IS学園での物語   作:トッポの人

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お待たせ。待った?


第60話

 

 臨海学校が目前に迫っている今日。何故かその直ぐ後に試験があるので勉強している訳だが相変わらず騒がしい。

 

『春人、春人、この問題分かる?』

 

 えっと……こう、か? 

 

 そして時折こうしてミコトが今やっている勉強ジャンルの問題を出してくるのだが、結構厄介だったりする。

 俺のレベルを完全に把握しているらしく、出来るかどうかの微妙なラインを突いてくるのだ。正解すれば微妙なラインで褒めてくれるので何も問題ないのだが、間違えたりすると……。

 

『ハズレ。はぁー、ほんと……く、そ、ざ、こっ』

 

 やめろ……変なのに目覚めそうになるからやめろ……! 

 

 このように何故か耳元で囁くようにして罵倒されてしまう。その度に背筋がゾクゾクし、開いてはいけない扉を激しい音を立てて開けろとノックされているような感じがする。しかも幼女に。最後の一言だけでやばさが半端じゃない。

 

『ところがどすこい、たとえ相手が幼女でもお互い想い合っていれば問題なっしんぐ!』

 

 いや、ダメだろ。

 

「春人くん、大丈夫?」

「…………大丈夫です」

「分からなかったらどんどん聞いていいからね」

「……すみません、ありがとうございます」

 

 思わず頭を抱えていたら虚さんに勉強で悩んでいると思われたらしく、笑顔でそう言われてしまった。ありがたいと思う反面、非常に申し訳なくなる。

 

「なぁ……勉強も大事だけど、たまには息抜きも必要だぞ。こっちに来いよ」

 

 一夏が提案すると他の皆も一様に頷く。思えば向こうから来たとはいえ、歓迎も何もしていない。何とも失礼な話だ。

 

「……ああ、そうする。虚さんもどうですか」

「じゃあ私もそうしようかしら」

「あ、それならまたお茶について教えてもらいたいのですが……」

「ええ、勿論いいわよ」

 

 誘えば虚さんも椅子から立ち上がり、食器棚へ。先にいた箒と共に準備を進めていく。カップの数から皆の分用意するようだ。

 

「……俺も手伝います」

「ありがとう。でも直ぐ済むから」

「……しかし」

「それより早く皆のところへ行ってやれ。寂しそうだぞ」

 

 言われて視線を向ければシャルと簪は部屋に来てから俺がずっと勉強していたからか、寂しげな表情を浮かべていた。正直、向けられる視線に耐えられそうにない。

 

「…………すみません、お願いします」

「はいっ」

「しっかり息抜きしてこい」

 

 一言断るとにこやかに手を振って応えてくれた二人を背にベッドの上に座り込むと二人を除く皆が一斉に俺へと寄ってきた。人口密度が一気に上昇する。俺の周囲限定で。

 

「勉強もいいが夫婦の時間も大切にしなくてはダメだぞ」

「…………そうだな」

「分かればいい」

 

 当たり前のように膝の上に座ってきたラウラが咎めるようにそう口にした。

 そもそも夫婦ではないのだが、見せていなかっただけでラウラも寂しさを感じていたのかもしれない。

 

「腕を貸せ」

「……?」

 

 そう言って何をするのかと見ていれば、ラウラが俺の右腕を手に取って自分のお腹辺りに置いていく。

 左腕も同じようにして両腕で抱き抱えるようになると満足そうな表情を浮かべた。

 

「よしっ」

「……何だこれは」

「む、知らないのか。嫁は夫を支えるものだろう」

「…………そうか」

『支える(物理)』

 

 得意気に言っているが支えるの意味が違う……。むしろ抱えるだし。

 

 とはいえ、夫が抱えた腕を放してくれそうにもない。何よりラウラが嬉しそうに頬を緩めているのでこのままにしておこう。

 夫への対応が決まったところで背中に柔らかな感触と少しの重みが加わる。相手は言うまでもないだろう。

 

「……本音は何で乗ってくる」

「はるるん暖かいからー」

 

 訊ねれば耳元からやはりいつもの間延びした声が返ってくる。横目で見れば本音がいつもより楽しげな笑みを浮かべている気がした。

 

「……俺は暑いんだが」

 

 いつぞやの皆から寄り掛かられて寝られた時よりはましだが、それでも本音とラウラの二人がくっついているのだ。暑くなるのは当たり前な話。

 

「じゃあこれで大丈夫だねっ」

「うむ。問題はないな」

「……むぅ」

 

 本音がいつの間にか持っていたリモコンでエアコンが動き出す。冷風がこの部屋に順繰りと行き渡っていき、不快指数を下げていく。二人が密着している暑さもかなり改善された。

 正直なところ、問題はそれだけではないのだが……。というか暖かいからくっついてるのに部屋を寒くするこの矛盾は一体……。

 

『こたつでアイス食べるのと同じ理論やで』

 

 つまり俺はアイスだった……? 

 

「うーん……」

「どうしたんだ?」

「いや、面白い組み合わせだなって」

「面白い組み合わせ?」

 

 携帯を弄っていたと思ったらこっちを見て唸る鈴へ隣にいた一夏が訊ねる。分かるように説明すべく、ゆっくりこちらへ指を向けてきた。

 

「ニコニコしてる一番上の姉」

「にへへー」

「無愛想な真ん中の弟」

「…………」

「そしてドヤ顔の末妹」

「ふふんっ」

「っていう団子三姉弟」

「ぷっ、なるほどな」

 

 何だそれは。いつから俺達は姉弟になったんだ。ていうか団子って……くっついてるからか。

 

「仲が良いという意味では確かにその通りだ。まぁこいつは嫁で、私は夫だがなっ!」

『そして私が無愛想な弟の幼妻だ!』

 

 何が誇らしいのかさっぱりだが、腕を組んで高らかに宣言するラウラ。さすがドヤ顔の末妹。何故か負けじとミコトも張り合う。

 ふと横を見ればシャルがぷっくり頬を膨らませて怒っているアピールをしていた。何かが不服だったらしい。

 

「そうだよ、ラウラは妹じゃないよ。お兄ちゃんの妹は僕だけだもん」

「シャルロットさん……その、怒るポイントが違うのでは……」

「えっ?」

 

 そこだったか……。俺の妹の怒りポイントそこだったか……。

 妹の怒りポイントに呆れつつ、隣に座っていた簪に問い掛けた。顔を向けただけではにかむ彼女に思わずドキリとしてしまったのは秘密にしておこう。

 

「……何の話をしていたんだ?」

「今度の臨海学校についてだよ」

「…………そうか」

 

 それを聞いて楯無さんを見やる。台所にいる虚さんと二人は臨海学校に行く予定はないのだから話してもつまらないと思ってるかもしれない。

 しかし、そんな俺の予想とは裏腹に楯無さんはとても楽しげ。箒と一緒に紅茶を持ってきてくれた虚さんは困ったような笑みを浮かべている。

 

「じ、つ、はー……おねーさん達も臨海学校参加する事に決まりましたー!」

「おー」

 

 どういう事かと訊こうとすれば楯無さんはにんまり微笑んでそう高らかに宣言した。『祝、参戦決定』と書かれた扇子を満面の笑みで開きながら。何かスパロボに出てくるみたいだな。

 

「…………すみません、何でですか?」

「ここのところトラブル続きだし、二度ある事は三度あるって言うじゃない。でも一年生だけで対処するのは不安なのよ」

「なので有事に直ぐに動ける専用機持ちで、一年生の専用機持ちと連携もとれる人に話が来たの」

「……なるほど」

 

 楯無さんに続き、紅茶を配り終えた虚さんが説明してくれる。確かにその条件なら真っ先に楯無さんに話が行くだろう。

 

「……では虚さんは?」

「お姉ちゃんははるるんの専属メカニックだからー」

「い、一応だけどね」

「……いつもお世話になってます」

『私もお世話になってます!』

 

 俺の問いに本音が代わりに説明すると虚さんは何処か恥ずかしそうに顔を赤らめる。一応だと強調するもこの人が来る理由も分かった。

 

「おお、そういえば。嫁がいつもお世話になってます」

「僕もいつもお世話になってます」

「いえいえ」

 

 俺の腕の中にいる夫と側にいる妹が同時に頭を下げる。ラウラはあまり関係ないが、シャルは新しい専用機で共にお世話になっているからだ。

 

「……しかし、授業の方は」

「そっちも大丈夫よ。別に遊びに行くだけじゃないんだし」

「課題も出されるし、先生方もいるから」

 

 それをやっていれば問題なし、と。

 織斑先生や山田先生を始めとした先生達も見てくれるだろうし、この二人に限って出された課題をやらないというのはないから大丈夫だろう。

 

「で、相談なんだけどぉ……」

「……何でしょうか」

 

 楯無さんが小悪魔のようなにんまりとした笑みを浮かべながら発してくる甘ったるい声。

 物凄く失礼かもしれないが、こういう時に出てくる楯無さんからの話ってあまりいい思い出がない気がする。

 

「明日、皆で臨海学校で着る水着買うから一緒に見て欲しいなぁって」

 

 どうしてそうなった。

 

「…………その、理由を聞いてもいいですか?」

「せっかくだし、貴重な男の子の意見も聞きたいじゃない」

 

 そう言うと楯無さんはウィンク一つ。IS学園という女子校にいたのに実に慣れた仕草だった。

 周りを見るとどうやら皆も同じ意見らしく、一夏と鈴を除く全員が深く頷く。年頃の女の子なだけあって異性の目が気になるという事のようだ。

 

 言ってる事は何となく分かるがそんなイベント俺には耐えられそうにない。という訳で断ろう。

 

「……でも、そういうのは俺とかいない方が」

「お兄ちゃん……」

「春人……」

「っ!?」

 

 途中まで言い掛けたところで左右から声が聞こえてくる。今にも泣きそうで、酷く弱々しい声。

 忙しなく視線を動かせばやはりというか、シャルと簪がこちらに向けた目を潤ませている。いつ決壊してもおかしくはなかった。

 

「ま、待て、落ち着け。訊いただけだから、な?」

「どうした、汗が凄いぞ」

 

 ラウラに指摘された通り、二人が涙を溢しそうなのに対して俺は冷や汗が溢れるどころかだらだらと滝のように流れて止まらない。

 必死に弁明しているところへ意外な人が手を差し伸べてくれた。

 

「じゃあ今から問題出すからそれ分からなかったら一緒に見に行く、でどう?」

「お、お願いします」

「もし正解したら私達が春人くんの買い物に付き合ってあげるっ」

「…………ん?」

 

 あれ、それだと意味ないような気が……。

 

「さっき歴史を勉強してたみたいだし、歴史から問題出すわね」

「……了解です」

 

 ともあれせっかく二人とも収まった事だし、受けない訳にはいかない。断ったらまた同じ事になるだろうから断れないというのが正しいが。

 

「鎌倉幕府が出来たのはいつでしょう! 語呂合わせで答えてもいいわよ」

「な、何ですかそのサービス問題」

「…………」

「あっ、多分こいつ分かんないわよ」

 

 待て。変な事を言うな。別に分からない訳じゃない。ただ一夏がそんな事言うもんだからプレッシャーが掛かってるだけだ。

 

「は、春人さん、大丈夫ですか?」

「…………大丈夫だ」

「お兄ちゃんなら分かるよ。大丈夫っ」

「はるるん、頑張れー」

「春人、頑張れ頑張れ……!」

「ふむ……」

 

 だが余計な心配を与えてしまったらしく、周りから応援される展開に。

 とりあえず簪の応援は色々と精神的によろしくないので早く答えたいのだが、夫が突然指で腕を叩き始めたのが気になる。今までそんな事しなかったのに。

 

「ラウラちゃん、モールス信号で教えるのはダメよ」

「むぅ」

 

 夫よ、心配して教えようとするのはありがたいがこちとら一般人だぞ。そんなの分かる訳ないだろう。

 

『分かってるなら早く答えないと』

 

 そうだな。そうすればこの変な空気も収まる。少し覚悟がいるが……。

 

『何で覚悟が……』

「春人くん、時間切れになるわよー?」

 

 どういう意味かとミコトに説明する暇もなく、楯無さんからそう告げられる。

 何が待ってるのか分からないが時間切れはあまりいいイメージがない。さっさと答えよう。

 

「……語呂合わせでもいいんですよね?」

「ええ」

「……分かりました」

 

 ならば、と深呼吸を一つ。せっかくなのでなるべくいい声になるよう喉を整えて。

 

「……いい国作ろう」

「ぶっぶー。昔はそれで良かったんだけどねー。正解は一一八五年、語呂はいい────」

「お前と俺で」

「────はへぇ!?」

「おー」

「「「っ!?」」」

『えぇ……何それぇ……』

「「ぶふっ」」

 

 手を差し伸べながら口にした俺の答えに楯無さんが素っ頓狂な声を出し、ほぼ全員が何故か俺へと視線を向ける。

 感嘆の声をあげている本音は置いといて、例外である一夏と鈴も吹き出して腹を抱えて笑っていた。

 

 やべぇ、間違えたらしい。ど、どうしよう。とりあえず誤魔化そう。

 

「は、春人。今のは……何だ?」

「…………今のは態とだ」

「余計に酷いですわ!」

「えぇ……」

 

 態とだから茶目っ気があるだけじゃないの……。

 

『いや、今のは態とだとしたら相当酷いよ……』

 

 えっ、まじでか。

 

「は、はわ、はわわわ……!」

「よ、嫁よ! そんなの私も言われた事ないぞ!」

「お兄ちゃん、僕にも僕にも!」

「春人、その、わ、私にも……」

「私達も言われてみたいね、お姉ちゃん」

「わ、私は別に何とも……」

「…………」

 

 顔を真っ赤にさせて狼狽える楯無さんを他所に訴えてくる面々に頭を抱える俺。

 ミコトの発言から俺の誤魔化しが悪かったようだが……どうしてこうなった。

 

「くっくくっ、は、腹いてぇ……!」

「や、やっぱり馬鹿だわこいつ……!」

 

 そして最早笑い死にしそうな勢いのカップル。何でこいつら付き合ってないんだ。

 と、その時、何とも言えない空気となったこの部屋に誰かが入ってきた。

 

「相変わらずここは騒がしいな。もう直ぐ消灯時間だぞ。そろそろ自分の部屋に戻れ」

「「「はーい」」」

「ん。よろしい。あとで確認しに来るからな」

 

 それだけ告げると織斑先生は去っていく。時刻を見ればもう消灯十分前となっていた。時間が過ぎるのが本当に早い。

 微妙にさっきの事を引き摺りながら皆で片付けをしていると鈴がふと思い出したように話し始めた。

 

「あっ、そうだった。この後皆で写真撮ってもいい?」

「「「?」」」

 

 急に何を言うのかと思えば撮影したいらしい。それはいいが何故今なのかと皆して首を傾げているとその理由を教えてくれた。

 

「私の従妹が普段私と付き合いのある人達を見てみたいってさっきから五月蝿くて」

 

 なるほど、鈴にしてはよく携帯を弄っていたと思ったら従妹と連絡を取っていたのか。

 

「そういう事でしたら構いませんわ」

「楯無さん達もいいですか?」

「勿論っ」

 

 皆から撮影許可が下りると片付けもそこそこに早速写真を撮る事に。

 

「……鈴」

 

 皆が一ヶ所に集まる中で、そっと鈴に手を差し出した。それを見て何度も瞬きをしたあとで視線をゆっくりと俺の方へ。

 

「その手は何?」

「……写真を撮るなら撮影役は必要だろう」

「友達との写真撮るのに友達いないでどうすんの。手段なんか幾らでもあるから早くあっち行きなさい」

『当たり前だよなぁ?』

「……分かった」

 

 急かされるまま、皆のいるところに行くと鈴がカメラ越しにこちらを見ている。何度もフレームに皆入っているか確認して、大きく頷いた。

 

「んー……うん、これでよし。じゃあタイマーセットして……十秒後いきまーす」

 

 こちらへ駆け寄ると偶然を装って一夏の隣を確保。そしてピースサインを向けるとタイミングよくシャッターが切られる。

 

「ありがとー。どれどれー……」

 

 眩い光が鈴の携帯から放たれ、写真撮影は終わりを告げた。一夏の隣が取れたからだろうか、満面の笑みを浮かべている鈴は出来映えを確認しようと携帯を覗いた瞬間。

 

「ふにゃあああ!!?」

「うおっと、どうしぎゃあああ!?」

 

 携帯を放り投げて何か猫のような雄叫びをあげた。慌てて一夏がナイスキャッチしたものの、鈴の驚きぶりは異様でしかない。

 すっかり怯え、一夏の背中に隠れねカタカタと震えている鈴。一夏は一夏で好きな女の子に抱き付かれて嬉しい悲鳴をあげるという地獄絵図が出来上がった。

 

『何という二次災害』

「ど、どうしたのだ?」

「しゃ、写真……」

 

 訊ねるとゆっくりとその指を携帯へと向けた。息を呑んで全員で確認すると……。

 

「「ひぃっ!?」」

「これ、は……」

「嫁だけ変だな」

 

 俺だけボヤけた写真に簪とセシリアが恐怖した。他の皆も二人ほどではないが、唖然としているようだ。集合写真を撮ろうとしたら心霊写真が撮れたかもしれないのだから無理もない。

 

「んー? おー」

 

 皆が青い顔をしてる中でもやはり本音だけはいつも通りだった。驚いてるのか怖がってるのかよく分からない態度だ。

 

「はるるん、さっき何したの?」

「「「えっ?」」」

 

 どうやらバレてたらしい。

 

「な、何したんだ?」

「…………一瞬だけ動いて残像を」

「「『えぇ……』」」

「あ、あんたはもう変な事しない!」

「す、すみません」

 

 すまない、ただ残像だって言いたかっただけなんだ。まさかそんな心霊写真みたいに扱われるなんて思わなくて。本当にすまない。

 

「もう一度撮るからそいつが動かないようにしといて」

「…………えっ」

「ふっ、任せておけ」

「りょーかーい」

 

 ベッドに腰掛けた俺の上に腕を組んだラウラ、背中には本音が覆い被さる。

 

「よいしょ」

「お隣失礼しますわ」

「あ、あははー……わ、私も……」

「し、失礼します」

「…………あの」

 

 右に簪、左にセシリアが俺の隣に座り、楯無さんと虚さんが本音の隣で膝立ちとなって俺の肩に手を置く。

 

「…………箒」

「どうしたのだ?」

「……いや、何でもない」

「ふふっ、変なやつだ」

 

 そして箒は簪の隣に座ると置き場がなくてベッドの上に置かれていた俺の手にそっと手を重ねる。写真には写らないように、皆には見えないように。

 

「お、皆さっきよりいいわよ」

 

 何だこれはと言いたくなるが鈴の言うとおり皆が皆、先ほどの写真よりもいい笑顔になっている。

 と、まぁこれだけされたらもう何も出来る事もない。あとは大人しく撮られるだけ。

 タイマーをセットして鈴がまた一夏の隣を取ったと同時に撮影された。

 

「うん、うん。いいわね」

「わたくし達にも見せてくださいな」

「ちゃんと皆にも送ったわよ」

 

 写真を眺めて微笑む鈴。俺にも送られた写真を見てみると予想以上にいいのが撮れていた。俺のところは見なかった事にしたけど。

 

 翌日。

 

「そういえば従妹にあの写真送ったのか?」

「あー……うん」

 

 早速昨日の写真を送ったのか訊くと珍しく歯切れの悪い解答。どうかしたのか。

 

「ん? 何か言われたのか?」

「その、一人クズがいるっぽいから気を付けてって言われたわ」

「…………そうか」

 

 俺じゃねぇか。

 

「ちゃ、ちゃんと違うって否定したわよ?」

 

 その優しさが余計に辛い。

 

 

 


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