは一応減るらしい》
これはミコトが見てくれていて分かった事だ。俺達の攻撃を受けた時、腕部の荷電粒子を撃っていた時、普通のISと同じ様にエネルギーが減っているとの事。
《でもあいつ超元気だけど……》
鈴が向けた視線の先には曇り空をじっと眺めている三号が。
《……こちらが攻撃で減らすよりも早くエネルギーが回復しているからだ》
《え、エネルギーが……?》
《回復する……?》
《そ、そんなの勝てる訳ないじゃない!》
唖然とするセシリアと簪を尻目に怒鳴る鈴。
まぁ俺も鈴と同意見だ。回復するとか超チートくせぇ。それに対してミコトはどういう意見なんだ?
『あれって今あるエネルギーを増幅させてるから、完全にエネルギーをなくせば回復しないはずだよ』
要するに回復するよりも早く高火力の攻撃を連続で叩き込んでエネルギーをなくせって事か。
『そ。イッツゴリ押しだね』
得意技だ。任せとけ……って言いたいところなんだがな……。
初めて感じる死の恐怖はどうしようもなかった。あからさまに狙われている状況で落ち着けという方が無理な話だ。
とりあえず今ミコトと話した内容を皆に伝えて作戦会議は終了。
作戦はこうだ。まずは俺と織斑が近接戦闘に持ち込んで少しでもダメージを与える。
その後は他の皆が遠距離からそれぞれが持つ最大火力を叩き込む。
まぁおよそ作戦と呼べる代物ではないが、何の練習もしていない俺達では変に細かく決めてもただ連携が取れないだけ。それならある程度自由にさせた方がいいだろうとの楯無さんの言葉だ。
《……織斑、無理はするなよ》
《お前もな》
近接担当同士、お互い声を掛け合う。
二人とも互いに一番やばい距離での戦いだ。気休めにもならないが、言う事に意味があった。
「時間切れだ。さぁ始めようか!」
「皆行くわよ……!!」
ちょうどあらかた話終えたところで三号が声を張り上げたのを切っ掛けに、こちらも全員が武器を構える。
さぁ、行くぞという時だった。
「皆っ!!」
「「「っ!」」」
「ん?」
「頑張れっ!!」
そんな時にアリーナの中継室から凛とした声が響いた。もう避難は完了して俺達以外は誰もいないはずなのに、聞き慣れた声が。
「ほ、箒……?」
この中で誰よりも聞き慣れているだろう一夏がその名前を呟く。
何で? どうしてそこに? そんな言葉を誰かが呟く前に三号が行動した。
「誰かに似ている気もするがまぁいい。邪魔だ」
まるで目の前を飛ぶ虫を振り払うように右腕をゆっくりと中継室へ。その腕に赤黒い稲妻を迸らせながら。
脳裏に先程光に呑み込まれて消えた一号が思い浮かぶ。瞬間、これから起こる惨劇を想像して動きが停止してしまった。
おい……おい、何してんだよ。それISがあっても死ぬようなビームだろ? 何生身の箒に向けてるんだよ。
あいつが何か悪い事をしたのか? 再会した好きな人に振り向いて欲しいけど、そいつの考えを優先しようとして奥手になるような良いやつなんだぞ。それが、何で……おかしいだろ。そんなの間違ってる。
『春人』
辺りが静まり返った中でその声は良く聞こえた。いつもの茶化すような感じではなく、真剣な声で。そんな声で――――
『今春人がやろうとしてるのは自分が死ぬかもしれない事だよ? それでもやるの?』
現実を叩き付けてきた。逃れられない現実を。
そう、だな……死ぬかもしれない……。分かってる。想像するだけでも怖いよ。
でも……。それでも!
《Start up》
「おおおっ!!」
「っ!」
「簪ちゃん!」
「うん!」
「なっ!?」
恐怖を誤魔化すように雄叫びをあげて地面を蹴る頃にはラファールは既にリミット解除されていた。他の皆もそれぞれがそれぞれの役割を果たすべく動き出す。最初から俺がこうするのが分かっていたかのように。
それとは反するように三号は意外そうな声が出た。
『勿論っ。皆、春人ならこうするって分かってたよ』
そうか……。
『大丈夫。私が春人を絶対に死なせない。だからやりたい事を思う存分やっていいよ!』
そうか!
射線上に滑り込むと突き出した左腕と共に左側の『ヴァーダント』のバインダーを展開。その上をシールドが覆い被さる。
そこへあの死の光が放たれた。ISでさえ容易く消してしまえる光。あのビームを受け止めようと考えるな……! 逸らせ!
「ぐっ、おおあぁぁっ!!」
上から下へと振り下ろすように展開されたバインダーに沿って、死の光は誰もいない上空へ逸れていく。
『各部損傷拡大……! 春人、バインダーを右と変えて!!』
「『ヴァーダント』!」
しかし、真正面からは受け止めていないはずなのに既にバインダーの耐久が限界を迎えている。それだけじゃない、余波で装甲の各部も
ミコトに言われるがまま、今度は右側のバインダーを展開。まだ耐えられる。問題ない!
「何でお前がそこにいるんだ!? そこを退け!!」
「退く、かぁ!!」
「でやぁぁぁ!!」
「何ぃっ!?」
三号との押し問答の間に織斑が三号へと肉薄し、斬りかかった。あっさりと刀を左腕で掴み取られてしまったらしい。
だがそれにより中断されたビームに一安心し、俺は薄れていく意識に抗う気力もなく地上へと落下した。
「春人!」
背後から俺の名前を呼ぶ声がした気がする。今にも泣きそうな声で。
くそっ、あの馬鹿が! 完全に計算違いだ! あいつ死んでないだろうな!?
まさかあそこで櫻井春人があの女を庇うとかいう行動に出るとは。
しかもそっちに気をとられて雑魚の接近を許してしまった。いや、もうこいつはどうでもいい。思わず掴んだが、最早脅威でもない。
「お前、ずっと春人の事見てたって割には何も知らないんだな……!」
「あ?」
櫻井春人へ歩み寄ろうとした瞬間、こいつが何かを口にしてきた。思わずそちらの方へ気をやり、足が立ち止まる。
唯一の武器である刀を掴み取られて尚、目の前にいるこいつは吠えた。切り札の『零落白夜』も使えないのに。
「あいつはああいうやつだ。誰かのために動けるやつなんだ」
それでも押し切ろうと力を込めてくる。ありったけの怒りも込めて。
「春人が取った行動に俺達は誰一人疑問なんか持っちゃいない!」
こいつの言葉に応えるようにISのスラスター出力が上がっていく。未だ俺には到底敵わないが、それでも俺を倒すべく出力が上がる。
「何も分かってないのはお前だけだ! お前だけが、あいつをちゃんと見てなかったんだ!!」
「…………」
脅威は感じない。こいつよりも強いのは他にも幾らでもいる。更識楯無の方がよっぽど強いだろう。
だがこいつにここまで好き勝手言われているのが気に入らない。
何も分かってない? 自分は知っているかのような口振りしやがって……!
「態と生かしておいてやれば付け上がる……!」
「ぐっ、くっ!」
「一夏くん、離れなさい!」
「「一夏!!」」
刀を握る力がより強まる。遂に耐えきれず刀身に無数の罅が入った。
更識楯無が離れろと言うがもう遅い。中国が名前を叫ぶがもう手遅れ。今更引こうとしても俺が逃がすはずがなかった。
「調子に――――」
まずはこれからだ。知っているぞ。この刀、お気に入りなんだろう? 織斑千冬と同じ刀だもんなぁ……!
「乗るなァッ!!」
「っ!!」
言い終えると共にご自慢の刀を握り潰してやった。と、同時に突然解放されてこいつが後ろによろめいて距離が出来る。
折れて砕け散った刀を見て絶望に顔を歪ませろ。お前のその顔を見てから終わりを教えてやる!
「それでも!!」
そう言うとこいつは折れた刀を手に再び立ち向かってきた。怯えや絶望に一切染まらず、真っ直ぐ俺へと向かって。
死にたいか。そうか、そんなに死にたいのか。
「ならば望み通り、殺してやる!!」
「が、はっ!?」
引き絞った右拳がこいつの腹部に突き刺さった瞬間、シールドを破り骨が折れる音が伝わるもそこで終わってしまった。いや、終わらせられた。誰かの手によって。
「これは……動けない?」
腹に風穴を開けるつもりで放ったが、実際は彼方へ吹き飛んだだけ。それもこちらは殴ったままの姿勢で身動き一つとれない。まるで何かに沈んでいるような感覚さえある。
何があったのかなんて考える時間は必要なかった。こうした犯人が向こうから現れたのだから。
「ごめん、一夏くん! 大丈夫!?」
「あ、ぐ……」
「そうか、更識楯無か……!」
声のした先、先程まではなかった赤い翼を拡げて、更識楯無のミステリアス・レイディが纏う水の色が青から赤に変わっていた。
「今日のおねーさんは簪ちゃんからの贈り物のおかげでいつもの三割増しで凄いのよ」
日本から受け取った専用パッケージによる出力の向上。そしてそれによって使用可能となった
たしかこいつのは空間拘束結界だったはず。厄介と言えば厄介だが、結界ごと周囲を吹き飛ばせばいい。
「こんなもの、すぐに吹き飛ばして……!!」
両肩と両腕の荷電粒子砲を起動。全砲門に光が灯ると更識楯無はにやりと笑みを浮かべる。
「あら、意外と周りが見えてないのね」
言われて周りに意識をやれば、
「一点に集中して放てば……『ブルー・ティアーズ』!」
イギリスが周囲にBT兵器を配置し、ミサイル型も発射する姿勢を取り、
「マニュアル誘導システム起動……! 『山嵐』、全弾発射準備!」
日本がミサイルを格納させていた全てのハッチを開き、
「一夏、一夏ぁ!」
「俺は、いいから……」
「でも!」
「や、っちま、え……鈴……!」
「……分かった。一夏の分も纏めてきついの一発、お見舞いしてやるわよ!!」
雑魚を心配するのも束の間、中国もすぐにこちらへ向き直り特大の砲身を生成する。
各国三名の専用機が持つ最大火力での波状攻撃。なるほど、こちらのエネルギーを削りきる作戦か。まぁ『零落白夜』が使えない状況ではそれしかないが。しかし、それでは俺には届かない。
「そんなもので俺を、っ!?」
倒せると思ったか。そう言おうとするとそれはゆっくりと立ち上がった。
目の前で攻撃態勢が整いつつある最中、そちらへと目を奪われてしまった。
「はぁ……! はぁ……!」
だらりと下がったままの腕。立ち上がるのもやっとなのか、肩で息をしながら気だるげに丸まった背中。
そいつは右手に刀を呼び出すと顔をあげて鋭い目付きでこちらを睨み付ける。
《Complete》
「櫻井春人……!」
名前を呟いた瞬間、爆発音と巻き上げられた土煙が俺を包んだ。断続的に続くミサイルやレーザー、見えない砲弾が襲うも、意識は既に次の事へ。
櫻井春人。織斑千冬、兎と並んで俺を倒せる可能性を持つ男。今襲ってきているのよりも遥かに脅威だ。これを目眩ましにして……というのもある。さぁ、いつ何処から来る……!
「っ、来たか!」
各国からの攻撃が止めば、爆煙を切り裂いて煌めく白刃が真正面から迫りくる。あの中で刀を使うのはただ一人だけ。予想通りと言えば予想通りだ。
「叩き壊してや――――」
横に凪ごうとやってきた刀を叩き壊そうと右腕を振り上げると少しずつだが煙が薄れてきて、その向こうにいる姿が見えてきた。
「でぃぃぃやぁぁぁ!!」
列泊の気合いと共に現れた櫻井春人はその手に刀を持っていなかった。しかし、刃は今も尚迫ってきている。幻覚などではない。それを振るっているのは他でもない櫻井春人だ。
ではどうやって振るっているのか。
答えは足だった。正確には脚部装甲に刀を格納し、そこから刃を発生させ、刃が立つようにして放たれる跳び後ろ回し蹴り。
それらが分かると同時、迎撃しようとした右腕に鈍い衝撃が走った。
「おお……」
思わず感嘆の声が出た。目の前で行われたこの行為に、作られた光景に呆然としてしまう。見とれていたと言ってもいい。
俺の後方には今の蹴りの軌道に沿ってアリーナの壁や地面に一文字の大きな爪跡が残され、放った本人は蹴りの勢いのまま半回転してこちらに背を向けている。大した事だが、見とれているのはこれではない。
俺が見とれているのは受け止めた右腕が今も空高く舞っていた事だった。
こいつは、櫻井春人は、『零落白夜』を使わず、俺のエネルギーを尽きさせてから攻撃するでもなく、単純にシールドをそれ以上の力でぶち抜いてダメージを与えてきた。
「おお……!」
金属が砕ける甲高い音は刀が繰り出した攻撃に耐えられなかった証。でもそれが曇り空から僅かに覗く日の光を反射して煌めいていた。まるでこの事を祝福するかのように。
今まで使わなかったラファールと『葵・改』の最後の機能である脚部に刀を格納しての蹴り。リミットが掛かっているからと布仏先輩が用意してくれた機構がこの場で役に立った。
足は腕の三倍強い。手っ取り早く強くなるなら腕を足並みに強くするか、足を手並みに器用にしろというのは本当らしい。
ふふ……さっきまでびびってたからダメダメだったが、冴えてきた……冴えてきたぜ!
とりあえず布仏先輩への報告にはこう書こう。破壊力は充分、強度がいまいち!
『らじゃー! それと報告であります! 敵機は無防備であります!』
なら追撃だろ!
俺は手にもう一振りの刀を呼び出すと振り返り様、ローキックのような足払いを放つ。
「虚空陣――――」
「む!?」
両足を狩られ、体勢を崩して漸く気付いたらしい。前のめりに倒れそうになるも何とか堪える。
「――――禁技」
だが飛び上がった俺が上から踏みつけて、三号を足場に再度跳躍して上空へ。強制的にダウンさせられると同時に三号がバウンドして遅れて上空へやってくる。刀を振り上げた俺の元へと。
「天骸!!」
「は、はははっ!!」
地上へと降下しつつ両手で振り下ろすも、さすがにそのまま受けてくれない。残った左腕とシールドが阻み、二振り目も砕けてしまった。
「お返しだっ!!」
「ぐぅっ!?」
言葉通りに繰り出してきた左拳を受け止める
と受けた右腕が嫌な音を立てると共に激痛が走る。
「ああ、しまった……だがまぁいい。それより何だ、さっきよりも強いじゃないか。どうしたんだ?」
限界まで残り僅か。それでも何処か嬉しそうに訊ねてくる三号に答える事に。
「……大した事ないって分かったからな」
「ほほう、俺が大した事ないと?」
「……お前の事じゃない」
お前が大した事なかったらびびるわ。俺この世界でやっていける自信ないわ。
なら何かと三号が首を傾げる。
「ぅん? じゃあなんだ?」
「……何でもいいだろう。さっさと終わらせるぞ」
こちとらもうそろそろ色々限界なんでな。もう休みたくてしょうがないんだよ。
左半身を僅かに後ろに下げて腰を落とすと拳を握り締めた。それを見て俺とは対照的に明らかに三号のテンションが上がる。
「いいぜ……! お互い片腕、お互い素手! 盛り上がってきたぜ……なぁ!?」
「……はぁ。別に」
これだけ冷めた反応だというのにそれでも嬉しそうに構えた。
冷めてるのには理由がある。そもそも誰が好き好んで戦ってるのかって話と――――
「……お前、周りを見ろと言われたばかりだろう」
もう俺の役目は終わってるからなんだよね。
「な……!?」
向かい合っていた三号の胸部から突然白い刃が生えた。その刃の正体については俺よりもこいつの方が詳しいだろう。かなり警戒していたし。
「『零落白夜』だと!?」
「後ろからだけど失礼するぜ……!」
背中から聞こえる声の主は表情は見えないが、声からしてしてやったりと言いたげな顔をしているだろう。
「何で、お前が……!?」
「よくわかんねぇけど、お前にぶん殴られて死にかけたら体力もエネルギーも全快だ!」
そう言うや否や、『零落白夜』の輝きが更に増す。あいつを倒せるようにと、強く強く。
てか、死にかけて体力回復ってどういう事? お前ドMの鑑かよ。
「一夏!」
「ああ!」
「決めなさい、一夏!」
「おう!」
「一夏さん、トドメはお任せしますわ!」
「あいよ!」
「一夏くん! 無理はしないでね!」
「分かってます!」
「……ふぁっきゅー」
「何で!?」
さて、簪以外の全員が激励している訳だ。いや、あれも激励なのかもしれない。とりあえずここは俺もするべきなんだろう。
ゆっくり構えを解いてから溜め息一つ。
「……ふぅ。最後は決めろ、一夏」
『お?』
「…………ぃよっしゃぁぁぁ!!!」
何か俺の時だけテンションの上がり方が違う……。どういう事なの……。
そんな俺の混乱も他所に白い刃が三号を切り裂いた。もう大丈夫だろう。安心すると今度こそ意識を手放した。
イチャラブックスしてるの書きたい……