IS学園での物語   作:トッポの人

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第39話

 パフェも食べたのでいつものお昼寝スポットで寝転がる事に。ここ最近は慌ただしい上に、変な疑惑でのんびりなんて出来なかったからちょうどいいのかもしれない。

 だが中々寝付けそうになかった。襲撃以来昼寝する時は布仏が膝枕をしてくれていたせいか、何度も寝返りを打ってしまう。

 

「…………おい」

「何だ?」

「……何故同じ動きをするんだ」

「言っただろう。教官から一緒に行動しろと言われていると」

 

 その度に横にいるボーデヴィッヒが俺と全く同じ動きをしてくる。寝返りさえも。

 俺の一挙一動を見逃すまいとじっと見てくるのも中々寝れない理由の一つだと思う。

 

「…………はぁ、もういい」

「む」

 

 そう言って仰向けになって少しでも身体を休めるように大の字になると、横にいるボーデヴィッヒも遅れて大の字になる。

 それを見届けてもう一度溜め息を吐こうとしたところで。

 

『春人、春人。寝れないならお話しよ?』

 

 今度はミコトから話し掛けられた。眠くはあるが、寝れないというこの状況で断る理由もない。

 

 いいけど、途中で寝ちゃったらごめんな。

 

『ミコトちゃんは理解力高いヒロインなので問題なっしんぐ!』

 

 何だそれ。まぁ、何でもいいけどさ。

 

 相変わらず元気の良い返事に少し和みつつ、意識をそちらへ集中させるべく目を閉じる。

 

『ある意味で春人のネーミングセンスに期待して名前を考えて欲しいんだけど』

 

 おう、人のネーミングセンス弄るのやめぇや。

 

『あのね、あるお話で物語上最強形態の名前がシャイニングフォームっていうのがあるんだけど』

 

 物語上最強ってどういう事?

 

『お話ではそこまでしか行かなかったけど、本当なら更に進化するって設定なの』

 

 ほうほう、それで俺にそのシャイニングフォームの更なる進化した名前を考えて欲しいと。そういう訳ですね。

 

『そういう訳なのです。ではどうぞ!』

 

 あまりにも情報が少ないが、早速考える事に。

 とはいっても、既にシャイニングという物凄く強そうな名前がある訳で。語感的にこれを越える名前を新たに考えなくてはならない。

 そこに付け足すのもありだろう。それによって既存の上位互換というイメージが強くなる。下手をすれば下位互換になってしまうが……はっ。

 

『ん? 何か思い付いたの?』

 

 だが、そこで俺は閃いたのだ。俺的に凄くいい名前を。それをミコトも感じ取ったらしく、早速俺に訊ねてくる。

 

 おう。シャイニングフォーム・オーバーレイとかどうよ?

 

『漂うバトスピ感』

 

 それは言うな……。めっちゃ影響されてるから……。

 

 名前をと言われてみて、ふとあいつを思い出した。

 クラス対抗戦で襲撃してきた三号。名乗りもしなかったが、あいつにも名前はあるんだろうかと今更ながら気になってしまう。

 

 なぁ、ミコト。一つ聞きたいんだけど。

 

『私の春人への好感度なら常に限界突破してるよ』

 

 あ、ああ、そうなんだ……。それは置いといて、あいつに名前ってあるのかな?

 

『あいつって三号の事? ないと思うけど何で?』

 

 何でって、ないなら考えないとダメだろ。いつまでもあいつとか、三号とかじゃ可哀想だ。そんなの名前じゃない。

 

『――――そっかっ』

 

 俺の意見にミコトは何故か嬉そうな声色でそう呟いた。声で判断するにどうやらミコトも賛成のようだ。とすれば、やるのは一緒に名前を考える事のみ。

 

『名前は春人が考えてあげて。きっとそうしてあげた方がいいから』

 

 だったのだがやはりというか、いつものように考えるのは俺一人らしい。俺が付けた名前は不評なようで実は好評という事なのか。よく分からん。

 

 いつまでも三号じゃ可哀想だし、とりあえず名前が決まるまでは元カノにしとくかぁ。

 

『え゛っ』

 

 独り言のように呟いた言葉はミコトにかなりの動揺を与えたようだ。そこまで驚かせるような事は言ってないと思うが。

 

『は、春人、さん……? 元カノってか、彼女いたんですか……?』

 

 動揺のあまり声が震えているが、その原因は俺の元カノ発言だった。かなりどうでも良い事のような気もするが、聞いてくる以上説明しなくてはならない。

 

 何言ってんだ。俺の年齢と彼女いない歴は一緒だよ。元カノって呼んだのはあいつが引き際を分かってなさそうだからだ。

 

『そ、そうだよね! 春人はまだ童貞だもんね!』

 

 いや、そうなんだけどそこは喜ばなくていいと思うんだ。俺はすっごく悲しい気持ちになるんだけどね。

 

 違うと分かるや否や、とんでもない事を言いながら嬉そうにしているミコトに困惑しつつ目を開けた。小さかったが、誰かが近付いてくる音がしたからだ。

 

「えっと……おはよー?」

「……目を瞑っていただけだ」

「そっかー」

 

 突然目を開けた俺にびっくりしたようだが、布仏はそのままそろりそろりと俺の頭まで来るといつものように膝枕をしてくる。そう、いつものようにだ。

 

「良い子、良い子っ」

 

 そうすれば必然的にやるのも決まっている。膝の上に乗せれば、袖に包まれた両手が俺の頬を優しく撫でてくるのなんて見なくても分かっていた。

 

「……おい」

「らうりー寝てるから、しー」

「すー……すー……」

「……む」

 

 せめてもの布仏への抗議は寝ているボーデヴィッヒによって防がれてしまう。どうやら俺の真似をして横になっていたら本当に寝てしまったらしい。真似された本人を残して。

 起きていれば釣り上がった目や冷たい雰囲気のせいで近寄りがたいが、静かに寝息を立てている今なら誰にでも好かれるだろう。

 

「はるるんは寝ないの?」

「……今から寝る」

 

 布仏が膝枕をしてくれたおかげで一気に眠気がやってきた。枕がないと寝れないとか、意外とデリケートだったようだ。

 

「んー……」

「…………何だ?」

 

 そう言うなり、顔を近付けて上からじっとこちらを見てくる布仏。いつも細めている目を少しだけ開いて、静かに俺の目だけを。

 

「はるるん、やっぱり頑張ってる」

「…………俺は何もしていない」

「……ううん、頑張ってる」

 

 今のが前にもやっていた頑張ってるかどうかのチェックだったらしい。そして布仏の基準では頑張っているようだ。何もしてないのだけれども。

 チェックを終えて、顔を離すと今度は一定のリズムで肩を叩く。眠れるように、安心出来るように。

 

「だから休める時に休んで。ね?」

「…………ああ」

 

 元より抗うつもりもなかったが、そう言われれば尚更抵抗の意思はなくなる。あとはこの睡魔に委ねるだけ。

 

「お休み、はるるん」

『お休み、春人』

「……ああ、お休み」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ISの使用禁止が解禁されるまであと三日。やる事もない俺は食堂でまたデザートを食べていた。

 

「おい、今日は何を食べるつもりだ?」

「……この和菓子セットにしようと思っている」

「和菓子セットだな。了解した」

 

 勿論、ボーデヴィッヒも一緒に。

 あれから毎日俺と共にしているボーデヴィッヒは徐々にその刺々しい態度も軟化していた。

 例として一夏にちょっかいを出さなくなった。何も悪くないのがはっきりと分かったので、ちょっかいを出す理由がなくなったと言えばいいか。

 

「……お願いします」

「よろしく頼む」

「はいよー」

 

 二人して食券を渡せばあとは待つのみ。

 他の皆の邪魔にならないように横に移動すれば、ボーデヴィッヒもきちんと邪魔にならないように付いてくる。

 

「和菓子か。教官がドイツにいた頃、何度か口にしていたな」

「……食べた事あるのか?」

「教官が口にしていた大福ぐらいだ。他は知らん」

 

 そんな他愛もない話をしていれば二人分の和菓子セットのご到着。一言お礼を言ってから受け取ったその時だった。

 

「なっ!?」

 

 皿に盛り付けられた和菓子を見るなり、ボーデヴィッヒから驚愕の声があがる。何かを訴えるようにわなわなと身体を震えさせて。

 

「……どうした?」

「い、いいいや、何でもないぞ」

「……そうか。早く席に行こう」

「う、く、うぅ……! 」

 

 明らかに何かがあったような反応なのでそっとボーデヴィッヒが受け取った皿と見比べてみた。

 そこには饅頭やくず餅、白餡で象られた兎と手間を掛けて作られたものばかり。俺が受け取ったものと特段変わりはない。

 

「うぅ……」

「……ん?」

 

 席に着いてもボーデヴィッヒは小さな呻き声をあげていた。何処か弱ったような呻き声を。

 不思議に思っていたが、向かい合って初めてボーデヴィッヒがずっと一点を見つめているのに気が付いた。

 

 視線の先には兎を象った白餡。それがじっとボーデヴィッヒと見つめ合っていた。

 

「……これが嫌いなのか?」

「これが何かは分からんが、食わず嫌いはしない主義だ……だ、だが、やはりこれも食べるのか……?」

 

 まるでこれから死刑宣告を受ける罪人のように恐る恐る訊ねてくるボーデヴィッヒ。その姿からは初日に感じた冷たさなんて見る影もなかった。

 この兎が食べられるものなのかと不安に感じているようだ。もしかしたらドイツではこういった風に料理で生き物を象る習慣がないのかもしれない。

 

「……ああ、こんな風にな」

「き、貴様ァー!!」

『「えぇ……?」』

 

 ならば手本をと菓子楊枝でざっくりと兎の顔を二つに割った瞬間、ボーデヴィッヒが立ち上がった。その背に怒りの炎を燃やして。

 

 あまりの変わりようにミコトと二人して思わず変な声が出てしまった。この子ってばどうしちゃったの。

 

「あ、ああ……あいつの暴挙を止められなくてすまない……」

 

 悲しみに暮れる声で顔が半分となった兎にしきりに謝る姿はかなりシュールなものがある。

 要するにさっき言った「これも食べるのか」は、「これも食べられるのか」ではなく、「これも食べなくてはダメなのか」という意味だったらしい。

 

『ラウラ本人がこの惨劇を作ったら発狂しそうなんですけど……』

 

 あかん、食堂にいる人達が死ぬぅ。

 いや、しかしせっかくボーデヴィッヒのために作ってもらったんだ。食べさせるしかないだろう。

 

「…………いいのか、こいつも食べ物だ。お前が食べなければ腐るぞ」

「な、に……!?」

「……このままでは見るも無惨な姿になるだろうなぁ」

「むむむ……!」

『何で悪役っぽく言うの……』

 

 何でだろう……。

 

 言い方は置いといて。ちゃんと食べないとダメだと伝えれば、難しい顔をしてまだ無事である自分の兎と再び見つめ合う。

 

 そして――――。

 

「あむっ!」

「……おお」

 

 意を決したようにボーデヴィッヒは兎を口へと放り込んだ。一口でまるまる一羽を。

 菓子楊枝で刻んだり刺したりしないで器用に乗っけて食べる辺り、お菓子とはいえ本当に傷付けたくなかったのだと思わされる。

 

 最初は悲しげな顔をして口を動かしていたが、次第に明るいものになっていき、全て飲み込む頃には目をキラキラさせていた。

 

「う、美味い! これは何という食べ物だ!?」

 

 哀れ、兎は生前の愛くるしい姿はその身が持つ美味に忘れられてしまったようだ。あれだけ睨み合った仲だというのに。

 そしてどうやらこの白餡の和菓子が大層お気に召した様子。ならばきちんと教えねばなるまい。

 

「林檎です」

「ん? これが林檎でない事は私にも分かるぞ。あと何故敬語を使ったんだ?」

『春人。そのドラゴンボールネタは凄く分かりにくいよ……』

 

 多少、いやかなりマニアックなところを行ったからな……。そもそもボーデヴィッヒがそんなの知る訳がなかった。

 

「…………冗談だ。それは餡子だ」

「餡子だと? 餡子は黒だろう」

「……白餡というものがある。見てみろ」

 

 テーブルに置いてあったメニューの謳い文句を見せてやると、手にとって今度はそちらに熱い視線を送り始める。

 

「むぅ……。話には聞いていたがなるほ、む?」

「……ん?」

「櫻井春人、一つ聞きたい」

 

 と、何かに気付いたらしく拡げたメニューからひょっこり顔の上半分だけを覗かせて質問を続けた。

 その目は真剣そのもの。今度はふざけて答えられそうにない。

 

「さっきの兎が白餡で作られたのなら、普通の黒い餡子でも作れるのか?」

『はーん……』

「…………は?」

 

 何だそれ。黒い兎はいるだろうけど、こんなに黒いのはいないだろ。

 まぁ作れるかどうかの話だから答えておくか。

 

「…………よく分からないが、出来るんじゃないか?」

「そうか……よし、来い」

 

 答えを聞いたボーデヴィッヒは立ち上がり、俺の手を取るとずんずんと歩いていく。真っ直ぐ厨房へと。

 ある程度近付くと厨房内の人に知られないよう、素早くカウンターの影に隠れた。

 

「……何をする気だ」

「さっきの兎を餡子で作ってもらう」

 

 もう片方の手に持っていたメニュー表を俺に見せながら、これだと指を差して言ってくる。何でこいつこんなに夢中になってんだ。

 

『ラウラの所属する部隊名が黒ウサギだからじゃない?』

 

 あ、そういう理由なのか。

 

「しかし、困ったな……」

「……何がだ」

「私達では命令系統が違う。作ってもらうにしてもどうしたものか……」

 

 生粋の軍人故か、変なところで頭を悩ませているボーデヴィッヒ。

 俺としてはこのカウンターの前で隠れている様子を他の女子に見られている事が問題なのだが……仕方ない。

 

「……ボーデヴィッヒ。そういう時は命令ではなく、お願いをするんだ」

「お願い……」

 

 当たり前の事だがアドバイスすると腕を組んで考え初めてしまった。早くしてくれ。

 

「……言いにくいのなら俺から言うが」

「いや、待て。私から言おう」

 

 そう言うとボーデヴィッヒはカウンターの影に隠れたまま、厨房内への扉まで接近。

 何故か黙って手招きしている辺り、やはり俺も一緒に行くらしい。

 

「カウントは三から行くぞ」

「…………いや、いらないだろ」

「三……二……」

 

 俺の突っ込みも虚しく、最後に立てられていた指も折り曲げられると勢いよく扉を開けた。

 

「た、頼もー!」

「「「っ!!?」」」

 

 ――――この数日で分かってたんだけど、お前の日本語たまにおかしくなるのなんなの?

 

 突然音も気配もなく近付いてきた俺達に厨房内の人達は大変驚かれていた。

 それだけじゃなく、食堂にいる人達までも驚かせてしまい大いに注目を集めるはめに。お腹痛くなってきた。

 

「この兎を普通の餡子で作ってほしい!」

「……すみません、出来ますか?」

「あ、ああ……そういう事ね……」

 

 さっきの兎の制作者にメニュー表を見せながら鼻息荒く要求するボーデヴィッヒの横で、頭を下げながらお願いすると戸惑いながらも話を聞いてくれた。

 

「せっかくだし、自分達で作ってみたら?」

「「えっ」」

 

 意外にもすんなり話が通るかと思いきや話は予想外の方向へ。ていうか俺も一緒に作るのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜、ボーデヴィッヒと慣れない菓子作りをしていたせいか今日は訓練もしていないが、珍しく疲労している。

 

「むー……!」

「……今日は何だ」

「お兄ちゃんってばラウラとずっと一緒なんだもんっ」

 

 そんな中で横にぴったりとくっついているシャルが不満そうにしていた。ここのところずっとだ。

 原因は分かっている。タッグトーナメントで俺がボーデヴィッヒと組んだからだ。それから何かにつけて夜はこうして不満をぶつけるようになった。何故か俺だけに。

 

「……すまない。やる事もなくてな」

「むー……!」

 

 一応、シャルの身に何もないように秘密を明かしたメンバーの誰かが側にいるようにはしている。

 だがシャルは俺がいないとダメなようだ。口を尖らせて必死に不満だとアピールしてくる。

 

「ん!」

 

 遂に我慢の限界に達したのか、短く声をあげるとこちらに頭を差し向けてくる。撫でろという事らしい。いつもながら何が嬉しいのやら。

 

「……はいはい」

「ん……。ダメだよ。僕は怒ってるんだからね」

 

 そう言いつつも、確かに怒りは収まってきているようで顔を綻ばせていく。

 必死に取り繕うとしているが撫でる度に怒りは崩れていき、そして。

 

「えへへ。ぎゅーっ」

「……はいはい」

 

 最終形態として俺の肩に顎を乗せて向こうから抱き付いてくる。いつかのストレス解消としてやっていたように。

 

『堕ちろ……堕ちたな』

 

 このおもうとチョロくない?

 怒ってるってのが嘘とはいえ、撫でられるだけでこうなるとかお兄ちゃんは将来が心配になってしまいます。

 

「……もう寝るぞ」

「えー……」

 

 抱き付いたまま今度は別の理由で不満そうにしているが、こればっかりはどうしようもない。

 何せ、もう就寝時間なのだ。このままだと織斑先生に怒られてしまう。是が非でも避けたい事態だ。

 

「お兄ちゃん、このまま寝ていい?」

「……ダメだ」

 

 部屋の照明を消してベッドに入ると当然のようにシャルも入って訊ねてきた。仰向けになった俺の身体の上に乗っかった状態で。

 ダメだと伝えればまた不満そうに頬を膨らませてくる。だがこればっかりは聞く訳にはいかない。

 

「お兄ちゃんのケチ」

「……何とでも言え」

 

 ケチじゃないだろ。大体そんな我が儘ボディしてるのに気安く抱き付いてくる方がおかしい。

 

「いいもん。寝やすい環境作るから」

 

 すると左横に移動したシャルは腹の辺りに置いていた俺の左腕を肩と平行になるようにしだした。そして左腕を枕にすれば満面の笑みでこう呟く。

 

「よしっ」

 

 よしじゃないが。

 

 こんなのが寝やすいとは到底思えないが、まぁいい。どうせ俺もシャルが寝るまで起きているのだから。

 いつものように頭を撫でようとすれば、シャルが頻りに鼻を動かし始める。

 

「お兄ちゃんいい匂いするね……」

「……和菓子の匂いだろう?」

 

 今日は夕食の直前まで厨房内で和菓子を触っていたからその匂いだろう。シャワーで丹念に洗ったつもりだったが、まだ甘ったるい匂いが残っていたようだ。

 

「ううん、お兄ちゃんの匂いだよ。凄く安心する」

 

 そう言うとシャルはこちらに近付き、また頻りに鼻を動かす。最初は腕に乗っけていた頭も気付けば肩に乗せるまでに。

 

「…………おい」

「お願い……このまま寝ていい?」

 

 起き上がってダメ? と首を傾げてくるシャルをカーテンから僅かに覗く月明かりが照らす。それがシャルの金髪をほんの少し輝かせて幻想的な雰囲気を醸し出していた。

 

 さっきのは冗談だったが、今度は本気のようだ。断ればどうなるかなんて分かりきっている。

 

「……早く寝ろよ」

「っ、うんっ!」

 

 了承すると再び肩に頭を乗せてきた。嬉しくて堪らないと顔を喜色満面にして。

 

「今日はいつもより良く寝れそうっ」

「…………そうか」

 

 俺は良く寝れそうにないけどな。まぁそれでも良いものが見れたから良しとするか。




厨房内にポニーテールにして髪を纏めた三角巾、エプロン装備のラウラ誕生。

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